この記事の要点

  • 登録免許税法10条1項は、課税標準を「登記の時における不動産等の価額」と定めており、この価額は一般に時価(その時点の客観的な価値)を指すと理解されている
  • 附則7条の「当分の間」の特例により、実務では原則として固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)が用いられている
  • 相続税評価額や実勢価格とは基準が異なるため、混同すると見積りや税額の見込みがずれる

相続登記や不動産の売買登記を依頼すると、司法書士から「固定資産税評価額を教えてください」と聞かれることがあります。実際に売買した金額(実勢価格)を伝えているのに、なぜ別の評価額を使うのか、疑問に思われる方は少なくありません。

条文上の原則は「時価」

登録免許税法10条1項は、登記の課税標準となる価額について「当該登記又は登録の時における不動産等の価額による」と定めています(「不動産等」は、不動産のほか船舶など登記・登録の対象となるものをまとめて指す条文上の呼び方で、不動産の登記ではその不動産の価額を指します)。条文そのものは「時価」という言葉を使っていませんが、ここでいう「価額」は、一般に、登記の時点におけるその不動産の客観的な価値(いわゆる時価)を指すものと理解されています。つまり条文の建てつけとしては、登記をする時点でのその不動産の価値を基準にする、というのが出発点になります。

「当分の間」の特例で固定資産税評価額を使う

ところが、登記のたびに時価を個別に算定するのは手間がかかります。そこで登録免許税法附則7条は、「当分の間」の措置として、固定資産課税台帳に登録された価格(地方税法341条9号にいう固定資産課税台帳)を基礎として政令で定める価額によることができる、と定めています。つまり条文は「登録された価格をそのまま使う」と言い切っているのではなく、具体的な価額の決め方は政令(登録免許税法施行令)に委ねる、という建てつけです。この「当分の間」という言い回しは、登録免許税法が制定された昭和42年から現在まで続く暫定措置で、他の税法にもしばしば登場する表現です。

実務では、原則としてこの特例による価額が用いられています。国税庁のタックスアンサー(No.7191)でも、課税標準となる不動産の価額は「固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、原則その価格」とされています。固定資産税評価額・相続税評価額・実勢価格の3種類のうち、登録免許税で使われるのは固定資産税評価額だという整理は、実はこうした条文上の根拠に基づいているわけです。

他の税金の基準とは別物

相続税・贈与税は相続税評価額(路線価方式・倍率方式)、不動産の売却時の譲渡所得税は実勢価格に近い実際の取引額が基準になります。同じ不動産でも、どの税金の話をしているかによって基準となる「価格」が変わるため、複数の評価額を混同すると、登記費用や税額の見込みを誤る原因になります。

執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。

まとめ

登録免許税の課税標準は、条文上の原則は「登記の時における時価」ですが、附則7条の「当分の間」の特例により、実務では原則として固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)が用いられています。なお、どの専門家に相談する話かは、どの評価額を使うかではなく、税目によって分かれます。登録免許税は一般に税理士業務の対象税目には含まれないとされており、その計算・案内は登記手続きの一環として司法書士が行っています。一方、相続税・贈与税・譲渡所得税といった他の税金の具体的な税額計算は、税理士の業務範囲です。ご自身のケースでどの専門家に相談すべきか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい