この記事の要点
- 検索用情報の申出は、法務局が住基ネットで住所・氏名の変更を確認し、登記を職権で(法務局の側で)書き換えてもらうための事前の届け出です。
- 家の新築(所有権保存登記)や購入(所有権移転登記)の際は、登記の申請書に検索用情報を書いて同時に申し出ることになっています。すでに名義人の方も、別途単独で申し出ることができ、その費用はかかりません。
- 2026年10月5日以降に申し出る場合は、氏名・振り仮名・住所・生年月日・メールアドレスに加えて、「国籍等」も申し出る必要があります。
- 申出を済ませた不動産については、法務省は「住所等変更登記の義務違反に問われることがなくなる」と案内しています(海外にお住まいの方は職権による変更の対象外です)。迷ったらお近くの司法書士にご相談ください。
結論から言うと、「検索用情報の申出」は、引っ越しや結婚で住所・氏名が変わったときの登記を、法務局に自動で追いかけてもらうための登録です。家を新築したり購入したりして登記を申請するときは、その申請書に一緒に書き込むのが基本になっています。
2026年4月1日から、不動産の所有者は住所・氏名が変わった日から2年以内に変更登記をすることが義務になりました。義務化そのものの内容(期限・経過措置・自分で申請する場合の書類など)は、住所変更登記の義務化の記事で詳しく解説しています。この記事では、その義務の負担を軽くするための仕組みである「検索用情報の申出」に絞って整理します。
検索用情報の申出とは──「スマート変更登記」の入口
法務省は、所有者が自分で変更登記を申請しなくても、登記官(法務局の職員)が住基ネットの情報を検索し、それにもとづいて職権で登記を行う仕組みを「スマート変更登記」と呼んでいます。
ただ、登記簿には氏名と住所しか載っていないため、そのままでは住基ネットの中から本人を正確に探し出せません。そこで、あらかじめ本人を特定するための情報=検索用情報を法務局に届け出ておく必要があります。これが「検索用情報の申出」です。
申し出た情報は、登記簿(登記記録)そのものではなく、法務局が管理する「検索用情報管理ファイル」という別のファイルに記録されます(不動産登記規則158条の38)。生年月日やメールアドレスが登記簿に記載されるわけではありません。
申し出る情報(検索用情報)
法務省の案内によると、申し出る情報は次のとおりです。
| 項目 | 補足 |
|---|---|
| 氏名 | |
| 氏名の振り仮名 | 日本の国籍を有しない方は、氏名の表音をローマ字で表示したもの |
| 住所 | |
| 生年月日 | |
| メールアドレス | 本人だけが使っているもの。持っていない場合は「なし」と記載できる |
| 国籍等 | 2026年10月5日以降の申出から追加 |
メールアドレスは、あとで法務局が「職権で登記を変更してよいか」を確認する連絡の宛先になります。そのため、家族など本人以外のメールアドレスは書けません。メールアドレスがない場合は、その確認が本人の住所あての書面で行われるとされています。
申出ができるのは「個人の所有者」
検索用情報の申出ができるのは、所有権の登記名義人(またはこれから名義人になる人)のうち、個人(自然人)です。会社などの法人は対象外で、会社法人等番号が登記されている法人については、その番号をもとに法務局の側で本店や名称の変更を確認する別の仕組みが用意されています。
なお法務省は、海外にお住まいの方は、申出をしても職権による住所等変更登記の対象にならないと案内しています。この場合は、住所・氏名が変わったら、変更の日から2年以内にご自身で登記を申請する必要があります。
新築・購入のとき──登記の申請と「同時に」申し出る
2025年(令和7年)4月21日から、次の登記を申請するときは、所有者になる本人の検索用情報を申請書に書いて一緒に申し出ることになっています(不動産登記規則158条の39第1項)。
- 所有権の保存の登記(家を新築したときなど)
- 所有権の移転の登記(不動産を購入したときなど)
- 合体による登記等、所有権の更正の登記(一定の場合に限る)
家を新築したときの所有権保存登記については、新築時の「所有権保存登記」の記事もあわせてご覧ください。司法書士に登記を依頼する場合も、この申出のために、申請書を作る段階で生年月日やメールアドレスなどの確認を求められることになります。
同時申出について、法務省のQ&Aでは次の点も示されています。
- 以前に申出をしたことがあっても、別の不動産を取得して移転の登記を申請するときは、改めて同時申出が必要です。
- 同時申出をしなかった場合でも登記の申請は却下されませんが、申出をするよう登記所から連絡があるとされています。
- 職権による変更登記の対象になるのは、申出をした不動産に限られます。ほかに持っている不動産があれば、別途、次に述べる単独申出をすることで対象に加えられます。
添付する書類
同時申出では、登記に必要な添付書類に加えて、振り仮名・生年月日を証明する書類(2026年10月5日以降の申出では国籍等を証明する書類も)を出すことになっています(不動産登記規則158条の39第2項)。もっとも法務省は、登記申請ではもともと住民票の写しなど住所を証明する書類を出すので、それで兼ねられる場合は追加の書類は生じないと案内しています。
すでに名義人の方は「単独申出」ができる
すでに不動産の名義人になっている個人の方は、登記の申請とは別に、単独で検索用情報の申出ができます(不動産登記規則158条の40第1項)。法務省の案内では、次のような特徴が挙げられています。
- 押印・電子署名は不要
- 専用ソフトなしで、Webブラウザ上の「かんたん登記・供託申請」から手続きできる(書面での提出も可)
- 必要な添付書類は、多くの場合、運転免許証やマイナンバーカード(表面のみ)などの身分証明書の写し(2026年10月5日以降の申出では、後述の国籍等を証明する書類の提出も必要になります)
- 登録免許税などの費用はかからない
登記簿の住所が古いままになっている方は、申出書には現在の住所(住民票上の住所)を書きます。その後、法務局から「登記簿の住所を現在の住所に変更してよいか」を確認するメールが届き、了承すれば法務局の側で順次変更されると案内されています。ただし、登記簿の住所から今の住所までのつながりを住基ネットで確認できない場合(古い時期の住所変更など)は、戸籍の附票の写しなど変更の経緯がわかる書類の提出が必要になることがあります。
住所が変わったあとの流れ──本人の意思確認がある
申出を済ませたあとに引っ越しなどで住所・氏名が変わると、おおむね次の流れになります。
- 法務局が住基ネットの情報から、住所・氏名の変更を確認する
- 法務局から本人に、職権で変更登記をしてよいかを確認する連絡(メール、メールアドレスがない場合は書面)が届く
- 本人が了承すると、登記官が職権で住所・氏名の変更登記をする
ポイントは、個人の場合、本人の申出(了承)がなければ職権での変更登記はされないことです。不動産登記法76条の6は、職権による住所等の変更登記について、登記名義人が個人であるときは「その申出があるときに限る」と定めています。
なお、確認のメールを装ったフィッシングメールについて、法務省は注意を呼びかけています。届いたメールの真偽に不安があるときは、リンクを開く前に管轄の法務局に確認すると安心です。
2026年10月5日から「国籍等」の申出が加わります
ここが、これから新築・購入を予定している方にとっての最新の変更点です。
法務省によると、2026年(令和8年)10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は、「国籍等」の情報も申し出る必要があるとされました。根拠は、不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号・同年3月31日公布)で、2026年10月5日から施行される改正後の不動産登記規則158条の38・158条の39に「国籍等」が加わります。同時申出だけでなく、単独申出でも同じです。
- 国籍等とは:国籍の属する国、または出入国管理及び難民認定法で定める地域(「台湾」「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」)を指します。
- 何のためか:法務省は、所有者に相続が起きたときにどの国の法律が相続に適用されるか(準拠法)を確認する基礎となる情報で、相続登記を適正・円滑に進めるためだと説明しています。法務局あての通達(令和8年9月4日付け法務省民二第872号)では、あわせて、国土の適切な利用・管理の観点から外国人による不動産保有の実態を把握するためとも説明されています。
- 証明する書類:日本国籍の方なら、本籍地が記載された住民票の写しや戸籍の附票の写しなどが例として挙げられています。外国籍の方は、国籍・地域が記載された住民票の写し、旅券、在留カード、特別永住者証明書などです。なお同時申出では、日本に住所がある日本国籍の方が住民票コードを提供し、登記官が住基ネットで日本国籍を確認できた場合は、国籍等を証明する書類は不要とされています(上記通達)。
- 海外にお住まいの方も:改正前は、同時申出の対象は国内に住所がある方に限られていましたが、10月5日以降は、海外にお住まいの方も国籍等を含めた検索用情報の同時申出が必要になります(上記通達)。ただし、職権による住所等変更登記の対象にならない点は変わりません。
新築・購入の登記は、契約から決済・引渡しまで日数があくことも多いので、登記の申請が10月5日以降にずれ込む場合は、国籍等の記載と、原則としてその証明書類が必要になる点に注意が必要です。住民票を取るときに本籍地の記載を入れておくかどうかも含め、登記を依頼する司法書士に確認しておくとスムーズです。
まとめ
検索用情報の申出は、住所・氏名が変わるたびに自分で変更登記を申請する手間を減らすための「事前登録」です。新築や購入で登記を申請するときは申請書に書いて同時に申し出るのが基本で、すでに名義人の方も費用をかけずに単独で申し出ることができます。職権で登記が変更されるのは、法務局からの確認に本人が了承した場合です。
2026年10月5日以降の申出では「国籍等」が加わり、原則として証明書類も必要になります。ご自身の不動産が申出の対象になっているか、どの書類を用意すればよいか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 検索用情報の申出に費用はかかりますか? すでに名義人の方がする単独申出は、法務省の案内で登録免許税などの費用がかからないとされています。新築・購入時の同時申出は、所有権保存登記や移転登記の申請書に書き込む形で行うため、申出のための別の手数料が案内されているわけではありません(登記そのものの登録免許税や、司法書士に依頼する場合の報酬は別です)。
Q. 申出に期限はありますか?しないとどうなりますか? 法務省の案内には、単独申出そのものの期限は示されていません。申出をしていない不動産は職権による変更登記の対象にならないため、住所・氏名が変わったら、変更の日から2年以内にご自身で変更登記を申請する必要があります。同時申出をしなかった場合、登記の申請は却下されませんが、登記所から申出をするよう連絡があるとされています。
Q. 自分で申し出られますか?どこに相談すればいいですか? 単独申出は、Webブラウザ上の「かんたん登記・供託申請」や書面で、ご自身で手続きできます。登記簿の住所が古く変更の経緯を示す書類が必要な場合や、複数の不動産をまとめて整理したい場合、新築・購入の登記とあわせて進めたい場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】「検索用情報の申出」と「職権変更の申出」の二段構造
ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
法律と省令の役割分担
条文の構造を見ると、スマート変更登記は法律と省令(不動産登記規則)の二層で組み立てられています。
- 不動産登記法76条の5:所有権の登記名義人は、氏名・名称・住所に変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならない(申請義務)。
- 不動産登記法76条の6:登記官は、変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合に、職権で変更の登記をすることができる。ただし、名義人が自然人のときは「その申出があるときに限る」。
法律の条文には「検索用情報」という言葉は出てきません。検索用情報管理ファイル(規則158条の38)、同時申出(規則158条の39)、単独申出(規則158条の40)は、いずれも76条の6本文の「法務省令で定める場合」を実際に確認できるようにするための省令上の仕組みです。
申出は二つある──事前の「登録」と、変更時の「了承」
個人の場合、手続上は性質の異なる二つの申出が登場します。
- 検索用情報の申出(規則158条の39・158条の40):住基ネットで本人を探し出すための情報を、あらかじめ検索用情報管理ファイルに記録してもらう申出。
- 76条の6ただし書の申出(規則158条の45):実際に住所・氏名の変更が確認されたときに、職権による変更登記を求める申出。
規則158条の45は、登記官が住基ネット(機構保存本人確認情報)で変更を確認したときに、その旨とただし書の申出ができる旨を名義人に通知でき(1項)、通知は原則として電子メール、送れない場合は書面によるとし(2項)、通知を受けた名義人は通知の発送の日から1か月以内にただし書の申出ができると定めています(3項)。本文で触れた「法務局からの確認に了承する」手続は、条文上はこの76条の6ただし書の申出にあたります。つまり、検索用情報を登録しただけでは、まだ職権変更の要件(本人の申出)はそろっていないという構造です。
また、規則158条の46第1項は、すでに住所・氏名が変わっている名義人が、検索用情報の単独申出と同時にただし書の申出をすることができると定めています。登記簿の住所が古いまま単独申出をする場面は、この規定の対象になり得ます。
同時申出の対象となる登記の読み方
規則158条の39第1項は、同時申出の対象を次のように限定しています(括弧内は条文の限定部分)。
- 所有権の保存または移転の登記
- 合体による登記等(不動産登記法49条1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る)
- 所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る)
さらに、申出の対象は「所有権の登記名義人となる者(これらの登記の申請人である場合に限る)」とされています。条文の文言上、申出の対象者は「新たに名義人となる者で、かつ申請人である者」という二重の絞り込みがかかっていることになります。どのような登記の類型がこれに当たるかは申請の形によって整理が必要になるため、個別の事案では条文の文言に照らして確認することになります。
国籍等の証明と「確認できる事項」によるただし書
2026年10月5日施行の改正後、規則158条の39第2項は、同時申出の際に振り仮名・生年月日・国籍等を証する公務員作成の情報の提供を求めています。ただし、国籍等を証する情報については、「当該申出に係る国籍等が当該所有権の登記名義人となる者の国籍等であることを登記官が確認することができる事項」を申請情報の内容としたときは、提供を要しないとするただし書が置かれています。
電子申請の場合、規則158条の39第3項は、電子証明書(振り仮名・生年月日を登記官が確認できるもの)の提供をもって、振り仮名と生年月日を証する情報の提供に代えることができるとしています。代替の対象は振り仮名と生年月日に限られ、国籍等は含まれていません。単独申出についても、規則158条の40第13項が電子証明書による代替を定めつつ、「国籍等を証する情報を除く」としています。
また、改正後の規則158条の40第18項は、単独申出による記録の場合のほか、登記官が所有権の登記名義人の国籍等を確認したときは、その国籍等を検索用情報管理ファイルに記録するものとしています。
法人の場合──検索用情報の申出を経ない仕組み
検索用情報管理ファイルは「所有権の登記名義人(自然人である者に限る。)」についてのファイルとされています(規則158条の38第1項)。法人については、規則158条の44第1項2号が、「会社法人等番号が登記された所有権の登記名義人の法人の登記簿に記録された情報の提供を受けて」名称または住所の変更を確認した場合を、76条の6本文の「法務省令で定める場合」としています。
76条の6ただし書(本人の申出)は名義人が自然人の場合に限られているため、法人については、条文上、本人の申出を要件とせずに職権で変更登記をすることができる構造です。規則158条の44第1項2号の文言上、この確認は所有権の登記名義人として会社法人等番号が登記されていることが前提とされています。
国内に住所を有する者に限る旨の定め
規則158条の44第3項は、所有権の登記名義人について「検索用情報管理ファイルに記録されている者であって、国内に住所を有するものに限る。以下この款において同じ。」との定義を置いています。住基ネットの情報によって変更を確認する仕組みである以上、本文で触れた「海外にお住まいの方は職権による住所等変更登記の対象にならない」という法務省の案内は、この規定の構造と整合するものといえます。
検索用情報は登記記録には載らない
規則158条の38は、法務大臣が検索用情報管理ファイルを備え(1項)、所有権の登記名義人ごとに電磁的記録に記録して調製する(2項)と定めています。申し出た生年月日・メールアドレス・国籍等は、登記記録(登記事項証明書に出てくる情報)とは別のこのファイルに記録される情報です。国籍等について、令和8年9月4日付け法務省民二第872号通達は、内部情報として保有するもので不動産登記法に基づく公開の対象ではないとしたうえで、趣旨として相続の準拠法(法の適用に関する通則法36条)の確認のほか、外国人による不動産保有の実態把握を挙げ、不動産ベース・レジストリへの提供を通じて行政機関間の情報連携に活用される見込みであるとしています。通達の説明による限り、国籍等は登記簿で公示するための情報ではなく、登記所が内部で保有する情報という位置づけです。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法 第76条の5、第76条の6(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第158条の38〜第158条の46(e-Gov法令検索・2026年10月5日施行版を含む): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 法の適用に関する通則法 第36条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078
- 不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号・令和8年3月31日公布)(法務省): https://www.moj.go.jp/content/001469951.pdf
- 「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和8年9月4日付け法務省民二第872号通達)(法務省): https://www.moj.go.jp/content/001470076.pdf
- 法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00678.html
- 法務省「検索用情報の申出に関するQ&A」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00700.html