この記事の要点
- 2026年は、2月に所有不動産記録証明制度、4月に住所・氏名の変更登記の義務化が始まるなど、登記・相続まわりの制度が相次いで変わった年です
- 10月にも2つの変更があります。10月1日から「登記受付帳」の記録事項が簡素化され、10月5日からは不動産の所有者として登記される個人が申し出る「検索用情報」に「国籍等」が加わります
- 住所変更登記の義務は2026年4月1日より前の変更も対象で、その期限は2028年3月31日。2024年4月1日より前の相続についての相続登記の期限は、原則として2027年3月31日です
- まず下の一覧表で自分に関係しそうな行を探し、リンク先の記事で詳しい内容を確認してください
2026年に登記・相続まわりで変わった制度、これから変わる制度を、施行日(ルールが効力をもち始める日)の順に一覧にしました。この記事は「どの改正が・いつから・誰に関係するか」を見渡すための道案内です。それぞれの制度の詳しい中身は、各行のリンク先の記事で解説しています。
※この記事は2026年09月時点の情報に基づいています。
施行日順の一覧表
| 施行日・時期 | 何が変わる | 主に関係する人 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月2日 | 所有不動産記録証明制度が始まる(特定の人が名義人になっている不動産を一覧にした証明書を取れる) | 相続人、不動産を持つ人 | 所有不動産記録証明制度 |
| 2026年2月2日 | 土日・祝日や年末年始でも「会社成立の日」として登記できる | これから会社を設立する人 | 休日を会社成立の日にできる制度 |
| 2026年4月1日 | 不動産の所有者の住所・氏名(名称)の変更登記が義務になる | 不動産を持つ個人・法人 | 住所変更登記の義務化/法人の場合 |
| 2026年4月1日 | 名義人が亡くなったことを示す符号を、法務局が登記簿に表示できる仕組みができる | 相続人、不動産の取引をする人 | 登記名義人の死亡の符号 |
| 2026年4月1日 | 区分所有法(マンションのルールを定める法律)の改正が施行される | マンションの所有者 | 区分所有法の改正 |
| 2026年4月1日 | 新しい公益信託制度が始まる | 財産を社会貢献に役立てたい人 | 公益信託 |
| 2026年4月1日 | 離婚後の財産分与を家庭裁判所に求められる期間が、離婚の時から2年→5年に延びる(2026年4月1日より前の離婚は2年のまま) | 離婚する人 | 財産分与による名義変更 |
| 2026年5月25日 | 戸籍の氏名の振り仮名(フリガナ)の届出期間が終わる | 戸籍のある人すべて | 戸籍のフリガナ |
| 2026年10月1日 | 登記受付帳の記録事項が簡素化される(「登記の目的」「不動産の所在」が載らなくなる) | 登記を申請する人 | 登記受付帳の改正 |
| 2026年10月5日 | 所有者として登記される個人が申し出る「検索用情報」に「国籍等」が加わる | 不動産を新築・購入する人など | 検索用情報の申出 |
| 施行日未定 | 成年後見制度と遺言制度を見直す法律が2026年6月に成立・公布(後見・保佐を「補助」に一元化、遺言の押印の任意化、法務局が保管する「保管証書遺言」の創設など) | 後見制度を利用する人、遺言を書く人 | 生前対策の全体マップ/エンディングノートと遺言の違い |
| 施行日未定 | 会社法の見直し(場所を設けない株主総会など)が法制審議会で議論中 | 会社の経営者 | 次期会社法改正の焦点 |
ここからは、時期ごとにひとことずつ補足します。
2月:不動産の「一覧」が取れるように
所有不動産記録証明制度(2026年2月2日〜) 亡くなった親など、特定の人が名義人になっている不動産を、全国の法務局を横断して探し、一覧にした証明書を取れるようになりました。相続登記の義務化で「どの不動産を登記すればよいか」を把握する出発点になります。詳しくは所有不動産記録証明制度の記事をご覧ください。
休日を「会社成立の日」にできる制度(2026年2月2日〜) これまで法務局の休日と重なる日は会社の設立日にできませんでしたが、一定の条件のもとで、土日・祝日や年末年始も設立日として登記できるようになりました。対象は新しく会社をつくる設立の登記です。
4月:大きな改正が集中
住所・氏名の変更登記の義務化(2026年4月1日〜) 不動産の所有者は、引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わったら、変わった日から2年以内に変更の登記をすることが義務になりました。2026年4月1日より前の変更でまだ登記していないものも対象で、その期限は2028年3月31日です。会社などの法人が名義人の場合も、本店や商号が変わったときは同じく対象になります(法人の住所・名称変更登記の記事)。
登記名義人の死亡の符号(2026年4月1日施行) 名義人が亡くなったことを法務局が確認した場合に、登記簿の氏名の横に「◇」の符号を表示できる仕組みができました。符号が付いても、相続登記の義務はなくなりません。なお、法務局が実際に符号を付け始める日は、法務省の案内ページ(スマート変更登記のご利用方法)で「改めて案内する」とされており、2026年9月30日の確認時点ではまだ示されていません。
区分所有法の改正(2026年4月1日〜) マンションの管理や建替えなどのルールを定める区分所有法が改正され、集会での決め方などが見直されました。どこがどう変わったかは区分所有法の改正の記事で紹介しています。
新しい公益信託制度(2026年4月1日〜) 財産を奨学金や助成など社会のために役立てる「公益信託」の法律が全面的に改正され、新しい制度のもとで運用が始まりました。
財産分与を家庭裁判所に求められる期間の延長(2026年4月1日〜) 離婚後の財産分与について話合いがまとまらないときに、家庭裁判所に分与を決めてもらうよう請求できる期間が、離婚の時から2年から5年に延びました(民法768条2項)。2026年4月1日より前に離婚した場合は、従来どおり2年です。財産分与で自宅の名義を変える登記の流れは、財産分与による名義変更の記事で解説しています。
5月:戸籍のフリガナの届出期間が終了
戸籍の振り仮名の届出期間の終了(2026年5月25日) 戸籍に氏名の振り仮名が載るようになり、市区町村から届いた通知の内容に誤りがあれば届け出る期間が設けられていましたが、その期間は2026年5月25日で終わりました。今後は原則として通知どおりの振り仮名で記載されます。通知どおりで確定した後に間違いに気づいた場合の対応は、戸籍のフリガナの記事で整理しています。
10月:登記の手続まわりで2つの変更
登記受付帳の簡素化(2026年10月1日〜) 法務局が登記の申請を受け付けた記録(登記受付帳)から、「登記の目的」と「不動産の所在」が記録されなくなります。東京法務局のお知らせでは、2026年10月1日以降に登記の申請がされた物件について、受付帳を開示請求しても「登記の目的」「不動産所在事項」は表記されず、9月30日までの受付帳は従前の様式のままとされています。登記のあとに届く営業のダイレクトメールとの関係は、登記受付帳の改正の記事で解説しています。
「国籍等」の申出(2026年10月5日〜) 不動産を新築・購入するなどして所有者として登記される個人は、その登記の申請人になる場合、登記の申請と同時に「検索用情報」(住所変更を法務局が把握するための情報)を申し出ることになっています。2026年10月5日からは、この申出の内容に「国籍等」(国籍の属する国または地域)が加わります。すでに名義人になっている人が単独で申出をする場合も同じです。法務省の通達では、申し出た国籍等は法務局の内部情報として持つもので、登記簿のように公開されるものではないとされています。詳しくは検索用情報の申出の記事をご覧ください。
まだ施行日が決まっていないもの
成年後見制度と遺言制度の見直し(2026年6月24日公布・施行日未定) 2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。後見・保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化することや、遺言の押印の任意化、パソコン等で作成した遺言を法務局が保管する「保管証書遺言」の創設などが盛り込まれています。施行日は、成年後見制度の見直しが公布の日から2年6か月以内、押印の任意化などが1年以内、保管証書遺言の創設などが3年以内の、それぞれ政令で定める日とされており、2026年9月30日の確認時点では具体的な日付はまだ示されていません。施行されるまでは、遺言の作成も後見制度の利用も現行のルールによります。内容は生前対策の全体マップやエンディングノートと遺言の違いの記事で紹介しています。
会社法の見直し(施行日未定) 場所を設けずオンラインだけで開く株主総会の解禁などが、法制審議会で議論されています。法律の改正はまだ成立しておらず、施行日も決まっていません。議論の状況は次期会社法改正の記事で紹介しています。
2026年の先に控える期限
2026年に始まった制度とあわせて、次の期限も押さえておくと安心です。
| 期限 | 内容 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日 | 2024年4月1日より前に始まった相続で、まだ相続登記をしていない不動産の申請期限(原則) | 相続登記義務化の経過措置の期限 |
| 2028年3月31日 | 2026年4月1日より前の住所・氏名の変更で、まだ変更登記をしていないものの期限 | 住所変更登記の義務化 |
まとめ
2026年は、2月の所有不動産記録証明制度、4月の住所・氏名の変更登記の義務化、10月の登記受付帳の簡素化と「国籍等」の申出と、登記・相続まわりの制度が相次いで変わった年でした。すべてを覚える必要はありません。一覧表で自分に関係しそうな行を見つけて、リンク先の記事で中身を確認するのが近道です。自分の場合に何をすればよいか判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 改正に対応するのに費用はかかりますか? 制度ごとに異なります。たとえば住所・氏名の変更登記には、不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります。検索用情報の申出には、登録免許税などの費用はかからないと法務省は案内しています。所有不動産記録証明書は、書面で請求する場合(請求書を法務局の窓口に提出または郵送する方法)、検索条件1件・1通につき1,600円で、オンラインで請求する場合は郵送で受け取ると1,500円、窓口で受け取ると1,470円です。専門家に依頼する場合は、別途その報酬がかかります。
Q. 期限はありますか?放置するとどうなりますか? 住所・氏名の変更登記は、変更の日から2年以内(2026年4月1日より前の変更は2028年3月31日まで)で、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります。相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内(2024年4月1日より前の相続は原則2027年3月31日まで)で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
Q. 自分で対応できますか?どこに相談すればいいですか? 検索用情報の単独申出のように、Webブラウザから本人が手続きできるものもあります。一方で、相続がからむ場合や、登記簿の住所から今の住所までのつながりが複雑な場合は、必要な書類の判断が難しくなりがちです。どの改正が自分に関係するのか、何から手をつければよいのか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】相続登記の申請で重なる2026年の改正──検索用情報・登記上の住所・国籍等
ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
一覧表では改正を一つずつ並べましたが、登記の申請では、複数の改正が一つの申請の中で重なって現れます。ここでは相続による所有権の移転の登記(相続登記)を例に、4月の住所等変更登記の義務化とそのための検索用情報の申出、2月の所有不動産記録証明制度、10月5日からの国籍等の申出がどう組み合わさるかを、条文と法務省の通達・案内の文言に沿って整理します。
相続登記は検索用情報の「同時申出」の場面でもある
不動産登記規則158条の39第1項は、所有権の保存または移転の登記等を申請する場合に、所有権の登記名義人となる者(これらの登記の申請人である場合に限る)について、検索用情報を申請情報の内容として申し出るものとしています。相続登記は所有権の移転の登記ですから、相続人が申請人として名義人になる場合は、この同時申出の場面にあたります(10月4日までは、名義人となる者が国内に住所を有するときに限られます。後述)。法務省民事局が作成し法務局のホームページに掲載している登記手続ハンドブック「登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)」(令和8年4月)も、申請人である相続人について、氏名のふりがな・生年月日・メールアドレスを申請書に記載するよう案内しています。
申請人にならない相続人は「職権による住所等変更」の仕組みの外に残る
上記ハンドブックは、法定相続分による相続登記について、複数の相続人のうちの一人が申請人となって申請することもできると案内しています。この場合、申請人とならなかった相続人も所有権の登記名義人になりますが、令和7年3月3日付け法務省民二第373号通達(第2部第2の1(4))は、申請人でない者が名義人となる登記の申請では、その者の検索用情報を同時申出することはできず、その者は登記の完了後に単独申出をすることができるとしています。
一方、不動産登記法76条の2第3項により、他の者の申請によって同条1項の登記がされた場合には、同項の申請義務の規定は適用されません。つまりこの形の登記では、申請しなかった相続人は相続登記の申請義務の対象からは外れる一方で、検索用情報が登録されていない名義人として残ることになります。職権による住所等変更登記(同法76条の6)は、あらかじめ申し出られた検索用情報を用いて住基ネットで住所・氏名の変更を把握する仕組みとされている(上記373号通達第1部)ため、その相続人が単独申出をしないままでいる限り、住所が変わっても職権による変更登記の前提となる情報がなく、変更の日から2年以内の変更登記の申請義務(同法76条の5)は、自らの申請で果たすことになります。相続登記が完了しても、住所等変更の仕組みへの「登録」まで済んだとは限らない点が、二つの改正の継ぎ目です。
なお、法定相続分による登記の後に遺産分割があり、法定相続分を超えて所有権を取得した者には、遺産分割の日から3年以内の申請義務があります(同法76条の2第2項)。また、相続人申告登記(同法76条の3)について同条3項が定めるのは、申出をした相続人の氏名・住所等を所有権の登記に付記することで、所有権の移転の登記ではなく、規則158条の39第1項が同時申出の場面として挙げる登記(所有権の保存・移転の登記など)のいずれにも当たりません。
被相続人の登記上の住所が最後の住所と違うとき
登記記録上の被相続人の住所が、亡くなったときの住所や本籍と一致しない場合があります。上記ハンドブックは、「被相続人の登記上の住所」が戸籍の証明書に記載された本籍と異なる場合に、戸籍上の被相続人と登記上の所有者とが同一人であることを証するため、登記上の住所が記載された住民票の写し・住民票の除票の写し・戸籍の附票の写しのいずれかを添付するよう案内しています。相続登記の場面では、登記記録と戸籍とのつながりを添付情報で示すという整理です。
この食い違いは、相続登記の前段階にあたる不動産の洗い出しにも影響します。所有不動産記録証明書は、請求の際に提供された所有権の登記名義人の氏名・住所ごとに作成されます(不動産登記規則195条1項5号、199条4項)。法務省の案内では、登記記録上の氏名・住所と検索条件の氏名・住所が異なる場合などには検索結果として抽出されないことがあり、また、氏名・住所で検索する仕様上、抽出される不動産の網羅性には限界があるとされています。過去の氏名・住所を検索条件にすることもでき、その場合は、それが被相続人の氏名・住所であったことを証する公務員作成の情報(戸籍や住民票の写しなど)を提供します(同規則195条4項5号)。住所変更の登記がされないまま転居が重なった名義人ほど、どの住所を検索条件に立てるかが洗い出しの精度に関わることになります。
10月5日以降の申請では「国籍等」も加わる
法務省の案内では、2026年10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は、国籍等の情報についても申し出る必要があるとされています(不動産登記規則の一部を改正する省令〈令和8年法務省令第23号〉、附則により同日施行)。相続登記に伴う同時申出も対象です。令和8年9月4日付け法務省民二第872号通達は、申請に関わる取扱いとして次の点を示しています。
- 施行後は、所有権の登記名義人となる申請人が国外に住所を有する場合も、国籍等を含めた検索用情報を申し出る必要がある(第2の2(1)ア)。改正前の規則158条の39第1項は、同時申出を名義人となる者が国内に住所を有するときに限っていたため、海外に住む相続人が申請人となる相続登記では、10月5日を境に申請情報の内容が変わります。上記ハンドブック(令和8年4月付け)の「申請人でない相続人や住所が海外の方については記載不要」という記載は、施行前の規則158条の39第1項の内容に対応するもので、このうち海外に住む申請人についての部分は、上記の通達に照らし10月5日以降の申請には当てはまらなくなります(申請人でない相続人について同時申出をしない点は、施行後も変わりません)
- 日本に住所があり日本国籍を有する者が住民票コードを提供し、登記官が住基ネット情報で日本国籍を有することを把握できた場合は、国籍等を証する情報の提供は要しない(第2の2(1)エ)
- 国籍等を証する情報として旅券の写しなどを提供するときは、原本に相違ない旨の証明で足り、原本還付の手続は要しない。ただし、有効期限を過ぎた旅券は使えない(第2の2(1)オ)
- 国籍等が提供されなかった場合(提供しない意思を明らかにしている場合を含む)は補正が求められ、定められた期間内に補正がなければ、添付情報から判明する国籍等が記録される(第2の2(1)ク)
- 申請用総合ソフト等は施行日にあわせて国籍等を入力できるよう改修される予定である一方、国籍等を記録する検索用情報管理ファイル側のシステム改修は施行日以降に完了する見込みで、それまでの間に申し出られた国籍等の取扱いは別途連絡するとされている(第4)
一件の相続登記に重なるもの
一件の相続登記の中に、相続登記の申請義務(不動産登記法76条の2)、住所等変更の申請義務と職権による変更の仕組み(同法76条の5・76条の6と検索用情報)、不動産の洗い出し(同法119条の2の所有不動産記録証明)、そして国籍等の申出が重なります。誰が申請人になるか、登記上の住所がどこまでさかのぼるか、申請が10月5日の前か後かによって、準備する書類や申請情報の内容が変わります。具体的な進め方は、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】会社名義の不動産から見た2026年の改正──会社法人等番号がつなぐ商業登記と不動産登記
ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
一覧表の改正のうち、検索用情報・国籍等の申出や死亡の符号は、個人(自然人)の名義人を念頭に置いた仕組みです。会社などの法人が所有権の登記名義人である不動産では、同じ年の改正でも別の仕組みが用意されており、その要になっているのが会社法人等番号(商業登記法7条)です。ここでは、①個人向けの仕組みが会社の場合にどう置き換わるか、②所有不動産記録証明を会社が自社名義の不動産の確認に使う場面、の2点を条文と法務省の通達・案内に沿って整理します。
個人向けの仕組みは、会社では「会社法人等番号」に置き換わる
所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(法人識別事項)が所有権の登記の登記事項とされています(不動産登記法73条の2第1項1号)。法人識別事項の中身は、不動産登記規則156条の2が次のように区分しています。
- 会社法人等番号を有する法人:その会社法人等番号(1号)
- 会社法人等番号を有しない法人で、外国の法令に準拠して設立されたもの:その外国の名称(2号)
- いずれにも当たらない法人:その法人の設立の根拠法の名称(3号)
これを前提に、一覧表の改正を個人と会社で比べると次のようになります。
| 仕組み | 個人(自然人) | 会社(会社法人等番号を有する法人) |
|---|---|---|
| 住所・氏名(名称)の変更を法務局が把握する手がかり | 検索用情報(検索用情報管理ファイルは「自然人である者に限る」=不動産登記規則158条の38第1項) | 登記された会社法人等番号をもとに、法人の登記簿に記録された情報の提供を受ける(同規則158条の44第1項2号) |
| 職権による変更登記の前提 | 本人の申出があるときに限る(不動産登記法76条の6ただし書) | 申出の要件は置かれていない(同条本文) |
| 10月5日からの国籍等の申出 | 検索用情報に国籍等が加わる | 検索用情報の対象外のため、関係しない |
| 死亡の符号(同法76条の4) | 対象(同規則158条の42第1項は「自然人とする」) | 対象外 |
国籍等を加えた不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号、同年10月5日施行)は、規則158条の38・158条の39・158条の40などに国籍等を加える改正で、158条の38第1項の「自然人である者に限る」という限定はそのまま残されています。会社が不動産を買う・建てるといった所有権の登記を申請する場面では、10月5日の前後で国籍等の申出が加わることはなく、名義人である会社の特定は引き続き法人識別事項によって行われます。
会社について押さえておきたいのは、職権による名称・住所の変更の経路が、会社法人等番号が不動産の登記に記録されていることと、法人の登記簿(商業登記簿)の記録の両方を前提にしている点です(規則158条の44第1項2号の文言)。本店移転・商号変更の商業登記がされていなければ職権変更の出発点がなく、また会社法人等番号を有しない法人(規則156条の2第2号・第3号の法人)はこの経路の対象外です。個人の名義人では「検索用情報を申し出ておくこと」が職権による変更登記の前提の一つになるのに対し、会社の場合は「商業登記を正しく済ませ、不動産の登記に会社法人等番号を記録しておくこと」がこれに相当する前提になる、と整理できます(会社では、個人のような変更時の本人の申出は要件とされていません)。番号が記録されていない不動産の扱いは、法人の住所・名称変更登記の記事で解説しています。
所有不動産記録証明で自社名義の不動産を確かめる
2月2日に始まった所有不動産記録証明制度は、相続の場面で紹介されることが多い制度ですが、不動産登記法119条の2第1項は「何人も」自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について交付を請求できると定めており、法務省の案内でも請求できる者として「所有権の登記名義人(法人を含みます。)」が挙げられています。会社が自社名義の不動産を一覧で確かめる手段としても使えます。
会社が請求する場合の要点は次のとおりです。
- 検索条件に会社法人等番号を加えられる:検索条件の基本は所有権の登記名義人の名称と住所ですが(不動産登記規則195条1項5号)、会社法人等番号を有する法人は、会社法人等番号も検索のための情報として提供できます(同条2項2号)。令和8年2月2日付け法務省民二第81号通達(第2の2)は、これを検索の網羅性を向上させる観点から設けられたものと説明しています
- 検索の仕様:法務省の案内では、名称の前方一致かつ住所の市区町村までの一致、または名称の前方一致かつ住所の末尾5文字の一致で抽出し、会社法人等番号が検索条件に加えられた場合は、会社法人等番号が完全に一致する法人の不動産も抽出するとされています。あわせて、氏名・住所等で検索する仕様上、網羅性には限界があるとも案内されています
- 代表者の資格の証明:請求人が法人である場合、会社法人等番号を提供すれば、代表者の資格を証する情報の提供に代えることができます(同規則195条6項)
ここで一覧表の他の改正と重なるのが、本店移転・商号変更の後に不動産の名義を変えていない会社です。2026年4月1日より前の本店・商号の変更で不動産の変更登記が済んでいないものは、2028年3月31日までに変更登記をすることになります。その間、不動産の登記記録上の名義は旧商号・旧本店のままです。上記の検索仕様に照らすと、商号を変更していれば名称の前方一致から外れる場合があり、市区町村をまたいで本店を移転していれば住所の一致からも外れる場合があります。さらに、2024年4月1日より前から所有している不動産は会社法人等番号が記録されていないことがあり、番号の一致による抽出にも頼れない可能性があります。法人識別事項の登記に関する規定は2024年4月1日から施行されたもので(令和6年法務省令第7号附則1条)、それより前から法人が名義人となっている不動産については、登記官が職権で法人識別事項の登記をすることができるとされ(令和3年法律第24号附則5条5項)、その手続として名義人の申出によって登記する経過措置が置かれています(同省令附則2条)。
このような場合は、旧商号・旧本店を検索条件に立てることが考えられます。その際は、検索条件とした名称・住所が請求人である会社の名称・住所であったこと(変更前の名称・住所を含む)を証する公務員作成の情報を提供することとされています(同規則195条4項5号)。請求情報は所有権の登記名義人ごとに作成するものとされ(同条3項)、法務省の案内では一つの検索条件欄に複数の名称・住所をまとめて記載することはできないとされているため、本店移転・商号変更を重ねた会社ほど、どの名称・住所の組み合わせを検索条件にするかを、商業登記の履歴と照らして先に整理しておくのが確実です。なお法務省は、対象物件が大量となる大規模な法人等の請求については、あらかじめ登記所に問い合わせるよう案内しています。
所有不動産記録証明で見つかった不動産の名義が旧商号・旧本店のままであれば、それが住所・名称の変更登記や法人識別事項の申出を検討する対象の洗い出しにもなります。会社の場合、2026年の改正の多くは会社法人等番号を介して商業登記の記録とつながっているため、まず商業登記の履歴と、不動産の登記に番号が記録されているかどうかを確かめることが出発点になります。自社の状況に当てはめた進め方は、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)(e-Gov法令検索)── 73条の2第1項1号、76条の2〜76条の6、119条の2、164条。同法データ内の民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条5項〜7項。法令APIの版別で119条の2が2026年2月2日、76条の4〜76条の6が2026年4月1日の版から置かれていることを確認: https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)(e-Gov法令検索)── 156条の2、158条の38〜158条の40(現行版と、令和8年法務省令第23号による2026年10月5日施行版)、158条の42〜158条の44、195条、199条。同規則データ内の令和6年法務省令第7号附則1条・2条、令和7年法務省令第49号附則(2026年10月1日施行)、令和8年法務省令第23号附則(2026年10月5日施行): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索)── 768条(2026年3月31日時点の版と4月1日時点の版)、令和6年法律第33号附則1条・4条、令和8年法律第45号による改正の施行期日が「政令で定める日」のままであること: https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)(e-Gov法令検索)── 令和7年法律第47号による改正の施行日(2026年4月1日): https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
- 公益信託に関する法律(令和6年法律第30号)(e-Gov法令検索)── 附則1条・2条、施行日(2026年4月1日): https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000030
- 戸籍法(昭和22年法律第224号)(e-Gov法令検索)── 同法データ内の令和5年法律第48号附則6条〜10条・12条(振り仮名の届出期間と市町村長による記載): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 商業登記法(昭和38年法律第125号)7条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 登録免許税法(昭和42年法律第35号)別表第一 一(十四)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」(令和8年9月7日): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00678.html
- 法務省「スマート変更登記のご利用方法」(令和8年4月30日): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00688.html
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
- 法務省「休日を会社等の設立の日とすることが可能になりました」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00234.html
- 法務省「戸籍にフリガナが記載されます」(届出期間終了の案内): https://www.moj.go.jp/MINJI/furigana/index.html
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(令和8年法律第45号・第46号の成立・公布と施行期日の区分): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省「法制審議会-会社法制(株式・株主総会等関係)部会」(会議の開催状況): https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00014.html
- 法務省民事局長通達「不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和7年3月3日付け法務省民二第373号): https://www.moj.go.jp/content/001434189.pdf
- 法務省民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有不動産記録証明書の交付等関係)」(令和8年2月2日付け法務省民二第81号): https://www.moj.go.jp/content/001455600.pdf
- 法務省民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(符号の表示関係及び職権による住所等変更登記関係)」(令和8年3月27日付け法務省民二第525号): https://www.moj.go.jp/content/001460087.pdf
- 法務省民事局長通達「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和8年9月4日付け法務省民二第872号): https://www.moj.go.jp/content/001470076.pdf
- 法務省民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」(令和8年1月21日付け法務省民商第9号): https://www.moj.go.jp/content/001455057.pdf
- 法務局 登記手続ハンドブック「登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)」(法務省民事局・令和8年4月): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437204.pdf
- 東京法務局「不動産登記受付帳の様式の変更について(お知らせ)」(令和8年9月): https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001469717.pdf