この記事の要点
- 戸籍の氏名の振り仮名の届出期間は、令和8年(2026年)5月25日ですでに終了している
- 届出をしなかった場合は、本籍地の市区町村長が、通知した振り仮名のとおりに戸籍へ記載する
- 市区町村長によって記載された振り仮名は、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更の届出ができる
- 記載された振り仮名が自分の認識と違うと気づいたら、まず本籍地の市区町村の戸籍窓口に相談する
「戸籍にフリガナが記載されるらしい」という案内を見た記憶はあるけれど、結局どうなったのか分からないままになっている方もいるかもしれません。結論から言うと、この届出の受付期間は令和8年(2026年)5月25日をもってすでに終了しています。「これから届け出よう」というタイミングは過ぎており、今戸籍に載っている(あるいはこれから載る)振り仮名は、原則として本籍地の市区町村から通知された内容がそのまま確定する仕組みになっています。
この記事では、なぜ戸籍に振り仮名が載ることになったのか、期限後はどう扱われるのか、そして記載された振り仮名が自分の認識と違っていた場合にまず何をすればよいのかを、令和8年7月時点で確認できている範囲で整理します。
そもそも、なぜ戸籍に振り仮名が載ることになったのか
これまで戸籍には氏名の「読み方(振り仮名)」を記載する欄がありませんでした。同じ漢字でも読み方は複数あり得るため、行政手続のデジタル化やマイナンバー制度との連携を進める中で、氏名の読み方を公的に一つに定めておく必要が出てきたことが、今回の戸籍法改正の背景です。
具体的には、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号。令和5年6月9日公布。以下「改正法」といいます)による戸籍法の改正が令和7年(2025年)5月26日に施行され、氏名の振り仮名が新たに戸籍の記載事項に加わりました。届出期間は、改正法の附則第6条から第8条までが「第三号施行日から起算して一年以内に限り」と定めており(「第三号施行日」とは、この戸籍法改正部分の施行日である令和7年5月26日のことです)、令和7年5月26日から令和8年5月25日までの1年間でした。この間に、本籍地の市区町村から届いた通知書に記載された振り仮名が正しければ特に届出は不要、誤りがあれば市区町村へ届け出る、という運用でした。
期限後はどうなるのか──通知どおりに記載される
令和8年5月25日までに届出をしなかった場合、その後は本籍地の市区町村長が、あらかじめ通知していた振り仮名のとおりに戸籍へ記載する扱いになります。つまり、「何もしなかったから振り仮名が空欄のまま」ということにはならず、通知内容で確定していく流れです。
これは市区町村の運用の話ではなく、改正法の附則に書かれた仕組みです。附則第9条第1項・第2項は、本籍地の市区町村長が、施行日から起算して1年を経過した日に、管轄の法務局または地方法務局の長の許可を得て、氏の振り仮名・名の振り仮名を戸籍に記載するものとする、と定めています。事前に振り仮名を通知することも、同条第4項に根拠があります。
この記載の順序や具体的な時期については、市区町村ごとの事務処理の進み方にもよるため、詳しくは本籍地の市区町村の戸籍担当窓口、または法務省の案内ページで確認するのが確実です。
記載された振り仮名が違っていたら、まずどこへ
通知どおりに記載された振り仮名が、自分が普段使っている読み方と違っていた──ということも起こり得ます。このような場合にまずやるべきことは、本籍地の市区町村の戸籍窓口に相談することです。窓口では、現在の戸籍の記載内容の確認方法や、訂正のために必要な届出・申立ての案内を受けられます。
一般的に、戸籍の記載に誤りがあった場合の訂正は、利害関係人が家庭裁判所の許可を得たうえで戸籍の訂正を申請する仕組みが戸籍法に定められています(戸籍法第113条)。振り仮名についても、届出によっていったん戸籍に記載された後にさらに変更しようとする場合は、氏の振り仮名なら「やむを得ない事由」があるときに戸籍の筆頭者とその配偶者が、名の振り仮名なら「正当な事由」があるときに本人が、家庭裁判所の許可を得て変更を届け出る仕組みが法律上定められています(戸籍法第107条の3・第107条の4)。条文上、単に読み方の好みが変わったというだけでは足りない書きぶりになっている点には注意が必要です。
一方で、今回のように届出をしないまま、市区町村長によって通知どおりの振り仮名が記載された場合については、改正法の附則に特則が置かれています。
氏の振り仮名については、改正法の附則第10条第1項が、市区町村長によって戸籍に氏の振り仮名が記載されたときは、その戸籍の筆頭者は氏の振り仮名を変更する旨の届出をすることができる、と定めています。そのうえで同条第5項が「新戸籍法第百七条の三の規定は、前各項の届出には、適用しない」としており、この届出には家庭裁判所の許可が必要ない、ということが条文上はっきり書かれています。名の振り仮名についても同じ作りで、附則第12条第1項が変更の届出ができることを定め、同条第5項が戸籍法第107条の4を適用しないとしています。
この特則が使えるのは一度だけです。附則第10条第1項・第12条第1項は、いずれも対象となる人から「既にこの項又は次項の規定による届出をした者」を除いており、この届出によって一度変更した後にさらに変更しようとするときは、原則どおり戸籍法第107条の3・第107条の4の家庭裁判所の許可が必要になります。届出期間内に自分から届け出て記載を確定させた場合も、この特則の対象にはなりません(この場合も、さらに変更しようとするときは原則どおり戸籍法第107条の3・第107条の4の手続きによることになります)。市区町村の公式案内が「一度に限り家庭裁判所の許可を得ずに変更の届出ができる」と説明しているのは、この附則の規定を指しています。
なお、氏の振り仮名の変更の届出をする人に配偶者があるときは、配偶者とともに届け出る必要があります(附則第10条第6項)。手続きの具体的な進め方や必要書類は本籍地の市区町村によって案内が異なることがありますので、窓口で確認してください。
上記はあくまで一般的な仕組みの整理であり、家庭裁判所への申立て自体は本人(または法定代理人)が行うものです。申立書の書き方や必要書類について不明な点があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
まとめ
戸籍の氏名の振り仮名の届出期間は令和8年5月25日で終了しており、届出をしなかった場合は市区町村からの通知どおりに戸籍へ記載されます。記載された振り仮名に心当たりと違う点があれば、まずは本籍地の市区町村の戸籍窓口で確認するのが最初の一歩です。市区町村長によって記載された振り仮名については、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更の届出ができる特則が置かれています。訂正の要否や手続きの進め方で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 振り仮名の訂正には費用がかかりますか? 市区町村への届出自体に手数料はかからないのが一般的ですが、家庭裁判所への許可の申立てが必要になる場合は、収入印紙代などの実費が発生します。具体的な金額は本籍地の市区町村や申立て先の家庭裁判所に確認してください。
Q. 期限を過ぎてしまいましたが、もう直せないのでしょうか? 期限が過ぎたからといって、記載された振り仮名を一切訂正できなくなるわけではありません。ただし、期限内の届出とは手続きの流れが異なる場合があるため、まずは本籍地の市区町村の戸籍窓口に相談し、必要な手続きを確認してください。
Q. 自分で手続きできますか? それとも専門家に頼むべきですか? 市区町村窓口への相談や届出は基本的にご本人で行えます。家庭裁判所への許可の申立てが必要になった場合、申立書の作成自体は司法書士に相談できますが、家庭裁判所の手続きを代理人として行うことは弁護士の業務範囲になります。まずはお近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】振り仮名の記載と相続・不動産登記実務の関わり
ご注意 以下は執筆時点(2026年07月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
戸籍に振り仮名の記載が加わったこと自体は、相続登記や各種の申請手続きで氏名の同一性を確認する場面と関わってきます。相続手続きでは、亡くなった方の戸籍を出生から死亡まで遡って集め、名義や届出内容の変遷を確認する作業(戸籍の収集)が必要になりますが、振り仮名の記載が加わることで、同姓同名や表記ゆれの整理に役立つ可能性がある一方、旧字体・異体字と読み方の対応関係など、これまでにはなかった確認ポイントが増えることも考えられます。
登記記録そのものには、振り仮名は記録されない
まず押さえておきたいのは、不動産の登記記録(登記簿)に記録される氏名には、振り仮名が含まれないという点です。権利に関する登記の登記事項は不動産登記法第59条に列挙されており、氏名に関するものは第4号の「登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所」です。所有権の登記についてさらに事項を加える同法第73条の2も、法人の会社法人等番号と、国内に住所がない場合の連絡先を挙げるにとどまります。いずれの条文にも、氏名の振り仮名は出てきません。
氏名の「読み」を登記記録に併記する仕組みとしては、不動産登記規則第158条の31の「ローマ字氏名の併記」がありますが、これは条文上、日本の国籍を有しない方が対象と明記されています。したがって、戸籍に振り仮名が記載されたからといって、登記事項証明書の氏名の見え方が変わるわけではありません。
一方で「検索用情報」としては、氏名の振り仮名が登場する
ところが、登記記録とは別のところで、氏名の振り仮名は不動産登記の手続きにしっかり登場します。
不動産登記規則第158条の38は、法務大臣が所有権の登記名義人(自然人に限る)について「検索用情報管理ファイル」を備えるものと定め、そこに記録する事項として、氏名/氏名の振り仮名/住所/出生の年月日/電子メールアドレス/登記記録を特定するために必要な事項を挙げています。登記記録とは別に用意されるファイルで、記録された情報の保存期間は永久とされています(同条第3項)。
そのうえで同規則第158条の39第1項は、所有権の保存や移転の登記などを申請する場合において、登記名義人となる方(その登記の申請人である場合に限ります)が国内に住所を有するときは、申請人がこれらの検索用情報を申請情報の内容として申し出るものとしています。相続登記は所有権の移転の登記ですから、相続人が申請人となるときは、この申出の対象に入ることになります。
さらに同条第2項は、この申出をする場合には、氏名の振り仮名と出生の年月日について「市町村長その他の公務員が職務上作成した情報」を申請情報と併せて登記所に提供しなければならない、と定めています。振り仮名を自己申告だけで済ませるのではなく、公的な裏づけを求める建て付けになっている、ということです。
この検索用情報の仕組みは、令和7年法務省令第1号(令和7年1月10日公布)により令和7年4月21日から設けられたもので、当初から第158条の38以下に置かれています。なお、令和8年法務省令第23号(令和8年3月31日公布)により、令和8年10月5日から、検索用情報に「国籍等」が加わるとともに、第158条の39第1項の「国内に住所を有するときは」という限定が外れます。本稿は令和8年7月時点の条文に基づいています。
この「振り仮名を証する情報」について、施行時の通達(令和7年3月3日付け法務省民二第373号通達)は、検索用情報として申し出る氏名・振り仮名・住所・生年月日はいずれも住民票に記載又は記録されたものを意味するとしたうえで、振り仮名と生年月日を証する情報は、基本的に、住所を証するために提供する書類(住民票の写しなど)と兼ねることができ、その書類に振り仮名の記載がない場合でも差し支えない、としています。一方で、この通達は戸籍への振り仮名の記載が始まる前に発出されたもので、戸籍に記載された振り仮名がこの仕組みにどう反映されていくのかまでは、本稿の執筆時点で一次資料で確認するには至っていません。実際に申請する段階では、管轄の法務局に確認するのが確実です。
なぜ読み方まで集めるのか
検索用情報は、公開するためではなく、登記所が登記名義人を追跡するために使われるものです。登記官は、住民基本台帳ネットワークから提供を受けた情報によって氏名や住所の変更を把握し、職権で変更の登記をすることができるとされています(不動産登記法第76条の6、不動産登記規則第158条の44・第158条の45)。ただし、登記名義人が個人(自然人)である場合は、本人からの申出があるときに限られます(同法第76条の6ただし書)。同姓同名が珍しくない氏名であっても、読み方と生年月日がそろっていれば、同じ人物かどうかを判別しやすくなります。振り仮名は、この照合の材料という位置づけです。
相続登記の添付書類の考え方は、これで変わるのか
ここは慎重に見る必要があります。相続登記では、戸籍に記載された亡くなった方と、登記記録上の所有者が同一人物であることを示す必要がありますが、これは従来、住民票の除票や戸籍の附票によって住所のつながりを確認する、という形で処理されてきました。これは条文に手順として書かれたものではなく、登記実務上の一般的な取扱いです。
振り仮名は登記記録に記録されない以上、この同一性の確認方法が、戸籍への振り仮名の記載によって直ちに置き換わるという関係にはありません。もっとも、振り仮名の記載が加わったことで相続登記や法定相続情報証明制度の添付書類の考え方が今後どう整理されていくのかについては、本稿の執筆時点で確立した実務上の指針を一次資料で確認するには至っていません。実際の申請場面で表記の確認が必要になった場合は、法務局や本籍地の市区町村、お近くの司法書士に個別に相談することをおすすめします。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月)。
- 戸籍法 第107条の3・第107条の4・第113条・第114条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号)附則 第6条〜第14条(e-Gov法令検索・戸籍法に附則として収録): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 不動産登記法 第59条・第73条の2・第76条の6(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第158条の31・第158条の38・第158条の39・第158条の44・第158条の45(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 法務省民事局長通達「不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和7年3月3日付け法務省民二第373号): https://www.moj.go.jp/content/001434189.pdf
- 法務省「戸籍にフリガナが記載されます」: https://www.moj.go.jp/MINJI/furigana/index.html
※ 次の資料は市区町村の公式案内ページ(二次的な行政案内)です。届出期間終了後の記載方法および変更時の家庭裁判所許可の要否については、上記の改正法附則(一次資料)で根拠条文を確認したうえで、実際の窓口案内と食い違いがないことを確かめるために参照しました。
- 江東区「戸籍に氏名の振り仮名が記載されます」: https://www.city.koto.lg.jp/060300/furigana.html
- 松戸市「戸籍に氏名の振り仮名が記載されます」: https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/todokede/todokede_etsuran/kosekihurigana.html
- 姫路市「戸籍の氏名に振り仮名(フリガナ)が記載されます(誤りがなければ届出不要)」: https://www.city.himeji.lg.jp/kurashi/0000029411.html