この記事の要点

  • 「真正な登記名義の回復」とは、登記簿の名義が本当の持ち主と違っているときに、間違った名義を消すのではなく、本当の持ち主へ名義を移す形で直す登記の原因(登記の理由)です。
  • 本来は間違った登記を消す(抹消する)のが基本ですが、抹消には登記上の利害関係のある人(抵当権を持つ銀行など)の承諾が必要です。その承諾が得られない場合などに使われる方法です。
  • 贈与や売買は「権利が新しく移った」ことを記録する登記です。真正な登記名義の回復は「もともと本当の持ち主の権利だった」ことを前提に、名義だけを正しい人に合わせる登記である点が違います。
  • 登録免許税は、相続の税率(1000分の4)ではなく、「その他の原因による移転」の区分として不動産の価額の1000分の20で扱われると考えられます。
  • 権利が実際に順番に移っている(元の持ち主→中間の人→いまの持ち主)のに登記名義が元の持ち主のまま残っている場合に、中間の人を飛ばしてこの方法を使うことは、最高裁判決で認められていません。

真正な登記名義の回復(しんせいなとうきめいぎのかいふく)とは、登記簿に載っている名義が本当の持ち主と食い違っているときに、その名義を本当の持ち主へ移す「所有権の移転の登記」の形で直すときに使われる登記の原因です。登記簿の甲区(所有者の欄)には「原因 真正な登記名義の回復」と記録されます。

この記事では、どんな場面で使われるのか、抹消登記とどう違うのか、贈与や売買とどう違うのか、そして使えない場面と費用を順に整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

そもそも「登記の原因」とは

不動産の名義を変える登記(所有権の移転の登記)では、なぜ名義が変わるのかという理由を「登記原因」として記録します。売ったなら「売買」、タダで譲ったなら「贈与」、亡くなった人から受け継いだなら「相続」という具合です。売買・贈与・相続などの登記原因ごとの違いは、不動産の名義変更──売買・贈与・相続・財産分与で必要書類と登録免許税はどう変わるで一覧にしています。

権利に関する登記を申請するときは、その登記原因を証明する情報(登記原因証明情報)を一緒に提出しなければなりません(不動産登記法61条)。つまり、登記原因は「実際に起きたこと」をそのまま書くものです。

「真正な登記名義の回復」は、売買や贈与のような取引の名前ではありません。「本当の持ち主(真正な所有者)に、登記の名義を取り戻す」という、名義を直すための登記原因です。

どんな場面で使われるのか

登記簿の名義が本当の持ち主と違ってしまう原因はさまざまです。たとえば、次のような場面が考えられます。

  • 書類を偽造されて、知らないうちに他人の名義に移されていた
  • 実際には売買も贈与もしていないのに、売買を原因とする登記がされていた
  • 遺言で特定の相続人が受け継ぐはずの不動産について、別の相続人が自分の名義にしてしまった

このように、登記された時点から名義が事実と違っていた場合、まず考えられる直し方は、間違った登記を消す(抹消する)ことです。抹消すれば、登記簿は間違った登記がされる前の状態に戻ります。

抹消には「登記上の利害関係人」の承諾が必要

ところが、抹消には一つ壁があります。権利に関する登記を抹消するときに、登記上の利害関係を有する第三者がいる場合は、その第三者の承諾がなければ抹消の申請ができません(不動産登記法68条)。

たとえば、間違った名義人が、その不動産に銀行の抵当権を設定していたとします。このとき、名義人の登記を抹消するには、抵当権を持つ銀行の承諾が必要になります。銀行が承諾しない場合は、銀行に対抗できる裁判(判決など)を得ない限り、抹消の登記は申請できません(承諾に代わる裁判の扱いは【さらに深掘り】で整理しています)。

「消す」のではなく「移す」形で直す

こうした場合などに使われるのが、真正な登記名義の回復です。間違った名義を消すのではなく、間違った名義人から本当の持ち主へ、所有権を移転する登記の形をとります。抹消ではないので、抹消のときのような第三者の承諾(不動産登記法68条)を求められる場面には当たりません。

ただし、移転の形で直した場合、間違った名義人の時代に設定された抵当権などの登記は、登記簿の上では消えずに残ります。その抵当権の効力をどう考えるかは別の問題で、争いになることもあります。銀行など第三者との関係が問題になるときは、弁護士にご相談ください。

裁判でも認められている方法

真正な登記名義の回復は、最高裁判所の判決でも、抹消のほかに使える直し方として認められています。

  • 最高裁平成11年12月16日判決(民集53巻9号1989頁)は、特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があったのに、別の相続人が自分への所有権移転登記をしていた場合について、遺言執行者は、その登記の抹消登記手続のほか、本来受け継ぐべき相続人への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる、としました。
  • 最高裁平成11年3月9日判決(集民192号65頁)は、亡くなった方の生前に「売買」を原因として相続人の一人に移転登記がされていた事案で、これを「相続」を原因とする登記に直す更正の登記はできないとしたうえで、他の相続人の請求を、各自の持分についての真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続を求めるものと解して、認めました。

更正の登記で直せる範囲とその限界については、登記の「更正登記」とは──名前の字・住所・持分を間違えて登記してしまったときの直し方で詳しく解説しています。遺産分割をやり直した場合の「錯誤」による抹消については、遺産分割をやり直したら登記はどうなるをご覧ください。

贈与・売買と何が違うのか

真正な登記名義の回復も、贈与や売買も、登記の形はどれも「所有権の移転の登記」です。違いは、登記原因が表す中身にあります。

贈与・売買 真正な登記名義の回復
何を記録するか 権利が新しく移ったこと(契約などの取引) もともと本当の持ち主の権利だったものに、名義を合わせること
前提となる事実 贈与契約・売買契約が実際にあった 登記の名義が、本当の持ち主と食い違っていた
登録免許税(所有権の移転) 不動産の価額の1000分の20(土地の売買には軽減あり) 不動産の価額の1000分の20(下記のとおり、相続の税率や土地の売買の軽減は使えないと考えられる)

大切なのは、登記原因は実際に起きたことに合わせて選ぶものだという点です。実際には贈与や売買をしたのに、登記原因だけを「真正な登記名義の回復」とすることはできません。登記原因証明情報(不動産登記法61条)には、名義が本当の持ち主と食い違っていた事情を書くことになるため、その事情が事実でなければ登記の前提が成り立ちません。

贈与税などの税金は「登記原因の名前」で決まるものではない

登記原因を「真正な登記名義の回復」にすれば税金の心配がなくなる、というものではありません。実際に何があったのか(名義が違っていたのか、それとも実質的には贈与や売買だったのか)によって、贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる可能性があります。税金がかかるかどうか、いくらになるかは、税理士にご確認ください。

名義と実際の持ち主がずれる問題は、預金でもよく話題になります。考え方の例として、名義預金とは──子や孫名義の口座が「相続財産」と扱われるときもあわせてご覧ください。

使えない場面──中間の人を飛ばすことはできない

真正な登記名義の回復は便利に見えますが、使えない場面があります。

最高裁平成22年12月16日判決(民集64巻8号2050頁)は、不動産の所有権が、元の所有者から中間の人へ、さらに中間の人からいまの所有者へと順番に移っているのに、登記名義が元の所有者のまま残っている場合に、いまの所有者が元の所有者に対して、元の所有者からいまの所有者への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることは許されない、としました。

この事案では、土地が「元の所有者→(贈与)→中間の人→(相続)→いまの所有者」と移っていたのに、元の所有者名義の持分の登記が残っていました。このような場合は、実際に起きた順番どおり、まず元の所有者から中間の人への贈与による移転の登記をし、次に中間の人からいまの所有者への相続による移転の登記をすべきだとされています。判決は、権利が移ってきた経過(物権変動の過程)を忠実に登記記録に反映させようとする不動産登記法の原則に照らして許されない、と理由を述べています。

つまり、登記名義が元の持ち主のまま残っていて、その後に実際に起きた権利の移転(この事案では贈与と相続)がまだ登記されていないだけの場合には、真正な登記名義の回復で一気に名義を合わせることはできません。真正な登記名義の回復は、実際にあった取引を省略するための方法ではありません。

誰が申請するのか

権利に関する登記は、原則として、登記で利益を受ける人(登記権利者)と、登記で権利を失う人(登記義務者)が共同で申請します(不動産登記法60条)。真正な登記名義の回復では、名義を受け取る本当の持ち主が登記権利者、いまの登記名義人が登記義務者になります。

いまの登記名義人が協力しない場合は、登記手続をするよう命じる確定判決を得れば、本当の持ち主が単独で申請することができます(不動産登記法63条1項)。もっとも、名義が誰のものかを争う場面では、裁判の見通しも含めて弁護士への相談が必要になります。

登録免許税は「その他の原因による移転」の1000分の20

登記を申請するときには、登録免許税(国に納める税金)がかかります。所有権の移転の登記の税率は、登録免許税法の別表第一第1号(二)で、次のように分かれています。

  • 相続または法人の合併による移転:不動産の価額の1000分の4
  • 共有物の分割による移転:不動産の価額の1000分の4
  • その他の原因による移転:不動産の価額の1000分の20

真正な登記名義の回復は、相続でも合併でも共有物の分割でもないため、条文の区分からは「その他の原因による移転」として1000分の20で扱われると考えられます。本当の持ち主が相続で不動産を受け継いだ人であっても、登記原因が「相続」ではない以上、相続の税率(1000分の4)は使えないと考えられます。

また、土地の売買による所有権の移転の登記には、税率を1000分の15に下げる軽減措置があります(租税特別措置法72条1項1号。令和11年3月31日までの登記が対象)。ただし、条文上の対象は「売買による所有権の移転の登記」なので、真正な登記名義の回復による登記は対象に含まれないと考えられます。

まとめ

真正な登記名義の回復は、登記簿の名義が本当の持ち主と違っているときに、間違った名義を消す代わりに、本当の持ち主へ名義を移す形で直す登記の原因です。抹消に必要な第三者の承諾が得られない場合などに使われ、最高裁判決でも抹消のほかに使える直し方として認められています。

一方で、贈与や売買のように新しく権利が移ったことを記録する登記とは中身が違い、実際の取引を言い換えるために使うことはできません。権利が順番に移っているのに登記名義が元の持ち主のまま残っている場合に、中間の人を飛ばす使い方も、最高裁判決で許されないとされています。登録免許税は、相続の税率ではなく1000分の20の区分で扱われると考えられます。

どの直し方(抹消・更正・真正な登記名義の回復)になるかは、登記記録と事実関係によって変わります。名義が本当の持ち主と違っていると気づいたら、まずは登記事項証明書と経緯がわかる資料をそろえ、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 真正な登記名義の回復の登記には、どのくらい費用がかかりますか?

法務局に納める登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額をもとに計算するのが一般的です)の1000分の20と考えられます。相続の税率(1000分の4)や、土地の売買の軽減税率(1000分の15)は使えないと考えられます。このほか、登記事項証明書などの取得費用や、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。裁判が必要になる場合は、別に裁判の費用や弁護士費用がかかります。

Q. いつまでに申請しなければならないなど、期限はありますか?放っておくとどうなりますか?

真正な登記名義の回復の登記そのものについて、申請の期限を定めた規定はありません。ただし、名義が違うままだと、登記上の名義人がその不動産を売ったり担保に入れたりしてしまうおそれがあり、そうなると名義を取り戻すための話し合いや争いが複雑になります。また、本当の持ち主が相続で不動産を取得していた場合は、相続登記の申請義務(不動産登記法76条の2)との関係も確認が必要です。気づいた時点で早めに動くことが大切です。

Q. 自分で申請できますか?どこに相談すればよいですか?

登記の申請自体はご本人でもできますが、抹消・更正・真正な登記名義の回復のどれを使うか、第三者の承諾が必要か、中間の取引を省略していないかなど、判断を誤りやすい点が多い登記です。登記の手続きについてはお近くの司法書士にご相談ください。名義が誰のものかを相手と争っている場合は弁護士に、贈与税や譲渡所得など税金の扱いは税理士にご相談ください。


【さらに深掘り】真正な登記名義の回復の申請書と、判決による申請・抹消との使い分け

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、真正な登記名義の回復がどんな場面で使われ、どんな場面で使えないかを説明しました。ここでは、(1)申請書(申請情報)と添付情報の骨格、(2)判決を得て単独で申請する場合、(3)抹消登記との使い分け、の3点を、条文と判例の文言にそって整理します。

1. 申請書の骨格と添付情報

登記権利者(本当の持ち主)と登記義務者(いまの登記名義人)が共同で申請する場合(不動産登記法60条)の、申請情報と主な添付情報の骨格は次のとおりです。事案によっては、これ以外の情報が必要になります。

  • 登記の目的:「所有権移転」です。登記名義人の権利の一部(持分)だけを本当の持ち主に移すときは、移転する権利の一部を申請情報に記載します(不動産登記令3条11号ホ)。名義を受け取る人が2人以上のときは、それぞれの持分も記載します(同条9号)。最高裁平成11年3月9日第三小法廷判決(集民192号65頁)の事案でも、一人の相続人の単独名義になっていた不動産について、他の相続人それぞれの持分ごとに、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続が命じられています。
  • 登記原因:「真正な登記名義の回復」と記載します。
  • 登記原因証明情報(不動産登記法61条、不動産登記令7条1項5号ロ):内容は後で説明します。
  • 登記義務者の登記識別情報:共同申請では、いまの登記名義人の登記識別情報を提供します(不動産登記法22条本文)。提供できないことに正当な理由がある場合は提供を要しないとされ(同条ただし書)、その場合は登記官から登記義務者への事前通知などの手続(同法23条)を経ることになります。
  • 住所を証する情報:所有権の移転の登記では、登記名義人となる人(本当の持ち主)の住所を証する、市町村長などが職務上作成した情報が必要です(不動産登記令別表30の項添付情報欄ハ)。
  • 検索用情報の申出:所有権の移転の登記を申請するときは、所有権の登記名義人となる人(本当の持ち主)の氏名・氏名の振り仮名・住所・生年月日・電子メールアドレス・国籍等(「検索用情報」)を申請情報の内容として申し出るものとされ、振り仮名・生年月日・国籍等を証する情報も原則として提供します(不動産登記規則158条の39第1項・2項。国籍等は令和8年10月5日施行の改正で加わりました)。名義を受け取る人が法人のときは法人識別事項を、国内に住所がない人のときは国内連絡先事項を、申請情報に記載します(不動産登記令3条11号ト)。

登記原因証明情報について、不動産登記法61条が求めているのは「登記原因を証する情報」です。真正な登記名義の回復では、「名義が本当の持ち主と食い違っていること」そのものが登記原因になるため、少なくとも次の事実が読み取れる内容にしておく必要があると考えられます(条文の趣旨からの推論です)。「真正な登記名義の回復」という言葉だけを書いた書面では足りないと考えられます。

  • 対象の不動産と、直したい現在の登記(受付年月日・受付番号、登記原因など)
  • いまの登記名義人が所有者ではないといえる具体的な事実(たとえば、売買契約がなかったのに売買を原因とする登記がされていた、など)
  • 本当の持ち主が誰で、なぜその人の所有といえるのか(たとえば、特定の不動産を「相続させる」趣旨の遺言で取得した、など)

あわせて、いまの登記名義人が実際に所有者だったことがあり、その後に実際に起きた権利の移転(中間の取引や相続)がまだ登記されていないだけではないかを確認しておく必要があります。登記名義が元の所有者のまま残っている状態で、元の所有者から中間の人へ、中間の人から本当の持ち主へと順番に移っている場合について、本文で触れた最高裁平成22年12月16日判決は、この原因による登記手続を求めることは許されないとしています。判決が理由として挙げた考え方(物権変動の過程を忠実に登記記録に反映させようとする不動産登記法の原則)からすると、共同申請の場合も、実際に起きた順番どおりに登記をすることが前提になると考えられます(判決の考え方からの推論です)。

2. 判決を得て単独で申請する場合(不動産登記法63条1項)

いまの登記名義人が共同申請に応じない場合、本当の持ち主は、登記名義人に対して登記手続をすべきことを命ずる確定判決を得れば、単独で申請することができます(不動産登記法63条1項)。共同申請の場合と比べると、次の点が変わります。

  1. 判決の主文:63条1項の対象は、登記手続を「すべきことを命ずる」確定判決です。所有権があることを確認するだけの判決は、条文の文言上これに当たらないと読めます。前記の平成11年3月9日判決の主文は、登記名義人に対し「真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続をせよ」と命じる形で、登記原因と移転する持分が特定されています。
  2. 登記原因証明情報:執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含みます)、または電子判決書に記録されている事項について裁判所書記官が証明した書面・電磁的記録に限られます(不動産登記令7条1項5号ロ(1))。共同申請の場合のように事実関係を記載した書面を別に用意するのではなく、判決書の正本などがそのまま登記原因証明情報になります。
  3. 登記識別情報:不動産登記法22条が登記識別情報の提供を求めているのは、共同申請の場合と、政令で定める登記の場合です。判決による申請は単独申請で、その政令(不動産登記令8条1項)も「確定判決による登記を除く」としています。そのため、条文上、登記義務者の登記識別情報の提供を求められる場面には当たらないと読めます。
  4. 住所を証する情報:登記原因証明情報が判決書の正本などに限られることとは別に、所有権の移転の登記として、本当の持ち主の住所を証する情報は必要と読めます(不動産登記令7条1項6号・別表30の項添付情報欄ハ)。

訴訟を起こすかどうか、どのような請求をするかは、訴訟の見通しを含めて弁護士にご相談ください。

3. 抹消登記との使い分け──第三者の登記がどうなるか

抹消登記と真正な登記名義の回復の大きな違いは、間違った名義人の時代にされた第三者の登記(抵当権など)の扱いにあります。

抹消登記 真正な登記名義の回復(移転の登記)
登記上の利害関係を有する第三者 その第三者の承諾があるときに限り申請できる(不動産登記法68条) 抹消ではないため、68条の承諾を求められる場面には当たらない(本文参照)
承諾が得られないとき 承諾を証する情報に代えて、「当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を提供する方法がある(不動産登記令別表26の項添付情報欄ト) (承諾の問題にならない)
第三者の登記 抹消する権利を目的とする第三者の権利に関する登記は、登記官が抹消する(不動産登記規則152条2項) 登記簿の上ではそのまま残る

68条が抹消に第三者の承諾を求めているのは、権利の登記を抹消すると、その権利を目的とする第三者の登記も登記官によって抹消される(不動産登記規則152条2項)ためと考えられます(両条文の関係からの推論です)。移転の形をとる真正な登記名義の回復では、この抹消が起きない代わりに、第三者の登記は残ります。つまり、真正な登記名義の回復は、第三者の権利を消すための手段にはなりません。

前記の平成11年3月9日判決では、真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続と並べて、根抵当権者に対し、不動産全部についての根抵当権設定登記を、単独の登記名義人だった相続人の持分についての根抵当権設定登記に改める更正登記手続が命じられています。名義を本当の持ち主に合わせることと、第三者の登記を実態に合わせることが、別々の登記手続として扱われた例です。第三者との関係をどう整理するかは、本文のとおり争いになることがあるため、弁護士にご相談ください。

使い分けの考え方を整理すると、次のようになります。

  • 登記としての同一性を保ったまま中身を直せる場合は、更正の登記が検討の対象になります(範囲と限界は更正登記の記事の【さらに深掘り】で整理しています)。
  • 同一性を保てない場合は、抹消登記か真正な登記名義の回復になります。抹消では第三者の承諾(またはその第三者に対抗できる裁判)が必要になり、真正な登記名義の回復では第三者の登記が残ります。
  • 権利が実際に順番に移っているのに登記名義が元の所有者のまま残っている場合は、どちらでもなく、実際に起きた順番どおりに移転の登記をします(最高裁平成22年12月16日第一小法廷判決・民集64巻8号2050頁)。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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