この記事の要点

  • 遺産分割の「やり直し」には、①相続人全員の合意で最初の協議を解消して改めて協議する場合と、②最初の協議にそもそも無効・取消しの原因があった場合の2種類があり、登記の直し方が違います。
  • 相続人全員の合意で協議を解消し、改めて協議することは、最高裁判所の判例で認められています。一方、ほかの相続人が協議で約束したことを守らないという理由で、一方的に協議を解除することはできないとされています。
  • 最初の協議が無効だった場合は、登記した時点から登記が事実と合っていなかったことになるため、「錯誤」を原因として登記を消す(抹消)か直す(更正)のが基本です。抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です(更正の登録免許税は、課税の区分を申請前に確認します)。
  • 全員の合意によるやり直しは、登記の後に事情が変わったものなので「錯誤」にはなじまないと考えられ、どの形で登記するかによって登録免許税が大きく変わります(相続による移転なら固定資産評価額の0.4%、相続以外の原因による移転なら2%)。申請の前に確認が必要です。
  • やり直しで財産の行き先が変わると、贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる可能性があります。再協議の前に税理士にご相談ください。

いったんまとまった遺産分割協議を、後から「やり直したい」と考えることがあります。結論から言うと、やり直しの登記は、なぜやり直すのかによって直し方が分かれます。

やり直しの理由 最初の登記の扱い 登録免許税の目安
① 相続人全員が合意して、協議をやり直す 登記した時点では正しかったので「錯誤」にはなじまないと考えられる。どの形で登記するかを申請前に確認 登記の形によって、不動産1個につき1,000円+0.4%の場合から、2%の場合まで変わる
② 最初の協議が無効だった(相続人の一部を欠いていた など) 登記した時点から事実と合っていなかったので、「錯誤」を原因として抹消または更正 抹消は不動産1個につき1,000円(更正は課税の区分を申請前に確認。その後に改めて相続登記をする場合は別途0.4%)

この記事は、執筆時点(2026年10月)の法令に基づく一般的な解説です。以下、それぞれの場面を順に見ていきます。

そもそも遺産分割はやり直せるのか

遺産分割協議は、相続人全員で話し合って、どの財産を誰が受け継ぐかを決める手続きです(民法907条1項)。協議書の作り方や、全員の署名・実印が必要になる理由は、遺産分割協議書の作り方と落とし穴で解説しています。

いったん成立した協議をやり直せるかについて、最高裁判所は次の2つの判断を示しています。

  • 全員の合意によるやり直しはできる:共同相続人は、すでに成立している遺産分割協議の全部または一部を、全員の合意によって解除した上で、改めて分割協議を成立させることができる、とされています(最高裁判所第一小法廷 平成2年9月27日判決、民集44巻6号995頁)。
  • 約束を守らない人がいても、一方的には解除できない:協議の中で一部の相続人が負担した債務(たとえば、ほかの相続人にお金を支払う約束)が守られないときでも、その支払いを受ける側の相続人は、民法541条(約束が守られないときに契約を解除できるという規定)によって協議を解除することはできない、とされています(最高裁判所第一小法廷 平成元年2月9日判決、民集43巻2号1頁)。

つまり、やり直しが認められるのは、原則として相続人全員がやり直しに同意している場合です。一部の相続人が同意しない場合や、最初の協議が無効かどうかについて相続人の間で意見が分かれている場合は、登記の前に解決すべき問題があります。そのような場合の進め方は、弁護士にご相談ください。

まだ登記をしていないなら、新しい協議書で登記する

相続登記をする前に全員の合意でやり直した場合は、改めて全員で作った新しい遺産分割協議書を使って、通常どおり相続登記を申請するのが基本です。新しい協議書にも、相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書が必要になります。申請書の書き方は、相続登記申請書の書き方をご覧ください。

ただし、登記をしていなくても、税金の問題(後述)は別に考える必要があります。登記がまだだから税金の心配もない、というわけではありません。

ケース1:相続人全員の合意でやり直す場合

すでに最初の協議の内容で相続登記をした後に、全員の合意でやり直す場合です。たとえば、最初の協議で長男が実家を相続して登記したものの、その後、全員で話し合って「実家は二男が受け継ぐ」と決め直した場合がこれにあたります。

「錯誤」にはなじまないと考えられる

登記を直すときによく使われる「錯誤(さくご)」は、登記した時点ですでに登記の内容が事実と食い違っていたことを指す言葉です(不動産登記法2条16号は、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合」に登記事項を訂正する登記と定めています)。全員の合意によるやり直しは、最初の協議がいったん有効に成立し、その内容どおりに登記がされた後で、改めて決め直したものです。登記した時点では登記の内容は正しかったので、「錯誤」を原因とする登記にはなじまないと考えられます(別の見方もありうる点は、後半の【さらに深掘り】で補足します)。

どの形で登記するかで、登録免許税が大きく変わる

全員の合意によるやり直しをどのような登記原因・申請の形で登記するかは、最初の登記の内容と新しい協議の内容によって変わり、法務局の取扱いも含めて申請前に確認する必要があります。考えられる形と、それぞれの登録免許税の区分は次のとおりです。

  • 相続以外の原因による所有権の移転として登記する場合:最初に相続した人から、新しく受け継ぐ人へ所有権を移す登記です。相続による移転の登記ではないため、相続人が一人で申請できる例外(不動産登記法63条2項)にはあたらず、最初に相続した人と新しく受け継ぐ人とが共同で申請するのが原則になります(同法60条)。登録免許税は、相続以外の原因による所有権の移転として、固定資産評価額などをもとにした不動産の価額の1000分の20(2%)です(登録免許税法 別表第一・1号(二)ハ)。
  • 最初の相続登記を抹消して、新しい協議の内容で相続登記をし直す場合:抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円(同号(十五))、改めてする相続による所有権の移転の登記は不動産の価額の1000分の4(0.4%)です(同号(二)イ)。

同じ実家でも、どちらの形になるかで税額が数倍違うことがあります。やり直しの協議をする前の段階で、どの形で登記できるかを司法書士や法務局に確認しておくと安心です。

最初の相続人がすでに売却・担保設定をしていたら

最初の協議で不動産を受け継いだ人が、その後に不動産を売ったり、銀行の抵当権を設定したりしている場合は、注意が必要です。遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼりますが、第三者の権利を害することはできないとされています(民法909条)。また、権利に関する登記を抹消するときに、抵当権を持つ銀行など登記上の利害関係を有する第三者がいる場合は、その第三者の承諾がなければ申請できません(不動産登記法68条)。やり直しを考えたら、まず登記簿で、最初の登記の後に抵当権などの登記が入っていないかを確認しておきましょう。

ケース2:最初の協議が無効だった場合

最初の協議に、そもそも有効に成立していない原因があった場合です。典型は、相続人の一部が参加していなかった場合です。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり(民法907条1項は、共同相続人がその協議で遺産の分割をすることができると定めています)、一人でも欠けた協議は無効と考えられています。後から前婚の子や生前に認知されていた子など、知らなかった相続人がいると分かったときに起こります(相続が始まった後に認知によって相続人となった人については別の定めがあります。後半の【さらに深掘り】で補足します)。

「錯誤」を原因として抹消または更正する

最初の協議が無効なら、その協議に基づく登記は、登記した時点から事実と合っていなかったことになります。この場合は、登記原因を「錯誤」として、

  • 最初の登記を抹消する(消す)か、
  • 最初の登記を更正する(正しい内容に直す)か、

のどちらかで正すのが基本です。どちらになるかは、正しい内容と最初の登記の名義とがどこまで重なるかによって分かれます。たとえば、最初の登記の名義人もなお一定の持分を持つ場合は更正による余地がありますが、名義人がまるごと別の人に入れ替わるような場合は、更正ではなく抹消などの別の手続きによることになるとされています。更正登記のしくみや、利害関係人の承諾については、別の記事登記の「更正登記」とはで詳しく解説しています。抹消した場合は、その後に正しい内容(相続人全員でやり直した協議など)に基づいて、改めて相続登記を申請します。

なお、ここでいう登記原因の「錯誤」は、登記と事実が食い違っていることを表す登記の用語で、民法95条の「錯誤」(思い違いを理由に意思表示を取り消せるという規定)とは場面が違います。協議の内容について思い違いやだまされたことなどを理由に、最初の協議を取り消すという場合は、取り消せるかどうかをめぐって相続人の間で争いになりやすく、登記の書き方もその結論を前提に決まります(取り消した場合の登記原因の考え方は、後半の【さらに深掘り】で補足します)。取消しを主張するかどうかの見通しは、弁護士にご相談ください。

抹消・更正の登録免許税

抹消の登記は不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十五))。更正の登記も、同号(十四)の区分にあたれば不動産1個につき1,000円です。ただし、持分を直す更正では、増える持分がどの区分で課税されるのかを申請前に確認する必要があります(更正登記の記事の「登録免許税」の項を参照)。抹消した後に改めて相続登記をする場合は、その相続登記について不動産の価額の1000分の4がかかります。

「法定相続分の登記の後に遺産分割した」場合とは違う

似た場面として、法定相続分(民法で決められた割合)どおりに相続登記をした後で、初めて遺産分割協議がまとまった場合があります。これは「やり直し」ではなく、最初の遺産分割をしたにすぎないため、登記原因は「錯誤」ではなく「遺産分割」とされ、不動産を受け継ぐ相続人が単独で更正の登記を申請できる取扱いになっています。詳しくは、末尾の「あわせて読みたい」に挙げた、法定相続分どおりに登記するときの申請書の記事をご覧ください。この記事で扱っているのは、遺産分割協議が一度成立した後に、それをやり直す場面です。

やり直しで動く税金──贈与税・所得税に注意(税理士へ)

登記の手続きとは別に、遺産分割のやり直しでは税金の問題が生じる可能性があります。全員の合意で決め直して財産の行き先が変わると、税金の種類によっては、「相続で受け継いだ」のではなく、相続人どうしで財産をやり取りしたものとみられて、

  • 贈与税(ただで財産を受け取ったとみられる場合)
  • 所得税(譲渡所得。財産を手放す代わりに何かを受け取ったとみられる場合)

が問題になることがあります。すでに相続税の申告をしている場合は、その申告との関係も問題になります。課税されるかどうか、いくらになるかの判断は、登記とは別の専門分野です。やり直しの協議をする前に、税理士にご相談ください。

なお、登記の申請のときに法務局に納める登録免許税は、登記の手続きの一部として司法書士が説明・計算できます。

まとめ

遺産分割のやり直しは、相続人全員の合意があればできるというのが判例の考え方ですが、登記の直し方は、やり直しの理由によって変わります。最初の協議が無効だった場合は、「錯誤」を原因として最初の登記を抹消または更正するのが基本です。全員の合意によるやり直しは「錯誤」にはなじまないと考えられ、どの形で登記するかによって登録免許税が大きく変わります。また、やり直しによって贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる可能性があるため、協議の前に税理士への相談が欠かせません。

一部の相続人が同意しない場合や、協議が無効かどうかで意見が分かれている場合は、弁護士への相談が先になります。全員の合意がそろい、登記の直し方を確認したい段階になったら、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 遺産分割をやり直したときの登記の費用はどのくらいですか?

法務局に納める登録免許税は、登記の形によって変わります。抹消の登記は不動産1個につき1,000円、相続による所有権の移転の登記は不動産の価額の1000分の4(0.4%)、相続以外の原因による所有権の移転の登記は1000分の20(2%)です(登録免許税法 別表第一・1号)。このほか、戸籍や印鑑証明書の取得費用、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。贈与税などの税金がかかるかどうかは、税理士にご確認ください。

Q. やり直しに期限はありますか?放置するとどうなりますか?

全員の合意によるやり直しについて、民法に「何年以内に」という期限の定めはありません。ただし、時間がたつほど、最初に不動産を受け継いだ人が売却や担保の設定をしたり、相続人の誰かが亡くなって話し合う相手が増えたりして、やり直しの登記が難しくなるおそれがあります。また、まだ相続登記をしていない場合は、相続登記の申請義務にも注意が必要です。正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になります。やり直すと決めたら、早めに手続きを進めましょう。

Q. 自分でできますか?どこに相談すればいいですか?

やり直しの協議には相続人全員の参加が必要で、新しい協議書にも全員の実印と印鑑証明書が必要です。登記の形によっては、相続人どうしで共同して申請する必要もあります。一部の相続人が同意しない場合や協議の有効性で争いがある場合は弁護士に、贈与税・所得税などの税金は税理士に相談してください。全員の合意がそろったうえでの登記の手続きは、お近くの司法書士へ。


【さらに深掘り】遺産分割のやり直しと登記原因──無効・取消し・合意解除の書き分けと、登録免許税の区分

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、やり直しの理由によって登記の直し方が分かれることを説明しました。ここでは、①登記原因としての「錯誤」が何を指すのか、②協議が無効な場合と取り消された場合とで登記原因の考え方がどう違うのか、③全員の合意による再分割の登記について公開の資料で確認できる範囲、④登録免許税の区分の当てはめ、の4点を、条文・通達・判例にそって整理します。更正の登記で直せる範囲(登記の同一性)については、登記の「更正登記」とはの【さらに深掘り】で扱っているので、ここでは繰り返しません。

1. 登記原因としての「錯誤」の意味

不動産登記法2条16号は、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」と定めています。ここでいう「錯誤」について、相続登記の見直しを検討した法制審議会民法・不動産登記法部会の部会資料8「不動産登記制度の見直し(1)」(8頁の注)は、登記記録に本来されるべき記録の代わりに誤った記録がされている場合や、記録されるべきでない記録が存する場合をいうもので、民法上の錯誤(民法95条)とは異なる概念である、と説明しています。

この説明に照らすと、登記原因として「錯誤」を使えるかどうかは、登記をした時点で、すでに登記記録が本来あるべき内容と食い違っていたかどうかが、一つの目安になると整理できます。最高裁平成17年12月15日第一小法廷判決(集民218号1191頁)も、更正登記を、錯誤又は遺漏のため登記と実体関係の間に「原始的な不一致」がある場合に、その不一致を解消させる登記と説明しています。

  • 相続人の一部を欠いた協議のように、協議がはじめから無効だった場合は、その協議に基づく登記は、登記をした時点から本来されるべきでない記録だったことになり、「錯誤」の考え方と合います。
  • 全員の合意による解除と再分割の場合は、登記をした時点では、有効に成立した協議のとおりの正しい記録がされていました。食い違いは、その後の合意解除・再分割という新しい出来事によって生じたものなので、「錯誤」の考え方とはなじみにくいと考えられます(この部分は、上記の定義からの推論です。この場面を直接扱った先例は、公開の資料では確認できませんでした)。

もっとも、この整理には別の見方もありえます。前記の部会資料8(8頁)は、法定相続分での相続登記の後に遺産分割がされた場合について、遺産分割の遡及効(民法909条本文)に着目すれば、遺産分割前にされた相続登記は登記事項に「錯誤」があったものとみることもできる、と述べています(ただし、後記3の令和5年の通達では、この場面の登記原因は「錯誤」ではなく「遺産分割」とされています)。再分割も遺産分割である以上、同じように遡及効に着目する見方がありえないとはいえず、全員の合意による再分割の登記に「錯誤」を使えるかどうかは、断定できる段階にありません。

2. 協議が無効な場合と、取り消された場合

協議が無効な場合(たとえば相続人の一部を欠いていた場合)は、本文のとおり、「錯誤」を原因とする抹消または更正が基本になります。

これに対し、協議に参加した相続人が、思い違い(民法95条1項)や、だまされたこと・脅されたこと(同法96条1項)を理由に、協議での意思表示を取り消す場合があります。取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(同法121条)。取消しの効果は無効と同じくさかのぼりますが、取消しの意思表示そのものは、登記をした後にされる新しい出来事です。申請情報には「登記原因及びその日付」を記載する必要があるため(不動産登記令3条6号)、取消しによって最初の登記を消す場合は、「錯誤」ではなく、取消しを登記原因として、その日付とともに記載する形が考えられます(この部分は条文からの推論です。具体的な記載は申請前に確認してください)。

なお、思い違いや詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないとされています(民法95条4項、96条3項)。最初に不動産を受け継いだ人がすでに売却などをしている場合に取消しの効果がどこまで及ぶかは、争いを前提とする問題になりますので、弁護士にご相談ください。

また、相続が始まった後に認知によって相続人となった人がいる場合は、ほかの共同相続人がすでに遺産の分割をしていたときは、その人は価額のみによる支払の請求権を持つ、と定められています(民法910条)。この場合は、すでにされた協議を無効として登記をやり直す場面とは扱いが異なります。

3. 全員の合意による再分割の登記──確認できた範囲

全員の合意による協議の解除と再分割ができることは、最高裁平成2年9月27日第一小法廷判決(民集44巻6号995頁)が認めています。もっとも、同判決は、そのような再分割をどのような登記原因・申請の形で登記するかまでは述べていません。

関連する通達として、令和5年3月28日付け法務省民二第538号通達(第3の1)は、法定相続分での相続登記がされている場合に、その後の遺産分割の協議などによる所有権の取得の登記を、所有権の更正の登記によってすることができ、登記権利者が単独で申請することができるとしています。登記原因及びその日付は「年月日遺産分割」とされています。ただし、この取扱いの対象は、文言上、「法定相続分での相続登記がされている場合」です。最初の協議の結果に従って法定相続分と異なる内容の相続登記(たとえば長男の単独名義の登記)がされた後に再分割をする場面は、この文言には含まれていないと読むのが素直です(文言からの読みです)。

そのため、本文で挙げた2つの形は、いずれも単独申請の簡略化の対象外として、次のように整理できます。

  • 移転の形による場合:最初の名義人から再分割で取得する人への所有権の移転の登記で、共同申請が原則です(不動産登記法60条)。
  • 抹消して相続登記をし直す形による場合:最初の相続登記の抹消は権利に関する登記の抹消として共同申請が原則で(同法60条)、登記上の利害関係を有する第三者がいるときはその承諾が必要です(同法68条)。その後の新しい協議の内容での相続登記は、相続による権利の移転の登記として、登記権利者が単独で申請できます(同法63条2項)。

このうちどちらの形によるべきか、また、それぞれの登記原因をどう記載するかについて、法務省の通達や裁判所の判断など、公開されている一次資料で確認できるものは見当たりませんでした。この点は、申請前に管轄の法務局で確認しておくのが確実です。

4. 登録免許税の区分の当てはめ

登録免許税法 別表第一・1号の規定は、次のとおりです。

区分 課税標準 税率
(二)イ 相続又は法人の合併による移転の登記 不動産の価額 1000分の4
(二)ハ その他の原因による移転の登記 不動産の価額 1000分の20
(十四)付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記(これらの登記のうち、(一)から(十三)までに掲げるもの及び土地又は建物の表示に関するものを除く) 不動産の個数 1個につき1,000円
(十五)登記の抹消(土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く) 不動産の個数 1個につき1,000円(同一の申請書により20個を超える不動産について登記の抹消を受ける場合には、申請件数1件につき2万円)

当てはめのポイントは、次の3つです。

  • 抹消の形の場合:抹消は(十五)により不動産1個につき1,000円です。土地と建物で2個なら2,000円になります。同じ申請書で20個を超える不動産の抹消をするときは、申請1件につき2万円です。その後の相続登記は(二)イの1000分の4です。
  • 移転の形の場合:登記原因が「相続」による移転にあたらなければ、(二)ハの「その他の原因による移転」として1000分の20になります。ここで注意したいのは、前記の部会資料8(8頁)が、法定相続分での相続登記の後の「遺産分割による持分の移転の登記」の登録免許税を1000分の4((二)イ)と説明していることです。つまり、「遺産分割」を原因とする移転であれば必ず1000分の20になる、という作りにはなっていません。もっとも、いったん有効に成立した協議を合意で解除した後の再分割が、最初の遺産分割と同じく(二)イにあたるのかは、別表の文言からは決まらず、公開の一次資料でも確認できませんでした。参考までに、税金の種類は違いますが、不動産取得税について、最高裁昭和62年1月22日第一小法廷判決(集民150号65頁)は、相続人全員の合意で第一回の遺産分割協議を解除し、改めて第二回の協議をしたことに伴う共有持分の取得を、地方税法73条の7第1号の「相続に因る不動産の取得」にあたるとした原審の判断を是認しています。ただし、これは個別の事例についての判断で、しかも地方税法の非課税規定の解釈です。登録免許税法の区分が同じように決まるかは、この判決からは導けません。
  • 税額の差:たとえば固定資産評価額2,000万円の土地1筆で比べると、抹消(1,000円)+相続登記(2,000万円×1000分の4=8万円)なら合計8万1,000円、1000分の20の移転なら40万円です(端数処理を考えない概算です)。どの区分になるかで税額が大きく変わるので、登録免許税の額も含めて申請前に確認しておくことが大切です。

なお、ここで説明したのは、登記の申請のときに納める登録免許税です。再分割によって贈与税や所得税(譲渡所得)の問題が生じるかどうかは、登記の形とは別に判断されるもので、本文のとおり税理士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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