この記事の要点
- 予約の段階では、相談の目的をひとことで、不動産のおおよその所在地、亡くなった方との関係、期限が迫っている事情の有無、同席する人を伝えておくと、当日の話が早く進む
- 相手方や他の相続人の名前を聞かれることがある理由の一つとして、利益相反(すでに相手側の相談・依頼を受けていないか)の確認が考えられる
- 予約の時点で細かな個人情報まで伝える必要はないことが多い。詳しい事情は当日の面談で話せばよい
司法書士事務所に相談を予約するときは、「何の相談か」と「急ぐ事情があるか」の2点を中心に、いくつかの情報を短く伝えておくと、当日の時間を有効に使えます。予約の電話やメールは事情を詳しく説明する場ではありません。事務所の側が当日の準備をするための、最低限の手がかりを渡す場だと考えると気が楽になります。
なお、当日にどんな順番で何を聞かれるかは相続の初回相談では何を聞かれる?で、持ち物の一覧は司法書士に相談する前に準備しておきたいもので整理していますので、ここでは「予約の段階」に絞ってお伝えします。
予約のときに伝えておくとよいこと
- 相談の目的をひとことで:「父が亡くなり、実家の名義を変えたい」「相続放棄を考えている」程度で十分です。目的が分かると、事務所の側でその分野に合った準備ができます
- 不動産のおおよその所在地:不動産が関係する相談なら、「○○市の実家」「××県に山林がある」といった市区町村くらいの情報があると役に立ちます。地番や正確な住所は当日でも構いません
- 亡くなった方と相談する方の関係:「父」「叔母」「兄」など、続柄だけで大丈夫です
- 期限が迫っている事情の有無:たとえば相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条1項・938条)。期限が近いときは、予約の段階でそのことを伝えておくと、日程の調整で配慮してもらえる場合があります。期間内に判断がつかないときの手続きについては相続放棄の「3か月」に間に合わないときは?もあわせてご覧ください
- 同席する人:誰と一緒に行くかは事前に伝えておくのが基本です。誰を連れて行くかの考え方は相続の初回相談、家族の誰と行けばいい?で整理しています
予約のときに確認しておくとよいこと
反対に、予約の段階でこちらから尋ねておくとよいこともあります。相談料の有無、相談にかかる時間の目安、当日持参するとよい書類、対面・電話・オンラインのどれで相談できるか、といった点です。事務所ごとに扱いが違うため、予約の電話で聞いてしまうのが確実です。相談方法の選び方は相続相談は対面・電話・オンラインどれを選ぶ?を参考にしてください。
相手方や他の相続人の名前を聞かれる理由
予約の際に、「ほかの相続人の方のお名前を教えていただけますか」「相手方はどなたですか」と聞かれて、戸惑う方もいるかもしれません。その理由の一つとして考えられるのが、利益相反の確認です。利益相反とは、同じ司法書士が、利害が対立する双方の側に立ってしまう状態のことです。
司法書士法22条には、相手方の依頼を受けて業務を行った事件など、司法書士が業務を行ってはならない事件が定められています。このうち相手方との関係による制限は、裁判所などに提出する書類の作成や簡易裁判所での代理といった業務についてのもので、どの事件が対象になるかは条文で細かく区別されています。そのため、ほかの相続人との間に争いのない相続登記の相談であれば、この条文の制限がそのまま問題になる場面は多くないと考えられますが、話を聞くうちに争いの要素が出てくることもあります。
すでに相手側の相談や依頼を受けていないかを予約の段階で確かめておけば、当日になって「この件はお受けできません」となる事態を避けやすくなります。聞かれたときは、分かる範囲で名前を伝えれば足ります。
個人情報は、予約の段階では伝えすぎなくてよい
予約の電話やメールで、住所・生年月日・財産の金額・家族の込み入った事情まで詳しく伝える必要は、多くの場合ありません。特にメールや問い合わせフォームは、送った内容が手元を離れて残ります。予約の段階では上に挙げた程度にとどめ、詳しい事情は当日の面談で話す、という考え方でよいでしょう。何をどこまで伝えればよいか迷うときは、「どこまでお伝えすればよいですか」とそのまま尋ねて構いません。
本記事は、執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
司法書士への相談予約では、相談の目的、不動産のおおよその所在地、亡くなった方との関係、期限が迫っている事情、同席者を短く伝えておくと、当日の時間を有効に使えます。相手方や他の相続人の名前を聞かれるのは、利益相反の確認が理由の一つと考えられ、細かな個人情報は当日に話せば十分です。予約の段階で迷うことがあっても、気負わずにお近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第915条・第938条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 司法書士法 第22条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197