この記事の要点

  • 付き添う家族の役割は、親の代わりに答えることではなく、親が自分の言葉で話せるように支えること
  • 親への質問にはまず親に答えてもらい、事実の補足や家族自身の意見は、親の話と分けて伝える
  • 席を外すよう案内されたら、家族が疑われていると決めつけず、親が気兼ねなく話すための進め方の一つと受け止める

親の相続や遺言の相談に付き添うとき、家族の役割は、親の代わりに答えることではなく、親が自分の言葉で話せるように支えることです。ここでいう親の相談は、遺言を考えている親や、配偶者を亡くして相続人になった親など、話の中心が親本人である相談を指します。休憩の入れ方や聞き返し方など、親の負担を減らす工夫は高齢の家族と司法書士に相談に行くときで整理しました。この記事では、相談の場で付き添う家族がどう振る舞うかに絞ります。執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。

親への質問には、まず親に答えてもらう

司法書士が親に尋ねたことに、家族が先に答えてしまうことがあります。親を助けたい気持ちからであっても、家族の言葉で話が進むと、親の希望や迷いが出てこないまま終わることがあります。親がうなずいていても、納得しているのか、話に合わせているだけなのかは、はた目には分かりにくいことがあります。また、付き添う家族は、親と同じ相続の相続人であったり、将来の相続人になりうる立場であったりすることも多く、親の希望と家族の希望が同じとは限りません。

家族が補足しやすいことと、親の言葉で話してもらいたいことを分けておくと、動きやすくなります。

  • 家族が補足しやすいこと:手続きの日付、書類の場所、親族の連絡先など、確かめられる事実
  • 親の言葉で話してもらいたいこと:財産をどうしたいか、誰に何を残したいか、何が心配か

補足するときは、親が話し終えてから「少し補足してもいい?」と親に断ると、親の話をさえぎらずに済みます。家族自身の考えを伝えるときは「これは私の考えですが」と前置きすると、親の希望と混ざりにくくなります。親の話と家族の記憶が違うときも、その場で言い直させず、「私はこう覚えています」と並べて伝えれば足ります。

相談を受ける側にも、本人の意思を確かめようとする理由があると考えられます。日本司法書士会連合会が定める「司法書士行為規範」(司法書士が自らの行動を律するための倫理上の決まりで、法律そのものではありません)には、依頼者の意思を尊重して業務を行うことや、意思の表明に困難を抱える依頼者に対して、適切な方法で意思の表明を支援するよう努めることが定められています(第10条)。不動産登記の仕事を引き受けた場合には、依頼者やその代理人などが本人であることや、その意思の確認などを通じて、実体上の権利関係を的確に把握することも求められています(第44条第1項)。これらの定めが対象としているのは依頼者や引き受けた仕事で、相談の場の進め方を一つに決めるものではありません。なお、親に代わって法律上の手続きをする立場の人(成年後見人など)がすでに選任されている場合は、手続きの内容によって、確認の進め方が異なることがあります。

親が話す時間を空ける

親がすぐに答えられなくても、少し待ちます。間があるのは、考えている途中だからかもしれません。沈黙を埋めようと家族が先に言葉を足すと、親が話すのをやめてしまうことがあります。

それでも言葉に詰まっているようなら、答えを渡すのではなく、話し出すきっかけを渡します。

  • 「この前、心配だと言っていたことは話しておく?」
  • 「今の質問、もう一度言ってもらう?」
  • 「ゆっくりでいいよ」

親の話をまとめ直すときは、家族の解釈に置き換えないよう、「今の話は、こういうことで合っている?」と親に確かめます。聞こえにくさや見えにくさがあってやりとりに配慮が必要なときは、耳や目が不自由な家族と相続の相談に行くときも参考にしてください。

質問の準備とメモを手伝う

家族の手助けが役立ちやすいのは、質問の準備です。相談の前に親が聞きたいことを尋ね、親の言葉のままメモにしておきます。当日はそのメモを親の手元に置き、聞きそびれていれば「聞きたいと言っていたこれは、まだ聞いていないね」と声をかけます。家族自身の質問は別に書いておき、親の質問のあとに尋ねます。

説明の要点を書き留めるのも、付き添う家族に向いた役割です。同席しなかった家族へ伝えるときの工夫は聞いた話を同席しなかった家族にどう伝えるかで整理しています。付き添う人を決める段階の考え方は家族の誰と行けばいいか、付き添うことを事前に伝えておく点は相談予約で伝えることをご覧ください。

席を外すよう案内されたとき

相談の途中で、親だけと話したいので席を外してほしいと案内されることがあります。理由の一つとして、家族の前では言いにくいことがある点が考えられます。場面は異なりますが、公正証書遺言についても、日本公証人連合会の案内では、作成当日の手続の際、遺言をする人が自分の真意を任意に述べられるように、利害関係人には席を外してもらう運用が行われていると説明されています(公正証書遺言の作り方)。これは公証人のもとでの手続についての説明で、相談の場の決まりではありません。

案内されたときは、家族が疑われていると決めつけず、親が気兼ねなく話すための進め方の一つと受け止めて、案内に沿って動けばよいでしょう。気になることがあれば、どのくらい待つのかなどを尋ねてかまいません。ただし、親が話した内容を家族があとで聞けるとは限りません。席を外すよう言われることがあると前もって親に話しておくと、親も戸惑いにくくなります。

席を外したからといって、あとで争いにならないと決まるわけではなく、同席していたから争いになると決まるわけでもありません。遺言と判断能力の関係は認知症でも遺言は書ける?で、親の様子で気になる点の伝え方は相続の相談で、親の判断能力が気になるときで扱っています。すでに家族の間で争いになっている場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。

まとめ

親の相続や遺言の相談に付き添うときは、親への質問にまず親に答えてもらい、話す時間を空け、質問の準備やメモを手伝うことが家族の役割になります。事実の補足や家族自身の意見は、親の話と分けて伝えます。席を外すよう案内されたら、親が気兼ねなく話すための進め方の一つと受け止め、気になることは尋ねてかまいません。進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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