問題:

認知に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 父が胎内に在る子を母の承諾を得て認知した場合において、その子が出生し、民法772条の規定によりその子の父が定められるときは、その認知は、効力を生じない。

イ. 父は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができるが、その直系卑属が成年者であるときであっても、その承諾を得ることを要しない。

ウ. 出生した子を認知した父は、その認知を取り消すことができないが、認知について反対の事実があることを理由として、認知の時から7年以内に限り、認知の無効の訴えを提起することができる。

エ. 父が胎内に在る子を認知した場合において、子の母が認知の無効の訴えを提起するときは、子の母が認知を知った時から7年以内に提起しなければならない。

オ. 認知の無効の訴えにより認知が無効とされた場合には、子は、認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還しなければならない。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法783条1項は、「父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。」と定め、同条2項は、「前項の子が出生した場合において、第七百七十二条の規定によりその子の父が定められるときは、同項の規定による認知は、その効力を生じない。」と定めている。なお、民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号)附則5条1項は、「新民法第七百八十三条第二項の規定は、施行日以後に生まれる子について適用する。」と定めている。

イ 誤り。民法783条3項は、「父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。」と定めている。直系卑属が成年者であるときは、その承諾を要する。なお、民法782条は、「成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。」と定めている。

ウ 正しい。民法785条は、「認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。」と定めている。民法786条1項は、「次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(第七百八十三条第一項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時)から七年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。」と定め、同項2号は、「認知をした者」について「認知の時」を定めている。なお、令和4年法律第102号附則5条2項は、「新民法第七百八十六条の規定は、施行日以後にされる認知について適用し、施行日前にされた認知に対する反対の事実の主張については、なお従前の例による。」と定めている。

エ 誤り。民法786条1項3号は、「子の母」について「子の母が認知を知った時」を定めているが、同項柱書の括弧書きは、「第七百八十三条第一項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時」としている。胎内に在る子を認知した場合には、子の母も子の出生の時から7年以内に限り提起することができる。なお、同項ただし書は、「第三号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」と定めている。

オ 誤り。民法786条4項は、「第一項及び第二項の規定により認知が無効とされた場合であっても、子は、認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。」と定めている。なお、同条2項本文は、子は、その子を認知した者と認知後に継続して同居した期間(当該期間が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、同条1項(1号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、21歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができると定め、同条3項は、「前項の規定は、同項に規定する子の法定代理人が第一項の認知の無効の訴えを提起する場合には、適用しない。」と定めている。

ポイント:胎内に在る子の認知には母の承諾を要し、出生した子について民法772条により父が定められるときは、その認知は効力を生じない(民法783条1項・2項)。死亡した子の認知は直系卑属があるときに限られ、直系卑属が成年者であるときはその承諾を要する(民法783条3項)。認知をした父又は母はその認知を取り消すことができないが(民法785条)、子又はその法定代理人、認知をした者及び子の母は、認知について反対の事実があることを理由として、それぞれ定められた時から7年以内に限り認知の無効の訴えを提起することができ、胎内に在る子を認知した場合の起算点は子の出生の時である(民法786条1項)。認知が無効とされても、子は監護に要した費用を償還する義務を負わない(民法786条4項)。「胎児の認知は母の承諾、772条で父が定まれば効力なし、死亡した子は成年の直系卑属の承諾、取消しはできないが7年以内に無効の訴え、胎児の認知の起算点は出生の時、監護費用の償還なし」と押さえる。


問題:

付記登記及び登記上の利害関係を有する第三者に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 順位1番の抵当権の債権額を増額する変更の登記を申請する場合において、登記上の利害関係を有する第三者である順位2番の抵当権者の承諾を証する情報を提供しないときは、当該変更の登記の申請をすることができない。

イ. 順位1番の抵当権について抵当権の移転の登記が2回された場合には、これらの登記はいずれも付記登記によってされ、その順位は主登記の順位により、これらの登記の相互の順位はその前後による。

ウ. 抵当権の登記の抹消は、当該抵当権を目的とする転抵当権の登記があるときは、その登記名義人の承諾があるときに限り申請することができ、登記官は、当該抵当権の登記の抹消をするときは、当該転抵当権の登記の抹消をしなければならない。

エ. 抹消された抵当権の登記の回復を申請する場合において、登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その承諾を証する情報又は当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなくても、付記登記によらないで回復の登記を申請することができる。

オ. 登記の全部が抹消された場合における当該登記の回復は、付記登記によってするものとされている。

答え:

誤っているものは、ア・エ・オの3つである。

解説:

ア 誤り。不動産登記法66条は、「権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。」と定めている。同条が限定しているのは付記登記によってすることができる場合であり、不動産登記令別表二十五の項添付情報欄ロも、承諾を証する情報等の提供を「付記登記によってする権利の変更の登記又は更正の登記を申請する場合」について求めている。承諾を証する情報を提供しないときは付記登記によらないで変更の登記をすることになり、申請ができないわけではない。この場合の順位は、不動産登記法4条1項の「登記の前後」による。

イ 正しい。不動産登記規則3条は、付記登記によってするものとして、6号に「所有権以外の権利の移転の登記」を掲げている。不動産登記法4条2項は、付記登記の順位は主登記の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後によると定めている。

ウ 正しい。不動産登記法68条は、「権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。」と定め、不動産登記規則152条2項前段は、「登記官は、前項の場合において、抹消に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記があるときは、当該第三者の権利に関する登記の抹消をしなければならない。」と定めている。民法376条1項は、抵当権者が「その抵当権を他の債権の担保」とすることができると定めており、転抵当権はこの抵当権を目的とする権利である。なお、不動産登記令別表二十六の項添付情報欄トは、第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報のほか、「当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」も掲げている。

エ 誤り。不動産登記法72条は、「抹消された登記(権利に関する登記に限る。)の回復は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の回復につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。」と定めている。不動産登記令別表二十七の項添付情報欄ロは、第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報又は「当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げている。第三者があるときは、これらの情報を提供しなければ回復の登記の申請そのものができない点で、付記登記によることができるかどうかを定める同法66条と異なる。

オ 誤り。不動産登記規則3条は、付記登記によってするものとして、4号に「登記事項の一部が抹消されている場合においてする抹消された登記の回復」を掲げている。登記の全部が抹消された場合における回復は同条各号に掲げられておらず、付記登記によってするものとはされていない。なお、不動産登記規則155条は、「登記官は、抹消された登記の回復をするときは、回復の登記をした後、抹消に係る登記と同一の登記をしなければならない。」と定めている。

ポイント:権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾がある場合及び第三者がない場合に限り付記登記によってすることができ、承諾を証する情報の提供が求められるのは付記登記によるときである(不動産登記法66条、不動産登記令別表二十五の項)。権利に関する登記の抹消及び抹消された登記の回復は、第三者があるときは、その承諾があるときに限り申請することができる(不動産登記法68条、72条)。抹消に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記は登記官が抹消する(不動産登記規則152条2項)。所有権以外の権利の移転の登記は付記登記であり、付記登記の順位は主登記の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後による(不動産登記規則3条6号、不動産登記法4条2項)。付記登記とされる回復は登記事項の一部が抹消されている場合のものである(不動産登記規則3条4号)。「変更は承諾がなくても付記によらなければ申請できる、抹消と回復は承諾がなければ申請できない、回復で付記とされるのは一部抹消の場合」と押さえる。


問題:

単元株式数に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 発行済株式の総数が10万株である株式会社は、単元株式数を1000株とする定款の定めを設けることができる。

イ. 株式の分割と同時に単元株式数についての定款の定めを設ける場合において、当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数が、当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数を下回るものでないときは、株主総会の決議によらないで、当該定款の変更をすることができる。

ウ. 取締役会設置会社が取締役会の決議によって定款を変更して単元株式数を減少した場合には、その変更の登記の申請書に、当該取締役会の議事録を添付しなければならない。

エ. 株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について剰余金の配当を受ける権利を行使することができない旨を定款で定めることができる。

オ. 単元未満株主による単元未満株式の買取りの請求に係る株式の買取りは、当該請求の時に、その効力を生ずる。

答え:

正しいものは、イ・ウの2つである。

解説:

ア 誤り。会社法188条2項は、「前項の一定の数は、法務省令で定める数を超えることはできない。」と定め、会社法施行規則34条は、「法第百八十八条第二項に規定する法務省令で定める数は、千及び発行済株式の総数の二百分の一に当たる数とする。」と定めている。同条は二つの数を「及び」で掲げており、単元株式数はそのいずれも超えることができない。発行済株式の総数が10万株である場合の200分の1に当たる数は500であり、1000株はこれを超えるから、単元株式数を1000株とすることはできない。

イ 正しい。会社法191条は、「株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。」と定め、1号に「株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。」を、2号に、定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数が定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)を下回るものでないことを掲げている。例えば、単元株式数の定めのない株式会社が1株を100株に分割すると同時に単元株式数を100株とする場合、変更後の数は100を100で除した1となり、変更前の1を下回らない。なお、同法190条は、「単元株式数を定める場合には、取締役は、当該単元株式数を定める定款の変更を目的とする株主総会において、当該単元株式数を定めることを必要とする理由を説明しなければならない。」と定めている。

ウ 正しい。会社法195条1項は、「株式会社は、第四百六十六条の規定にかかわらず、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、定款を変更して単元株式数を減少し、又は単元株式数についての定款の定めを廃止することができる。」と定めている。同法911条3項8号は登記事項として「単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数」を掲げ、同法915条1項は変更が生じたときの変更の登記を定めている。商業登記法46条2項は、「登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。」と定めている。なお、会社法195条2項は、この定款の変更をした場合には、当該定款の変更の効力が生じた日以後遅滞なく、株主に対し当該定款の変更をした旨を通知しなければならないと定め、同条3項は、「前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。」と定めている。

エ 誤り。会社法189条2項は、「株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について次に掲げる権利以外の権利の全部又は一部を行使することができない旨を定款で定めることができる。」と定め、6号に「前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める権利」を掲げている。会社法施行規則35条1項7号は、「株式会社が行う次に掲げる行為により金銭等の交付を受ける権利」として、ニに「剰余金の配当」を掲げ、同条2項1号は、株券発行会社についても同条1項7号に掲げる権利を掲げている。剰余金の配当により金銭等の交付を受ける権利は、定款で行使を制限することができない権利である。なお、会社法189条1項は、単元未満株主は「その有する単元未満株式について、株主総会及び種類株主総会において議決権を行使することができない。」と定めている。

オ 誤り。会社法193条6項は、「前条第一項の規定による請求に係る株式の買取りは、当該株式の代金の支払の時に、その効力を生ずる。」と定めている。なお、同法192条3項は、「第一項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。」と定めている。

ポイント:単元株式数の上限は1000及び発行済株式の総数の200分の1に当たる数である(会社法188条2項、会社法施行規則34条)。単元株式数を定める定款の変更を目的とする株主総会では取締役が理由を説明するが(会社法190条)、株式の分割と同時にし、各株主の株式の数を単元株式数で除して得た数が変更前の数を下回らない場合は株主総会の決議によらないですることができ(会社法191条)、単元株式数の減少又は定めの廃止は取締役の決定(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)によることができ、取締役会の決議によったときは登記の申請書にその議事録を添付する(会社法195条1項、911条3項8号、商業登記法46条2項)。定款で行使を制限することができない権利には、剰余金の配当により金銭等の交付を受ける権利も含まれる(会社法189条2項6号、会社法施行規則35条1項7号ニ)。買取りの効力は代金の支払の時に生じ、請求の撤回には会社の承諾を要する(会社法193条6項、192条3項)。「上限は1000と200分の1のどちらも超えない、分割と同時で単元株式数で除した数が変更前を下回らなければ総会不要、減少・廃止は取締役会等、配当は定款で制限できない、買取りの効力は代金の支払の時」と押さえる。


問題:

担保権の実行としての競売等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 抵当権の仮登記がされているにとどまる不動産については、抵当権者は、その不動産についての不動産担保権の実行の申立てをしただけでは、不動産担保権の実行を開始させることができない。

イ. 不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいて、債務者は担保権の不存在又は消滅を理由とすることができるが、不動産の所有者はこれを理由とすることができない。

ウ. 担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない。

エ. 不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本が提出されたときは、執行裁判所は、手続を停止するとともに、既にした執行処分をも取り消さなければならない。

オ. 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあったときは、当該動産が民事執行法123条2項に規定する場所又は容器にない場合を除き、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができ、この申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

答え:

誤っているものは、イ・エの2つである。

解説:

ア 正しい。民事執行法181条1項は、「不動産担保権の実行は、第一号の申立て又は第二号の文書若しくは電磁的記録の提出があつたときに限り、開始する。」と定め、同項1号は、「担保権の登記(仮登記を除く。)がされた不動産についての不動産担保権の実行の申立て」を掲げている。仮登記は除かれているから、同号の申立てだけでは開始せず、同項2号に掲げる文書又は電磁的記録(同号イの担保権の存在を証する確定判決の謄本又は記録事項証明書、同号ロの担保権の存在を証する公正証書の謄本等)の提出が必要である。

イ 誤り。民事執行法182条は、「不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。」と定めている。不動産の所有者も理由とすることができる。

ウ 正しい。民事執行法184条は、「担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない。」と定めている。

エ 誤り。民事執行法183条1項は、不動産担保権の実行の手続を停止しなければならない場合として、2号ホに「不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本又は記録事項証明書」を掲げている。同条2項は、「前項第一号の申立て又は同項第二号イからニまでに掲げる文書若しくは電磁的記録の提出があつたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。」と定めており、同号ホの文書はこれに含まれないから、手続は停止するが、既にした執行処分を取り消すことを要しない。

オ 正しい。民事執行法190条2項は、「執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第百二十三条第二項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。」と定め、同条4項は、「第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。」と定めている。なお、同条1項は、動産競売が開始する場合として、債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合(1号)、当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合(2号)、同条2項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、捜索に先立って又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合(3号)を掲げている。

ポイント:不動産担保権の実行は、担保権の登記(仮登記を除く。)がされた不動産についての申立て又は担保権の存在を証する確定判決の謄本等の提出があったときに限り開始する(民事執行法181条1項)。開始決定に対する執行抗告又は執行異議では、債務者も不動産の所有者も担保権の不存在又は消滅を理由とすることができ(民事執行法182条)、代金の納付による買受人の取得は担保権の不存在又は消滅により妨げられない(民事執行法184条)。停止の文書のうち、既にした執行処分の取消しまで必要になるのは民事執行法183条1項2号イからニまでであり、ホの一時の停止の裁判は含まれない(民事執行法183条2項)。動産競売は、動産の提出、占有者の差押え承諾文書の提出又は執行裁判所の許可の決定書の謄本の提出と決定の送達により開始し、許可の申立てについての裁判には執行抗告をすることができる(民事執行法190条1項・2項・4項)。「仮登記では足りない、所有者も不存在・消滅を理由にできる、代金納付による取得は不存在・消滅で妨げられない、一時の停止なら処分は取り消さない、動産競売の許可は執行裁判所で執行抗告あり」と押さえる。


問題:

司法書士の事務所の表示、報酬の基準の明示、依頼の拒否及び書類の作成に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 業務の停止の処分を受けた司法書士は、その停止の期間中、司法書士の事務所である旨の表示又はこれに類する表示をしてはならない。

イ. 司法書士は、司法書士法3条1項各号に掲げる事務を受任しようとする場合には、依頼をしようとする者から請求があったときに限り、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示せば足りる。

ウ. 司法書士は、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒んだ場合において、依頼者の請求があるときは、その理由書を交付しなければならない。

エ. 司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務について事件の依頼を承諾しないときは、依頼者の請求があるときに限り、その理由書を交付すれば足り、その旨を依頼者に通知することを要しない。

オ. 司法書士は、司法書士法3条1項6号に規定する簡易裁判所における手続の代理の業務に関して作成した書類についても、その末尾又は欄外に記名し、職印を押さなければならない。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。司法書士法施行規則20条3項は、「司法書士は、業務の停止の処分を受けたときは、その停止の期間中第一項の表示又はこれに類する表示をしてはならない。」と定めている。同条1項は、「司法書士は、司法書士会に入会したときは、その司法書士会の会則(以下「会則」という。)の定めるところにより、事務所に司法書士の事務所である旨の表示をしなければならない。」と定め、同条2項は、「司法書士会に入会していない司法書士は、前項の表示又はこれに類する表示をしてはならない。」と定めている。

イ 誤り。司法書士法施行規則22条は、「司法書士は、法第三条第一項各号に掲げる事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない。」と定めている。依頼をしようとする者からの請求の有無を問わない。

ウ 正しい。司法書士法施行規則27条1項は、「司法書士は、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒んだ場合において、依頼者の請求があるときは、その理由書を交付しなければならない。」と定めている。なお、司法書士法21条は、「司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。」と定めている。

エ 誤り。司法書士法施行規則27条2項は、「司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務について事件の依頼を承諾しないときは、速やかに、その旨を依頼者に通知しなければならない。」と定めている。依頼者の請求の有無を問わず通知を要し、同項は理由書の交付を定めていない。なお、簡裁訴訟代理等関係業務は、司法書士法3条2項により同条1項6号から8号までに規定する業務をいう。

オ 誤り。司法書士法施行規則28条1項は、「司法書士は、その作成した書類(法第三条第一項第六号及び第七号に規定する業務に関するものを除く。)の末尾又は欄外に記名し、職印を押さなければならない。」と定めている。司法書士法3条1項6号に規定する業務に関する書類は、括弧書きにより除かれている。なお、司法書士法施行規則21条は、「司法書士は、会則の定めるところにより、業務上使用する職印を定めなければならない。」と定めている。

ポイント:司法書士会に入会したときは事務所である旨の表示をしなければならず、司法書士会に入会していない司法書士及び業務の停止の期間中の司法書士はその表示又はこれに類する表示をしてはならない(司法書士法施行規則20条)。報酬の基準は、請求の有無を問わず、受任しようとする場合にあらかじめ示す(司法書士法施行規則22条)。依頼を拒んだ場合は依頼者の請求があるときに理由書を交付し(司法書士法21条、司法書士法施行規則27条1項)、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼を承諾しないときは速やかにその旨を通知する(司法書士法施行規則27条2項)。作成した書類への記名及び職印は、司法書士法3条1項6号及び7号に規定する業務に関するものを除く(司法書士法施行規則28条1項)。「停止期間中は表示不可、報酬の基準はあらかじめ、通常の依頼の拒否は請求で理由書、簡裁等は速やかに通知、記名職印は6号7号の書類を除く」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(親族・認知) 胎内に在る子の認知と出生後の父の定め、死亡した子の認知、認知の取消しの禁止と認知の無効の訴え、胎内に在る子を認知した場合の起算点、監護費用の償還 民法782条、783条、785条、786条、令和4年法律第102号附則5条
第2問 不動産登記法(付記登記・登記上の利害関係を有する第三者) 権利の変更の登記と承諾、付記登記の順位、抹消と承諾・職権による抹消、抹消された登記の回復と承諾、付記登記によってする回復の範囲 不動産登記法4条、66条、68条、72条、不動産登記令別表二十五〜二十七の項、不動産登記規則3条4号・6号、152条2項、155条、民法376条1項
第3問 会社法・商業登記法(単元株式数) 単元株式数の上限、株式の分割と同時にする定款の変更、単元株式数の減少と登記の添付書面、定款で制限することができない権利、買取りの効力発生時期 会社法188条2項、189条、190条、191条、192条3項、193条6項、195条、911条3項8号、915条1項、会社法施行規則34条、35条1項7号・2項1号、商業登記法46条2項
第4問 民事執行法(担保権の実行) 仮登記と開始の要件、開始決定に対する不服申立ての理由、買受人の取得の効果、手続の停止と執行処分の取消し、動産競売の開始の許可 民事執行法181条1項、182条、183条、184条、190条
第5問 司法書士法(事務所の表示・依頼の拒否等) 業務の停止中の表示の禁止、報酬の基準の明示、依頼を拒んだ場合の理由書、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼を承諾しない場合の通知、書類への記名及び職印 司法書士法3条、21条、司法書士法施行規則20条、21条、22条、27条、28条1項