問題:

事務管理に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意があるのでなければ、重大な過失があったとしても、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

イ. 管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならないが、本人が既にこれを知っているときは、通知をすることを要しない。

ウ. 管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならず、事務管理の継続が本人の意思に反することが明らかであるときであっても、その継続をやめることはできない。

エ. 管理者は、本人に引き渡すべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならず、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

オ. 管理者が本人の意思に反して事務管理をした場合には、管理者は、本人のために有益な費用を支出したときであっても、本人に対し、その償還を請求することができない。

答え:

正しいものは、イ・エの2つである。

解説:

ア 誤り。民法698条は、「管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。」と定めている。損害賠償の責任を免れるのは、悪意も重大な過失もない場合であり、重大な過失があるときは、悪意がなくても責任を免れない。

イ 正しい。民法699条は、「管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。」と定めている。

ウ 誤り。民法700条は、「管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。」と定めている。事務管理の継続が本人の意思に反することが明らかであるときは、同条ただし書により、継続の義務を負わない。

エ 正しい。民法701条は、「第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。」と定めている。民法647条は、「受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と定めており、この規定が民法701条により事務管理について準用される。なお、民法701条により、受任者による報告(民法645条)、受任者による受取物の引渡し等(民法646条)の規定も事務管理について準用される。

オ 誤り。民法702条1項は、「管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。」と定め、同条3項は、「管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。」と定めている。本人の意思に反して事務管理をした場合であっても、管理者は、本人が現に利益を受けている限度において、有益な費用の償還を請求することができる。なお、同条2項は、「第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。」と定めている。

ポイント:急迫の危害を免れさせるための事務管理(緊急事務管理)では、管理者は悪意又は重大な過失がなければ損害賠償の責任を負わない(民法698条)。管理者は事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならないが、本人が既に知っているときは不要である(民法699条)。管理者は本人等が管理をすることができるに至るまで事務管理を継続しなければならないが、継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない(民法700条)。報告・受取物の引渡し・金銭の消費についての責任は、委任の規定(民法645条〜647条)が準用される(民法701条)。有益な費用は償還を請求でき、有益な債務の負担については民法650条2項が準用されるが、本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度に縮減される(民法702条)。「緊急なら悪意・重過失だけが責任、知っていれば通知不要、意思に反するなら継続不要、委任は645条〜647条を準用、意思に反しても現存利益の限度で償還」と押さえる。


問題:

抵当権又は根抵当権の登記の登記事項に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 抵当権の設定の登記においては、債務者が抵当権設定者と同一人である場合であっても、債務者の氏名又は名称及び住所を登記しなければならない。

イ. 根抵当権の設定の登記においては、債権額は登記事項とならず、担保すべき債権の範囲及び極度額が登記事項となる。

ウ. 抵当権(根抵当権を除く。)の登記においては、民法375条2項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定めが登記事項となる。

エ. 根抵当権の共有者が、元本の確定前に、それぞれの債権額の割合と異なる割合で弁済を受ける旨を定めたときであっても、その定めは、根抵当権の登記の登記事項とならない。

オ. 抵当権(根抵当権を除く。)の登記においては、抵当証券発行の定めがない場合であっても、元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定めが登記事項となる。

答え:

誤っているものは、エ・オの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法83条1項は、「先取特権、質権若しくは転質又は抵当権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。」と定め、同項2号に「債務者の氏名又は名称及び住所」を掲げている。同号は、債務者の氏名又は名称及び住所を、「定めがあるときは」等の条件を付さずに登記事項として掲げており、債務者が抵当権設定者と同一人である場合を除外していない。

イ 正しい。不動産登記法88条2項は、「根抵当権の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第一号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。」と定め、同項1号に「担保すべき債権の範囲及び極度額」を掲げている。不動産登記法83条1項1号は「債権額(一定の金額を目的としない債権については、その価額)」であり、根抵当権の登記では、これが除かれている。

ウ 正しい。不動産登記法88条1項は、「抵当権(根抵当権(民法第三百九十八条の二第一項の規定による抵当権をいう。以下同じ。)を除く。)の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。」と定め、同項2号に「民法第三百七十五条第二項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定め」を掲げている。なお、同項1号は「利息に関する定めがあるときは、その定め」を掲げているが、根抵当権の登記の登記事項を定める同条2項は、利息に関する定めも損害の賠償額の定めも掲げていない。

エ 誤り。民法398条の14第1項は、「根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。」と定めている。そして、不動産登記法88条2項4号は、根抵当権の登記の登記事項として、「民法第三百九十八条の十四第一項ただし書の定めがあるときは、その定め」を掲げている。債権額の割合と異なる割合で弁済を受ける旨の定めは、同項ただし書の定めであり、根抵当権の登記の登記事項となる。なお、不動産登記法88条2項は、このほか、「民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め」(2号)、「担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、その定め」(3号)を掲げている。

オ 誤り。不動産登記法88条1項は、5号に「抵当証券発行の定めがあるときは、その定め」を、6号に「前号の定めがある場合において元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定め」を掲げている。元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めが登記事項となるのは、抵当証券発行の定めがある場合に限られる。

ポイント:担保権の登記には、不動産登記法59条各号の事項のほか、債権額、債務者の氏名又は名称及び住所等が登記事項となる(不動産登記法83条1項)。根抵当権を除く抵当権の登記では、さらに利息に関する定め、民法375条2項の損害の賠償額の定め、債権に付した条件、民法370条ただし書の別段の定め、抵当証券発行の定めと、その定めがある場合の元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めが登記事項となる(不動産登記法88条1項)。根抵当権の登記では、債権額(不動産登記法83条1項1号)が除かれ、担保すべき債権の範囲及び極度額、民法370条ただし書の別段の定め、担保すべき元本の確定すべき期日の定め、民法398条の14第1項ただし書の定めが登記事項となる(不動産登記法88条2項)。「債務者は常に登記、根抵当権は債権額に代えて範囲と極度額、利息・損害金は普通抵当権だけ、共有者の弁済の割合の定めも登記事項、弁済期・支払場所は抵当証券発行の定めがあるときだけ」と押さえる。


問題:

監査役会設置会社でない株式会社の監査役に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 監査役は、当該株式会社の支配人を兼ねることはできないが、当該株式会社の子会社の支配人を兼ねることはできる。

イ. 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

ウ. 取締役は、監査役が2人以上ある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役の全員の同意を得なければならない。

エ. 監査役を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。

オ. 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、会社法上の監査役設置会社に当たらないから、監査役の氏名を登記することを要しない。

答え:

誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

ア 誤り。会社法335条2項は、「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。」と定めている。監査役は、当該株式会社の支配人だけでなく、その子会社の支配人も兼ねることができない。

イ 正しい。会社法336条4項は、「前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。」と定め、同項3号に「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」を掲げている。なお、同項は、このほか、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更(1号)、監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更(2号)、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更(4号)を掲げている。

ウ 誤り。会社法343条1項は、「取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。」と定めている。監査役が2人以上ある場合に必要なのは、その過半数の同意であり、全員の同意ではない。なお、同条3項は、監査役会設置会社においては、同条1項の「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」を「監査役会」と読み替えると定めている。

エ 正しい。会社法345条2項は、「会計参与を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。」と定め、同条4項は、「第一項の規定は監査役について、前二項の規定は監査役を辞任した者について、それぞれ準用する。」と定めている。同条2項が監査役を辞任した者について準用される。

オ 誤り。会社法2条9号は、監査役設置会社を「監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」と定義しており、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、監査役設置会社に当たらない。しかし、株式会社の設立の登記の登記事項を定める会社法911条3項は、17号に「監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項」を掲げ、同号イに「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨」を、同号ロに「監査役の氏名」を掲げている。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社でも、監査役の氏名は登記事項となる。

ポイント:監査役は、株式会社又はその子会社の取締役・支配人その他の使用人、子会社の会計参与・執行役を兼ねることができない(会社法335条2項)。監査役の任期は、監査役を置く旨の定款の定めの廃止、監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更、会計に関する監査の範囲の限定の定めの廃止、全部の株式についての譲渡制限の定めの廃止の各定款の変更の効力が生じた時に満了する(会社法336条4項)。監査役の選任議案の提出には、監査役(2人以上なら過半数。監査役会設置会社では監査役会)の同意が必要である(会社法343条1項・3項)。監査役を辞任した者は、辞任後最初の株主総会に出席して辞任した旨及びその理由を述べることができる(会社法345条4項・2項)。会計に関する監査の範囲の限定の定めがある会社は監査役設置会社に当たらないが(会社法2条9号)、登記ではその定めがある旨と監査役の氏名を登記する(会社法911条3項17号)。「兼任禁止は子会社の使用人にも及ぶ、会計限定の廃止で任期満了、選任議案の同意は過半数、辞任者は次の総会で理由を述べられる、会計限定でも登記では監査役設置会社として氏名を登記」と押さえる。


問題:

不動産に対する強制競売に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生じ、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときであっても、その送達の時に生ずる。

イ. 差押えは、債務者が通常の用法に従って不動産を使用し、又は収益することを妨げない。

ウ. 強制競売の開始決定がされた不動産について更に強制競売の申立てがあったときは、執行裁判所は、その申立てを却下しなければならない。

エ. 買受人は、売却許可決定が確定した時に不動産を取得する。

オ. 引渡命令の申立ては、買受人が代金を納付した日から6月(買受けの時に民法395条1項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあっては、9月)を経過したときは、することができない。

答え:

誤っているものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

ア 誤り。民事執行法46条1項は、「差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。」と定めている。差押えの登記が開始決定の送達前にされたときは、差押えの効力は、登記がされた時に生ずる。なお、民事執行法45条1項は、「執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の開始決定は、債務者に送達しなければならない。」と定め、民事執行法48条1項は、「強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない。」と定めている。

イ 正しい。民事執行法46条2項は、「差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない。」と定めている。

ウ 誤り。民事執行法47条1項は、「強制競売又は担保権の実行としての競売(以下この節において「競売」という。)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。」と定めている。なお、同条2項は、「先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の申立てが取り下げられたとき、又は先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の手続が取り消されたときは、執行裁判所は、後の強制競売の開始決定に基づいて手続を続行しなければならない。」と定めている。

エ 誤り。民事執行法79条は、「買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。」と定めている。買受人が不動産を取得するのは、代金を納付した時である。

オ 正しい。民事執行法83条1項本文は、「執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。」と定め、同条2項は、「買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。」と定めている。なお、同条1項ただし書は、「事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。」と定めている。

ポイント:強制競売の開始決定では債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、開始決定は債務者に送達され、裁判所書記官が直ちに差押えの登記を嘱託する(民事執行法45条1項・2項、48条1項)。差押えの効力は開始決定の送達時に生ずるが、差押えの登記が送達前にされたときは登記の時に生ずる(民事執行法46条1項)。差押え後も、債務者は通常の用法に従って不動産を使用・収益できる(民事執行法46条2項)。既に開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあれば、更に開始決定がされ(二重開始決定)、先の申立ての取下げや手続の取消しがあれば後の開始決定に基づいて手続が続行される(民事執行法47条1項・2項)。買受人は代金を納付した時に不動産を取得し(民事執行法79条)、引渡命令の申立ては代金納付の日から6月(抵当建物使用者が占有していた建物の買受人は9月)を経過するとできなくなる(民事執行法83条2項)。「差押えの効力は送達と登記の早い方、使用収益は妨げない、二重の申立ては却下でなく二重開始決定、取得は代金納付時、引渡命令は6月(抵当建物使用者なら9月)以内」と押さえる。


問題:

司法書士法人(簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とするものを除く。)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 司法書士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立し、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、主たる事務所の所在地の司法書士会及び日本司法書士会連合会に届け出なければならない。

イ. 司法書士法人の社員は、各自司法書士法人を代表するが、定款又は総社員の同意によって、社員のうち特に司法書士法人を代表すべきものを定めることができる。

ウ. 司法書士法人は、主たる事務所には社員を常駐させなければならないが、従たる事務所には、社員でない使用人である司法書士を常駐させれば足りる。

エ. 司法書士法人は、社員が1人となったときは、解散する。

オ. 司法書士法人の清算人は、司法書士でなければならない。

答え:

正しいものは、ア・イ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。司法書士法33条は、「司法書士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。」と定め、司法書士法34条は、「司法書士法人は、成立したときは、成立の日から二週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会(以下「主たる事務所の所在地の司法書士会」という。)及び日本司法書士会連合会に届け出なければならない。」と定めている。

イ 正しい。司法書士法37条1項は、「司法書士法人の社員は、各自司法書士法人を代表する。ただし、定款又は総社員の同意によつて、社員のうち特に司法書士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。」と定めている。なお、同条4項は、同条1項の規定により司法書士法人を代表する社員の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができないと定めている。

ウ 誤り。司法書士法39条は、「司法書士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会の会員である社員を常駐させなければならない。」と定めている。同条は主たる事務所と従たる事務所を区別しておらず、従たる事務所にも、その所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会の会員である社員を常駐させなければならない。

エ 誤り。司法書士法44条1項は、司法書士法人の解散の理由として、「定款に定める理由の発生」(1号)、「総社員の同意」(2号)、「他の司法書士法人との合併」(3号)、「破産手続開始の決定」(4号)、「解散を命ずる裁判」(5号)、「第四十八条第一項第三号の規定による解散の処分」(6号)、「社員の欠亡」(7号)を掲げている。社員が1人となったことは同項に掲げる解散の理由に当たらず、社員が1人となっただけでは、司法書士法人は解散しない。社員に関して解散の理由となるのは、社員が1人もいなくなる「社員の欠亡」(7号)である。なお、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年法律第29号。令和2年8月1日施行)による改正前の司法書士法44条2項は、社員が1人になり、そのなった日から引き続き6月間その社員が2人以上にならなかった場合には、その6月を経過した時に解散すると定めていたが、同改正により削除され、同条1項7号の「社員の欠亡」が設けられた。

オ 正しい。司法書士法44条3項は、「司法書士法人の清算人は、司法書士でなければならない。」と定めている。なお、同条2項は、「司法書士法人は、前項第三号の事由以外の事由により解散したときは、解散の日から二週間以内に、その旨を、主たる事務所の所在地の司法書士会及び日本司法書士会連合会に届け出なければならない。」と定めている。

ポイント:司法書士法人は主たる事務所の所在地における設立の登記によって成立し(司法書士法33条)、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、主たる事務所の所在地の司法書士会と日本司法書士会連合会に届け出る(司法書士法34条)。社員は各自司法書士法人を代表するが、定款又は総社員の同意で代表すべき社員を定めることができる(司法書士法37条1項)。事務所には、主たる事務所か従たる事務所かを問わず、その所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会の会員である社員を常駐させなければならない(司法書士法39条)。解散の理由は司法書士法44条1項1号〜7号に掲げられ、社員については「社員の欠亡」(同項7号)であって、社員が1人となることは解散の理由ではない。清算人は司法書士でなければならない(司法書士法44条3項)。「成立は主たる事務所での設立登記、届出は2週間以内に会と連合会へ、代表は各自が原則、どの事務所にも社員が常駐、解散は社員の欠亡で1人では解散しない、清算人は司法書士」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権・事務管理) 緊急事務管理の責任、管理者の通知義務、事務管理の継続とその例外、委任の規定の準用、本人の意思に反する事務管理と費用の償還 民法645条〜647条、650条2項、698条〜702条
第2問 不動産登記法(抵当権・根抵当権の登記事項) 債務者の氏名等、根抵当権の債権の範囲及び極度額、損害の賠償額の定め、根抵当権の共有者の弁済の割合の定め、抵当証券発行の定めと弁済期等の定め 不動産登記法83条1項、88条1項・2項、民法375条2項、398条の14第1項
第3問 会社法(監査役) 兼任禁止、定款の変更による任期の満了、選任議案についての監査役の同意、辞任した監査役の意見陳述、会計限定監査役の登記 会社法2条9号、335条2項、336条4項、343条1項・3項、345条2項・4項、911条3項17号
第4問 民事執行法(不動産の強制競売) 差押えの効力の発生時期、差押え後の使用収益、二重開始決定、買受人の不動産取得の時期、引渡命令の申立期間 民事執行法45条、46条、47条1項・2項、48条1項、79条、83条
第5問 司法書士法(司法書士法人) 成立の時期と成立の届出、法人の代表、社員の常駐、解散の理由と社員の欠亡、清算人の資格 司法書士法33条、34条、37条1項、39条、44条