問題:

契約の解除に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がなかったときであっても、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、相手方は、契約の解除をすることができない。

イ. 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものである場合であっても、債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

ウ. 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、残存する部分のみで契約をした目的を達することができる場合であっても、催告をすることなく、直ちに契約の全部の解除をすることができる。

エ. 当事者の一方が数人ある場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

オ. 当事者の一方がその解除権を行使した場合において、各当事者が原状回復義務の履行として金銭を返還するときは、解除の意思表示が相手方に到達した時から利息を付さなければならない。

答え:

誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」と定めている。催告期間を経過しても、その時点の不履行が軽微であれば、催告による解除はできない。

イ 誤り。民法543条は、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。」と定めている。「前二条」とは、催告による解除(同法541条)と催告によらない解除(同法542条)の双方を指す。したがって、債務の全部の履行が不能であるとき(同法542条1項1号)であっても、その不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は契約の解除をすることができない。

ウ 誤り。民法542条1項3号は、「債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」に、債権者は催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができると定めている。残存する部分のみで契約をした目的を達することができる場合は、この要件を満たさない。この場合に催告をすることなく直ちにすることができるのは、契約の一部の解除である(同条2項2号は、「債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」に、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができると定めている)。

エ 正しい。民法544条1項は、「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。」と定め、同条2項は、「前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。」と定めている。

オ 誤り。民法545条2項は、「前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。」と定めている。利息を付すべき起算点は、解除の意思表示が到達した時ではなく、金銭を受領した時である。なお、同条3項は、同条1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならないと定めている。

ポイント:催告による解除は、催告期間を経過した時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときはできない(民法541条ただし書)。催告によらない解除は民法542条1項各号の場合に認められ、債務の一部の不能・一部の履行拒絶の場合に契約の全部を無催告で解除できるのは、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときに限られ(民法542条1項3号)、そうでなければ無催告でできるのは一部の解除である(民法542条2項)。債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるときは、催告による解除も催告によらない解除もできない(民法543条)。当事者の一方が数人あるときは、解除は全員から又は全員に対してのみでき、一人について解除権が消滅すれば他の者についても消滅する(民法544条)。解除による原状回復で金銭を返還するときは受領の時から利息を付し、金銭以外の物を返還するときは受領の時以後に生じた果実も返還する(民法545条2項・3項)。「軽微なら催告解除不可、一部の不履行は目的不達成なら全部解除、債権者帰責なら解除不可、利息は受領の時から」と押さえる。


問題:

一般承継人による登記の申請及び登記の申請の委任による代理人の権限に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。

イ. 本人である法人が合併により消滅したときは、その法人から登記の申請の委任を受けた代理人の権限は、消滅する。

ウ. 甲土地の所有権の登記名義人であるAがBに甲土地を売却した後、その所有権の移転の登記を申請する前にAが死亡した場合には、Aの相続人は、Aからその相続人への相続による所有権の移転の登記をした後でなければ、AからBへの売買による所有権の移転の登記を申請することができない。

エ. 甲土地の所有権の登記名義人であるAがBに甲土地を売却した後、その所有権の移転の登記を申請する前にBが死亡した場合には、Bの相続人は、Aと共同して、売買を登記原因として、AからBの相続人への所有権の移転の登記を直接申請することができる。

オ. 不動産登記法62条の規定により相続人その他の一般承継人が権利に関する登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)を提供しなければならない。

答え:

正しいものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法17条は、「登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。」と定め、同条1号に「本人の死亡」を掲げている。民法111条1項1号は、代理権は本人の死亡によって消滅すると定めているが、不動産登記法17条はその特則である。

イ 誤り。不動産登記法17条2号は、委任による代理人の権限が消滅しない事由として「本人である法人の合併による消滅」を掲げている。なお、同条3号は「本人である受託者の信託に関する任務の終了」を、同条4号は「法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更」を掲げている。

ウ 誤り。不動産登記法62条は、「登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる。」と定めている。登記義務者であるAが死亡した場合には、Aの相続人は、同条により、Aが申請人となることができた売買による所有権の移転の登記を、Bと共同して申請することができる。Aからその相続人への相続による所有権の移転の登記を経る必要はない。Aは生前に甲土地をBに売却しており、Aの相続人に甲土地の所有権が承継される関係にはないからである。

エ 誤り。登記権利者であるBが死亡した場合に、Bの相続人が不動産登記法62条により申請することができるのは、Bが申請人となることができた「当該権利に関する登記」、すなわちAからBへの売買による所有権の移転の登記である。物権変動は、AからBへの売買、Bからその相続人への相続という順に生じており、Bの相続人がAから甲土地を買い受けたわけではないから、売買を登記原因としてAからBの相続人への所有権の移転の登記を直接申請することはできない。Bの相続人は、Aと共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請し、その後、Bからその相続人への相続による所有権の移転の登記を申請することになる。

オ 正しい。不動産登記令7条1項5号イは、権利に関する登記を申請する場合において、「法第六十二条の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」を添付情報として提供しなければならないと定めている。

ポイント:登記の申請の委任による代理人の権限は、本人の死亡、本人である法人の合併による消滅、本人である受託者の信託に関する任務の終了、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更によっては消滅しない(不動産登記法17条。本人の死亡で代理権が消滅するとする民法111条1項1号の特則)。登記権利者・登記義務者・登記名義人に相続その他の一般承継があったときは、一般承継人がその者に代わって「当該権利に関する登記」を申請でき(不動産登記法62条)、その際は一般承継を証する公務員作成の情報を提供する(不動産登記令7条1項5号イ)。売主が死亡したときは売主の相続人が相続の登記を経ずに買主と共同して売買の登記を申請し、買主が死亡したときは買主名義への売買の登記をした後に相続の登記をするのであって、買主の相続人名義へ直接の登記はできない。「代理権は死亡・合併でも消えない、一般承継人は被承継人のした取引の登記をそのまま申請する」と押さえる。


問題:

株式会社の事業譲渡等に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 株式会社が事業の重要な一部の譲渡をする場合であっても、当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないときは、株主総会の決議による承認を受けることを要しない。

イ. 株式会社が他の会社の事業の重要な一部の譲受けをする場合には、当該行為がその効力を生ずる日の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

ウ. 株式会社が事業の全部の譲渡をする場合には、当該譲渡に係る契約の相手方が当該株式会社の特別支配会社であるときであっても、株主総会の決議による承認を受けなければならない。

エ. 株式会社が事業の全部の譲渡をする場合において、その承認をする株主総会の決議と同時に当該株式会社の解散の株主総会の決議がされたときは、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができない。

オ. 事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から30年間は、同一の事業を行ってはならない。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

ア 正しい。会社法467条1項は、株式会社は、同項各号に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(効力発生日)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならないと定め、同項2号は、「事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)」を掲げている。譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない事業の重要な一部の譲渡は、同号の対象から除かれ、株主総会の承認を要しない。なお、同項の株主総会の決議は、会社法309条2項11号(「第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会」)により、特別決議による。

イ 誤り。会社法467条1項3号が株主総会の承認を要する行為として掲げているのは、「他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け」である。他の会社の事業の重要な一部の譲受けは、同号に掲げられておらず、事業の重要な一部の譲受けであることを理由として同項の株主総会の承認を要するものではない。

ウ 誤り。会社法468条1項は、「前条の規定は、同条第一項第一号から第四号までに掲げる行為(以下この章において「事業譲渡等」という。)に係る契約の相手方が当該事業譲渡等をする株式会社の特別支配会社(中略)である場合には、適用しない。」と定めている。特別支配会社とは、ある株式会社の総株主の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を他の会社及び当該他の会社が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が有している場合における当該他の会社をいう(同項括弧書き)。事業の全部の譲渡(同法467条1項1号)の相手方が特別支配会社であるときは、株主総会の承認を要しない。

エ 正しい。会社法469条1項は、事業譲渡等をする場合には、反対株主は、事業譲渡等をする株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができると定めたうえで、その例外として、同項1号に「第四百六十七条第一項第一号に掲げる行為をする場合において、同項の株主総会の決議と同時に第四百七十一条第三号の株主総会の決議がされたとき。」を掲げている。会社法471条3号は、株式会社の解散事由として「株主総会の決議」を掲げている。なお、同法469条1項2号は、同法468条2項に規定する場合(同条3項に規定する場合を除く。)も株式買取請求の例外として掲げている。

オ 誤り。会社法21条1項は、事業を譲渡した会社(譲渡会社)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法252条の19第1項の指定都市にあっては、区又は総合区)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、「その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。」と定めている。法律上の競業禁止の期間は30年間ではなく20年間である。30年は、同条2項が、譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合に、その特約は、その事業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有すると定めている期間である。なお、同条3項は、同条1項・2項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならないと定めている。

ポイント:事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、他の会社の事業の全部の譲受け等をする株式会社は、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議で契約の承認を受けなければならない(会社法467条1項、309条2項11号)。ただし、事業の重要な一部の譲渡で譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款で引下げ可)を超えないものは対象外であり(会社法467条1項2号括弧書き)、他の会社の事業については全部の譲受けだけが対象である(会社法467条1項3号)。契約の相手方が特別支配会社である場合は株主総会の承認を要しない(会社法468条1項)。反対株主は株式買取請求ができるが、事業の全部の譲渡の承認と同時に解散の決議がされたときは請求できない(会社法469条1項1号)。譲渡会社は、別段の意思表示がなければ同一及び隣接の市町村の区域内で20年間同一の事業をしてはならず、競業をしない旨の特約は30年の期間内に限り効力を有する(会社法21条1項・2項)。「一部の譲渡は5分の1基準、譲受けは全部だけ、特別支配会社なら総会不要、解散と同時なら買取請求なし、競業禁止は法定20年・特約30年」と押さえる。


問題:

民事訴訟における訴訟手続の中断及び中止に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 当事者が死亡した場合であっても、その当事者に訴訟代理人があるときは、訴訟手続は中断しない。

イ. 当事者が死亡したことにより訴訟手続が中断した場合において、その相続人は、相続の放棄をすることができる間であっても、訴訟手続を受け継ぐことができる。

ウ. 判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる。

エ. 訴訟手続の中断又は中止があったときは、期間は、進行を停止し、訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から、新たに全期間の進行を始める。

オ. 天災その他の事由によって裁判所が職務を行うことができないときは、裁判所は、決定で、訴訟手続の中止を命ずることができる。

答え:

誤っているものは、イ・オの2つである。

解説:

ア 正しい。民事訴訟法124条1項は、同項各号に掲げる事由があるときは訴訟手続は中断すると定め、同項1号に「当事者の死亡」を掲げているが、同条2項は、「前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。」と定めている。訴訟代理権は、当事者の死亡によっては消滅しない(同法58条1項1号)から、訴訟代理人がある間は、訴訟手続は中断しない。

イ 誤り。民事訴訟法124条3項は、「第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。」と定めている。

ウ 正しい。民事訴訟法132条1項は、「判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる。」と定めている。

エ 正しい。民事訴訟法132条2項は、「訴訟手続の中断又は中止があったときは、期間は、進行を停止する。この場合においては、訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から、新たに全期間の進行を始める。」と定めている。中断又は中止の前に経過した期間を差し引いた残りの期間が進行するのではなく、新たに全期間が進行する。

オ 誤り。民事訴訟法130条は、「天災その他の事由によって裁判所が職務を行うことができないときは、訴訟手続は、その事由が消滅するまで中止する。」と定めている。裁判所の職務執行不能による中止は、裁判所の決定を要せず当然に生ずる。裁判所が決定で中止を命ずることができるのは、同法131条1項が定める「当事者が不定期間の故障により訴訟手続を続行することができないとき」である。なお、同条2項は、裁判所は同条1項の決定を取り消すことができると定めている。

ポイント:当事者の死亡等の民事訴訟法124条1項各号の事由があれば訴訟手続は中断するが、訴訟代理人がある間は中断しない(民事訴訟法124条2項。訴訟代理権は当事者の死亡等によって消滅しない=民事訴訟法58条1項)。当事者の死亡による中断の場合でも、相続人は相続の放棄をすることができる間は受継できない(民事訴訟法124条3項)。判決の言渡しは中断中でもでき(民事訴訟法132条1項)、中断・中止があれば期間は進行を停止し、受継の通知又は続行の時から新たに全期間が進行する(民事訴訟法132条2項)。中止には、裁判所の職務執行不能による当然の中止(民事訴訟法130条)と、当事者の不定期間の故障による決定での中止(民事訴訟法131条)がある。「代理人がいれば中断なし、放棄できる間は受継不可、判決言渡しは中断中も可、期間は全期間やり直し、天災は当然中止・当事者の故障は決定で中止」と押さえる。


問題:

司法書士の業務及び非司法書士等の取締りに関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 司法書士は、法務局又は地方法務局の長に対する登記に関する審査請求の手続だけでなく、供託に関する審査請求の手続についても、代理することを業とすることができる。

イ. 司法書士が業として作成することができる裁判所に提出する書類は、簡易裁判所に提出するものに限られる。

ウ. 筆界特定の手続において法務局又は地方法務局に提出する書類を作成する業務は、簡裁訴訟代理等関係業務に当たるため、法務大臣の認定を受けた司法書士でなければ行うことができない。

エ. 司法書士は、司法書士法3条1項に規定する業務であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。

オ. 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(公共嘱託登記司法書士協会を除く。)が、他の法律に別段の定めがないのに、登記に関する手続について代理することを業として行ったときは、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる。

答え:

正しいものは、ア・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。司法書士法3条1項は、司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、同項各号に掲げる事務を行うことを業とすると定め、同項3号に「法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。」を掲げている。登記に関する審査請求だけでなく、供託に関する審査請求の手続も代理の対象である。なお、同項1号は、「登記又は供託に関する手続について代理すること。」を掲げている。

イ 誤り。司法書士法3条1項4号は、「裁判所若しくは検察庁に提出する書類若しくは電磁的記録又は筆界特定の手続(中略)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。」を掲げている。作成することができる書類は簡易裁判所に提出するものに限られない。裁判所の種類による限定がないのは、簡易裁判所における手続の代理(同項6号)との違いである。

ウ 誤り。司法書士法3条2項は、「前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。」と定め、同項各号に、法務大臣が指定する研修の課程を修了した者であること(1号)、その者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること(2号)、司法書士会の会員であること(3号)を掲げている。筆界特定の手続において法務局又は地方法務局に提出する書類の作成は、同条1項4号の業務であって、簡裁訴訟代理等関係業務には当たらず、法務大臣の認定を受けていない司法書士も行うことができる。法務大臣の認定を受けた司法書士に限られるのは、同項8号の筆界特定の手続についての相談・代理(対象土地の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の2分の1に相当する額に、筆界特定によって通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が、裁判所法33条1項1号に定める額を超えないもの)である。

エ 正しい。司法書士法3条8項は、「司法書士は、第一項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。」と定めている。

オ 正しい。司法書士法73条1項は、「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定め、同法78条1項は、「第七十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」と定めている。登記に関する手続についての代理は、同法3条1項1号の業務である。なお、同法73条3項は、司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならないと定めている。

ポイント:司法書士は、登記・供託の手続の代理(司法書士法3条1項1号)、法務局等に提出する書類等の作成(同項2号)、法務局又は地方法務局の長に対する登記・供託に関する審査請求の手続の代理(同項3号)、裁判所・検察庁に提出する書類等や筆界特定の手続で法務局等に提出する書類等の作成(同項4号)、これらの相談(同項5号)を業とし、これらは法務大臣の認定を要しない。認定を受けた司法書士会の会員に限られるのは、同項6号から8号までの簡裁訴訟代理等関係業務である(司法書士法3条2項)。3条1項の業務でも他の法律で制限されているものは行えない(司法書士法3条8項)。司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、他の法律に別段の定めがある場合を除き3条1項1号から5号までの業務を行ってはならず、違反すれば1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる(司法書士法73条1項・78条1項)。「1号〜5号は認定不要、裁判所提出書類は裁判所の種類を問わない、認定が要るのは6号〜8号、非司法書士の1号〜5号業務は刑罰」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(契約・解除) 催告による解除と軽微な不履行、債権者の責めに帰すべき事由による不履行と解除、一部の履行拒絶と全部解除・一部解除、解除権の不可分性、原状回復と利息の起算点 民法541条、542条、543条、544条、545条
第2問 不動産登記法(一般承継人による申請・代理権の不消滅) 本人の死亡・法人の合併と委任による代理人の権限、売主死亡・買主死亡の場合の一般承継人による申請、一般承継を証する情報 不動産登記法17条、62条、不動産登記令7条1項5号イ、民法111条1項1号
第3問 会社法(事業譲渡等) 事業の重要な一部の譲渡の5分の1基準、事業の譲受けの範囲、特別支配会社との事業譲渡等(略式)、反対株主の株式買取請求の例外、譲渡会社の競業の禁止 会社法21条、309条2項11号、467条1項、468条1項、469条1項、471条3号
第4問 民事訴訟法(訴訟手続の中断・中止) 訴訟代理人がある場合の中断の不発生、相続の放棄をすることができる間の受継の制限、中断中の判決の言渡し、期間の進行、職務執行不能による中止と当事者の故障による中止 民事訴訟法58条1項、124条、130条、131条、132条
第5問 司法書士法(業務・非司法書士等の取締り) 審査請求の手続の代理、裁判所提出書類の作成、筆界特定の手続の書類作成と簡裁訴訟代理等関係業務、他の法律による制限、非司法書士の業務の禁止と罰則 司法書士法3条1項・2項・8項、73条1項・3項、78条1項