問題:
寄託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾した上で、受寄者が寄託物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
イ. 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまでは、書面による寄託であっても、契約の解除をすることができる。
ウ. 受寄者は、寄託者の承諾を得ていない場合であっても、やむを得ない事由があるときは、寄託物を第三者に保管させることができる。
エ. 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときは、寄託者は、やむを得ない事由がなければ、その時期の前に返還を請求することができない。
オ. 受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
答え:
正しいものは、ウ・オの2つである。
解説:
ア 誤り。民法657条は、「寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」と定めている。寄託は当事者の合意によって効力を生ずるのであり、受寄者が寄託物を受け取ることは効力発生の要件とされていない。同法657条の2第1項前段が、「寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。」と定めているのも、解除の対象となる契約が寄託物の受取り前に既に効力を生じていることを前提とした規定と解される。なお、同項後段は、「この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。」と定めている。
イ 誤り。民法657条の2第2項は、「無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。」と定めている。書面による寄託の無報酬の受寄者は、寄託物の受取り前であっても、同項の規定による解除をすることができない。なお、同条3項は、「受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。」と定めている。
ウ 正しい。民法658条2項は、「受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。」と定めている。寄託者の承諾がなくても、やむを得ない事由があるときは、寄託物を第三者に保管させることができる。なお、同条1項は、「受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。」と定め、同条3項は、「再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。」と定めている。また、同法659条は、「無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。」と定めている。
エ 誤り。民法662条1項は、「当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。」と定め、同条2項は、「前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。」と定めている。やむを得ない事由が要求されるのは受寄者が期限前に返還をする場合であり、同法663条2項は、「返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。」と定めている。なお、同条1項は、「当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。」と定めている。
オ 正しい。民法664条の2第1項は、「寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。」と定めている。1年の期間制限は、寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害についての寄託者の損害賠償請求だけでなく、受寄者の費用償還請求にも及ぶ。なお、同条2項は、「前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定めている。受寄者の費用償還請求権は、同法665条が寄託について準用する同法650条1項(受任者による費用等の償還請求)に基づくものである。
ポイント:寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じ、寄託物の受取りは効力発生の要件ではない(民法657条)。寄託物を受け取るまでは、寄託者は契約の解除をすることができ(受寄者は損害の賠償を請求できる)、無報酬の受寄者も解除をすることができるが、書面による寄託は除かれる(同法657条の2第1項・2項)。受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない(同法658条2項)。返還の時期の定めがあっても寄託者はいつでも返還を請求することができ(同法662条1項)、やむを得ない事由がなければ期限前に返還できないのは受寄者の側である(同法663条2項)。寄託物の一部滅失・損傷による損害の賠償と受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない(同法664条の2第1項)。「寄託者はいつでも返せと言える、受寄者はやむを得ない事由がなければ期限前に返せない、1年の制限は費用償還にも及ぶ」と押さえる。
問題:
賃借権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 賃借権の設定の登記においては、賃料は常に登記事項となるが、存続期間及び賃料の支払時期は、その定めがあるときに限り登記事項となる。
イ. 借地借家法22条1項前段の定めがある賃借権の設定の登記を申請する場合には、登記原因を証する情報として執行力のある確定判決の判決書の正本等が提供されたときを除き、同項前段の特約が公正証書によってされたことを証する公正証書の謄本を提供しなければならない。
ウ. 賃貸人が財産の処分の権限を有しない者であるときであっても、その旨は、賃借権の設定の登記の登記事項とはならない。
エ. 賃借権の移転の登記を申請する場合には、賃借権の譲渡を許す旨の定めの登記があるときであっても、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾したことを証する当該賃貸人が作成した情報又はこれに代わる許可があったことを証する情報を提供しなければならない。
オ. 配偶者居住権の登記がある建物について賃借権の設定の登記を申請する場合には、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることを許す旨の定めの登記があるときを除き、当該建物の所有者が賃借権の設定の登記の登記名義人となる者に当該建物の使用又は収益をさせることを承諾したことを証する当該所有者が作成した情報を提供しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法81条柱書は、「賃借権の登記又は賃借物の転貸の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。」と定め、同条1号は「賃料」を、同条2号は「存続期間又は賃料の支払時期の定めがあるときは、その定め」を掲げている。賃料は常に登記事項となるのに対し、存続期間及び賃料の支払時期は、その定めがあるときに限り登記事項となる。なお、同条3号は「賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を許す旨の定めがあるときは、その定め」を、同条4号は「敷金があるときは、その旨」を、同条6号は「土地の賃借権設定の目的が建物の所有であるときは、その旨」を掲げている。
イ 誤り。不動産登記令別表38の項添付情報欄イは、「借地借家法第二十二条第一項前段の定めがある賃借権の設定にあっては、同項後段の書面又は同条第二項の電磁的記録及びその他の登記原因を証する情報(登記原因を証する情報として執行力のある確定判決の判決書の正本、電子判決書記録事項証明書又は電子判決書記録事項電子証明書が提供されたときを除く。)」と定めている。そして、借地借家法22条1項後段は、「この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。」と定め、同条2項は、同条1項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は書面によってされたものとみなすと定めている。同項前段の特約は公正証書による必要はなく、書面(又は電磁的記録)によってされていれば足りるから、公正証書の謄本の提供が必須となるわけではない。これに対し、同法23条3項は、「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」と定めており、不動産登記令別表38の項添付情報欄ロは、同法23条1項又は2項に規定する借地権に当たる賃借権の設定にあっては、同条3項の公正証書の謄本、当該公正証書に記録されている事項の全部を出力した書面又は当該事項の全部を記録した電磁的記録(判決書の正本等が提供されたときを除く。)を提供すると定めている。
ウ 誤り。不動産登記法81条5号は、「賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者又は財産の処分の権限を有しない者であるときは、その旨」を賃借権の登記の登記事項として掲げている。賃貸人が財産の処分の権限を有しない者であるときは、その旨が登記事項となる。
エ 誤り。不動産登記令別表40の項は、賃借権の移転の登記の添付情報として、「イ 登記原因を証する情報」と、「ロ 賃貸人が賃借権の譲渡を承諾したことを証する当該賃貸人が作成した情報又は借地借家法第十九条第一項前段若しくは第二十条第一項前段若しくは大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第五条第一項前段に規定する承諾に代わる許可があったことを証する情報(賃借権の譲渡を許す旨の定めの登記があるときを除く。)」を掲げている。賃借権の譲渡を許す旨の定めの登記があるときは、賃貸人の承諾を証する情報又はこれに代わる許可があったことを証する情報を提供することを要しない。なお、同令別表39の項は、賃借物の転貸の登記についても、賃借物の転貸を許す旨の定めの登記があるときを除き、賃貸人が賃借物の転貸を承諾したことを証する当該賃貸人が作成した情報又は借地借家法19条1項前段若しくは大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法5条1項前段に規定する承諾に代わる許可があったことを証する情報を提供すると定めている。
オ 正しい。不動産登記令別表38の項添付情報欄トは、「建物が配偶者居住権の登記のある建物であるときは、当該建物の所有者が賃借権の設定の登記の登記名義人となる者に当該建物の使用又は収益をさせることを承諾したことを証する当該所有者が作成した情報(当該登記名義人となる者に当該建物の使用又は収益をさせることを許す旨の定めの登記がある場合を除く。)」と定めている。民法1032条3項は、「配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。」と定め、不動産登記法81条の2第2号は、配偶者居住権の登記の登記事項として、「第三者に居住建物(民法第千二十八条第一項に規定する居住建物をいう。)の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め」を掲げている。
ポイント:賃借権の登記及び賃借物の転貸の登記では、賃料が常に登記事項となり、存続期間・賃料の支払時期、譲渡・転貸を許す旨の定め、敷金、建物所有目的などは、その定め等があるときに登記事項となり、賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者又は財産の処分の権限を有しない者であるときはその旨も登記事項となる(不動産登記法81条)。一般定期借地権の特約は公正証書による等書面(又は電磁的記録)でよいため、その設定の登記では借地借家法22条1項後段の書面(又は同条2項の電磁的記録)及びその他の登記原因を証する情報を提供し、公正証書の謄本である必要はないが、事業用定期借地権等は契約自体を公正証書でしなければならないため、公正証書の謄本等を提供する(借地借家法22条、23条3項、不動産登記令別表38の項添付情報欄イ・ロ)。賃借権の移転・賃借物の転貸の登記では、譲渡・転貸を許す旨の定めの登記がある場合を除き、賃貸人の承諾を証する情報又はこれに代わる許可があったことを証する情報を提供する(同令別表39の項・40の項)。配偶者居住権の登記がある建物に賃借権を設定するときは、使用又は収益をさせることを許す旨の定めの登記がある場合を除き、建物の所有者の承諾を証する情報を提供する(同令別表38の項添付情報欄ト、民法1032条3項)。「一般定期は書面で足り、事業用は公正証書、譲渡・転貸は許す旨の登記がなければ承諾か許可の情報」と押さえる。
問題:
募集新株予約権の発行に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、株式会社は、種類株式発行会社ではなく、募集新株予約権は、新株予約権付社債に付されたものではないものとし、また、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合ではないものとする。
ア. 公開会社においては、金銭の払込みを要しないこととすることが募集新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件である場合及び払込金額がその者に特に有利な金額である場合を除き、募集事項は取締役会の決議によって定め、この場合には、原則として、割当日の2週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知し、又は公告しなければならない。
イ. 公開会社でない取締役会設置会社において、株主総会の決議によって募集事項の決定を取締役会に委任したときは、その決議は、割当日が当該決議の日から1年以内の日である募集についてのみその効力を有する。
ウ. 募集新株予約権の申込者は、株式会社から割当てを受けた募集新株予約権について、その払込金額の全額の払込みをした日に、新株予約権者となる。
エ. 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合において、新株予約権者は、株式会社の承諾を得なくても、払込みに代えて、当該株式会社に対する債権をもって相殺することができる。
オ. 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権である場合において、募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結するときは、取締役会設置会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって、当該契約の承認を受けなければならない。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
ア 正しい。会社法238条2項は、「募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。」と定め、同条3項は、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき(1号)、又は払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき(2号)には、取締役は、株主総会において、その条件又は金額で募集をすることを必要とする理由を説明しなければならないと定めている。そして、同法240条1項は、「第二百三十八条第三項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。」と定め、同条2項は、「公開会社は、前項の規定により読み替えて適用する第二百三十八条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない。」と定め、同条3項は、「前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。」と定めている。なお、同条4項は、株式会社が募集事項について割当日の2週間前までに金融商品取引法4条1項から3項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、同条2項の規定を適用しないと定めている。
イ 正しい。会社法239条1項前段は、「前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。」と定め、同条3項は、「第一項の決議は、割当日が当該決議の日から一年以内の日である前条第一項の募集についてのみその効力を有する。」と定めている。なお、募集株式の発行においても、同法200条3項は、募集事項の決定の委任の決議は、払込みの期日(払込みの期間を定めた場合にあっては、その期間の末日)が当該決議の日から1年以内の日である募集についてのみその効力を有すると定めている。
ウ 誤り。会社法245条1項は、「次の各号に掲げる者は、割当日に、当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となる。」と定め、同項1号は、申込者について「株式会社の割り当てた募集新株予約権」を掲げている。申込者は、払込みの有無にかかわらず、割当日に新株予約権者となる。そのうえで、同法246条1項は、同法238条1項3号に規定する場合(金銭の払込みを要する場合)には、新株予約権者は、募集新株予約権についての同法236条1項4号の期間(新株予約権を行使することができる期間)の初日の前日(同法238条1項5号に規定する払込みの期日を定めた場合にあっては、その期日。「払込期日」)までに、払込金額の全額を払い込まなければならないと定め、同法246条3項は、新株予約権者は、払込期日までに払込金額の全額の払込み(これに代えてする金銭以外の財産の給付又は当該株式会社に対する債権をもってする相殺を含む。)をしないときは、当該募集新株予約権を行使することができないと定めている。これに対し、募集株式の引受人は、同法209条1項により、払込みの期日を定めた場合は当該期日に、払込みの期間を定めた場合は出資の履行をした日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。
エ 誤り。会社法246条2項は、「前項の規定にかかわらず、新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、同項の規定による払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は当該株式会社に対する債権をもって相殺することができる。」と定めている。新株予約権者が払込みに代えて相殺をするには、株式会社の承諾を得なければならない。なお、募集株式の発行においては、同法208条3項が、「募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。」と定めている。
オ 正しい。会社法244条1項は、「前二条の規定は、募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。」と定め、同条3項は、「第一項に規定する場合において、次に掲げるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定め、同項2号に「募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき。」を掲げている。なお、総数の引受けを行う契約によらない場合にも、同法243条2項は、募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式である場合(1号)又は募集新株予約権が譲渡制限新株予約権である場合(2号)には、割当てを受ける者及び割り当てる数の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならないと定めている。
ポイント:募集事項は株主総会の決議で定めるのが原則であるが(会社法238条2項)、公開会社では、無償発行が特に有利な条件である場合及び払込金額が特に有利な金額である場合を除き取締役会の決議で定め、この場合は原則として割当日の2週間前までに株主に通知又は公告をする(同法240条1項〜4項)。株主総会の決議による募集事項の決定の委任は、割当日が決議の日から1年以内の募集についてのみ効力を有する(同法239条3項)。申込者は、払込みの有無にかかわらず割当日に新株予約権者となり(同法245条1項)、払込みを要する場合は払込期日(払込みの期日を定めなければ行使期間の初日の前日)までに全額を払い込まなければ新株予約権を行使できない(同法246条1項・3項)。払込みに代えて金銭以外の財産を給付し、又は株式会社に対する債権で相殺するには、株式会社の承諾を要する(同条2項)。譲渡制限新株予約権を総数引受契約で発行するときは、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議による契約の承認を要する(同法244条3項)。「新株予約権者になるのは割当日、払込みを怠れば行使できないだけ、相殺は会社の承諾があればできる(募集株式の引受人は相殺できない)」と押さえる。
問題:
民事訴訟における書類の送達に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 就業場所以外の書類の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、その同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。
イ. 就業場所において送達を受けるべき者に出会わない場合において、その就業場所の雇用主が正当な理由なく書類を受けることを拒んだときは、書類の送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。
ウ. 送達を受けるべき場所の届出をした当事者に対し、その届出に係る場所において民事訴訟法106条の規定による送達をすることができず、かつ、電子情報処理組織による送達をすることもできない場合において、裁判所書記官が当該場所に宛てて書類を書留郵便等に付して発送したときは、その発送の時に送達があったものとみなされ、その後に送達すべき書類も、当該場所に宛てて書留郵便等に付して発送することができる。
エ. 同一の当事者に対する最初の公示送達は、公示送達の措置を開始した日から2週間(外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、6週間)を経過することによって効力を生ずるが、裁判所は、相当と認めるときは、これらの期間を短縮することができる。
オ. 訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類に、その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは、その意思表示は、公示送達の措置を開始した日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者が相手方の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法106条1項前段は、「就業場所以外の書類の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。」と定めている(補充送達)。
イ 誤り。民事訴訟法106条2項は、「就業場所(第百四条第一項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第百三条第二項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。」と定めている。そして、同条3項は、「送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、書類の送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。」と定めている。就業場所における雇用主等への交付は、その者が交付を受けることを拒まないときに限ってすることができるものであり、雇用主は同条1項前段の規定により書類の交付を受けるべき者に当たらないから、雇用主が受領を拒んだとしても、差置送達をすることはできない。なお、同法103条2項前段は、同条1項に定める場所(住所等)が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、書類の送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(就業場所)においてすることができると定めている。
ウ 正しい。民事訴訟法104条1項前段は、「当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、書類の送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。」と定め、同条2項は、その届出があった場合には、書類の送達は、その届出に係る場所においてすると定めている。そして、同法107条1項は、「前条の規定により送達をすることができない場合(第百九条の二の規定により送達をすることができる場合を除く。)には、裁判所書記官は」、同項各号に定める場所に宛てて、書類を書留郵便等に付して発送することができると定め、同項2号は「第百四条第二項の規定による送達をすべき場合」について「同項の場所」を掲げている。さらに、同法107条2項は、「前項第二号又は第三号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その後に送達すべき書類は、同項第二号又は第三号に定める場所に宛てて、書留郵便等に付して発送することができる。」と定め、同条3項は、「前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。」と定めている。
エ 誤り。民事訴訟法112条1項は、「公示送達は、前条の規定による措置を開始した日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、前条の規定による措置を開始した日の翌日にその効力を生ずる。」と定め、同条2項は、「外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。」と定め、同条3項は、「前二項の期間は、短縮することができない。」と定めている。なお、同法110条3項は、「同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。」と定めている。
オ 正しい。民事訴訟法113条は、「訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類又は電磁的記録に、その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載又は記録があるときは、その意思表示は、第百十一条の規定による措置を開始した日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。この場合においては、民法第九十八条第三項ただし書の規定を準用する。」と定めている。そして、民法98条3項ただし書は、「表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」と定めている。
ポイント:住所等で送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者で相当のわきまえのあるものに交付する補充送達ができ(民事訴訟法106条1項前段)、就業場所では雇用主等の他人が交付を受けることを拒まないときに限りこれらの者に交付できる(同条2項)。差置送達ができるのは、送達を受けるべき者又は同条1項前段の規定により交付を受けるべき者が正当な理由なく受領を拒んだときに限られる(同条3項)。同条による送達ができない場合(電子情報処理組織による送達ができる場合を除く。)は書留郵便等に付する送達ができ、発送の時に送達があったものとみなされ、届出場所等(同法107条1項2号・3号に定める場所)に宛てて発送した後は、その後の書類も同じ場所に宛てて発送できる(同条1項〜3項)。公示送達は措置開始の日から2週間(外国においてすべき送達は6週間)の経過で効力を生じ、同一の当事者に対する2回目以降の公示送達(同法110条1項4号に掲げる場合を除く。)は翌日に効力を生じ、これらの期間は短縮できない(同法112条)。公示送達がされた書類に記載された訴訟上の請求・防御方法に関する意思表示は、措置開始の日から2週間を経過した時に到達したものとみなされるが、表意者に過失があれば到達の効力を生じない(同法113条、民法98条3項ただし書)。「就業場所の雇用主等には拒まなければ交付でき、拒んでも差し置けない、付郵便は発送時、公示送達の期間は短縮不可」と押さえる。
問題:
物品の供託並びに供託に関する書類の閲覧及び供託に関する事項の証明に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 法務大臣は、法令の規定により供託する金銭又は有価証券でない物品を保管すべき倉庫営業者又は銀行を指定することができ、指定を受けた倉庫営業者又は銀行は、その営業の部類に属する物であって、その保管し得る数量に限り、これを保管する義務を負う。
イ. 法務大臣の指定を受けた倉庫営業者又は銀行は、供託された物品を保管した場合であっても、供託物を受け取るべき者に対して保管料を請求することはできない。
ウ. 供託に関する書類の閲覧は、供託につき利害の関係がある者が請求することができるが、供託に関する事項の証明は、供託者又は被供託者に限り請求することができる。
エ. 供託に関する書類の閲覧の請求については、供託物の払渡しを請求する場合における印鑑証明書の添付に関する規定及び代理人の権限を証する書面の添付に関する規定が準用される。
オ. 供託に関する事項の証明を請求する者は、送付に要する費用を納付して、証明に係る書面の送付を請求することができる。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。供託法5条1項は、「法務大臣ハ法令ノ規定ニ依リテ供託スル金銭又ハ有価証券ニ非サル物品ヲ保管スヘキ倉庫営業者又ハ銀行ヲ指定スルコトヲ得」と定め、同条2項は、「倉庫営業者又ハ銀行ハ其営業ノ部類ニ属スル物ニシテ其保管シ得ヘキ数量ニ限リ之ヲ保管スル義務ヲ負フ」と定めている。なお、同法1条は、「法令ノ規定ニ依リテ供託スル金銭及ヒ有価証券ハ法務局若ハ地方法務局若ハ此等ノ支局又ハ法務大臣ノ指定スル此等ノ出張所カ供託所トシテ之ヲ保管ス」と定めており、金銭及び有価証券は供託所が保管する。また、同法6条は、「倉庫営業者又ハ銀行ニ供託ヲ為サント欲スル者ハ法務大臣カ定メタル書式ニ依リテ供託書ヲ作リ供託物ニ添ヘテ之ヲ交付スルコトヲ要ス」と定めている。
イ 誤り。供託法7条は、「倉庫営業者又ハ銀行ハ第五条第一項ノ規定ニ依ル供託物ヲ受取ルヘキ者ニ対シ一般ニ同種ノ物ニ付テ請求スル保管料ヲ請求スルコトヲ得」と定めている。指定を受けた倉庫営業者又は銀行は、供託物を受け取るべき者に対し、一般に同種の物について請求する保管料を請求することができる。
ウ 誤り。供託規則49条1項は、「供託につき利害の関係がある者は、供託に関する事項につき証明を請求することができる。」と定めている。供託に関する事項の証明を請求することができる者は、供託者又は被供託者に限られず、閲覧の場合(同規則48条1項)と同じく、供託につき利害の関係がある者である。なお、同規則48条1項は、「供託につき利害の関係がある者は、供託に関する書類(電磁的記録を用紙に出力したものを含む。)の閲覧を請求することができる。」と定め、同規則49条2項は、証明を請求しようとする者は、第三十四号書式による申請書を提出しなければならないと定め、同条3項は、「前項の申請書には、証明を請求する事項を記載した書面を、証明の請求数に応じ、添付しなければならない。」と定めている。
エ 正しい。供託規則48条3項は、「第九条の二第一項から第三項まで及び第五項の規定は申請書に添付した書類の還付について、第二十六条及び第二十七条の規定は閲覧の請求について準用する。」と定めている。同規則26条は供託物の払渡しを請求する者が供託物払渡請求書等に押された印鑑につき市町村長又は登記所の作成した証明書を添付すること等を定め、同規則27条は代理人によって供託物の払渡しを請求する場合に代理人の権限を証する書面を添付すること等を定めており、これらの規定が閲覧の請求について準用される。なお、同規則49条4項も、同規則26条及び27条の規定を証明の請求について準用している。
オ 正しい。供託規則50条1項は、同項各号に掲げる者は、送付に要する費用を納付して、それぞれ当該各号に定めるものの送付を請求することができると定め、同項7号に「前条第一項の規定により証明を請求する者 当該証明に係る書面」を掲げている。なお、同条2項は、「前項の場合においては、送付に要する費用は、郵便切手又は第十六条第二項の証票で納付しなければならない。」と定めている。
ポイント:法令の規定により供託する金銭及び有価証券は供託所が保管するが(供託法1条)、それ以外の物品については、法務大臣が保管すべき倉庫営業者又は銀行を指定することができ、指定を受けた者は営業の部類に属する物を保管し得る数量に限り保管する義務を負い(同法5条)、供託物を受け取るべき者に対して保管料を請求することができる(同法7条)。供託に関する書類の閲覧も、供託に関する事項の証明も、請求できるのは供託につき利害の関係がある者であり(供託規則48条1項、49条1項)、証明の申請書には証明を請求する事項を記載した書面を請求数に応じて添付する(同規則49条3項)。閲覧・証明の請求には、払渡請求における印鑑証明書の添付等(同規則26条)と代理人の権限を証する書面の添付等(同規則27条)の規定が準用される(同規則48条3項、49条4項)。証明を請求する者は、送付に要する費用を郵便切手等で納付して証明書の送付を請求できる(同規則50条1項7号・2項)。「物品は指定倉庫・銀行で保管料あり、閲覧も証明も利害関係人、印鑑証明・代理権限の規定は閲覧・証明にも準用」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(契約・寄託) | 寄託の成立(諾成契約)、受取り前の解除と書面による寄託、第三者による保管、返還請求の時期、損害賠償・費用償還の期間制限 | 民法657条、657条の2、658条、659条、662条、663条、664条の2、665条 |
| 第2問 | 不動産登記法(賃借権の登記) | 賃借権の登記事項、一般定期借地権・事業用定期借地権の設定登記の添付情報、賃貸人の処分権限、賃借権の移転・転貸の登記と賃貸人の承諾、配偶者居住権のある建物の賃借権設定 | 不動産登記法81条、81条の2、不動産登記令別表38の項〜40の項、借地借家法22条、23条3項、民法1032条3項 |
| 第3問 | 会社法(募集新株予約権の発行) | 公開会社の募集事項の決定と通知・公告、決定の委任の有効期間、新株予約権者となる日と払込み、相殺と会社の承諾、総数引受契約の承認 | 会社法238条、239条、240条、243条、244条、245条、246条(200条3項、208条3項、209条1項との対比) |
| 第4問 | 民事訴訟法(送達) | 補充送達、就業場所における交付と差置送達、書留郵便等に付する送達、公示送達の効力発生時期、公示送達による意思表示の到達 | 民事訴訟法103条2項、104条、106条、107条、110条3項、112条、113条、民法98条3項 |
| 第5問 | 供託法(物品の供託、閲覧・証明) | 倉庫営業者・銀行の指定と保管義務、保管料、閲覧・証明の請求権者、印鑑証明書等の規定の準用、証明書の送付 | 供託法1条、5条、6条、7条、供託規則26条、27条、48条、49条、50条 |