問題:

債務の引受けに関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができ、この場合においては、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

イ. 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができるが、この場合においては、債務者の承諾を得なければ、その効力を生じない。

ウ. 免責的債務引受の引受人は、債務者が債権者に対して解除権を有するときは、免責的債務引受がなければその解除権の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

エ. 免責的債務引受の引受人は、引き受けた債務を債権者に対して履行したときは、債務者に対して求償権を取得する。

オ. 債権者は、免責的債務引受により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができるが、この担保権の移転は、免責的債務引受の効力が生じた後遅滞なく、債務者に対してする意思表示によってしなければならない。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。民法470条3項は、「併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。」と定めている。なお、同条1項は、「併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。」と定め、同条2項は、併存的債務引受は債権者と引受人となる者との契約によってすることができると定め、同条4項は、「前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。」と定めている。

イ 誤り。民法472条2項は、「免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。」と定めている。債権者と引受人となる者との契約による免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生ずるのであり、債務者の承諾は要件とされていない。なお、同条3項は、「免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。」と定めている。

ウ 正しい。民法472条の2第2項は、「債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」と定めている。なお、同条1項は、「引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。」と定めている。併存的債務引受についても、同法471条1項が同様の抗弁の対抗を定め、同条2項が、「債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」と定めている。

エ 誤り。民法472条の3は、「免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。」と定めている。

オ 誤り。民法472条の4第1項は、「債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。」と定め、同条2項は、「前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。」と定めている。担保権の移転の意思表示は、免責的債務引受の効力が生じた後に債務者に対してするのではなく、あらかじめ又は同時に、引受人に対してしなければならない。なお、同条3項は、同条1項及び2項の規定を、債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用すると定め、同条4項は、その場合の保証人の承諾は書面でしなければ効力を生じないと定め、同条5項は、その承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなすと定めている。

ポイント:併存的債務引受の引受人は債務者と連帯して同一内容の債務を負い(民法470条1項)、併存的債務引受は債権者と引受人となる者との契約のほか、債務者と引受人となる者との契約でもすることができ、後者は債権者が引受人となる者に承諾をした時に効力を生ずる(同条2項・3項)。免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約による場合は債権者が債務者にその旨を通知した時に効力を生じ、債務者と引受人となる者との契約による場合は債権者の引受人となる者に対する承諾を要する(同法472条2項・3項)。引受人は効力発生時に債務者が主張できた抗弁を対抗でき、債務者が取消権・解除権を有するときは履行を拒むことができる(同法471条、472条の2)。免責的債務引受の引受人は求償権を取得しない(同法472条の3)。担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってし、引受人以外の者が設定した担保権の移転にはその者の承諾を要し、保証の移転について保証人がする承諾は書面(又は電磁的記録)でしなければ効力を生じない(同法472条の4)。「免責的債務引受は通知で効力、求償なし、担保の移転は事前か同時に引受人へ」と押さえる。


問題:

不動産登記の申請の却下及び取下げ並びに職権による登記の抹消に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 所有権の移転の登記の申請において、申請情報の内容である登記義務者の住所が登記記録と合致しない場合であっても、その不備が補正することができるものであって、登記官が定めた相当の期間内に申請人がこれを補正したときは、登記官は、当該申請を却下することを要しない。

イ. 登記官は、権利に関する登記を完了した後に、当該登記が申請の権限を有しない者の申請によるものであったことを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、1月以内の期間を定め、その期間内に書面で異議を述べないときは当該登記を抹消する旨を通知し、異議を述べた者がないときは、職権で当該登記を抹消しなければならない。

ウ. 登記官は、権利に関する登記を完了した後に、当該登記の申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないものであったことを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、1月以内の期間を定め、その期間内に書面で異議を述べないときは当該登記を抹消する旨を通知しなければならず、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、その通知に代えて、通知をすべき内容を公告しなければならない。

エ. 書面申請がされた場合において、登記官が申請を却下したときは、登記官は、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面を除き、申請書及びその添付書面を還付するものとされている。

オ. 登記の申請の取下げは、登記が完了した後であっても、申請人が登記識別情報の通知を受ける前であれば、することができる。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法25条柱書は、「登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。」と定め、同条7号は、申請情報の内容である登記義務者の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないときを掲げている(同号の括弧書は、同法65条、76条の5、77条等の場合には登記名義人の氏名若しくは名称又は住所によると定めている)。

イ 誤り。不動産登記法71条1項は、「登記官は、権利に関する登記を完了した後に当該登記が第二十五条第一号から第三号まで又は第十三号に該当することを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、一月以内の期間を定め、当該登記の抹消について異議のある者がその期間内に書面で異議を述べないときは、当該登記を抹消する旨を通知しなければならない。」と定めている。同項の対象は、同法25条1号(管轄違い)、2号(登記事項以外の事項の登記を目的とするとき)、3号(既に登記されているとき)又は13号(登記すべきものでないときとして政令で定めるとき)に該当する登記であり、同条4号(申請の権限を有しない者の申請によるとき)に該当する登記は含まれていない。したがって、申請の権限を有しない者の申請によってされた登記であることを発見したことを理由として、同法71条の手続により職権で抹消することはできない。

ウ 正しい。不動産登記法71条1項は、イの解説のとおり、権利に関する登記を完了した後に当該登記が同法25条1号から3号まで又は13号に該当することを発見したときの通知を定めており、同条1号は、「申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。」を掲げている。そして、同法71条2項は、「登記官は、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、法務省令で定めるところにより、前項の通知に代えて、通知をすべき内容を公告しなければならない。」と定めている。なお、同条3項は、異議を述べた者がある場合には、登記官は、当該異議に理由がないと認めるときは決定で当該異議を却下し、理由があると認めるときは決定でその旨を宣言し、かつ、当該異議を述べた者に通知しなければならないと定め、同条4項は、「登記官は、第一項の異議を述べた者がないとき、又は前項の規定により当該異議を却下したときは、職権で、第一項に規定する登記を抹消しなければならない。」と定めている。

エ 誤り。不動産登記規則38条3項は、「登記官は、書面申請がされた場合において、申請を却下したときは、添付書面を還付するものとする。ただし、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面については、この限りでない。」と定めている。申請を却下したときに還付の対象として定められているのは添付書面であり、申請書は掲げられていない。これに対し、同規則39条3項は、「登記官は、書面申請がされた場合において、申請の取下げがされたときは、申請書及びその添付書面を還付するものとする。前条第三項ただし書の規定は、この場合について準用する。」と定めており、申請書も還付するのは申請の取下げの場合である。なお、同規則38条1項は、登記官は、申請を却下するときは、決定書を作成して、これを申請人ごとに交付するものとし、ただし、代理人によって申請がされた場合は、当該代理人に交付すれば足りると定め、同条2項は、その交付は決定書を送付する方法によりすることができると定めている。

オ 誤り。不動産登記規則39条2項は、「申請の取下げは、登記完了後は、することができない。」と定めている。登記が完了した後は、登記識別情報の通知を受ける前であっても、申請の取下げをすることはできない。なお、同条1項は、申請の取下げは、電子申請にあっては法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して申請を取り下げる旨の情報を登記所に提供する方法(1号)、書面申請にあっては申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法(2号)によってしなければならないと定めている。

ポイント:登記官は、不動産登記法25条各号に該当する場合には理由を付した決定で申請を却下しなければならないが、補正することができる不備を登記官が定めた相当の期間内に補正したときは却下しない(同条柱書)。登記の完了後に職権抹消の手続(異議の催告を通知又は公告し、異議がないか異議を却下したときに職権で抹消する)がとられるのは、同条1号から3号まで又は13号に該当する登記に限られ、4号(申請の権限を有しない者の申請)などは含まれない(同法71条)。書面申請で申請を却下したときは添付書面を還付し(不動産登記規則38条3項)、取下げのときは申請書及びその添付書面を還付する(同規則39条3項)。いずれも、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面は、還付の対象から除かれる(同規則38条3項ただし書、39条3項後段)。申請の取下げは登記完了後はすることができない(同条2項)。「職権抹消は1〜3号と13号だけ、却下で返るのは添付書面、取下げで返るのは申請書と添付書面、取下げは完了まで」と押さえる。


問題:

剰余金の配当に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、株式会社は、種類株式発行会社ではないものとする。

ア. 株式会社は、剰余金の配当をする場合には、その有する自己株式についても、他の株式と同様に配当財産の割当てを受けることができる。

イ. 取締役会設置会社は、一事業年度の途中において1回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。)をすることができる旨を定款で定めることができる。

ウ. 配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合には、当該剰余金の配当に係る株主総会の決議は、特別決議によらなければならない。

エ. 株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、当該株式会社は、剰余金の配当をすることができない。

オ. 株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において、当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う金銭の支払義務は、総株主の同意があれば、その全額を免除することができる。

答え:

誤っているものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 誤り。会社法453条は、「株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。」と定めている。剰余金の配当を受ける株主から当該株式会社は除かれており、自己株式に配当財産を割り当てることはできない。同法454条3項も、配当財産の割当てに関する事項についての定めは、株主(当該株式会社及び同条2項1号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならないと定めている。なお、同条1項は、株式会社は、剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額(1号)、株主に対する配当財産の割当てに関する事項(2号)、当該剰余金の配当がその効力を生ずる日(3号)を定めなければならないと定めている。

イ 正しい。会社法454条5項は、「取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。」と定めている。

ウ 正しい。会社法309条2項は、同項各号に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならないと定め、10号に「第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)」を掲げている。なお、同法459条1項4号は、剰余金の配当に関する事項を取締役会が定めることができる旨の定款の定めの対象として、同法454条1項各号及び同条4項各号に掲げる事項を掲げているが、ただし書で「配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。」と定めている。

エ 正しい。会社法458条は、「第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。」と定めている。剰余金の配当の根拠規定である同法453条が適用されないため、純資産額が300万円を下回る株式会社は、剰余金の配当をすることができない。

オ 誤り。会社法462条1項は、同法461条1項の規定(分配可能額による配当等の制限)に違反して株式会社が剰余金の配当等をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者等は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負うと定めている。そして、同条3項は、「第一項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。」と定めている。総株主の同意があっても、免除することができるのは、行為の時における分配可能額を限度とする部分に限られ、全額を免除することはできない。なお、同法462条2項は、業務執行者及び同条1項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わないと定め、同法463条1項は、分配可能額を超えることにつき善意の株主は、交付を受けた金銭等について、同法462条1項の金銭を支払った業務執行者等からの求償の請求に応ずる義務を負わないと定め、同法463条2項は、株式会社の債権者は、同法462条1項の規定により義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができると定めている。

ポイント:剰余金の配当は、その都度、株主総会の決議で配当財産の種類及び帳簿価額の総額、割当てに関する事項、効力発生日を定めて行い(会社法454条1項)、自己株式には配当することができない(同法453条、454条3項)。取締役会設置会社は、定款で定めれば、一事業年度の途中に1回に限り、取締役会の決議で金銭による中間配当をすることができる(同条5項)。現物配当で株主に金銭分配請求権を与えない場合は株主総会の特別決議を要し(同法309条2項10号)、取締役会に決定させる定款の定め(同法459条1項4号)の対象からも除かれる。純資産額が300万円を下回る場合は剰余金の配当に関する規定は適用されない(同法458条)。分配可能額を超える配当をしたときは、交付を受けた者及び業務執行者等が連帯して支払義務を負い、業務執行者等は注意を怠らなかったことを証明すれば義務を負わないが、その義務は総株主の同意があっても行為の時の分配可能額を限度としてしか免除することができない(同法462条)。善意の株主は業務執行者等からの求償に応じる義務を負わない(同法463条1項)。「自己株式に配当なし、中間配当は金銭だけ・年1回、現物配当で金銭分配請求権なしは特別決議、300万円未満は配当不可、免除は分配可能額まで」と押さえる。


問題:

上告に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした場合には、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、直ちに上告をすることができる。

イ. 最高裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。

ウ. 上告受理の申立てにおいては、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、及び民事訴訟法312条2項各号に掲げる事由があることを理由とすることができない。

エ. 上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならず、上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。

オ. 上告裁判所が原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻した場合には、差戻しを受けた裁判所は、上告裁判所が破棄の理由とした法律上の判断には拘束されるが、事実上の判断には拘束されない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

ア 正しい。民事訴訟法311条2項は、「第二百八十一条第一項ただし書の場合には、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、直ちに上告をすることができる。」と定めている。そして、同法281条1項は、「控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。」と定めている。なお、同法311条1項は、「上告は、高等裁判所が第二審又は第一審としてした終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所にすることができる。」と定めている。

イ 誤り。民事訴訟法312条1項は、「上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。」と定め、同条2項は、同項各号に掲げる事由(法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと、判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること等)があることを理由とするときも上告をすることができると定めている。そして、同条3項は、「高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。」と定めている。判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反を上告の理由とすることができるのは高等裁判所にする上告であり、最高裁判所にする上告ではこれを上告の理由とすることはできない。なお、上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、同法318条1項により上告受理の申立てをすることができ、また、同法325条2項は、上告裁判所である最高裁判所は、同法312条1項又は2項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄することができると定めている。

ウ 正しい。民事訴訟法318条2項は、「前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。」と定めている。なお、同条1項は、上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができると定め、同条4項前段は、「第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。」と定めている。

エ 正しい。民事訴訟法314条1項は、「上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならない。」と定め、同法315条1項は、「上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。」と定めている。なお、同法316条1項は、上告が不適法でその不備を補正することができないとき(1号)、又は同法315条1項の規定に違反して上告理由書を提出せず、若しくは上告の理由の記載が同条2項の規定に違反しているとき(2号)に該当することが明らかであるときは、原裁判所は、決定で、上告を却下しなければならないと定め、同法316条2項は、この決定に対しては即時抗告をすることができると定めている。

オ 誤り。民事訴訟法325条3項は、「前二項の規定により差戻し又は移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をしなければならない。この場合において、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断は、差戻し又は移送を受けた裁判所を拘束する。」と定めている。差戻しを受けた裁判所を拘束するのは、上告裁判所が破棄の理由とした判断であり、その判断であれば、法律上の判断だけでなく事実上の判断も含まれる。なお、同条4項は、「原判決に関与した裁判官は、前項の裁判に関与することができない。」と定めている。

ポイント:上告は、高等裁判所の終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所にし、飛越上告の合意(民事訴訟法281条1項ただし書)があるときは、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に直ちに上告をすることができる(同法311条)。上告の理由は憲法違反と絶対的上告理由であり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反を理由とすることができるのは高等裁判所にする上告に限られる(同法312条)。最高裁判所が上告裁判所となる場合には上告受理の申立てができるが、そこでは憲法違反や絶対的上告理由を理由とすることができない(同法318条1項・2項)。上告状も上告理由書も原裁判所に提出し(同法314条1項、315条1項)、上告理由書の不提出などが明らかなときは原裁判所が決定で上告を却下する(同法316条1項)。破棄差戻し等を受けた裁判所は、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断に拘束され、原判決に関与した裁判官は差戻し後の裁判に関与できない(同法325条3項・4項)。「法令違反で上告できるのは高裁への上告だけ、上告受理では憲法違反・絶対的上告理由を主張できない、書面はすべて原裁判所へ、差戻し審は破棄の理由とされた事実上の判断にも拘束」と押さえる。


問題:

供託をすべき供託所に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 民法494条の規定による弁済供託は、債務の履行地の供託所にしなければならないが、供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。

イ. 宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならないが、事業の開始後新たに事務所を設置したときは、当該新たに設置した事務所のもよりの供託所に、当該事務所に係る営業保証金を供託しなければならない。

ウ. 第三債務者は、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を供託する場合には、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託しなければならない。

エ. 民事訴訟法の規定により担保を立てる場合において、金銭を供託する方法によるときは、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託しなければならない。

オ. 保全命令の担保を立てる場合において、遅滞なく民事保全法4条1項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、債権者は、裁判所の許可を得ることなく、債権者の住所地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

答え:

誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法495条1項は、「前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。」と定め、同条2項は、「供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。」と定めている。なお、同条3項は、「前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。」と定めている。

イ 誤り。宅地建物取引業法25条1項は、「宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。」と定めている。そして、同法26条1項は、宅地建物取引業者は、事業の開始後新たに事務所を設置したときは、当該事務所につき同法25条2項の政令で定める額の営業保証金を供託しなければならないと定め、同法26条2項は、「前条第一項及び第三項から第五項までの規定は、前項の規定により供託する場合に準用する。」と定めている。新たに設置した事務所に係る営業保証金も、同法25条1項の準用により、主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。なお、同条4項は、宅地建物取引業者は、営業保証金を供託したときは、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならないと定め、同条5項は、「宅地建物取引業者は、前項の規定による届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。」と定めている。

ウ 誤り。民事執行法156条1項は、「第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この条及び第百六十一条の二において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。」と定めている。第三債務者が供託をすべき供託所は、債務の履行地の供託所であり、執行裁判所の所在地を基準とするものではない。同条2項及び3項が定める第三債務者の供託義務についても、供託をすべき供託所は債務の履行地の供託所である。なお、同条4項は、「第三債務者は、前三項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。」と定めている。

エ 正しい。民事訴訟法76条は、「担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。次条において同じ。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。」と定めている。

オ 誤り。民事保全法14条2項は、「前項の担保を立てる場合において、遅滞なく第四条第一項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。」と定めている。債権者の住所地等を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託するには、裁判所の許可を得なければならない。なお、同法4条1項は、同法の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならず、ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約によると定めている。

ポイント:弁済供託は債務の履行地の供託所にし、供託所について法令に特別の定めがない場合は、裁判所が弁済者の請求により供託所の指定及び供託物の保管者の選任をする(民法495条1項・2項)。第三債務者による執行供託も債務の履行地の供託所にする(民事執行法156条1項〜3項)。民事訴訟法上の担保は担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に(民事訴訟法76条)、民事保全法上の担保はその裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託するのが原則であり(民事保全法4条1項)、保全命令の担保について遅滞なくその供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地等を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる(同法14条2項)。宅地建物取引業者の営業保証金は、事務所を新設した場合の分も含めて主たる事務所のもよりの供託所に供託する(宅地建物取引業法25条1項、26条2項)。「弁済供託と執行供託は履行地、裁判上の担保は命じた裁判所の所在地、保全の特例は許可が必要、営業保証金は主たる事務所」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権・債務の引受け) 併存的債務引受の要件と効果、免責的債務引受の要件と効力発生時期、引受人の抗弁と履行拒絶、免責的債務引受の引受人の求償権、担保の移転 民法470条、471条、472条、472条の2、472条の3、472条の4
第2問 不動産登記法(申請の却下・取下げ、職権抹消) 却下事由と補正、職権による登記の抹消の対象と手続、却下・取下げの際の書面の還付、取下げの時期と方法 不動産登記法25条、71条、不動産登記規則38条、39条
第3問 会社法(剰余金の配当) 剰余金の配当の決定と自己株式、中間配当、現物配当と特別決議、純資産額300万円の制限、分配可能額を超える配当の責任と免除 会社法309条2項10号、453条、454条、458条、459条1項4号、462条、463条
第4問 民事訴訟法(上告) 上告裁判所と飛越上告、上告の理由、上告受理の申立て、上告状・上告理由書の提出先と原裁判所による却下、破棄差戻し後の拘束力 民事訴訟法281条1項、311条、312条、314条〜316条、318条、325条
第5問 供託法(供託をすべき供託所) 弁済供託の供託所と供託所の指定、執行供託の供託所、裁判上の担保の供託所、保全命令の担保の供託所の特例、営業保証金の供託所 民法495条、民事執行法156条、民事訴訟法76条、民事保全法4条1項、14条2項、宅地建物取引業法25条、26条