この記事の要点

  • かつて公職選挙法は、成年被後見人(後見を受けている人)を選挙権を持たない者としていましたが、平成25年(2013年)の法改正でこの規定が削除され、いまは後見を受けていても投票できます
  • 後見人が本人に代わって投票先を決めて投票することはできません。投票は本人が自ら行うのが原則です
  • 字を書くことが難しい場合の「代理投票」や、身体に重度の障害がある方の「郵便等による投票」など、本人の投票を支える仕組みがあります

「親が後見を受けることになったら、もう選挙には行けないのでしょうか」——そんな疑問を持たれる方がいます。結論からいうと、いまは後見を受けていても選挙権はあり、投票できます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

かつては「後見を受けると選挙権を失う」仕組みだった

公職選挙法11条1項は、選挙権と被選挙権(立候補する権利)を持たない者を列挙しています。以前はその1号に成年被後見人が挙げられており、後見開始の審判を受けると、本人の実際の状態にかかわらず一律に選挙権を失う仕組みでした。

この規定については、平成25年(2013年)3月、東京地方裁判所が憲法に違反すると判断する判決を出しました。これを受けて国会で議員提出の法案がまとめられ、同年5月27日に成立、5月31日に「成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第21号)として公布されました。この法律で11条1項1号は「削除」と改められています。総務省の案内によれば、施行は平成25年6月30日で、同年7月1日以後に公示・告示される選挙から、成年被後見人も選挙権・被選挙権を持つことになりました。

後見・保佐・補助という類型の違いについては、法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で整理しています。資格や職業の制限(欠格条項)が見直された経緯は、成年後見を受けると資格や仕事を失う?もあわせてご覧ください。

後見人が代わりに投票することはできない

選挙権は本人だけが行使できる権利です。公職選挙法44条1項は「選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない」と定めており、後見人であっても、本人に代わって投票先を決めたり、本人の名前で投票したりすることはできません。後見人の役割は財産管理や契約などの法律行為が中心で、本人だけが決められることには権限が及びません(成年後見人が『できないこと』とはも参照)。

本人の投票を支える仕組み

本人が自分で投票するのを支える仕組みとして、主に次のものがあります。

  • 代理投票(公職選挙法48条):心身の故障その他の事由により、自分で候補者名などを書くことができない人は、投票所で申請して代理投票ができます。投票管理者が「投票所の事務に従事する者」の中から補助者2人を定め、1人が本人の指示する候補者名などを書き、もう1人が立ち会います。補助者を投票所の事務に従事する者に限る点は、平成25年の改正で加えられたものです。家族や後見人が補助者として書くことはできません
  • 郵便等による不在者投票(同法49条2項):身体に重度の障害がある人で政令で定める要件にあてはまる人(身体障害者手帳や介護保険の要介護認定の程度などで決まります)は、自宅など今いる場所で投票用紙に記入し、郵便等で送ることができます。後見を受けていること自体が対象の要件になるわけではありません。自分で記入できない人のうち政令で定める人については、あらかじめ市町村の選挙管理委員会の委員長に届け出た人(選挙権を持つ人に限る)に記載してもらう仕組みもあります(同条3項)
  • 病院・老人ホーム等での不在者投票(同法49条1項):入院・入所先が指定を受けた施設であれば、その施設内で投票できる場合があります。平成25年の改正では、外部の立会人を立ち会わせるなど、施設での不在者投票を公正に行うよう努める規定も設けられました(現在の49条10項)

これらの手続きの対象になるか、どう申請するかは、要件や必要書類が細かく定められています。具体的な投票の方法については、お住まいの市区町村の選挙管理委員会にお問い合わせください。

まとめ

かつては後見を受けると一律に選挙権を失いましたが、平成25年の公職選挙法改正でこの規定は削除され、いまは後見を受けていても投票できます。ただし投票は本人が自ら行うもので、後見人が代わりに投票することはできません。字を書くのが難しい場合の代理投票や、身体に重度の障害がある方の郵便等による投票など、本人の投票を支える仕組みがあり、その利用方法はお住まいの市区町村の選挙管理委員会が案内しています。成年後見制度そのものについて相談したい場合は、お住まいの地域の家庭裁判所や、成年後見に取り組む司法書士会、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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