問題:
特別養子縁組に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 特別養子縁組の成立の請求をするには、未成年者を養子とする縁組についての家庭裁判所の許可(民法798条)を得ることを要しない。
イ. 配偶者のない者であっても、25歳に達している者は、単独で特別養子縁組の養親となることができる。
ウ. 養子となる者が15歳に達している場合には、特別養子縁組の成立には、その者の同意があれば足り、その父母の同意を要しない。
エ. 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を6箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならず、この期間は、特別養子縁組の成立の請求前の監護の状況が明らかであるときを除き、その請求の時から起算する。
オ. 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があり、かつ、実父母が相当の監護をすることができる場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養親の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。民法817条の2第1項は、「家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。」と定め、同条2項は、「前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。」と定めている。民法798条本文は、「未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」と定めているが、特別養子縁組の成立の請求をするには、民法817条の2第2項により、この許可を得ることを要しない。
イ 誤り。民法817条の3第1項は、「養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。」と定め、同条2項本文は、「夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。」と定めている。配偶者のない者は、年齢にかかわらず特別養子縁組の養親となることができない。なお、同項ただし書は、「夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。」と定めている。また、民法817条の4は、「二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。」と定めている。
ウ 誤り。民法817条の5第1項は、「第八百十七条の二に規定する請求の時に十五歳に達している者は、養子となることができない。特別養子縁組が成立するまでに十八歳に達した者についても、同様とする。」と定めているが、同条2項は、「前項前段の規定は、養子となる者が十五歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合において、十五歳に達するまでに第八百十七条の二に規定する請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、適用しない。」と定め、同条3項は、「養子となる者が十五歳に達している場合においては、特別養子縁組の成立には、その者の同意がなければならない。」と定めている。他方で、民法817条の6本文は、「特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。」と定めており、養子となる者が15歳に達していることは、父母の同意を不要とする事由とされていない。父母の同意を要しないのは、同条ただし書が定める「父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」である。したがって、養子となる者が15歳に達している場合には、同条ただし書の場合を除き、その者の同意と父母の同意の双方が必要である。
エ 正しい。民法817条の8第1項は、「特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。」と定めている。
オ 誤り。民法817条の10第1項は、「次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。」と定め、同項1号に「養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。」を、同項2号に「実父母が相当の監護をすることができること。」を掲げている。離縁の請求をすることができるのは養子、実父母又は検察官であり、養親は掲げられていない。なお、同条2項は、「離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。」と定め、民法817条の11は、「養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。」と定めている。
ポイント:特別養子縁組は、養親となる者の請求により家庭裁判所が成立させるもので、民法794条・798条の家庭裁判所の許可は要しない(民法817条の2)。養親は配偶者のある者に限られ、夫婦共同で養親となるのが原則であり(民法817条の3。配偶者の嫡出である子〔特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。〕を養子とする場合が例外)、25歳以上であることを要する(夫婦の一方は20歳以上であれば足りる。民法817条の4)。請求の時に15歳に達している者は原則として養子となれず、特別養子縁組が成立するまでに18歳に達した者も養子となれない。養子となる者が15歳に達している場合には、その者の同意を要する(民法817条の5)。父母の同意は、父母が意思を表示できない場合や虐待・悪意の遺棄等の場合を除いて必要であり(民法817条の6)、子の年齢によって不要となるものではない。養親となる者による6箇月以上の監護の状況を考慮し、その期間は原則として請求の時から起算する(民法817条の8)。離縁は、養親による虐待等と実父母による相当の監護の可能性の双方がある場合に、養子・実父母・検察官の請求によってのみ家庭裁判所がさせることができる(民法817条の10)。「養親は夫婦で25歳(一方は20歳)、15歳以上なら本人の同意も父母の同意も、監護6箇月は請求時から、離縁の請求に養親は入らない」と押さえる。
問題:
地役権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 承役地についてする地役権の設定の登記においては、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。
イ. 要役地に所有権の登記がない場合であっても、承役地の所有権の登記名義人と要役地の所有者とが共同して申請すれば、承役地に地役権の設定の登記をすることができる。
ウ. 登記官は、承役地に地役権の設定の登記をしたときは、要役地について、職権で、要役地の地役権の登記である旨、承役地に係る不動産所在事項及び当該土地が承役地である旨、地役権設定の目的及び範囲並びに登記の年月日を登記しなければならない。
エ. 地役権が要役地の所有権とともに移転しない旨の設定行為による別段の定めがあっても、その定めは、承役地についてする地役権の登記の登記事項とならない。
オ. 要役地が承役地と異なる登記所の管轄区域内にある場合において、承役地に地役権の設定の登記を申請する者は、要役地を管轄する登記所に対しても、要役地についての地役権の登記を申請しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法80条2項は、「前項の登記においては、第五十九条第四号の規定にかかわらず、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。」と定めている。「前項の登記」とは、同条1項の承役地についてする地役権の登記である。不動産登記法59条4号は、権利に関する登記の登記事項として「登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所」等を掲げているが、承役地についてする地役権の登記では、その例外として、地役権者の氏名又は名称及び住所は登記事項とされていない。
イ 誤り。不動産登記法80条3項は、「要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができない。」と定めている。共同して申請するかどうかにかかわらず、要役地に所有権の登記がなければ、承役地に地役権の設定の登記をすることはできない。
ウ 正しい。不動産登記法80条4項は、「登記官は、承役地に地役権の設定の登記をしたときは、要役地について、職権で、法務省令で定める事項を登記しなければならない。」と定め、不動産登記規則159条1項は、この法務省令で定める事項として、「要役地の地役権の登記である旨」(1号)、「承役地に係る不動産所在事項及び当該土地が承役地である旨」(2号)、「地役権設定の目的及び範囲」(3号)、「登記の年月日」(4号)を掲げている。
エ 誤り。不動産登記法80条1項は、承役地についてする地役権の登記の登記事項は、同法59条各号に掲げるもののほか、同項各号のとおりとすると定め、同項3号に「民法第二百八十一条第一項ただし書若しくは第二百八十五条第一項ただし書の別段の定め又は同法第二百八十六条の定めがあるときは、その定め」を掲げている。民法281条1項は、「地役権は、要役地(中略)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と定めている。地役権が要役地の所有権とともに移転しない旨の設定行為による別段の定めは、同項ただし書の別段の定めであり、承役地についてする地役権の登記の登記事項となる。なお、不動産登記法80条1項は、このほか、要役地(1号)、地役権設定の目的及び範囲(2号)を登記事項として掲げている。
オ 誤り。要役地についての地役権の登記は、登記官が職権でするものであり(不動産登記法80条4項)、申請によるものではない。要役地が他の登記所の管轄区域内にある場合については、不動産登記規則159条2項が、「登記官は、地役権の設定の登記をした場合において、要役地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、遅滞なく、当該他の登記所に承役地、要役地、地役権設定の目的及び範囲並びに地役権の設定の登記の申請の受付の年月日を通知しなければならない。」と定め、同条5項が、その通知を受けた登記所の登記官は、遅滞なく、要役地の登記記録の乙区に、通知を受けた事項を記録しなければならないと定めている。
ポイント:承役地についてする地役権の登記の登記事項は、不動産登記法59条各号の事項のほか、要役地、地役権設定の目的及び範囲、民法281条1項ただし書・285条1項ただし書の別段の定め又は民法286条の定めであり(不動産登記法80条1項)、地役権者の氏名又は名称及び住所は登記しない(不動産登記法80条2項)。要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができない(不動産登記法80条3項)。承役地に地役権の設定の登記をしたときは、登記官が要役地について職権で要役地の地役権の登記をし(不動産登記法80条4項、不動産登記規則159条1項)、要役地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、登記官がその登記所に通知し、通知を受けた登記所の登記官が要役地の登記記録の乙区に記録する(不動産登記規則159条2項・5項)。「承役地には地役権者を書かない、要役地に所有権の登記がなければ設定登記不可、付従性を外す特約も登記事項、要役地側は職権(管轄外なら登記所間の通知)」と押さえる。
問題:
取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)の取締役会に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 取締役会を招集する取締役を定款で定めた場合において、招集権者以外の取締役が、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して取締役会の招集を請求したときは、その請求があった日から5日以内に招集の通知が発せられれば、その通知に係る取締役会の日がその請求があった日から2週間を経過した後の日であっても、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができない。
イ. 取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間前までに各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならず、この期間を定款で短縮することはできない。
ウ. 監査役設置会社においては、取締役の全員の同意があるときは、監査役の同意がなくても、招集の手続を経ることなく取締役会を開催することができる。
エ. 取締役会の決議に参加した取締役であって取締役会の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定される。
オ. 代表取締役が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して自己の職務の執行の状況を通知したときは、代表取締役が3箇月に1回以上しなければならない職務の執行の状況の取締役会への報告を要しない。
答え:
正しいものは、エの1つである。
解説:
ア 誤り。会社法366条1項は、「取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。」と定め、同条2項は、その場合には、招集権者以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができると定めている。そして、同条3項は、「前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。」と定めている。請求があった日から5日以内に招集の通知が発せられても、その通知に係る取締役会の日が請求があった日から2週間以内の日でなければ、同項の要件を満たすから、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。
イ 誤り。会社法368条1項は、「取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。」と定めている。招集の通知の期間は、定款で短縮することができる。
ウ 誤り。会社法368条2項は、「前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。」と定めている。監査役設置会社においては、取締役の全員の同意に加えて、監査役の全員の同意がなければ、招集の手続を省略することはできない。なお、監査役設置会社とは、監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又は会社法の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう(会社法2条9号)。
エ 正しい。会社法369条5項は、「取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。」と定めている。同条3項の議事録とは、取締役会の議事について法務省令で定めるところにより作成する議事録である。なお、同条2項は、「前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。」と定めている。
オ 誤り。会社法372条1項は、「取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。」と定めているが、同条2項は、「前項の規定は、第三百六十三条第二項の規定による報告については、適用しない。」と定めている。会社法363条2項は、代表取締役及び取締役会の決議によって業務を執行する取締役として選定された取締役(同条1項各号)は、「三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。」と定めている。この報告は、取締役等の全員に通知することによって省略することはできない。
ポイント:招集権者が定められている場合、他の取締役は目的事項を示して招集を請求でき、請求の日から5日以内に、請求の日から2週間以内の日を取締役会の日とする招集の通知が発せられないときは、請求をした取締役が自ら招集できる(会社法366条2項・3項)。招集の通知は取締役会の日の1週間前までに各取締役(監査役設置会社では各監査役にも)に発するが、この期間は定款で短縮でき(会社法368条1項)、取締役(監査役設置会社では取締役及び監査役)の全員の同意があれば招集の手続を省略できる(会社法368条2項)。決議に参加して議事録に異議をとどめない取締役は決議に賛成したものと推定される(会社法369条5項)。取締役会への報告事項を取締役(監査役設置会社では取締役及び監査役)の全員に通知すれば報告を省略できるが(会社法372条1項)、代表取締役等による3箇月に1回以上の職務執行の状況の報告は省略できない(会社法372条2項・363条2項)。「自ら招集できるのは5日以内に2週間以内の日を指定した通知がないとき、1週間は定款で短縮可、招集省略は監査役の同意も必要、異議をとどめなければ賛成推定、3箇月ごとの職務執行報告は省略不可」と押さえる。
問題:
支払督促に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 支払督促は、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について発することができるが、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限られる。
イ. 手形による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求についての支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官のほか、手形の支払地を管轄する地方裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。
ウ. 裁判所書記官は、債務者を審尋した後でなければ、支払督促を発することができない。
エ. 簡易裁判所は、督促異議を不適法であると認めるときは、督促異議に係る請求が地方裁判所の管轄に属する場合においても、決定で、その督促異議を却下しなければならない。
オ. 適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、督促異議の申立ての時に、訴えの提起があったものとみなされる。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法382条は、「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。」と定めている。
イ 誤り。民事訴訟法383条1項は、「支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。」と定め、同条2項は、「次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立ては、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。」と定め、同項2号に「手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求」について「手形又は小切手の支払地」を掲げている。手形の支払地を基準とする場合も、申立ての相手方は、その地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官であり、地方裁判所の裁判所書記官ではない。なお、同項1号は、「事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもの」について「当該事務所又は営業所の所在地」を掲げている。
ウ 誤り。民事訴訟法386条1項は、「支払督促は、債務者を審尋しないで発する。」と定めている。なお、同条2項は、「債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる。」と定めている。
エ 正しい。民事訴訟法394条1項は、「簡易裁判所は、督促異議を不適法であると認めるときは、督促異議に係る請求が地方裁判所の管轄に属する場合においても、決定で、その督促異議を却下しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と定めている。
オ 誤り。民事訴訟法395条は、「適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。」と定めている。訴えの提起があったものとみなされるのは、督促異議の申立ての時ではなく、支払督促の申立ての時である。なお、指定簡易裁判所(民事訴訟法397条)の裁判所書記官に対してされた支払督促の申立てについては、民事訴訟法398条が訴えの提起があったものとみなされる裁判所の特則を定めているが、同条1項も、「当該支払督促の申立ての時に」訴えの提起があったものとみなすと定めている。
ポイント:支払督促は、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、日本において公示送達によらないで送達できる場合に限り、裁判所書記官が債権者の申立てにより発する(民事訴訟法382条)。申立ては債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官にするのが原則で、事務所・営業所の業務に関する請求や手形・小切手による金銭の支払の請求等は、それぞれ事務所・営業所の所在地や支払地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官にもすることができる(民事訴訟法383条)。支払督促は債務者を審尋しないで発する(民事訴訟法386条1項)。督促異議が不適法であれば、請求が地方裁判所の管轄に属する場合でも簡易裁判所が決定で却下する(民事訴訟法394条1項)。適法な督促異議があれば、目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、簡易裁判所又は地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされる(民事訴訟法395条)。「申立て先はいつも簡易裁判所の書記官、審尋なし、不適法な督促異議は簡裁が却下、訴え提起のみなしは支払督促の申立ての時」と押さえる。
問題:
供託物の払渡請求の手続に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 同一人が数個の供託について同時に供託物の還付を受け、又は取戻しをしようとする場合において、払渡請求の事由が同一であるときは、一括してその請求をすることができる。
イ. 供託物の還付を受けようとする者は、副本ファイルの記録により還付を受ける権利を有することが明らかである場合であっても、供託物払渡請求書に還付を受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならない。
ウ. 供託物の払渡しを請求する者が個人である場合において、運転免許証その他の官庁又は公署から交付を受けた書類その他これに類するもの(氏名、住所及び生年月日の記載があり、本人の写真が貼付されたものに限る。)であって、その者が本人であることを確認することができるものを提示し、かつ、その写しを添付したときは、供託物払渡請求書に押された印鑑につき市町村長又は登記所の作成した証明書を添付することを要しない。
エ. 供託物の払渡しを請求する者は、供託物が金銭である場合も有価証券である場合も、供託物払渡請求書を2通提出しなければならない。
オ. 供託物の還付を受けようとする者が供託物払渡請求書に利害関係人の承諾書を添付する場合には、当該承諾書の作成前3月以内又はその作成後に作成された、当該承諾書に押された印鑑につき市町村長又は登記所の作成した証明書を併せて添付しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。供託規則23条は、「同一人が数個の供託について同時に供託物の還付を受け、又は取戻しをしようとする場合において、払渡請求の事由が同一であるときは、一括してその請求をすることができる。」と定めている。
イ 誤り。供託規則24条1項は、「供託物の還付を受けようとする者は、供託物払渡請求書に次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。」と定め、同項1号に「還付を受ける権利を有することを証する書面。ただし、副本ファイルの記録により、還付を受ける権利を有することが明らかである場合を除く。」を掲げている。副本ファイルの記録により還付を受ける権利を有することが明らかである場合は、この書面を添付することを要しない。なお、供託物の取戻しについても、供託規則25条1項が、取戻しをする権利を有することを証する書面の添付を求めたうえで、「ただし、副本ファイルの記録により、取戻しをする権利を有することが明らかである場合は、この限りでない。」と定め、同条2項は、「前条第二項の規定は、前項本文の場合について準用する。」と定めている。
ウ 正しい。供託規則26条1項本文は、「供託物の払渡しを請求する者は、供託物払渡請求書又は委任による代理人の権限を証する書面に押された印鑑につき市町村長又は登記所の作成した証明書を供託物払渡請求書に添付しなければならない。」と定めている。もっとも、同条3項は、同条1項・2項の規定は同項各号の場合には適用しないと定め、同項2号に、「払渡しを請求する者が個人である場合において、運転免許証(中略)、個人番号カード(中略)、在留カード(中略)その他の官庁又は公署から交付を受けた書類その他これに類するもの(氏名、住所及び生年月日の記載があり、本人の写真が貼付されたものに限る。)であつて、その者が本人であることを確認することができるものを提示し、かつ、その写しを添付したとき。」を掲げている。
エ 誤り。供託規則22条1項は、「供託物の還付を受けようとする者又は供託物の取戻しをしようとする者は、供託物の種類に従い、第二十五号から第二十六号の二までの書式による供託物払渡請求書(供託物が有価証券又は振替国債であるときは請求書二通)を提出しなければならない。」と定めている。供託物払渡請求書を2通提出しなければならないのは、供託物が有価証券又は振替国債であるときであり、供託物が金銭であるときは、2通を提出することを要しない。
オ 正しい。供託規則24条2項は、「前項の規定により供託物払渡請求書に利害関係人の承諾書を添付する場合には、同項に規定する者は、当該承諾書の作成前三月以内又はその作成後に作成された次に掲げる書面を併せて添付しなければならない。」と定め、同項1号に「当該承諾書に押された印鑑につき市町村長(中略)又は登記所の作成した証明書」を掲げている。なお、同項2号から4号までは、利害関係人が法人等である場合の代表者等の資格を証する書面を掲げている。
ポイント:供託物の払渡請求は、供託物払渡請求書を提出してするが、供託物が有価証券又は振替国債であるときは2通を提出する(供託規則22条1項)。同一人が数個の供託について同時に払渡しを請求し、払渡請求の事由が同一であるときは一括して請求できる(供託規則23条)。還付請求には還付を受ける権利を有することを証する書面を、取戻請求には取戻しをする権利を有することを証する書面を添付するが、副本ファイルの記録によりその権利が明らかであるときは添付を要しない(供託規則24条1項1号、25条1項)。利害関係人の承諾書を添付するときは、承諾書の作成前3月以内又はその作成後に作成された印鑑証明書等を併せて添付する(供託規則24条2項、25条2項)。払渡請求書等に押された印鑑の証明書の添付が原則であるが(供託規則26条1項)、個人が写真付きの運転免許証等を提示しその写しを添付したとき等は不要となる(供託規則26条3項2号)。「2通は有価証券・振替国債だけ、事由が同じなら一括請求、副本ファイルで明らかなら権利証明書面は不要、承諾書の印鑑証明は作成前3月以内又は作成後、写真付き身分証の提示と写しで印鑑証明不要」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(親族・特別養子縁組) | 家庭裁判所の許可の要否、養親の夫婦共同縁組と年齢、15歳以上の養子となる者の同意と父母の同意、監護期間の起算点、離縁の請求権者 | 民法798条、817条の2〜817条の6、817条の8、817条の10、817条の11 |
| 第2問 | 不動産登記法(地役権の登記) | 地役権者の氏名等の不記録、要役地の所有権の登記の要否、要役地についての職権登記、付従性に関する別段の定めの登記、管轄が異なる場合の通知 | 不動産登記法59条4号、80条、不動産登記規則159条、民法281条1項 |
| 第3問 | 会社法(取締役会の招集と決議) | 招集権者以外の取締役による招集、招集通知の期間の短縮、招集手続の省略と監査役の同意、議事録に異議をとどめない取締役の賛成推定、報告の省略の例外 | 会社法2条9号、363条、366条、368条、369条、372条 |
| 第4問 | 民事訴訟法(支払督促) | 支払督促の要件、申立ての管轄、債務者の審尋、不適法な督促異議の却下、督促異議による訴訟への移行の時期 | 民事訴訟法382条、383条、386条、394条、395条、398条 |
| 第5問 | 供託法(供託物の払渡請求の手続) | 払渡請求書の通数、一括請求、権利を有することを証する書面と副本ファイル、利害関係人の承諾書と印鑑証明書、写真付き身分証明書による印鑑証明書の省略 | 供託規則22条1項、23条、24条、25条、26条1項・3項2号 |