問題:
組合に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。
イ. 業務執行者がある場合であっても、各組合員は、組合の常務を除く業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。
ウ. 組合の債権者は、その債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていた場合であっても、その選択に従い、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。
エ. 組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務を弁済する責任を負わないが、脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
オ. 組合契約の定めるところにより業務の決定及び執行を委任された組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の過半数によって解任することができる。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。民法667条の2第2項は、「組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。」と定めている。なお、同条1項は、「第五百三十三条及び第五百三十六条の規定は、組合契約については、適用しない。」と定めている。
イ 誤り。民法670条の2第1項は、「各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。」と定めているが、同条2項は、「前項の規定にかかわらず、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。この場合において、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる。」と定めている。業務執行者があるときに組合員を代理することができるのは業務執行者のみであり、組合員の過半数の同意を得ても、各組合員が他の組合員を代理することはできない。なお、同条3項は、「前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる。」と定めている。
ウ 誤り。民法675条2項は、「組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合又は等しい割合でその権利を行使することができる。ただし、組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、その割合による。」と定めている。債権の発生の時に損失分担の割合を知っていたときは、同項ただし書により、その割合によることになる。なお、同条1項は、「組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる。」と定めている。
エ 正しい。民法677条の2第2項は、「前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない。」と定め、民法680条の2第1項前段は、「脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。」と定めている。なお、同項後段は、「この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。」と定め、同条2項は、「脱退した組合員は、前項に規定する組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償権を有する。」と定めている。
オ 誤り。民法672条1項は、「組合契約の定めるところにより一人又は数人の組合員に業務の決定及び執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。」と定め、同条2項は、「前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。」と定めている。解任に必要なのは、他の組合員の過半数ではなく、他の組合員の一致である。
ポイント:組合員は、他の組合員の債務不履行を理由に組合契約を解除することができず、民法533条・536条も組合契約には適用されない(民法667条の2)。組合員の代理は、業務執行者がないときは組合員の過半数の同意があれば各組合員がすることができるが、業務執行者があるときは業務執行者のみがすることができ、常務については各組合員又は各業務執行者が単独ですることができる(民法670条の2)。組合の債権者は、組合財産について権利を行使することができるほか、各組合員に対して損失分担の割合又は等しい割合で権利を行使することができるが、債権の発生の時に損失分担の割合を知っていたときは、その割合による(民法675条)。加入した組合員は加入前の債務について責任を負わず(民法677条の2第2項)、脱退した組合員は脱退前の債務について従前の責任の範囲内で責任を負い、担保の供与等の請求と求償をすることができる(民法680条の2)。業務を委任された組合員の解任は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってする(民法672条2項)。「不履行でも解除不可、業務執行者があれば代理は業務執行者のみ、割合を知っていればその割合、加入者は前の債務を負わず脱退者は前の債務を負う、解任は過半数でなく一致」と押さえる。
問題:
不動産工事の先取特権の保存の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 不動産工事の先取特権の保存の登記においては、債権額として工事費用の予算額を登記事項とする。
イ. 建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなし、申請人は、その者の登記識別情報を提供することを要しない。
ウ. 建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記においては、登記義務者の氏名又は名称及び住所は、登記事項とならない。
エ. 建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記をした場合において、建物の建築が完了したときは、登記官は、職権で、当該建物について所有権の保存の登記をしなければならない。
オ. 不動産工事の先取特権の効力を保存するためには、工事が完了した後直ちに、実際に要した工事費用の額を登記しなければならない。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法85条は、「不動産工事の先取特権の保存の登記においては、第八十三条第一項第一号の債権額として工事費用の予算額を登記事項とする。」と定めている。不動産登記法83条1項1号は、「債権額(一定の金額を目的としない債権については、その価額)」である。
イ 正しい。不動産登記法86条1項は、「建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなす。この場合においては、第二十二条本文の規定は、適用しない。」と定めている。不動産登記法22条本文は、登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合等に、申請人が登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない旨を定める規定であり、これが適用されない。
ウ 誤り。不動産登記法86条2項は、「前項の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第三号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。」と定め、同項1号に「新築する建物並びに当該建物の種類、構造及び床面積は設計書による旨」を、同項2号に「登記義務者の氏名又は名称及び住所」を掲げている。登記義務者の氏名又は名称及び住所は、登記事項となる。なお、同条3項は、「前項第一号の規定は、所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記について準用する。」と定めている。
エ 誤り。不動産登記法87条1項は、「前条第一項の登記をした場合において、建物の建築が完了したときは、当該建物の所有者は、遅滞なく、所有権の保存の登記を申請しなければならない。」と定めている。建物の建築が完了したときに所有権の保存の登記を申請しなければならないのは、当該建物の所有者である。なお、同条2項は、「前条第三項の登記をした場合において、附属建物の建築が完了したときは、当該附属建物が属する建物の所有権の登記名義人は、遅滞なく、当該附属建物の新築による建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。
オ 誤り。民法338条1項は、「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。」と定めている。登記をするのは工事を始める前であり、登記するのは費用の予算額である。これに対し、民法337条は、「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。」と定め、民法340条は、「不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。」と定めている。なお、民法339条は、「前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。」と定めている。
ポイント:不動産工事の先取特権は、工事を始める前に費用の予算額を登記して効力を保存し、工事の費用が予算額を超えるときは、その超過額について先取特権は存在しない(民法338条1項)。不動産の保存の先取特権は保存行為の完了後直ちに(民法337条)、不動産の売買の先取特権は売買契約と同時に(民法340条)登記をする。民法337条・338条に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる(民法339条)。登記の上では、工事費用の予算額が債権額として登記事項となる(不動産登記法85条)。建物を新築する場合は、所有者となるべき者を登記義務者とみなし、登記識別情報の提供に関する不動産登記法22条本文は適用されず(不動産登記法86条1項)、設計書による旨と登記義務者の氏名又は名称及び住所が登記事項となる(不動産登記法86条2項)。建築が完了したときは、建物の所有者が遅滞なく所有権の保存の登記を申請する(不動産登記法87条1項)。「工事は始める前に予算額、保存は完了後直ちに、売買は契約と同時に、新築は所有者となるべき者を登記義務者とみなす、完了後の保存登記は所有者が申請」と押さえる。
問題:
株式会社及び持分会社の組織変更に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 組織変更をする株式会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について株主総会の特別決議による承認を受ければ足りる。
イ. 組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。
ウ. 合名会社が組織変更をする場合において、債権者に対する公告を、官報のほか、定款の定めに従い電子公告によりするときは、知れている債権者に対する各別の催告をすることを要しない。
エ. 株式会社が組織変更をした場合には、組織変更前の株式会社についての解散の登記の申請と組織変更後の持分会社についての設立の登記の申請とは、同時にしなければならず、株式会社についての当該登記の申請については、申請書の添付書面に関する規定は適用しない。
オ. 組織変更をする持分会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について総社員の同意を得なければならないが、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
答え:
正しいものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。会社法776条1項は、「組織変更をする株式会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該株式会社の総株主の同意を得なければならない。」と定めている。必要なのは総株主の同意であり、株主総会の特別決議による承認では足りない。
イ 正しい。会社法745条5項は、「組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。」と定めている。なお、会社法777条1項は、「株式会社が組織変更をする場合には、組織変更をする株式会社の新株予約権の新株予約権者は、当該株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」と定め、会社法745条6項は、「前各項の規定は、第七百七十九条の規定による手続が終了していない場合又は組織変更を中止した場合には、適用しない。」と定めている。
ウ 誤り。会社法779条3項は、「前項の規定にかかわらず、組織変更をする株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。」と定めている。会社法939条1項は、2号に「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」を、3号に「電子公告」を掲げている。会社法781条2項は、「第七百七十九条(第二項第二号を除く。)及び前条の規定は、組織変更をする持分会社について準用する。この場合において、第七百七十九条第三項中「組織変更をする株式会社」とあるのは「組織変更をする持分会社(合同会社に限る。)」と、前条第三項中「及び第七百四十五条」とあるのは「並びに第七百四十七条及び次条第一項」と読み替えるものとする。」と定めている。各別の催告を要しないとする準用は合同会社に限られるから、合名会社は、知れている債権者に各別の催告をしなければならない。
エ 正しい。会社法920条は、「会社が組織変更をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、組織変更前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならない。」と定めている。商業登記法78条1項は、「株式会社が組織変更をした場合の株式会社についての登記の申請と組織変更後の持分会社についての登記の申請とは、同時にしなければならない。」と定め、同条2項は、「申請書の添付書面に関する規定は、株式会社についての前項の登記の申請については、適用しない。」と定めている。なお、同条3項は、「登記官は、第一項の登記の申請のいずれかにつき第二十四条各号のいずれかに掲げる事由があるときは、これらの申請を共に却下しなければならない。」と定めている。
オ 正しい。会社法781条1項は、「組織変更をする持分会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該持分会社の総社員の同意を得なければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定めている。組織変更をする株式会社についての会社法776条1項には、このようなただし書はない。
ポイント:組織変更計画の承認は、株式会社では総株主の同意(会社法776条1項)、持分会社では総社員の同意であり、持分会社については定款で別段の定めをすることができる(会社法781条1項)。組織変更をする株式会社の新株予約権は効力発生日に消滅し(会社法745条5項)、新株予約権者は公正な価格での買取りを請求することができる(会社法777条1項)。債権者の異議の手続が終了していない場合又は組織変更を中止した場合は、効力発生日が到来しても組織変更の効力に関する規定は適用されない(会社法745条6項)。公告を官報のほか定款の定めに従い日刊新聞紙又は電子公告によりするときに各別の催告を要しないのは、株式会社のほか、持分会社のうち合同会社に限られる(会社法779条3項、781条2項)。登記は、効力が生じた日から2週間以内に、本店の所在地において、組織変更前の会社の解散の登記と組織変更後の会社の設立の登記をし(会社法920条)、株式会社が組織変更をした場合の両申請は同時にしなければならず、株式会社についての申請には申請書の添付書面に関する規定は適用されず、いずれかに却下事由があれば共に却下される(商業登記法78条)。「株式会社は総株主の同意、持分会社は総社員の同意で定款で別段の定めも可、新株予約権は消滅して買取請求、催告省略は株式会社と合同会社のみ、解散と設立は同時申請で株式会社についての申請に添付書面の規定は適用なし」と押さえる。
問題:
証人尋問及び当事者本人の尋問に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 16歳未満の者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
イ. 裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に宣誓をさせなければならない。
ウ. 当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処し、又はその勾引を命ずることができる。
エ. 証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をするが、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
オ. 地方裁判所における訴訟手続において、裁判所は、当事者に異議がない場合であって、相当と認めるときは、当事者本人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法201条1項は、「証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。」と定め、同条2項は、「十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。」と定めている。
イ 誤り。民事訴訟法207条1項は、「裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。」と定めている。同項後段は、宣誓をさせることができると定めるものであり、宣誓をさせなければならないとは定めていない。なお、民事訴訟法209条1項は、「宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。」と定めている。
ウ 誤り。民事訴訟法208条は、「当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。」と定めている。過料及び勾引を定める民事訴訟法192条1項及び194条1項は、いずれも証人についての規定であり、当事者本人の尋問について証人尋問の規定を準用する民事訴訟法210条は、「第百九十五条、第二百一条第二項、第二百二条から第二百四条まで及び第二百六条の規定は、当事者本人の尋問について準用する。」と定めていて、これらの規定を掲げていない。
エ 正しい。民事訴訟法207条2項は、「証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。」と定めている。
オ 誤り。民事訴訟法205条1項は、「裁判所は、当事者に異議がない場合であって、相当と認めるときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。」と定めており、同項の対象は証人の尋問である。民事訴訟法210条が準用する規定に民事訴訟法205条は掲げられていない。当事者本人の尋問に代わる書面の提出を定めるのは、簡易裁判所の訴訟手続に関する民事訴訟法278条1項であり、同項は、「裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。」と定めている。
ポイント:証人には原則として宣誓をさせなければならないが、16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者には宣誓をさせることができない(民事訴訟法201条1項・2項)。当事者本人については宣誓をさせることができるにとどまり(民事訴訟法207条1項)、宣誓した当事者の虚偽の陳述は10万円以下の過料の対象となる(民事訴訟法209条1項)。証人の不出頭については過料・勾引の規定があるが(民事訴訟法192条1項、194条1項)、当事者本人の不出頭等については、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民事訴訟法208条)。尋問の順序は証人が先であり、適当と認めるときは当事者の意見を聴いて当事者本人を先にすることができる(民事訴訟法207条2項)。尋問に代わる書面の提出は、地方裁判所の手続では証人の尋問について定められ(民事訴訟法205条1項、210条)、当事者本人の尋問についても書面の提出を定めるのは簡易裁判所の手続である(民事訴訟法278条1項)。「証人は宣誓が原則で16歳未満は不可、本人には宣誓をさせることができる、本人の不出頭は過料・勾引でなく相手方の主張を真実と認めることができる、順序は証人が先、本人の書面尋問は簡裁だけ」と押さえる。
問題:
供託に適しない物等の競売と代金の供託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 弁済者は、弁済の目的物の保存について過分の費用を要するときのほか、その物を供託することが困難な事情があるときも、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
イ. 民法497条の裁判所の許可の事件は、弁済者の住所地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。
ウ. 裁判所は、民法497条の裁判所の許可の裁判をするには、債権者の陳述を聴くことを要しない。
エ. 商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒んだときは、売主は、裁判所の許可を得なければ、その物を競売に付することができない。
オ. 商人間の売買において、商法524条の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならないが、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。
答え:
正しいものは、ア・オの2つである。
解説:
ア 正しい。民法497条は、「弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。」と定め、1号に「その物が供託に適しないとき。」を、2号に「その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。」を、3号に「その物の保存について過分の費用を要するとき。」を、4号に「前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。」を掲げている。
イ 誤り。非訟事件手続法95条は、「民法第四百九十七条の裁判所の許可の事件については、前条第一項、第二項及び第四項の規定を準用する。」と定め、非訟事件手続法94条1項は、「民法第四百九十五条第二項の供託所の指定及び供託物の保管者の選任の事件は、債務の履行地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。」と定めている。民法497条の裁判所の許可の事件は、債務の履行地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
ウ 誤り。非訟事件手続法94条2項は、「裁判所は、前項の指定及び選任の裁判をするには、債権者の陳述を聴かなければならない。」と定めており、この規定は、非訟事件手続法95条により、民法497条の裁判所の許可の事件について準用される。なお、同じく準用される非訟事件手続法94条4項は、「裁判所が第二項の裁判又は前項の規定による改任の裁判をする場合における手続費用は、債権者の負担とする。」と定めている。
エ 誤り。商法524条1項は、「商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。」と定めている。同項は、民法497条と異なり、裁判所の許可を掲げておらず、相当の期間を定めて催告をすることを掲げている。なお、商法524条2項は、「損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。」と定めている。
オ 正しい。商法524条3項は、「前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。」と定めている。
ポイント:弁済者は、目的物が供託に適しないとき、滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき、保存について過分の費用を要するとき、その他供託することが困難な事情があるときは、裁判所の許可を得て競売に付し、その代金を供託することができる(民法497条)。この許可の事件は債務の履行地を管轄する地方裁判所の管轄に属し、裁判所は債権者の陳述を聴かなければならず、手続費用は債権者の負担となる(非訟事件手続法95条、94条1項・2項・4項)。商人間の売買では、買主が受領を拒み、又は受領することができないとき、売主は供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができ、遅滞なく買主に通知を発しなければならない(商法524条1項)。価格の低落のおそれがある物は催告をしないで競売に付することができ(商法524条2項)、競売の代価は供託しなければならないが、代金に充当することを妨げない(商法524条3項)。「民法は裁判所の許可、管轄は履行地の地方裁判所で債権者の陳述を聴く、商人間の売買は催告の上で競売、低落のおそれがあれば催告不要、代価は供託か代金に充当」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・組合) | 他の組合員の債務不履行と解除、業務執行者がある場合の代理、組合の債権者の権利の行使、加入した組合員と脱退した組合員の責任、業務を委任された組合員の解任 | 民法667条の2、670条の2、672条、675条、677条の2、680条の2 |
| 第2問 | 不動産登記法(先取特権の登記) | 工事費用の予算額、新築の場合の登記義務者と登記識別情報、新築の場合の登記事項、建築完了後の所有権の保存の登記、不動産の工事・保存・売買の先取特権の登記の時期 | 不動産登記法22条、83条1項1号、85条〜87条、民法337条〜340条 |
| 第3問 | 会社法・商業登記法(組織変更) | 総株主の同意、新株予約権の消滅と買取請求、債権者の異議と各別の催告の省略、解散の登記と設立の登記の同時申請、総社員の同意と定款の別段の定め | 会社法745条5項・6項、776条1項、777条1項、779条3項、781条、920条、939条1項、商業登記法78条 |
| 第4問 | 民事訴訟法(証人尋問・当事者本人の尋問) | 証人の宣誓、当事者本人の宣誓、当事者本人の不出頭等の効果、尋問の順序、尋問に代わる書面の提出 | 民事訴訟法192条1項、194条1項、201条1項・2項、205条1項、207条〜210条、278条1項 |
| 第5問 | 供託(弁済の目的物の競売と代金の供託) | 民法497条の場合、許可の事件の管轄、債権者の陳述の聴取、商人間の売買における競売と催告、競売の代価の供託と代金への充当 | 民法497条、非訟事件手続法94条・95条、商法524条 |