この記事の要点
- 共有物の分割で不動産を取得しても、分割前の持分の割合を超えない部分には不動産取得税は課されない(地方税法73条の7第2号の3)
- 持分の割合を超える部分はこの非課税から外れ、課税の対象になる。複数の不動産をまとめて分割しても、超えているかどうかは不動産ごとに判断するのが最高裁判決の考え方
- 遺産分割の「共有分割」とは別の話。課税されるかどうかの判断は都道府県の窓口で確かめる
共有名義の不動産を分けて共有を解消する「共有物の分割」で不動産を取得しても、もともとの持分の割合の範囲内であれば、不動産取得税はかかりません。持分の割合を超えて取得した部分は非課税の外に置かれ、課税の対象になります。※執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の税額や、特定の分割が課税されるかどうかの判断には立ち入りません。
条文が定めていること
地方税法73条の7は、柱書で「道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない」と定め、その第2号の3に「共有物の分割による不動産の取得(当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)」を挙げています。
分かれ目は、かっこ書きです。持分の割合の範囲内の取得は非課税で、その割合を超える部分の取得だけが非課税から除かれます。
最高裁令和4年3月22日第三小法廷判決(民集76巻3号310頁)は、この規定について、共有物の分割による取得も本来は不動産取得税の対象となる「不動産の取得」に当たることを前提に、その例外として、持分を超える部分の取得を除いて非課税としたものと解しています。「自分の持分の範囲だから取得に当たらない」のではなく、「取得に当たるが、法律が非課税としている」という組み立てです。
「超える部分」はどう判断されるか
共有物の分割は、話し合いが調わないときや話し合いができないときは、裁判所に請求できます(民法258条1項)。裁判所が命じる方法には、現物を分ける方法のほか、他の共有者の持分の全部または一部を取得させ、その代わりに債務を負担させる方法もあります(同条2項)。方法と登記の全体像は兄弟と共有の実家、どう動かす?で整理しています。
上の判決は、複数の不動産をまとめて分割する場合でも、「超える部分」の有無と額は、対象となった個々の不動産ごとに、分割前の持分の割合に相当する価格と分割後に所有することになった不動産の価格を比べて判断するとしました。不動産全部を合わせて比べるのではありません。その事件では、持分10分の1だった各土地について残りの10分の9を取得した部分の全部が、超える部分に当たるとされています。
このほか、次の点が都道府県の案内に示されています。
- 持分を上回る部分は、原則として、分割の前後で取得者に属する不動産の評価額が増えた分とされています(福井県・石川県の不動産取得税Q&A)。複数の不動産をまとめて分割した場合は、この比較も上の判決のとおり不動産ごとに行うことになると考えられます
- 互いに隣接し、共有者が同じで持分割合も同じ複数の共有地については、一つの共有物を分割した場合に準じて扱うとされています(福井県の不動産取得税Q&A)。総務大臣の通知(「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」第5章第1の5の2(2))は、合筆せずに一体としてとらえて持分に応じた分割をしたと認められるときは、非課税として扱って差し支えないとしています。上の判決はこの扱いに触れていません。当てはまるかどうかは、都道府県の窓口で確かめてください
- 非課税を受けるには、原則として申告が必要とされています(東京都主税局の案内)
1筆の土地を分筆(登記上、1つの土地を2つ以上に分けること)してから分ける場合にも、注意点があります。最高裁令和2年3月19日第一小法廷判決(民集74巻3号227頁)は、持分2分の1ずつの共有地を面積の異なる2筆に分筆して分けた事件で、全体が一体の駐車場として使われ、固定資産評価基準の「一画地」(評価の単位となるひとまとまりの土地)と認定された場合は、各筆の評価は面積に応じて計算されるとして、面積の大きいほうを取得した人への課税を適法としました。この場合は面積の差がそのまま評価の差になるので、土地の形などの違いを考えて価格に応じて分けたつもりでも、超える部分が生じることがあると考えられます。当てはまるかどうかは、都道府県の窓口で確かめてください。
課税の対象になることと、実際に納める税額が生じることは別です。不動産取得税には、課税標準となる額が一定の額に満たないときは課することができないとする免税点の定めもあります(地方税法73条の15の2第1項)。
遺産分割の「共有分割」とは別の話
名前の似たものに、遺産分割の「共有分割」があります。こちらは遺産を相続人の共有にする分け方で、相続による取得として地方税法73条の7第1号の話になると考えられます。第1号には、持分を超える部分を除くかっこ書きはありません。遺産分割の場合の扱いも、分け方によって異なることがあります(東京都主税局の案内は、代償分割は「相続」に含まれないとしています)。この記事で扱ったのは、すでにある共有を共有物の分割で解消する場面の第2号の3です。
他の税金と相談先
登記の際にかかる登録免許税は、不動産取得税とは別の国税です。登録免許税法別表第一第1号(二)は、「共有物の分割による移転の登記」(ロ)を「その他の原因による移転の登記」(ハ)と分けて定めており、ロの区分が使えるのは、共有物について有していた持分に応じた価額に対応する部分に限るとされています(同法17条1項の表のかっこ書き、同法施行令9条)。登記の税金ですので、登記の相談とあわせて司法書士にお尋ねください。
分割にともなって所得税の譲渡所得が問題になることもありますが、この記事では立ち入りません。税理士にご確認ください。不動産取得税が課されるかどうかの判断は、不動産の所在地を担当する都道府県の窓口で確かめるのが確実で、具体的な税額については税理士にご相談ください。共有者どうしの交渉や争いになっているときは、弁護士にご相談ください。
まとめ
共有物の分割による不動産の取得は、分割前の持分の割合の範囲内なら不動産取得税が課されず、超える部分は課税の対象になります。令和4年の最高裁判決によれば、超えているかどうかは、複数の不動産をまとめて分割しても個々の不動産ごとに判断されます。分割による登記の進め方はお近くの司法書士に、不動産取得税の具体的な税額は税理士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。
- 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第73条の7第1号・第2号の3、第73条の15の2第1項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第258条第1項・第2項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)第17条第1項、別表第一第1号(二)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 登録免許税法施行令(昭和四十二年政令第百四十六号)第9条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000146
- 最高裁令和4年3月22日第三小法廷判決(令和3年(行ヒ)第62号)民集76巻3号310頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/91034/detail2/index.html
- 最高裁令和2年3月19日第一小法廷判決(平成31年(行ヒ)第99号)民集74巻3号227頁(裁判所ウェブサイト): https://www.courts.go.jp/hanrei/89334/detail2/index.html
- 総務大臣通知「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」第5章第1の5の2(平成22年4月1日総税都第16号、令和8年4月1日総税都第15号までの改正を反映した版。東京都主税局掲載): https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/handling_notice_prefecture
- 東京都行政不服審査会 答申(平成31年3月18日・不動産取得税賦課処分): https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/12houmu/pdf/toushinnaiyou/30/486.pdf
- 東京都行政不服審査会 答申(令和元年8月30日・不動産取得税賦課処分): https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/soumu/0731_586
- 福井県「よくある質問(Q&A)」Q6: https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/zeimu/zeimu03.html
- 石川県「不動産取得税」Q12: https://www.pref.ishikawa.lg.jp/zei/qa/a8.html
- 東京都主税局「不動産取得税」Q21・Q22: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/real_estate/f