この記事の要点

  • 合名会社は社員全員が、合資会社は一部の社員が「無限責任社員」です。会社の財産で債務を払いきれないときなどに、出資額を上限とせずに弁済する責任を負う立場です。
  • 社員が亡くなると、法律上は「退社」となります。相続人が持分(会社に対する社員の地位)を受け継いで社員になれるのは、定款にその定めがある場合です。
  • 社員の変更登記の期限は、変更が生じてから2週間以内です。登録免許税は、合名会社・合資会社の社員の変更で申請1件につき1万円です。
  • 退社した社員の、会社の債権者に対する責任は「退社の登記」から2年以内に請求や請求の予告がなければ消滅するため、登記の遅れは相続人にとっても無関係ではありません。
  • まず登記簿と定款を確かめます。相続放棄の期限は原則3か月です。債務の見極めは弁護士、持分の評価額や税額は税理士の領域です。

親や親族が合名会社・合資会社の社員だった場合、相続で最初に確かめたいのは「その人は無限責任社員だったか」と「定款に、持分を相続人が受け継ぐ定めがあるか」の2点です。この2点で、相続人の立場も必要な登記も変わります。

合名会社・合資会社とは

どちらも、合同会社と同じ「持分会社」の仲間です。持分会社の「社員」は従業員のことではなく、出資して会社の構成員になっている人を指します。

3つの違いは、社員の責任の範囲にあります(会社法576条2項から4項)。

会社の種類 社員の構成
合名会社 社員全員が無限責任社員
合資会社 一部が無限責任社員、その他が有限責任社員
合同会社 社員全員が有限責任社員

珍しい形に見えますが、どちらも過去の制度ではありません。会社法に定めがあり、いまも設立できます(会社法575条1項)。国税庁の会社標本調査(令和6年度分・税務統計による推計)では、合名会社が2,986社、合資会社が10,916社あり、全法人299万9,680社に占める割合はそれぞれ0.1%、0.4%です。

「無限責任」とはどういう意味か

社員は、次のいずれかの場合に、連帯して会社の債務を弁済する責任を負います(会社法580条1項)。

  • 会社の財産で債務を完済できない場合
  • 会社の財産への強制執行がうまくいかなかった場合(会社に弁済する資力があり、かつ強制執行が容易であることを社員が証明した場合を除きます)

有限責任社員の責任は、出資の価額(すでに履行した分を除きます)が上限です(同条2項)。無限責任社員には、この上限がありません。ここが「無限」と呼ばれる理由です。

登記簿で分かること、分からないこと

亡くなった方の立場は、会社の登記簿で確かめられます。登記簿を取る方法は、会社の登記簿の取り方で整理しています。

  • 合名会社:社員の氏名(法人なら名称)と住所が登記されます(会社法912条5号)。
  • 合資会社:社員の氏名と住所のほか、有限責任社員か無限責任社員かの別も登記されます(会社法913条5号・6号)。有限責任社員については、出資の目的と価額、すでに履行した出資の価額も登記されます(同条7号)。

一方、相続人が持分を受け継ぐという定款の定めは、これらの条文の登記事項に挙げられていません。定めの有無は、定款そのもので確かめます。

なお、2026年12月1日からは、合名会社・合資会社の社員も、登記事項証明書に表示する住所を市区町村までにとどめる申出ができるようになります(代表取締役の住所、登記簿で非公開にできます)。

社員が亡くなると、どうなるか

社員は死亡によって退社します(会社法607条1項3号)。これは無限責任社員にも有限責任社員にも共通です。そのうえで、定款に持分を受け継ぐ定めがあるかどうかで道が分かれます(会社法608条1項)。

定款に定めがない場合 定款に定めがある場合
社員の立場 亡くなった方の退社で終わる 相続人が持分を受け継いだ時に社員になる
持分の払戻し 退社に伴う計算の結果により払戻しの対象になる(払戻しがなく、逆に会社への支払いが問題になることもある。後述) 相続人が社員となった場合は対象にならない
必要な登記 退社の登記 退社と、相続人の加入に関する登記

定款に定めがない場合

相続人は、亡くなった方の代わりに社員になるわけではありません。退社した社員は持分の払戻しを受けることができ(会社法611条1項)、計算は退社の時の会社の財産の状況に従って行います(同条2項)。相続人は、亡くなった方の財産に属した権利義務を受け継ぐのが原則ですから(民法896条)、この払戻しを受ける権利も相続の場面で問題になります。もっとも、計算の結果によっては、払戻しがないこともあれば、逆に会社への支払いが問題になることもあります(「相続人が注意したい「責任」と相続放棄」で説明します)。

相続人が会社に入りたい場合は、新たな社員の加入の手続きを別に行うことになります(会社法604条)。このとき、加入した社員は、加入前に生じた会社の債務についても弁済する責任を負います(会社法605条)。「親の後を継ぐだけ」のつもりでも、責任の範囲を確かめずに進めないようにしたいところです。

定款に定めがある場合

相続人は、持分を受け継いだ時に、その持分を持つ社員になります(会社法608条2項)。このとき会社は、その相続人についての定款の変更をしたものとみなされます(同条3項)。社員全員の同意を改めて取り直す形ではありません。ただし、定款が受け継ぐ人の範囲などに条件を付けていれば、その内容を確かめます。

相続人が2人以上いるときは、次の点にも注意が必要です。

  • 持分についての権利を行使する人を1人決めなければ、原則として権利を行使できません(同条5項)。
  • 亡くなった方の出資に未履行の部分があれば、相続人が連帯して履行する責任を負います(同条4項)。

無限責任社員の持分を受け継ぐと、相続人自身に社員としての責任の問題が生じます。その範囲は個別の事情を踏まえた判断になるため、弁護士に確認してください。

相続人が注意したい「責任」と相続放棄

退社した社員は、退社の登記をする前に生じた会社の債務について、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負います(会社法612条1項)。この責任は、登記後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、登記後2年を経過した時に消滅します(同条2項)。

ここで押さえておきたいのは、2年の起点が「亡くなった日」ではなく「退社の登記」だという点です。

もう1つ、退社に伴う会社との精算にも目を向ける必要があります。上の2年の定めは、会社の債権者に対する責任についてのものです。合資会社の無限責任社員が退社した事案で、最高裁は、退社時の計算の結果、その社員が負担すべき損失の額が出資の価額を超えるときは、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情がない限り、社員は会社に超過額を支払わなければならないと判断しました(最判令和元年12月24日・民集73巻5号457頁)。計算の結果によっては、払戻しを受けるどころか、支払う側になることがあるということです。この事案は、生前に退社した社員の相続で、遺留分(一定の相続人に保障された取り分)の計算が争われたものです。亡くなったことによる退社そのものを扱った事案ではありません。

亡くなった方の退社に伴ってこれらの責任や支払いが問題になる場合、それが相続人に及ぶのか、及ぶとしてどこまでかを確かめる必要があります。その結論は、会社の財産の状況や債権者の動きによっても変わります。債務の見極めや責任の範囲の判断は、弁護士に相談してください。

相続放棄についても、期限と一般的な仕組みを確認しておきます。

  • 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認か放棄かを決める必要があります(民法915条1項)。この期間は、家庭裁判所への請求で延ばせる場合があります(同項ただし書)。
  • 放棄は、家庭裁判所への申述によって行います(民法938条)。
  • 放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。借金だけでなく、プラスの財産も受け継がないことになります。定款に定めがあっても、放棄をした人は相続人として持分を受け継ぐ立場から外れると考えられます。

放棄をするかどうかは、財産と債務の全体を見て個別に判断することです。期限の数え方や手続きの流れは、相続放棄の基本で整理しています。

退社の登記はどう進めるか

期限と費用

社員の氏名や住所は登記事項なので、社員が変われば、変更が生じてから2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法915条1項)。登記を怠ると、会社の業務を執行する社員などが100万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁)の対象になることがあります(会社法976条1号)。

登録免許税は次のとおりです(登録免許税法 別表第一第24号)。

登記の内容 登録免許税
社員の退社・加入などの変更 申請1件につき1万円
合資会社から合名会社への種類の変更 設立の登記6万円+解散の登記3万円
合資会社から合同会社への種類の変更 設立の登記は資本金の額の1000分の1.5(一定額を超える部分は1000分の7。最低3万円)+解散の登記3万円

社員の変更の税額は、別表では「申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社などは1万円)」と定められています。合名会社・合資会社については、法務省の通達(平成18年3月31日民商第782号)が1万円と明記しています。

必要な書面

退社による変更の登記の申請書には、退社の事実を証する書面を添付します(商業登記法96条1項。合資会社は111条で準用)。死亡による退社であれば、亡くなった事実が分かる書面がこれにあたります。

定款の定めにより相続人が加入する場合も、その事実を証する書面が必要です(同項)。具体的に何を用意するかは、定款の内容と相続の状況によって変わるため、管轄の法務局や司法書士に確認してください。

会社の形が変わる場合、なくなる場合

亡くなった方の退社で社員の構成が変わると、登記の内容はさらに変わります。

  • 合資会社の有限責任社員がいなくなった場合:社員が無限責任社員だけになると、合名会社となる定款の変更をしたものとみなされます(会社法639条1項)。
  • 合資会社の無限責任社員がいなくなった場合:社員が有限責任社員だけになると、合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます(同条2項)。出資に未履行の部分があるときは、原則として1か月以内に履行しなければなりません(会社法640条2項)。
  • 合名会社の唯一の社員が亡くなった場合:社員が欠けたことで会社は解散します(会社法641条4号)。この場合の清算人は、裁判所が利害関係人もしくは法務大臣の申立てまたは職権で選任します(会社法647条3項)。

合資会社が他の種類の会社になる場合は、前の会社の解散の登記と、新しい種類の会社の設立の登記を同時に申請します(商業登記法113条3項・106条1項)。期間は、定款の変更の効力が生じた日から2週間以内です(前掲の通達。会社法919条の文言は定款の変更による種類の変更〔638条〕を指しますが、社員の退社による場合も扱う通達の項目で、同じ期間が示されています)。

定款に定めがあり相続人が社員になるときは、社員の構成の前提が変わります。どの場面にあたるかを定款と登記簿で確かめてから手続きに入るのが順番です。

なお、すでに解散して清算中の会社で社員が亡くなった場合は、定款に定めがなくても相続人が持分を受け継ぎます(会社法675条)。

税金は税理士へ

持分や払戻しを受ける権利は、相続税の論点に関わります。持分の評価額や税額の計算は税理士の領域ですので、税金面は税理士にご確認ください。なお、登記のときに納める登録免許税は、上の表のとおりです。

まとめ

合名会社・合資会社の社員の相続は、株式を相続する場合とは考え方が大きく異なります。

  • 社員は死亡で退社するのが原則で、相続人が持分を受け継いで社員になるのは定款に定めがある場合
  • 定めがなければ退社に伴う計算の問題になり(払戻しのほか、会社への支払いが問題になることもある)、定めがあれば相続人自身が社員になる
  • 社員の変更登記は2週間以内で、退社の登記は債権者に対する責任の2年の起点でもある
  • 相続放棄の期限は原則3か月。債務の見極めは弁護士、持分の評価額や税額は税理士へ

登記簿と定款の確認や、登記の書類の準備で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員が亡くなったときの登記の費用はどのくらいですか? 合名会社・合資会社の社員の変更登記の登録免許税は、申請1件につき1万円です。会社の種類が変わる場合は、設立と解散の登記の税額がかかります。ほかに戸籍などの取得費用と、司法書士に依頼する場合の報酬(事務所により異なります)がかかります。持分の評価額や税額については税理士にご確認ください。

Q. 期限はありますか?放置するとどうなりますか? 社員の変更登記は、変更が生じてから2週間以内です。怠ると、会社の業務を執行する社員などが100万円以下の過料の対象になることがあります。退社した社員の、会社の債権者に対する責任は、退社の登記の後2年以内に請求や請求の予告がなければ消滅します。この2年は、登記の後に進みます。相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内です。

Q. 自分で手続きできますか?どこに相談すればよいですか? 登記は会社として申請するもので、要件を満たせば専門家に頼まず申請することもできます。定款の読み取りや登記の書類についてはお近くの司法書士に、会社の債務や責任の範囲の見極めは弁護士に、持分の評価額や税額は税理士に、それぞれ相談してください。どこから手をつけるか迷うときは、登記簿と定款を手元にそろえてから相談すると話が進みやすくなります。

【さらに深掘り】社員の死亡で分かれる登記の組み立てと添付書面

ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

社員が亡くなったときの登記は、定款の定めの有無と、退社の後に残る社員の顔ぶれで組み立てが変わります。次の表は条文と通達からの整理で、書面の欄は中心になるものだけを挙げています。合資会社の登記には、商業登記法93条と96条から103条までが111条で準用されます。

場面 申請する登記 中心になる書面 登録免許税
定款の定めがなく、他の社員が残り、種類も変わらない 退社による変更 退社の事実を証する書面(商業登記法96条1項) 1万円
定款の定めがあり、相続人が社員になる 退社と加入による変更 その事実を証する書面(同項) 1万円
合資会社の社員が無限責任社員だけになる 合資会社の解散+合名会社の設立 定款(同法113条1項) 3万円+6万円
合資会社の社員が有限責任社員だけになる 合資会社の解散+合同会社の設立 定款(同条2項1号)、資本金の額の計上を証する書面(商業登記規則92条・61条9項) 3万円+本文の表の設立の税額
社員がいなくなる 解散+清算人 清算人の選任を証する書面など(商業登記法98条3項・99条1項4号) 3万円+9,000円

社員の変更の税額は、別表第一第24号(一)カの区分で、課税標準は申請件数です。退社と加入は同じ区分にあたります。解散はレ、清算人は(三)イの区分です。

死亡による退社の登記

期限の起点は、会社法915条1項の「変更が生じたとき」です。条文は、会社が死亡を知った日から数える形にはなっていません。

書面について、前掲の通達は「退社の事実を証する書面」と書くだけで、死亡の場合の具体名を挙げていません。法務局の申請書様式のページ(2026年11月4日確認)の持分会社の節は合同会社の様式を中心に組まれていて、合名会社・合資会社が出てくるのは種類の変更の記載例くらいです。社員の退社と加入の記載例は合同会社の持分の譲渡の例で、合名会社・合資会社の社員の死亡についての記載例は見当たりません。一方、株式会社の記載例は、取締役の死亡について「死亡届又は法定相続情報一覧図の写し」を挙げています(平取締役の死亡による退任登記)。この死亡届は、遺族から会社にあてた書面の例です。これを手がかりに、合名会社・合資会社の場合に何を用意するかを管轄の法務局に確かめておきます。

亡くなった社員が代表社員として登記されていた場合は、会社を代表する人についても確かめます(会社法912条6号・913条8号)。定款に別段の定めがなければ、残る社員が業務を執行し、各自が会社を代表します(会社法590条1項・599条1項・2項)。定款の定めに基づく互選で代表社員を選ぶなら、その一致を証する書面が必要です(会社法599条3項、商業登記法93条)。

定款の定めがない場合、持分の払戻しは商業登記法96条1項の書面に挙がっていません。払戻しの計算は退社の時の財産の状況によりますが(会社法611条2項)、その時に完了していない事項は完了後に計算できます(同条4項)。計算が終わるまで登記を待つ定めは、これらの条文にはありません。また、611条1項ただし書が除いているのは一般承継人が社員となった場合だけです。定款の定めがなければ払戻しを受ける権利が残り、民法896条の相続の問題になる、というのは条文からの整理です。

もっとも、計算の結果は払戻しの方向とは限りません。前掲の最判令和元年12月24日について、木下崇「退社時に債務超過であった合資会社における無限責任社員の責任」(新・判例解説Watch vol.27〔2020年〕商法No.131)は、超過額の支払義務を認める結論は従来の判例・学説と同じだと整理しています(2〜3頁)。以下も同評釈による整理で、学説全体の分布を示すものではありません。義務の性質については、出資義務とする大審院判決(大判大正7年12月7日民録24輯2315頁。同評釈の引用による)と、損失の分担から生ずる特殊の義務とする見解があり、本判決は出資義務という構成をとっていないとされます(同2〜3頁)。本判決の根拠については、不文の責任法理によるとみる見解が紹介され、同評釈自身は、622条にも触れつつ611条に基づくものではないかとしています(同3頁)。また、同評釈は、612条2項の期間は会社債権者に対する責任についてのもので、会社に対する義務には適用されないとし(同3頁)、本判決の結論は合名会社の無限責任社員にも当てはまるだろうとしています(同4頁)。判決の事案は生前の退社です。同評釈は、本判決が合資会社の社員の退社一般に及ぶと思われるとしていますが(同4頁)、死亡による退社の場合に相続人がこの義務を負うかまでは論じていません。その点は弁護士に確認してください。

定款の定めによる相続人の加入の登記

新たな出資による加入は、定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意による定款の変更で効力が生じ、登記でもその同意を証する書面が中心になります(会社法604条2項・637条、前掲の通達)。定款の定めによる承継は形が違います。608条2項は「第六百四条第二項の規定にかかわらず」、持分を承継した時に社員となると定め、同条3項は定款の変更をしたものとみなします。条文の形からは、この場面は商業登記法93条の「総社員の同意」を「要するとき」にあたらず、その同意を証する書面を前提にしていないと読めます(条文からの推論)。ただし、定款が受け継ぐ人の範囲などに条件を付けていれば、その内容と必要な書面を確かめます。

前掲の通達の加入の項目は、新たな出資と持分の譲受けを挙げるだけで、相続による加入の書面を示していません。商業登記法96条1項の「その事実」に当てはめると、示すことになるのは、社員の死亡、持分を承継する定款の定め、加入する人が相続人であることの3点です。書面の形としては定款と、死亡および相続関係が分かる戸籍などが考えられます。これは条文からの整理で、公表された記載例によるものではないため、申請前に管轄の法務局に確認します。

このほか、次の点を確かめておきます。

  • 加入の時点:社員となるのは持分を承継した時で(会社法608条2項)、相続による権利義務の承継は相続開始の時からです(民法896条)。したがって、2週間の起点も亡くなった日と読むのが素直です(条文からの推論)。
  • 相続人が2人以上の場合:権利を行使する人を1人定める話(会社法608条5項)と、社員として誰を登記するかは別のことです。権利を行使する人は、912条・913条の登記事項に挙がっていません。誰を登記し、どの書面で示すかは、定款の内容と遺産分割の状況によって変わるため、事前に確認します。
  • 相続放棄との関係:608条1項が定めるのは「相続人その他の一般承継人」の承継です。放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとみなされるので(民法939条)、持分を受け継ぐ立場から外れると考えられます(条文からの推論)。そうなると、誰が持分を受け継ぐかの前提も動きます。
  • 2週間と3か月:会社法915条1項には、放棄の検討を待つ定めがありません。加入の登記をいつ出すかは管轄の法務局に確認します。社員としての権利の行使や持分の処分が、法定単純承認にあたる「処分」(民法921条1号)になるかは個別の判断になるため、弁護士に確認してください。

639条による種類の変更の登記

639条は、社員の同意を経なくても定款の変更をしたものとみなす規定です。

期間について、会社法919条の文言は「第六百三十八条の規定により」他の種類の持分会社となったときで、639条を名指ししていません。一方、商業登記法113条1項・2項は639条の場合を明記し、同条3項で106条を準用しています。そのため、解散の登記と設立の登記は同時に申請し、一方に却下の事由があれば共に却下されます。前掲の通達も639条に触れたうえで、「持分会社が他の種類の持分会社となったとき」として2週間を示しています。起点については、社員は死亡によって退社し(607条1項3号)、639条はその退社により定款の変更をしたものとみなすと定めています。640条2項が「みなされた日」から期間を数えていることも合わせると、亡くなった日と読むのが素直です(条文からの推論)。

書面と登記事項は次のとおりです。

  • 解散の登記:添付書面は要しません(商業登記法106条2項・113条3項、前掲の通達)。
  • 設立の登記:種類の変更後の定款が必要です(同法113条1項・2項1号)。合同会社になる場合は、資本金の額の計上を証する書面も必要です(商業登記規則92条・61条9項。通達は当時の項番号で61条5項と表記)。640条1項の払込み等の完了を証する書面は要しません(商業登記法113条2項2号、前掲の通達)。
  • 登記事項:通常の設立の登記の事項のほか、会社成立の年月日、前の会社の商号、種類を変更した旨とその年月日を登記します(同法113条3項・104条)。
  • 確認しておきたい点:通達は設立の登記の書面として総社員の同意を証する書面を挙げていますが、種類の変更の全般についての書き方です。法務局の種類の変更の記載例(2026年11月4日確認)も、合名会社になる場合の書面として定款、総社員の同意書、代表社員の選定に関する書面(社員全員が各自会社を代表する場合や定款に代表社員の氏名があるときは不要)を挙げていますが、定款の変更による種類の変更を前提にした書き方です。同じ記載例が639条に触れているのは、合同会社になる場合の払込み等の完了を証する書面の注(無限責任社員全員の退社により639条2項で合同会社となった場合は添付不要)だけで、合名会社になる場合の総社員の同意書などについて、639条の場合の扱いは示していません。みなし変更の場合のこの書面の扱いと、死亡による退社の事実をどの書面で示すかは、商業登記法113条に書かれていないため、管轄の法務局に確認します。

合同会社になる場合は、さらに次の点も確かめます。

  • 出資に未履行の部分があるときの履行の期間は1か月で(会社法640条2項)、登記の2週間とは別に進みます。この期間内に合名会社または合資会社となる定款の変更をした場合は、この履行の定めは適用されません(同項ただし書)。
  • 合同会社の登記では、業務を執行する社員の氏名や名称、代表する社員の氏名や名称と住所が登記事項になります(会社法914条6号・7号)。2006年5月1日の会社法施行より前からある合資会社の定款には、有限責任社員は業務を執行しない旨の定めがあるものとみなされています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律70条4項)。残る社員が有限責任社員だけになるときは、種類の変更後の定款を整える段階で、この点も確かめます。

社員が欠けて解散する場合

社員が欠けたことによる解散は、会社法642条1項の継続の対象(641条1号から3号まで)に入っていません。定款の定めにより相続人が社員になれば、社員は欠けません。

清算人は裁判所が選任します(会社法647条3項)。登記の期間は、解散の登記が2週間(会社法926条)、清算人の登記が選任から2週間です(会社法928条3項)。選任されるまでは会社を代表して申請する人がいないため、まず清算人の選任が先になります(条文からの整理)。

  • 解散の登記:解散の旨、事由、年月日を登記します(商業登記法98条1項)。清算人の申請によるときは、その資格を証する書面を添付します(同条3項)。
  • 清算人の登記:その選任と、会社法928条2項2号の事項を証する書面を添付します(商業登記法99条1項4号)。
  • 代表社員の登記:社員が欠けたことによる解散の登記をすると、登記官が代表社員に関する登記を抹消する記号を記録します(商業登記規則86条2項・1項)。

2026年12月1日からの住所の非表示

改正後の商業登記規則31条の3第1項(令和8年法務省令第51号)は、対象として「合名会社又は合資会社の社員」を挙げ、無限責任社員と有限責任社員を分けていません。申出は「住所が登記すべき事項に含まれる登記の申請」のときにします。社員の住所を登記する相続人の加入の登記や、種類の変更後の合名会社の設立の登記が、これにあたると読めます。合同会社になる場合は、代表する社員の住所が登記事項です。社員が欠けて解散した会社で選任された清算人も住所が登記事項で(会社法928条3項・2項1号)、商業登記規則31条の3第1項は対象に「清算持分会社の清算人」を挙げています。

申出には、本店の実在を確かめる書面、住所を証する書面、実質的支配者についての書面を添付します(商業登記規則31条の3第1項1号イからハまで。すでに措置を受けている会社の例外は同条2項。代表取締役の住所、登記簿で非公開にできます)。11月30日までの申請は対象になりません。2026年11月4日の確認では、法務省の案内ページは改正前の内容のままで、施行に伴う通達も見当たりません。施行後は、法務省の案内もあわせて確かめてください。

他の専門家に確認すること

相続人や退社した社員の責任の範囲、債務の見極めは、弁護士に確認してください。持分や払戻しを受ける権利は相続税の論点に関わります。持分の評価額や税額は、税理士に確認してください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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