この記事の要点

  • 「婿入り」は一般に、夫が妻の氏(名字)を選んで婚姻すること、「婿養子」はそれに加えて妻の親と養子縁組をすることを指す言葉で、違いは養子縁組の届出があるかどうか
  • 相続人になるのは「被相続人の子」(民法887条1項)。縁組によって妻の親の子となっていれば相続人の範囲に入るが、婚姻だけでは妻の親の子にならない
  • 名字や筆頭者では見分けられない。夫の身分事項欄の「養子縁組」と養父母の記載、妻の親の身分事項欄の「養子縁組」を確かめる

結論から言うと、婿養子と婿入りを分けるのは、婚姻の届出のほかに養子縁組の届出がされているかどうかです。どちらも日常の言葉で、現行の民法・戸籍法・戸籍法施行規則の条文には「婿」という語自体が出てきません。使う人によって意味が揺れることもあるため、相続の場面では呼び名ではなく戸籍の記載で確かめます。ここでは、夫が妻の氏を称する婚姻だけをした場合を婿入り、それに加えて妻の親と縁組をした場合を婿養子と呼んで説明します。

婿入り:届出は婚姻だけ

婚姻の届書には夫婦が称する氏を書きます(民法750条、戸籍法74条1号)。妻の氏を選ぶと、戸籍の筆頭には妻が記載されます(戸籍法14条1項)。

婿入りという言葉からは妻の実家の戸籍に入るように聞こえますが、戸籍は一組の夫婦とこれと氏を同じくする子ごとに作られます(戸籍法6条)。婚姻すると夫婦の新しい戸籍が作られ(戸籍法16条1項本文)、妻がすでに筆頭者であれば夫がその戸籍に入ります(同項ただし書・2項)。どちらの場合も、夫婦が妻の親の戸籍に入るわけではありません。

このとき夫と妻の親は、結婚を通じてつながる姻族(民法725条3号)で、親子ではありません。名字が同じになっても妻の親の子にはならないので、「被相続人の子」にはあたりません。

婿養子:婚姻に加えて縁組の届出がある

養子縁組は婚姻とは別に届け出ます(民法799条・739条1項、戸籍法66条)。養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するので(民法809条)、縁組が続いていれば、夫は妻の親の子として相続人の範囲に入ります。実の親との親子関係もそのまま続きます(実方との親族関係の終了を定める民法817条の9は、特別養子縁組についての規定です)。

戸籍の動きには注意が必要です。養子は養親の氏を称し、養親の戸籍に入るのが原則です(民法810条本文、戸籍法18条3項)。ただ、婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しません(民法810条ただし書)。そのため、妻の氏で婚姻した後に妻の親と縁組をした夫は、氏が変わらないので夫婦の戸籍にとどまり(戸籍は一組の夫婦ごとに作られます。戸籍法6条)、妻の親の戸籍に在籍することにはなりません。配偶者のある人が他の戸籍に入るべき場合でも、その夫婦について新しい戸籍を作ると定められています(戸籍法20条)。妻の親と同じ戸籍に載っていないことは、婿養子ではないことの裏付けにならないわけです。

名字と筆頭者は決め手にならない

婿入りでも婿養子でも、夫の名字は妻の親と同じになることが多く、妻の氏を称する婚姻なら筆頭者が妻である点も同じです。また、ここでの呼び方からは外れますが、先に妻の親と縁組をし、婚姻の際に夫の氏を称すると届け出た形も、日常では婿養子と呼ばれることがあります。養子と養親の実子の婚姻は禁止されておらず(民法734条1項ただし書)、この形では筆頭者が夫になります(戸籍法14条1項、16条1項)。見るべきなのは次の記載です。

見るところ 婚姻だけ(婿入り) 婚姻+縁組(婿養子)
夫の身分事項欄 婚姻の記載 婚姻に加えて養子縁組の記載(養父・養母の氏名、縁組の日)
夫の父母の記載 実の父母 実の父母に加えて養親の氏名と続柄
妻の親の身分事項欄 夫との縁組の記載はない 養子縁組の記載(養子の氏名、縁組の日)

養子縁組は養親と養子の双方の身分事項欄に記載され(戸籍法施行規則35条3号)、養子であるときは養親の氏名と続柄も記載されます(戸籍法13条1項6号)。コンピュータ化された戸籍では、父母の記載に続けて「養父」「養母」の項目として表示されます(戸籍法施行規則付録第二十四号の記載のひな形)。身分事項欄そのものの読み方は、戸籍の「身分事項欄」の読み方で扱っています。

読むときの注意点が三つあります。

一つ目は、親ごとに確かめることです。妻の父母の一方とだけ縁組をしている場合もあり(民法796条参照)、そのときは養父か養母の一方だけが記載されます。もう一方の親とは姻族のままなので、父の相続と母の相続を分けて見ます。

二つ目は、妻の親の最後の戸籍だけで判断しないことです。戸籍が新しくなるときに移す事項として定められているのは「養子について」の縁組で(戸籍法施行規則39条1項3号)、養親の側の縁組の記載は挙げられていません。他の市町村へ転籍する場合も、新しい戸籍を作るときに移さなくてよい事項は、転籍先の戸籍に記載しなくてよいと定められています(同規則37条5号)。そのため転籍などの後の戸籍には載っていないことがあり、妻の親の戸籍を出生までさかのぼって確かめます。

三つ目は、離婚と離縁を分けて読むことです。離婚によって終わるのは姻族関係で(民法728条1項)、養親側との親族関係が終わるのは離縁によってです(民法729条)。夫の欄に離婚の記載があれば、離縁の記載があるかも別に確かめます。離縁の日付と養親の死亡の日付の読み比べ方や、養子の子の代襲相続(亡くなった子に代わってその子が相続すること)の基本は、離縁した養子は相続人になる?で扱っています。なお、婿養子の子は妻の子でもあるため、養子の子についての一般的な説明だけでは整理しきれないことがあり、個別の確認が必要です。

執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。古い時代に開始した相続には当時の法律が適用されることがあり(民法附則〔昭和22年法律第222号〕25条1項)、同条2項には当時の「入夫婚姻」という言葉も残っています。古い戸籍を読むときは、ここでの説明をそのまま当てはめないようにしてください。

まとめ

婿養子と婿入りの違いは、呼び名や名字、筆頭者ではなく、妻の親との養子縁組の有無です。夫の身分事項欄と養父母の記載、妻の親の身分事項欄を、親ごとに、古い戸籍までさかのぼって確かめます。離婚の記載があるときは、離縁の記載があるかも別に確かめます。戸籍の読み取りに迷うときや、相続人の範囲に不安があるときは、お近くの司法書士にご相談ください。縁組の無効や取消しをめぐって争いがある場合は、弁護士へのご相談が必要です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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