この記事の要点
- 配偶者が亡くなった後に生存配偶者が姻族関係終了の届出をすると、その事項は生存配偶者の身分事項欄に記載される(戸籍法96条、戸籍法施行規則35条7号)
- 相続は死亡の時に開始するため、亡くなった配偶者の相続で生存配偶者が相続人であることは、この届出によって変わらないと考えられる。相続人確定でこの記載を見ても、配偶者を相続人から外さない
- 姻族関係終了届は復氏届とは別の手続きで、これだけでは氏も戸籍も変わらない。子と亡くなった親の親族との血族関係も、この届出の対象ではない
結論から言うと、被相続人の配偶者の欄に姻族関係終了の記載があっても、その配偶者は被相続人の相続人として扱うのが基本です。この記載は「亡くなった配偶者の親族との関係を終わらせた」という記録であって、「亡くなった配偶者その人との関係」を消す記録ではないからです。
姻族関係の終了とは
民法725条は、親族を「六親等内の血族」「配偶者」「三親等内の姻族」の3つに分けて定めています。姻族とは、一般に、配偶者の血族(義理の父母やきょうだいなど)や、自分の血族の配偶者を指します。姻族関係は離婚によって終了しますが(民法728条1項)、配偶者の死亡だけでは終了せず、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了します(同条2項)。この意思表示は、市区町村への届出によって行います。届書には、死亡した配偶者の氏名・本籍・死亡の年月日を記載します(戸籍法96条)。
届出の期間は戸籍法96条に定められていません。市区町村の届出案内でも、届出の時期を「配偶者が死亡後、姻族関係の終了を希望したとき」としている例があります(川崎市)。
戸籍での書かれ方
届出があると、その事項は生存配偶者の身分事項欄に記載されます(戸籍法施行規則35条7号)。夫婦は同じ戸籍に記載されるため(戸籍法6条)、生存配偶者がその後ほかの戸籍へ移っていなければ、被相続人が死亡により除かれた(戸籍法23条)同じ戸籍の、配偶者の欄にこの記載が現れます。身分事項欄の見方は戸籍の「身分事項欄」の読み方で整理しています。
相続人確定での読み方
相続は死亡によって開始し(民法882条)、被相続人の配偶者は常に相続人となります(民法890条)。相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。これに対して、姻族関係の終了は、配偶者が亡くなった後の生存配偶者の意思表示によって生じるもので、民法728条2項が終わらせる対象は「姻族関係」です。725条が「配偶者」と「姻族」を別の項目として並べていることからも、亡くなった配偶者その人との関係を終わらせる規定ではないと読めます。こうした条文の組み立てから、すでに開始した相続で配偶者が相続人であることに、この届出は影響しないと考えられます。
復氏届とは別の手続き
旧姓に戻るのは、民法751条1項による復氏で、手続きは戸籍法95条の復氏届です。復氏すると、婚姻前の戸籍に戻るか、その戸籍がすでに除かれているときや本人が申し出たときは新しい戸籍が作られます(戸籍法19条2項による同条1項の準用)。姻族関係終了届にはこのように氏や戸籍の所属を変える定めはなく、市区町村の案内でも、姻族関係終了届だけでは元の氏に戻らず、別に復氏届が必要とされています。
なお、婚姻で氏を改めた生存配偶者が祭祀に関する権利(系譜・祭具・墳墓。民法897条)を承継していた場合、復氏または姻族関係の終了のときは、その権利を承継する人を関係者の協議で定め、協議が調わないときは家庭裁判所が定めることになります(民法751条2項による769条の準用)。
子の血族関係は変わらない
民法728条2項で終了するのは、生存配偶者の姻族関係です。子と、亡くなった親の父母(子から見た祖父母)などとの関係は血族関係であり(民法725条1号)、この届出の対象ではありません。そのため、たとえばその後に祖父母が亡くなったとき、先に亡くなった親に代わって子が相続人となる代襲相続(民法887条2項)の判断も、親が姻族関係終了届を出したかどうかで変わるものではありません。親族の範囲の数え方は「親等」の数え方を参照してください。
届出をするかどうかは、それぞれのご事情によって判断が分かれるもので、この記事は届出を勧めたり勧めなかったりするものではありません。義理の親族との扶養や、お墓・祭祀をめぐって争いになっている場合は、弁護士にご相談ください。
執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
姻族関係終了届は、亡くなった配偶者の親族との姻族関係を終わらせる届出で、その記載は生存配偶者の身分事項欄に残ります。相続は死亡の時に開始しているため、相続人確定の場面でこの記載を見ても、配偶者を相続人から外さないのが基本です。復氏届とは別の手続きであること、子と亡くなった親の親族との血族関係には及ばないことも、あわせて押さえておきましょう。戸籍の記載の意味が読み取れないときや、相続人の範囲に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第725条・第728条・第751条・第769条・第882条・第887条・第890条・第896条・第897条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 戸籍法 第6条・第19条・第23条・第95条・第96条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第35条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 川崎市「姻族関係終了届の手続方法について知りたい。」: https://www.city.kawasaki.jp/templates/faq/250/0000177642.html