この記事の要点
- 株式併合とは、たとえば「10株を1株に」のように、複数の株式をまとめて少ない数の株式にすることです。株主総会の特別決議で、併合の割合・効力発生日・効力発生日における発行可能株式総数などを決めます(会社法180条2項・309条2項4号)
- 株主への通知(または公告)は、効力発生日の20日前までに行います(会社法181条・182条の4第3項)。あわせて、本店に資料を備え置く事前・事後の開示が必要です(会社法182条の2・182条の6)。ただし、単元株式数を定めている会社では、併合の割合によって、この20日前の通知や開示、次の買取請求の規定が適用されない場合があります(会社法182条の2第1項かっこ書)
- 併合で1株に満たない端数が出ると、その部分は競売や裁判所の許可を得た売却などでお金に換えて株主に渡します(会社法235条)。反対する株主には、端数となる部分の買取りを会社に請求する権利があります(会社法182条の4)
- 株式併合をすると発行済株式の総数が変わるので、効力発生日から2週間以内に変更の登記が必要です(会社法911条3項9号・915条1項)。登録免許税は1件3万円です
- 少数株主の権利に大きく関わる手続きです。価格や手続きをめぐって争いがある、またはそのおそれがある場合は、早めに弁護士へ相談してください
株式併合は、株主総会の特別決議を出発点に、通知・開示、端数の処理、変更登記までを決まった順番で進める手続きです。併合の割合によっては、持ち株が1株に満たなくなった株主が株主でなくなり、その代わりに金銭を受け取ることになります。そのため、会社法は株主を守るための手続き(理由の説明、事前・事後の開示、反対株主の買取請求、差止めの請求など)を細かく定めています。
この記事では、非上場の中小企業を念頭に、株式併合の手続きを順番に整理します。上場会社の株式併合は、金融商品取引所の規則など会社法以外のルールも関係するため、この記事では扱いません。なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
株式併合とは
複数の株式を1つにまとめる手続き
株式併合とは、複数の株式を合わせて、それより少ない数の株式にすることです。会社法は、株式会社が株式の併合をすることができると定めています(会社法180条1項)。たとえば「10株を1株に併合する」と決めると、発行済株式が1,000株の会社は、併合後は100株になります。
株主の持ち株も同じ割合で減ります。効力発生日に、株主は、その前日に持っていた株式の数に併合の割合を掛けた数の株式の株主になります(会社法182条1項)。
| 併合前の持ち株 | 10株を1株に併合した後 |
|---|---|
| 300株 | 30株 |
| 25株 | 2株+0.5株分の端数 |
| 5株 | 0株+0.5株分の端数(株主ではなくなる) |
表の下2段のように、割合で割り切れない部分は「1株に満たない端数」になります。端数の部分は株式としては残らず、後で説明する方法でお金に換えて株主に渡されます。持ち株のすべてが端数になった株主は、株主ではなくなります。
どんな場面で使われるか
株式併合は、株式の数が多すぎて管理の手間がかかる場合に数を整理する、といった目的で使われます。また、併合の割合によっては一部の株主が株主でなくなるため、株主構成の整理(いわゆる少数株主の整理)の手段として使われることもあります。
ただし、少数株主にとっては、本人の意思と関係なく株主の地位を失う可能性がある手続きです。だからこそ、取締役は株主総会で株式の併合をすることが必要な理由を説明しなければならず(会社法180条4項)、端数の処理方法やその金額の相当性なども、事前の開示書類で株主に示すことになっています(会社法施行規則33条の9)。少数株主との関係で問題になりやすい点は、後の「少数株主との関係で注意したいこと」で整理します。
株主から株式を買い取って整理する方法としては、会社が合意のうえで自社の株式を買い取る自己株式の取得もあります。連絡の取れない株主がいる場合には、所在不明株主の株式を売却する制度が別に用意されています。どの方法が適しているかは会社の状況によって異なります。
手続きの流れ
株式併合の手続きは、おおむね次の順番で進みます。
- 株主総会の特別決議で、併合の内容(割合・効力発生日など)を決める
- 事前開示の書類を本店に備え置く(株主総会の日の2週間前の日などから始めるので、実際には総会より前に備置きが始まります)
- 株主への通知または公告(効力発生日の20日前まで)
- 反対株主の株式買取請求の受付(効力発生日の20日前の日から前日まで)
- 効力発生日に併合の効力が生じる
- 事後開示の書類を作成・備置き、変更の登記(2週間以内)
- 1株に満たない端数の処理(競売または裁判所の許可を得た売却など)と代金の交付
以下、順に見ていきます。
ステップ1 株主総会の特別決議で決めること
株式会社が株式の併合をするときは、その都度、株主総会の決議で次の事項を定めます(会社法180条2項)。
- 併合の割合(例:10株を1株に)
- 効力発生日(株式の併合が効力を生じる日)
- 併合する株式の種類(種類株式発行会社の場合)
- 効力発生日における発行可能株式総数
この決議は特別決議です(会社法309条2項4号)。特別決議は、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(同条2項。定款で要件を変えている場合があります)。総会では、取締役が株式の併合を必要とする理由を説明しなければなりません(会社法180条4項)。
種類株式発行会社では、株式の併合によってある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株主総会の決議も必要になります(会社法322条1項2号)。
発行可能株式総数も決める
「発行可能株式総数」とは、会社が発行できる株式の上限の数で、定款で定め、登記もされています(会社法911条3項6号)。株式併合では、効力発生日における発行可能株式総数を必ず決議で定めます(会社法180条2項4号)。
- 公開会社(全部の株式に譲渡制限が付いているわけではない会社)では、発行可能株式総数は効力発生日の発行済株式の総数の4倍を超えることができません(会社法180条3項本文)
- 公開会社でない会社(全部の株式に譲渡制限が付いている会社)には、この4倍の制限はありません(同項ただし書)
株式の併合をした会社は、効力発生日に、決議で定めた発行可能株式総数のとおりに定款を変更したものとみなされます(会社法182条2項)。別に定款変更の決議をし直す必要はありませんが、定めた数が今の発行可能株式総数と違えば、その変更も登記することになります。
ステップ2 事前開示──本店に資料を備え置く
株式の併合をする会社は、一定の日から効力発生日後6か月を経過する日まで、決議事項などを記載した書面(または電子データ)を本店に備え置かなければなりません(会社法182条の2第1項)。備置きを始めるのは、次のいずれか早い日です。
- 株主総会の日の2週間前の日(書面などで決議を省略する場合は、その提案があった日)
- 株主への通知の日または公告の日のうち、早いほうの日
備え置く内容には、併合の割合などの決議事項のほか、端数の処理の方法や、端数の処理によって株主に交付される見込みの金額とその相当性などが含まれます(会社法施行規則33条の9)。株主は、営業時間内いつでも、これを閲覧したり、写しの交付を請求したりできます(会社法182条の2第2項。写しの交付などは会社の定めた費用がかかります)。
なお、定款で単元株式数(1単元=議決権1個となる株式の数)を定めている会社では、この事前開示や後で説明する買取請求などの規定は、一定の場合に限って適用されます(会社法182条の2第1項かっこ書)。単元株式数を定めていない会社では、このかっこ書による限定はないので、株式の併合をするときは、これらの規定が適用されます(買取請求は、端数が生じる場合に限られます)。
ステップ3 株主への通知・公告は効力発生日の20日前まで
会社は、株主とその登録株式質権者(株式に質権を設定し、株主名簿に記載されている人)に、決議事項を通知しなければなりません(会社法181条1項)。期限は本来「効力発生日の2週間前まで」ですが、株式の併合をする場合(単元株式数を定めている会社では一定の場合に限ります)は「20日前まで」に読み替えられます(会社法182条の4第3項)。通知は、公告で代えることもできます(会社法181条2項)。
株券発行会社は株券提出の公告も必要
登記事項証明書に「株券を発行する旨の定め」がある株券発行会社では、さらに、効力発生日までに株券を会社に提出するよう、効力発生日の1か月前までに公告し、株主と登録株式質権者に個別に通知しなければなりません(会社法219条1項2号)。提出されなかった株券も、効力発生日に無効になります(同条3項)。ただし、株式の全部について株券を発行していない場合は、この公告・通知は不要です(同条1項ただし書)。
ステップ4 反対株主の株式買取請求
株式の併合によって1株に満たない端数が生じる場合、反対株主は、会社に対し、自分の株式のうち端数となる部分の全部を「公正な価格」で買い取るよう請求できます(会社法182条の4第1項)。反対株主とは、次の株主をいいます(同条2項)。
- 株主総会に先立って併合に反対する旨を会社に通知し、かつ、総会でも反対した株主(総会で議決権を行使できる株主に限ります)
- その総会で議決権を行使できない株主
買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、買取りを求める株式の数を明らかにして行います(会社法182条の4第4項)。
価格について株主と会社の協議が調えば、会社は効力発生日から60日以内に支払います(会社法182条の5第1項)。効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主または会社は、その後30日以内に、裁判所に価格の決定を申し立てることができます(同条2項)。価格をめぐる交渉や裁判所での手続きは争いの性質を持つため、弁護士への相談が必要な場面です。
なお、会社が買取請求に応じて支払った額が分配可能額(会社が株主に払い出せるお金の上限)を超えた場合、その職務を行った取締役などが、超過額を会社に支払う責任を負うことがあります(会社法464条1項)。
株主による差止めの請求
株式の併合が法令や定款に違反する場合で、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は会社に対して併合をやめるよう請求できます(会社法182条の3)。手続きに不備があると、こうした請求の対象になり得ます。
ステップ5 効力発生日
効力発生日に、株主は併合後の数の株式の株主になり(会社法182条1項)、発行可能株式総数についての定款変更もみなされます(同条2項)。株券発行会社で株券が発行されていれば、併合前の株券は無効になります(会社法219条3項)。
ステップ6 事後開示
株式の併合をした会社は、効力発生日後遅滞なく、併合が効力を生じた時の発行済株式の総数などを記載した書面(または電子データ)を作成し(会社法182条の6第1項)、効力発生日から6か月間、本店に備え置かなければなりません(同条2項)。記載事項には、差止めの請求や株式買取請求の手続きの経過も含まれます(会社法施行規則33条の10)。
1株に満たない端数の扱い
原則は競売して代金を分ける
株式の併合で1株に満たない端数が生じたときは、会社は、端数を合計した数(合計にさらに1株未満の端数が出れば切り捨て)に相当する株式を競売し、その代金を端数の割合に応じて株主に交付しなければなりません(会社法235条1項)。
たとえば、端数が0.5株分の株主が4人いれば、合計2株分を競売にかけ、得られた代金を4人に0.5株分ずつ配ることになります。
非上場の会社は「裁判所の許可を得た売却」も選べる
非上場の株式は買い手が限られ、競売にはなじみにくいことがあります。そこで、市場価格のない株式については、競売に代えて、裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却することもできます(会社法235条2項・234条2項)。取締役が2人以上いるときは、この許可の申立ては取締役全員の同意で行います(会社法234条2項後段)。
売却する株式の全部または一部は、会社自身が買い取ることもできます(会社法235条2項・234条4項)。その場合は買い取る株式の数と代金の総額を定め、取締役会設置会社では取締役会の決議で決めます(会社法234条5項)。会社による買取りには、分配可能額の範囲内でなければならないという財源の制限があります(会社法461条1項7号)。会社が買い取った株式は自己株式になり、これを消却(消滅させること)すると発行済株式の総数がさらに減るので、その変更登記も必要です。自己株式の消却と登記については、自己株式の取得の記事で整理しています。
端数の代金と税金
端数の代金を受け取った株主や、端数となる株式を買い取った会社には、所得税・法人税などの課税関係が生じることがあります。また、端数の処理で交付する金額や買取りの価格を考えるうえでは、非上場株式の評価が問題になります。課税の取扱いや株価の評価は、税理士・公認会計士にご相談ください。
登記は必要か──発行済株式の総数の変更登記
発行済株式の総数が変わるので登記が必要
「発行済株式の総数」は登記事項です(会社法911条3項9号)。株式の併合をすると発行済株式の総数が減るので、効力発生日から2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。登記を怠ると、過料(行政上の制裁金)の対象となることがあります(会社法976条1号)。
決議で定めた効力発生日における発行可能株式総数が今の数と違う場合は、発行可能株式総数(会社法911条3項6号)の変更もあわせて登記します。
なお、株式の併合をしても、それだけで資本金の額は変わりません。資本金の額を減らしたい場合は、別に資本金の額の減少の手続き(債権者保護手続きなど)が必要です(会社法447条・449条)。
登記に添付する主な書面
- 株主総会議事録(商業登記法46条2項)
- 株主リスト:議決権の割合が上位の株主の氏名・住所・株式数などを証する書面(商業登記規則61条3項)
- 種類株主総会の決議が必要な場合は、その議事録
- 株券発行会社の場合:会社法219条1項本文の株券提出公告をしたことを証する書面、または株式の全部について株券を発行していないことを証する書面(商業登記法61条・59条1項2号)
- 司法書士などの代理人に依頼する場合は委任状
登録免許税
株式の併合による変更の登記は、「登記事項の変更」の登記として、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)。発行済株式の総数と発行可能株式総数の変更を同じ申請でまとめて登記する場合も、同じ区分の登記なので1件3万円となります。
少数株主との関係で注意したいこと
株式の併合は、会社法の手続きを守って行えば、少数株主の同意がなくても効力を生じ得る手続きです。その一方で、端数となる株主にとっては株主の地位と引き換えに金銭を受け取る結果になるため、次のような争いが起きることがあります。
- 端数の処理で交付される金額や、買取請求の「公正な価格」をめぐる争い
- 手続きの不備(説明・開示・通知の漏れなど)を理由とする差止めの請求
- 併合の目的や決議の進め方をめぐる争い
どのような割合や時期で併合するか、少数株主にどう説明し、金額をどう決めるかは、会社ごとの事情によって大きく変わり、紛争のリスクも伴います。少数株主との間で争いがある場合やそのおそれがある場合、差止めや価格の決定が問題になっている場合は、弁護士にご相談ください。司法書士は、決議の内容に沿った議事録の整備や、変更の登記の手続きを担います。
相談先の目安は次のとおりです。
- 議事録・登記の手続き:司法書士
- 株価の評価、端数の代金や買取りにかかる税金:税理士・公認会計士
- 少数株主との交渉・紛争、差止め、価格の決定の申立て:弁護士
まとめ
株式併合は、複数の株式をまとめて少ない数にする手続きで、株主総会の特別決議で併合の割合・効力発生日・発行可能株式総数などを定めて行います。効力発生日の20日前までの通知(または公告)、事前・事後の開示、反対株主の株式買取請求への対応、株券発行会社では1か月前までの株券提出公告と、株主を守るための手続きが細かく決められています(単元株式数を定めている会社では、併合の割合によって通知期限や開示・買取請求の扱いが変わります)。
1株に満たない端数は、競売または裁判所の許可を得た売却などでお金に換えて株主に交付し、発行済株式の総数が変わるので、効力発生日から2週間以内に変更の登記(登録免許税3万円)をします。少数株主の地位に関わる手続きなので、紛争のおそれがあれば弁護士、評価や税金は税理士・公認会計士と分担しながら進めることが大切です。議事録の整備や登記の手続きは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 株式併合の手続きには、どのくらい費用がかかりますか?
変更の登記の登録免許税は、申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)。通知に代えて公告をする場合や、株券発行会社で株券提出の公告をする場合は、官報などの掲載費用がかかります。端数の処理で裁判所の許可を得る場合はその手続きの費用、専門家に依頼する場合はその報酬が加わります。株価の評価を依頼すれば、その費用も別にかかります。
Q. 期限はありますか?放置するとどうなりますか?
株主への通知(または公告)は効力発生日の20日前まで(会社法181条1項・182条の4第3項。単元株式数を定めている会社で、この読み替えが適用されない場合は2週間前まで)、株券発行会社の株券提出公告は1か月前まで(会社法219条1項)と、効力発生日から逆算した期限があります。効力が生じたら、2週間以内に変更の登記をしなければならず、怠ると過料の対象となることがあります(会社法915条1項・976条1号)。開示や通知に漏れがあると、株主から差止めなどを求められる原因にもなり得ます。
Q. 自分でできますか?どこに相談すればいいですか?
変更の登記は、会社自身で申請することもできます。ただ、決議事項の定め方、開示書類の内容、通知の期限、端数の処理など、効力発生日から逆算して組み立てる手続きが多く、漏れがあると争いの原因になります。議事録や登記の手続きはお近くの司法書士にご相談ください。株価の評価や税金は税理士・公認会計士、少数株主との紛争や価格の争いがある場合は弁護士が相談先です。
【さらに深掘り】株式併合の登記申請の実務
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
申請書の組み立てと効力発生日
申請書には、登記の事由と登記すべき事項を記載します(商業登記法17条2項3号・4号)。記載の一例は次のとおりです。
- 登記の事由:株式の併合(発行可能株式総数も変わる場合は「発行可能株式総数の変更」もあわせて記載)
- 登記すべき事項:令和〇年〇月〇日変更 発行済株式の総数 〇株
- 発行可能株式総数も変わる場合:令和〇年〇月〇日変更 発行可能株式総数 〇株
- 登録免許税:金3万円(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)
この年月日は、株主総会の決議の日ではなく、決議で定めた効力発生日です(会社法180条2項2号・182条1項)。発行可能株式総数の定款変更も効力発生日にみなされるので(同条2項)、二つの変更日は同じ日になります。登記期間の2週間(会社法915条1項)も、この効力発生日から数えます。
法務省の商業登記記録例(平成18年4月26日民商第1110号依命通知「会社法の施行に伴う商業登記記録例について」第4節第11の2「株式を併合した場合」)は、発行済株式の総数の欄に変更後の数(10万株から5万株)と変更日が記録され、発行可能株式総数(20万株)と資本金の額の欄はそのままの形を示しています。
登録免許税法別表第一第24号(一)のイからソまでには、発行済株式の総数・発行可能株式総数・単元株式数の変更を掲げた区分はなく、これらはいずれもツの「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記」に当たります。ツの税額は「申請件数一件につき三万円」なので、これらの変更を1通の申請書にまとめれば3万円です。
添付書面の確認ポイント
- 株主総会議事録(商業登記法46条2項):会社法180条2項の決議事項(併合の割合、効力発生日、効力発生日における発行可能株式総数、種類株式発行会社では併合する株式の種類)がそろっているかを確認します。発行可能株式総数は、今の数と同じでも決議が必要です(同項4号)。その場合は、発行可能株式総数の変更の登記は生じません
- 株主リスト(商業登記規則61条3項):議決権の割合が上位の株主について、10名か、割合を多い順に足して3分の2に達するまでの人数か、いずれか少ない人数分を記載します。種類株主総会の決議も要する場合は、その種類の株主についての株主リストも必要です
- 株券発行会社の場合:会社法219条1項本文の公告をしたことを証する書面、または株式の全部について株券を発行していないことを証する書面(商業登記法61条・59条1項2号)。株券提出の公告は効力発生日の1か月前まで(会社法219条1項)、株主への通知は20日前まで(会社法182条の4第3項)と、期限の長さが違う点に注意します
商業登記法が株式の併合による変更の登記について個別に定める添付書面は、61条の株券関係の書面です。事前開示の書面、株主への通知、株式買取請求の関係書類は、この規定には挙がっていません。もっとも、これらは会社法上の義務で、怠れば過料の対象となり得るほか(会社法976条2号・3号・8号)、差止めの請求(会社法182条の3)の理由にもなり得ます。
発行可能株式総数の決め方
- 公開会社:効力発生日の発行済株式の総数の4倍が上限です(会社法180条3項本文)。たとえば発行可能株式総数400万株・発行済株式100万株の公開会社が10株を1株に併合すると、発行済株式は10万株になるので、発行可能株式総数は40万株以下で定めることになり、その変更の登記も必要になります
- 公開会社でない会社:この上限はありません(同項ただし書)。ただし、後に定款を変更して公開会社になるときは、その時点の発行済株式の総数の4倍以内にしなければなりません(会社法113条3項2号)。併合後の発行可能株式総数を大きいまま残すと、将来の定款変更の際に見直しが必要になる点は意識しておきます
単元株式数を定めている会社
単元株式数を定めている会社では、「単元株式数に併合の割合を掛けた数に1に満たない端数が生ずる」併合に限って、事前開示、差止めの請求、株式買取請求、通知期限の20日への読み替え、事後開示の規定が適用されます(会社法182条の2第1項かっこ書。「以下この款において同じ」として182条の6までに及びます)。
- 単元株式数100株で10株を1株に併合する場合:100×1/10=10で端数は生じないので、これらの規定は適用されず、通知は効力発生日の2週間前まで(会社法181条1項)になります
- 単元株式数100株で3株を1株に併合する場合:100×1/3は端数が生じるので、これらの規定が適用されます
この限定がかからない手続きもあります。株主総会の特別決議と理由の説明(会社法180条2項・4項、309条2項4号)、株券提出の公告(会社法219条1項2号)、端数の処理(会社法235条)は、単元株式数の定めの有無にかかわらず必要です。
併合で株式の数が減ると、1単元の重みが相対的に大きくなるため、単元株式数をあわせて見直すことがあります。単元株式数を減らす、または単元株式数の定めを廃止する定款変更は、株主総会によらず、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)で行うことができ、その後遅滞なく株主への通知(または公告)が必要です(会社法195条)。単元株式数は登記事項なので(会社法911条3項8号)、変更すれば登記も必要です。
定款で定める単元株式数は、1,000株と発行済株式の総数の200分の1に当たる数を超えることができません(会社法188条2項、会社法施行規則34条)。併合で発行済株式の総数が減ると、この上限も下がります。たとえば発行済株式10万株・単元株式数100株の会社が10株を1株に併合すると、併合後の発行済株式は1万株で、その200分の1は50株となり、今の単元株式数100株はこれを上回ります。会社法と施行規則は上限の数を定めているだけで、併合によって発行済株式の総数が減り、すでに定めている単元株式数が後から上限を上回ることになった場合の扱いを直接定めた条文はありません。こうした併合をするときは、単元株式数の変更(減少)を同時に行うことを検討し、登記の扱いは管轄の登記所に事前に確認しておくのが安全です(※要確認:併合後に単元株式数が上限を超える場合の登記実務上の扱いは、執筆時点で一次資料を確認できていません)。
種類株式発行会社の場合
- 対象の種類:併合する株式の種類を決議で定め(会社法180条2項3号)、通知の相手方はその種類の株主と登録株式質権者(会社法181条1項かっこ書)、株券提出の公告もその種類の株式が対象です(会社法219条1項2号)
- 登記すべき事項:発行済株式の総数に加えて、その種類と種類ごとの数も登記事項です(会社法911条3項9号)。前述の記録例では、種類株式発行会社の場合、「各種の株式の数」として種類ごとの数を記録する形が示されています(募集株式の発行の例)
- 種類株主総会:ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株主総会の決議が必要で(会社法322条1項2号)、議事録と株主リストを添付します。定款でその種類の株式について種類株主総会の決議を要しない旨を定めている場合(同条2項)は、その決議は不要ですが、その種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、反対株主に株式買取請求権が認められます(会社法116条1項3号イ)
- 発行可能種類株式総数:効力発生日に定款変更がみなされるのは、決議で定めた発行可能株式総数だけです(会社法182条2項)。登記事項である発行可能種類株式総数(会社法911条3項7号)を見直す場合は、別に定款変更の決議(会社法466条・309条2項11号)が必要で、増加させるときは種類株主総会が必要となる場合もあります(会社法322条1項1号ハ)
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 会社法 第113条・116条・180条〜182条の6・188条・195条・219条・234条・235条・309条・322条・447条・449条・461条・464条・466条・911条・915条・976条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法施行規則 第33条の9・33条の10・34条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012
- 商業登記法 第17条・46条・59条・61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則 第61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 登録免許税法 別表第一第24号(一)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務省「会社法の施行に伴う商業登記記録例について」(平成18年4月26日付け法務省民商第1110号依命通知)第4節第10・第11: https://www.moj.go.jp/content/001384977.pdf