この記事の要点

  • 株主総会に出られない株主が議決権を使う方法は、主に2つです。代理人に委任状を渡して出席してもらう方法(会社法310条)と、議決権行使書面に賛否を書いて会社に出す方法(書面投票。会社法311条)です。
  • 代理人に任せるときは、代理権を証明する書面(委任状)を会社に出し、その授権は株主総会ごとに行う必要があります(会社法310条1項・2項)。
  • 書面投票は、株主が自由に選べるものではなく、会社が招集のときに「書面で議決権を行使できる」と決めた場合に使えるしくみです(会社法298条1項3号)。
  • 書面投票で行使された議決権は、出席した株主の議決権の数に算入されます(会社法311条2項)。議事録の出席株主数・議決権数もこの前提で数えます。
  • 次の一歩:①自社の定款に代理人の資格や人数の定めがあるか確認 → ②書面投票を採用するかを招集の段階で決める → ③議事録で出席の内訳が読み取れるように書く。

株主総会の日に、どうしても都合がつかない株主はいます。遠方に住んでいる、入院している、仕事で動けない──中小企業でも珍しいことではありません。

結論からいうと、総会を開く以上、出席できない株主は「代理人に任せる」か「書面で投票する」かのどちらかで議決権を使うことができます。ただし、代理人のほうは株主の側から使える方法、書面投票のほうは会社の側が採用を決めて初めて使える方法で、出発点が違います。この記事では、この2つのしくみと、出席できない株主がいるときの議事録の書き方の考え方を、非上場の中小企業を想定して整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の条文に基づく一般的な解説です。

まず区別したい「書面投票」と「書面決議」

似た言葉に「書面決議」があります。こちらは株主総会そのものを開かず、議決権を行使できる株主の全員が提案に書面などで同意したときに、決議があったものとみなす制度です(会社法319条1項)。全員の同意が要件ですので、1人でも同意しない株主がいれば使えません。

この記事で扱う代理行使と書面投票は、総会は実際に開き、その場に来られない株主が別の方法で議決権を使うというしくみです。書面決議の要件と議事録の書き方は、株主総会議事録の作り方──登記で使える議事録の要件と記載例で扱っていますので、そちらをご覧ください。

総会を開くか 誰の同意・決定が要るか 根拠
代理人による議決権の行使 開く 株主が代理人に授権する 会社法310条
書面による議決権の行使(書面投票) 開く 会社が招集時に採用を決める 会社法298条1項3号・311条
書面決議(決議の省略) 開かない 議決権を行使できる株主の全員の同意 会社法319条1項

方法1:代理人に議決権を任せる(会社法310条)

委任状を会社に出す

会社法310条1項は、株主は代理人によって議決権を行使することができると定め、その場合には、株主または代理人が「代理権を証明する書面」を会社に提出しなければならないとしています。一般に「委任状」と呼ばれる書面がこれにあたります。

委任状の書式は法律で決まっていません。会社が書式を用意していればそれを使うのが確実ですが、一般には、株主の氏名・住所、代理人の氏名、どの株主総会についての委任か(開催日)、委任の日付、株主の署名または記名押印といった事項が書かれます。代理人の欄が空いたままの委任状は、誰に任せたのかがはっきりしないため、トラブルのもとになりやすい点に注意が必要です。

なお、会社の承諾を得れば、委任状を紙で出す代わりに、その内容を電子メールなどの電磁的方法で提供することもできます(会社法310条3項)。

授権は「株主総会ごと」

会社法310条2項は、代理権の授与は株主総会ごとにしなければならないと定めています。「今後の株主総会はすべてこの人に任せる」という包括的な委任状を1枚書いておく、というやり方はできません。総会のたびに委任状を用意する必要があります。

代理人の数は会社が制限できる

会社法310条5項は、会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができると定めています。1人の株主が何人もの代理人を送り込んで議事が混乱することを防ぐための定めです。

「代理人は株主に限る」という定款の定め

定款の中には、「株主は、当会社の議決権を有する他の株主1名を代理人として、その議決権を行使することができる」といった形で、代理人の資格を株主に限る定めを置くものがあります。社外の人が総会に入り込んで議事をかき乱すのを防ぐ趣旨です。

このような定款の定めについて、最高裁判所は、株主総会が株主以外の第三者によってかく乱されることを防ぎ、会社の利益を保護する趣旨に出た合理的な理由による相当程度の制限であるとして、有効と判断しています(最高裁昭和43年11月1日判決)。

一方で、株主が会社や自治体などの法人である場合に、その法人の職員や従業員を代理人として出席させたケースについて、最高裁判所は、定款の株主限定の定めに反しないと判断しています(最高裁昭和51年12月24日判決)。法人の職員・従業員は法人の組織の中で上司の命令に服する立場にあり、特段の事情のない限り総会をかく乱するおそれがないことなどが理由とされています。なお、法人の株主の代表取締役が出席する場合は、そもそも代理人ではなく法人の「代表」として出席するものと整理されます(代理と代表の違いは「あわせて読みたい」のミニコラムで扱っています)。

株主ではない親族や専門家を代理人にしたい場合に、この定めとの関係でどう扱われるかは、事情によって判断が分かれうる問題です。株主でない代理人(その多くは弁護士)の出席を会社が断ったことが争われた下級審の裁判例は、会社の対応を決議の取消しの理由などにあたるとしたものと、あたらないとしたものとに分かれていると整理されています。また、代理人の資格を株主に限る定款の定めの有効性そのものについても、学説上の見解の対立は今も続いていると指摘されています。近時の裁判例や論文の中には、株主があらかじめ会社に代理人を申し出ていたかどうかを重視するものもあります(以上、山田泰弘「株主総会議決権に関する代理人資格を制限する定款規定の適用」立命館法学2025年5・6号(423・424号)520頁・532頁・535〜536頁・540頁・545頁)。まず自社の定款に代理人の資格や人数の定めがあるかを確認するのが出発点になります。

委任状は3か月間、本店に置く

会社法310条6項は、会社は、株主総会の日から3か月間、代理権を証明する書面(電磁的方法で提供された場合はその記録)を本店に備え置かなければならないと定めています。議事録の備置きが10年であるのに比べて短い期間ですが、総会が終わったらすぐ捨ててよいものではありません。ほかの書類との保存期間の違いは、定款・議事録・株主名簿はどこにある?──会社が備え置くべき書類と保存期間で一覧にしています。

方法2:書面で投票する(会社法311条・298条1項3号)

会社が招集のときに採用を決める

書面投票は、株主の側から「書面で投票させてほしい」と申し出て使えるものではありません。会社法298条1項は、取締役が株主総会を招集するときに決めなければならない事項を並べており、その3号に「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」があります。つまり、会社が招集の段階で「書面投票を認める」と決めたときに初めて使えるしくみです。取締役会を置いている会社では、この決定は取締役会の決議で行います(会社法298条4項)。

なお、議決権を行使できる株主が1,000人以上いる会社では、原則として書面投票を採用しなければならないとされています(会社法298条2項)。非上場の中小企業でこの人数に達することは多くないため、通常は会社が採用するかどうかを選ぶことになります。

招集通知に「参考書類」と「議決権行使書面」を付ける

書面投票を採用した場合、取締役は、招集の通知に際して、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(株主総会参考書類)と、株主が議決権を行使するための書面(議決権行使書面)を株主に交付しなければなりません(会社法301条1項)。参考書類には、議案ごとの説明など、株主が賛否を判断するための材料を記載します。具体的に何を記載するかは法務省令(会社法施行規則)で定められています。

株主は、議決権行使書面の議案ごとの欄に賛成・反対を記入し、決められた時までに会社に提出します(会社法311条1項)。この「決められた時」は法務省令で定められており、原則として株主総会の日時の直前の営業時間の終了時です(会社法施行規則69条)。総会の当日に持参すれば間に合う、というものではない点に注意が必要です。

議決権行使書面に賛否が書かれていなかった場合の扱い(賛成として扱う、など)は、会社が招集を決めるときにあらかじめ定め、議決権行使書面に記載しておくことができます(会社法施行規則63条3号ニ・66条1項2号)。

書面投票を採用すると、招集の手続きが重くなる

中小企業で見落としやすいのが、書面投票を採用すると招集の手続きのルールが変わるという点です。

  • 招集通知の期限:株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(公開会社でない会社)は、通常、総会の日の1週間前まで(取締役会を置かない会社で定款に定めがあればさらに短い期間)に通知すれば足ります。しかし書面投票を採用したときは、2週間前までに通知を発しなければなりません(会社法299条1項)。
  • 通知の方法:書面投票を採用したときは、招集通知は書面で出す必要があります(会社法299条2項1号。株主の承諾があれば電磁的方法も可=同条3項)。なお、取締役会を置く会社は、書面投票を採用するかどうかにかかわらず、もともと書面での通知が必要です(同項2号)。
  • 招集手続きの省略ができない:株主全員の同意があれば招集の手続きを省略できる制度がありますが(会社法300条本文)、書面投票を採用した場合はこの省略ができません(同条ただし書)。

「欠席する株主が1人いるから書面投票にしよう」と考えたときは、こうした手続き全体への影響も合わせて検討する必要があります。欠席者が少数なら、委任状による代理行使で足りる場合もあります。

議決権行使書面も3か月間、本店に置く

提出された議決権行使書面は、委任状と同じく、株主総会の日から3か月間、本店に備え置かなければなりません(会社法311条3項)。

方法3:電磁的方法による議決権の行使(会社法312条)

書面の代わりに、インターネットなどの電磁的方法で議決権を行使するしくみもあります(会社法312条)。これも書面投票と同じく、会社が招集のときに「電磁的方法で議決権を行使できる」と決めた場合に使えるものです(会社法298条1項4号)。この記事では、こうしたしくみがあるという紹介にとどめます。

議事録には「出席」をどう数えて書くか

代理人も書面投票も「出席」に数える

出席できない株主がいるとき、議事録で迷いやすいのが出席株主の数え方です。

  • 代理人が出席した株主:代理人を通じて議決権を行使していますので、その株主は出席した株主として数えるのが一般的です。
  • 書面投票をした株主:会社法311条2項が、書面によって行使した議決権の数は出席した株主の議決権の数に算入すると定めています。
  • 何もしなかった株主:委任状も議決権行使書面も出さずに欠席した株主は、出席株主には数えません。

これは、決議が成立するための条件(定足数と賛成数)の計算に直結します。会社法309条1項の普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決議するとしています。代理人と書面投票の分を出席に含めて計算することで、定足数を満たしているかどうかを判断することになります。

一般的な数え方の例

たとえば、議決権を行使できる株主が5名、議決権の総数が100個の会社で、次のような状況だったとします(数字は説明のための仮のものです)。

株主 議決権 当日の状況 出席に数えるか
Aさん 40個 本人が出席 数える
Bさん 20個 本人が出席 数える
Cさん 20個 委任状を出し、代理人が出席 数える
Dさん 10個 議決権行使書面を提出 数える(議決権の数は会社法311条2項により算入)
Eさん 10個 何も出さずに欠席 数えない

この場合、出席株主は4名、出席株主の議決権は90個となります。

議事録への書き方の一般例

株主総会議事録の記載事項は会社法施行規則72条3項が定めていますが、そこに「出席株主の数」そのものは挙がっていません。それでも、決議の要件を満たしたことが議事録から読み取れるように、冒頭に株主の状況を書いておくのが一般的です。出席の内訳をどう表すかの一般的な例は、次のような形です。

議決権を行使することができる株主の数         ○名
議決権を行使することができる株主の議決権の数     ○個
出席株主の数(代理人による出席及び書面による議決権行使を含む) ○名
出席株主の議決権の数(同上)             ○個

内訳を分けて書きたい場合は、「うち代理人による出席○名・○個」「うち書面による議決権行使○名・○個」と併記する書き方もあります。代理人の氏名や、書面投票をした株主の氏名は、会社法施行規則72条3項の記載事項としては求められていません。

この例はあくまで考え方を示すための骨組みです。議事録全体の記載事項や登記の添付書面として使うときの注意点は、前に挙げた議事録の記事で詳しく扱っています。実際の議事録は、定款の定めや議案の内容に合わせて作る必要があります。

手続きに問題があったときは

委任状を受け付けなかった、代理人の出席を断った、書面投票を採用したのに招集通知を2週間前に出していなかった──こうした手続きの問題は、決議の効力をめぐる争いにつながることがあります。会社法831条は、招集の手続きや決議の方法が法令や定款に違反するときなどに、株主などが総会の決議の日から3か月以内に、訴えによって決議の取消しを請求できると定めています。

決議の効力が争われている、あるいは争いになりそうな場合の判断や交渉、訴訟の手続きは、弁護士の業務です。そうした場面では、弁護士にご相談ください。

会社法の見直しとの関係

株主総会のあり方については、いま法制審議会で会社法の見直しが審議されています。その中には、場所を定めない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)の検討のほか、この記事で触れた定めに関わるものとして、書面決議(会社法319条1項)を、株主全員の同意がなくても一定の要件のもとで使えるようにする案や、議決権を行使できる株主が1,000人以上いる会社に書面投票の採用を義務づける定め(会社法298条2項)を、書面投票と電磁的方法による議決権の行使のどちらかを採用すれば足りるものに改める案なども含まれていますが、審議中であり、改正の内容は決まっていません。いま株主総会を開くときに従うのは、この記事で挙げた現行の条文です。検討の状況は「場所がない株主総会」がついに実現へ──次期会社法改正の焦点を読むで扱っています。

まとめ

株主総会に出られない株主は、委任状を出して代理人に任せる方法(会社法310条)か、会社が採用した場合には議決権行使書面で投票する方法(会社法311条・298条1項3号)で議決権を使えます。代理人への授権は総会ごとに行い、代理人の資格や人数は定款や会社の定めで制限されていることがあります。書面投票を採用すると、招集通知を2週間前までに書面で出す必要があり、招集手続きの省略もできなくなります。

議事録では、代理人による出席と書面投票の分を出席株主に含めて数え、決議の要件を満たしたことが読み取れるように書くのが一般的です。委任状と議決権行使書面は総会の日から3か月間、本店に置いておきます。

自社の定款に照らしてどの方法が使えるか、決議を登記につなげる書類が整っているか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 委任状や書面投票に費用はかかりますか?

委任状や議決権行使書面を使うこと自体に、法律上の手数料はかかりません。書面投票を採用する場合は、参考書類や議決権行使書面の印刷・郵送の実費が会社側に生じます。総会で決めた内容が登記の必要な事項(役員の変更や商号の変更など)であれば、登記の段階で登録免許税がかかり、書類の作成や申請を司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかります。

Q. 期限はありますか。手続きを怠るとどうなりますか?

議決権行使書面は、原則として株主総会の日時の直前の営業時間の終了時までに会社に届いている必要があります(会社法施行規則69条)。会社の側では、委任状と議決権行使書面を総会の日から3か月間、本店に備え置く義務があります(会社法310条6項・311条3項)。また、決議によって登記事項に変更が生じたときは、原則として2週間以内に変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。招集の手続きや決議の方法に問題があると、決議の効力が争われるおそれがあり、その場合は弁護士への相談が必要になります。

Q. 自分でできますか。どこに相談すればよいですか?

委任状は株主ご自身で作成でき、議決権行使書面も会社から届いた書面に記入して提出するだけですので、特別な資格は要りません。議事録も会社が自分で作る文書です。ただ、定款に代理人の資格の定めがある場合や、書面投票の採用で招集の手続きが変わる場合など、確認すべき点は少なくありません。決議を登記につなげる書類の準備はお近くの司法書士に、決議の効力をめぐる争いは弁護士にご相談ください。


【さらに深掘り】代理出席・書面投票と登記の添付書面の関係

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、出席できない株主が議決権を使う方法と、議事録での出席の数え方を扱いました。ここでは、その株主総会の決議を登記につなげる場面に目を移し、委任状・議決権行使書面と登記の添付書面がどういう関係にあるのか、議事録と株主リストにそれぞれ何が現れ、何が現れないのかを、条文に沿って整理します。議事録の記載事項や株主リストの人数の数え方そのものは、株主総会議事録の作り方──登記で使える議事録の要件と記載例の深掘りで扱っていますので、ここでは繰り返しません。

委任状と議決権行使書面は、登記の添付書面には含まれない

商業登記法46条2項は、登記すべき事項につき株主総会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならないと定めています。あわせて商業登記規則61条3項が、株主総会の決議を要する場合の株主リストの添付を求めています。

一方、会社法310条1項の委任状(代理権を証明する書面)や、会社法311条1項の議決権行使書面は、これらの条文に挙がっていません。これらは、本文で触れたとおり会社が総会の日から3か月間本店に備え置く書類(会社法310条6項・311条3項)であって、登記の申請書に添付する書類ではない、という位置づけです。

同じ「委任状」という言葉でも、登記の申請を代理人に頼むときに申請書に添付する委任状(代理人の権限を証する書面。商業登記法18条)は、まったく別の書面です。株主が総会の代理人に渡す委任状と、会社が登記の申請を代理人に頼む委任状とを取り違えないよう注意が必要です。

また、取締役会を置く会社で、書面投票の採用を含む招集の事項を取締役会で決めた場合(会社法298条4項)も、商業登記法46条2項が求めているのは「登記すべき事項につき」決議を要する機関の議事録ですので、招集を決めただけの取締役会の議事録は、通常、株主総会の決議による登記の添付書面には含まれません。

この構造から分かるのは、代理人が定款の資格の定めを満たしていたか、議決権行使書面が期限(会社法施行規則69条)までに届いていたか、招集通知を2週間前までに発していたかといった事情は、登記の添付書面には通常は現れないということです。登記の申請の段階で書面から確かめられないからこそ、こうした点は総会を開く時点で、会社の側で確かめておく必要があります。

株主リストは「出席の内訳」を示す書面ではない

商業登記規則61条3項の株主リストは、総株主の議決権(その決議で行使できるものに限ります)に対する割合が高い順に、上位の株主を記載する書面です。基準は株主がどれだけ議決権を持っているかであり、その総会に出席したかどうか、どの方法で議決権を行使したかではありません。

本文の例(議決権の総数100個、Aさん40個・Bさん20個・Cさん20個・Dさん10個・Eさん10個)に当てはめると、多い順に加算して3分の2(約66.7%)に達するのはCさんまでの3名(80%)で、10名より少ないため、株主リストにはAさん・Bさん・Cさんの3名を記載することになります。

  • Cさんは代理人が出席していますが、株主リストに載るのは株主であるCさん本人で、代理人の氏名は記載事項に含まれていません。
  • 書面投票をしたDさんは、その議決権の数が出席した株主の議決権の数に算入されますが(会社法311条2項)、上位3名に入らないため株主リストには載りません。
  • 反対に、何も出さずに欠席した株主でも、議決権の割合で上位に入っていれば株主リストに載ります。

つまり、出席の内訳を示すのは議事録の側であって、株主リストではありません。登記の添付書面として両方をそろえるときは、議事録に書いた「議決権を行使することができる株主の議決権の数」と、株主リストの割合の計算の前提になっている議決権の総数とが食い違っていないかを確かめておくと、書面どうしの整合が取れます。

書面投票を採用した回の議事録の文言

議事録には、「株主全員の同意により招集の手続きを省略した」旨の文言が使われることがあります(会社法300条本文)。ところが、本文で触れたとおり、書面投票を採用した場合は招集手続きの省略ができません(同条ただし書)。そのため、同じ議事録の中に「書面による議決権行使を含む」という出席の記載と、「招集手続きを省略した」という記載が並ぶと、記載どうしが条文上両立しないことになります。以前の議事録の文例を下敷きにするときに起こりうる食い違いですので、書面投票を採用した回の議事録では、この組み合わせになっていないかを確認しておく必要があります。

また、書面投票を採用したときの「2週間前まで」(会社法299条1項)は、1日ずれるだけで要件を欠くことになるため、総会の日程から逆算して早めに確認しておくのが安全です。

代理人の出席と「全員出席総会」

招集の手続きを欠いていても、株主全員がその開催に同意して出席した、いわゆる全員出席総会でされた決議は有効に成立するとされています(最高裁昭和60年12月20日判決。旧商法の下での判断です)。この判決は、株主本人ではなく、株主が作成した委任状に基づいて選任された代理人が出席したことで全員出席となった場合についても、株主が会議の目的である事項を知ったうえで委任状を作成しており、かつ、決議がその目的である事項の範囲内のものである限り、同様であるとしています。

この判断からすると、代理人の出席によって全員出席総会とする場合には、株主がその総会の目的である事項(議題)を知ったうえで委任状を作成したかが問われます。委任状に議題が示されていれば、その点を確かめる手がかりになります。反対に、議題を書かずに委任する旨だけを記載した委任状では、株主が議題を知っていたことを委任状からは確かめにくく、この判決の示した条件を満たすかどうかが別に問題になりえます。もっとも、ある総会が全員出席総会として有効に成立したといえるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれうる問題です。効力が争われている場合の判断は弁護士の業務になります。

決議の効力が争われた場合と登記

株主総会の決議の取消し(会社法831条)などの訴えで、請求を認める判決が確定した場合、その決議した事項について登記がされていたときは、裁判所書記官の嘱託によって登記がされる仕組みが設けられています(会社法937条1項1号ト)。登記がされたことは、招集の手続きや議決権の行使の方法に問題がなかったことまで確かめたものではない、という点に注意が必要です。手続きに問題があったかどうか、決議の効力がどうなるかの判断や訴訟の手続きは弁護士の業務ですので、そうした場面では弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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