この記事の要点

  • 墓地・墓石・仏壇・位牌・仏具など、日常の礼拝に使っているものは相続税がかからない財産とされています(相続税法12条1項2号、相続税法基本通達12-1・12-2)。ただし、骨とう品・投資の対象・商品として持っているものは対象外です
  • 生前にお墓を買い、代金が未払いのまま亡くなった場合、その未払代金は相続税の計算で「債務(借金)」として差し引けません(同法13条3項)
  • 民法の「祭祀財産」(民法897条)と相続税の非課税財産は、根拠となる法律も、範囲の決め方も別のものです

「お墓や仏壇にも相続税はかかるのか」という疑問への答えは、日常の礼拝に使っているものであれば、原則としてかからない、です。相続税法12条1項は「相続税の課税価格に算入しない」財産を列挙しており、その2号に「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」が挙げられています。相続税を計算するもとになる金額(課税価格)に入れない、という意味です。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。

どこまでが非課税?──国税庁の取扱い

条文の言葉だけでは範囲がはっきりしないため、国税庁は通達(法律の解釈と取扱いを国税庁が示したもの)で具体的に示しています。

  • 墓所・霊びょう:墓地、墓石、おたまやのようなもののほか、これらの尊厳の維持に要する土地その他の物件も含む(相続税法基本通達12-1)
  • これらに準ずるもの:「庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているもの」(同通達12-2)

ポイントは「日常礼拝の用に供している」ことです。同じ通達12-2は、商品、骨とう品または投資の対象として所有するものはこれに含まれないとしています。国税庁のタックスアンサーNo.4108でも、「骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているもの」には相続税がかかると案内されています。名前が「仏像」「仏具」であるというだけで非課税になるわけではない、ということです。

買ったお墓の未払代金は差し引けない

相続税では、亡くなった方の債務で相続開始の際に現にあるもの(借金や未払金など)を、財産の額から差し引くことができます(債務控除・相続税法13条1項)。ところが同条3項は、12条1項2号の財産(お墓・祭具など)と3号の財産(公益事業用の財産)について、その「取得、維持又は管理のために生じた債務」は差し引く金額に入れないと定めています(同項ただし書きの例外は、3号の財産が12条2項により後から課税の対象に戻った場合のもので、お墓などには関係しません)。

そのため、生前にお墓(墓碑)を買い、代金を払い終える前に亡くなった場合、その未払代金は債務として差し引けません。国税庁の通達もこの場面を取り上げ、未払代金は債務として控除しないことを確認しています(相続税法基本通達13-6)。条文上、お墓という財産の側を課税価格に入れない一方で、そのお墓のための債務も差し引く対象に入れない、という組み立てになっています。

あわせて、墓碑や墓地の買入費、墓地の借入料は、葬式費用としても扱われません(同通達13-5)。葬式費用は債務控除の対象ですが、お墓を用意する費用をそこに含めることもできない、ということです。

民法の「祭祀財産」とは別のルール

祭祀財産の引き継ぎで紹介したとおり、民法897条は「系譜、祭具及び墳墓」の所有権を、相続とは別の仕組みで、祖先の祭祀を主宰すべき人に引き継がせます。こちらは「誰が引き継ぐか」を決めるルールです。

一方、相続税法12条1項2号は「相続税の計算に入れるか」を決めるルールで、並べている言葉も「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」と、民法とは異なります。相続税法12条は民法897条を引用しておらず、条文の上では両者は結びつけられていません。相続税がかからないかどうかは相続税法の文言に照らして判断され、実務上は前述の国税庁の取扱い(日常礼拝の用に供しているか等)に沿って扱われています。誰が承継するかという民法の問題と、相続税がかかるかどうかという税法の問題は、分けて考える必要があります。

なお、お墓や仏壇が非課税であっても、ほかの財産について相続税がかかるかどうかは別の問題で、その入口は相続税の基礎控除という枠との比較になります。

まとめ

日常の礼拝に使うお墓・仏壇・仏具などは相続税の非課税財産で、骨とう品・投資の対象・商品として持っているものは対象外です。生前に買ったお墓の未払代金は債務控除の対象にならず、墓碑や墓地の買入費は葬式費用にも含まれません。また、民法の祭祀財産とは根拠も範囲の決め方も別のルールです。ご自身のケースでどの財産が非課税になるか、相続税がいくらになるかといった具体的な判断は、税理士にご確認ください。相続にともなう不動産の名義変更(相続登記)の手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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