この記事の要点

  • 医療法人は、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けてから(医療法44条1項)、設立の登記をすることによって成立します(同法46条1項)。登記は認可などの手続が終わった日から2週間以内です(組合等登記令2条1項)。
  • 登記簿に載るのは、目的・名称・事務所・理事長の氏名・住所・資産の総額などです。理事長以外の理事や監事は登記されません。
  • 役員の任期は2年以内です(医療法46条の5第9項)。任期が切れて同じ人が理事長を続けるときも、2週間以内の変更登記が必要です。
  • 資産の総額は、毎事業年度の末日現在で、その末日から3か月以内に変更登記をします(組合等登記令3条3項)。NPO法人では廃止されたこの登記が、医療法人には今も残っています。
  • 登記を怠ると、理事などが20万円以下の過料に処せられることがあります(医療法93条1号)。認可の申請や都道府県への届出の書類は、都道府県の窓口や行政書士へ。

医療法人の登記は、「都道府県知事の認可が先、登記はその後」という順番が基本です。設立も、名称や目的の変更も、まず都道府県の認可を受け、そのうえで法務局に登記をします。そして設立したあとは、理事長の任期ごとの登記と、毎年の「資産の総額」の登記という、2つの定期的な登記が続きます。

この記事では、医療法人の設立から日々の変更登記まで、一般の方がつまずきやすい点を中心に整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。

1. 医療法人とは──登記の前に「認可」がある法人

医療法人は、病院や、医師・歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設、介護医療院を開設しようとする社団または財団が、医療法にもとづいて法人になったものです(医療法39条)。

医療法人の大きな特徴は、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければ設立できないことです(医療法44条1項)。たとえば一般財団法人は、公証人の認証を受けた定款にもとづいて登記をすれば成立し、行政の認可を待つ必要はありません。これに対し医療法人は、法人を作る前に行政のチェックが入ります。設立前に所轄庁の「認証」が必要なNPO法人と、考え方が近い法人といえます。

医療法人の登記は、株式会社の登記と同じ法務局で扱われますが、根拠になるのは会社法ではなく、組合等登記令(くみあいとうとうきれい。会社以外のさまざまな法人の登記について定めた政令)です。医療法43条1項が、設立・事務所の移転・登記事項の変更・解散などの場面ごとに、政令で定めるところにより登記をしなければならないと定めています。

2. 設立の流れ──認可が先、登記で成立

医療法人の設立は、おおむね次の順序で進みます。

  1. 定款(社団の場合)または寄附行為(きふこうい。財団の場合の根本規則)の作成 … 目的、名称、開設する病院・診療所などの名称と開設場所、事務所の所在地、役員に関する規定などを定めます(医療法44条2項)。設立当初の役員も、定款または寄附行為で定めておく必要があります(同条4項)。
  2. 都道府県知事への設立認可の申請 … 知事は、資産の要件や定款・寄附行為の内容が法令に違反していないかを審査します(医療法45条1項)。認可するかどうかを決める前には、都道府県医療審議会の意見を聴くことになっています(同条2項)。
  3. 設立の認可
  4. 設立の登記 … 設立の認可などの手続が終わった日から2週間以内に、主たる事務所の所在地で設立の登記をします(組合等登記令2条1項)。医療法人は、この登記をすることによって成立します(医療法46条1項)。
  5. 成立後の手続 … 成立の時に財産目録を作り、主たる事務所に備え置きます(医療法46条2項)。また、登記をしたら、登記事項と登記の年月日を遅滞なく都道府県知事に届け出ます(医療法施行令5条の12)。

設立登記の申請書には、定款または寄附行為、理事長の資格を証する書面、資産の総額を証する書面を添付します(組合等登記令16条2項・3項)。また、官庁の許可を要する事項の登記には許可書を添付するという商業登記法19条が医療法人の登記にも準用されるため(組合等登記令25条)、設立の認可を受けたことを示す書面も必要になります。

設立認可の申請書類の作成や、認可の要件についての相談は、都道府県の担当窓口や行政書士が扱う領域です。認可を受けたあとの登記の手続は、司法書士が扱う分野です。都道府県ごとに申請の進め方が案内されているので、認可手続については、まず主たる事務所の所在地の都道府県の案内を確認してください。

3. 医療法人の登記簿に載ること

組合等登記令2条2項と別表によると、医療法人について登記される事項は次のとおりです。

登記される事項 中身
目的及び業務 定款・寄附行為に定めた目的など
名称 「医療法人〇〇会」など
事務所の所在場所 主たる事務所・従たる事務所
代表権を有する者の氏名・住所・資格 医療法人では理事長
存続期間または解散の事由 定めたときだけ
資産の総額 別表で医療法人について定められた登記事項
電子提供措置をとる旨の定め 社員総会の資料を電子的に提供する仕組みを定めたときだけ(別表)

医療法人で法人を代表するのは理事長です(医療法46条の6の2第1項)。そのため、登記簿に氏名・住所が載る役員は理事長だけで、ほかの理事や監事は登記されません。株式会社では取締役全員の氏名が登記されるので、この点は大きな違いです。

ただし、登記されないからといって、理事や監事の交代を誰にも知らせなくてよいわけではありません。医療法人は、役員に変更があったときは、新たに就任した役員の就任承諾書と履歴書を添えて、遅滞なく都道府県知事に届け出る必要があります(医療法施行令5条の13)。「登記は理事長だけ、届出は役員全員」と覚えておくと整理しやすくなります。

理事長は、原則として医師または歯科医師である理事の中から選びます(医療法46条の6第1項本文)。都道府県知事の認可を受けた場合は、医師・歯科医師でない理事から選ぶこともできます(同項ただし書)。個別のケースでこの例外に当たるかどうかは、都道府県の判断になるので、事前に都道府県へ確認してください。

4. つまずきやすい点① 理事長の重任の登記

医療法人の役員の任期は2年を超えることができません(医療法46条の5第9項本文)。再任はできます(同項ただし書)。理事長は理事の中から選ぶので(同法46条の6第1項)、理事としての任期が終わると、理事長の地位もいったん終わることになります。

任期が終わるときの流れは、次のようになります。

  • 社団たる医療法人では社員総会、財団たる医療法人では評議員会で、理事を選びます(医療法46条の5第2項・3項)。
  • 選ばれた理事で構成する理事会で、理事長を選びます(医療法46条の7第2項3号)。

ここでよくある誤解が、「同じ先生が理事長を続けるのだから、登記は何も変わらない」というものです。任期が満了して同じ人が再び理事長に選ばれた場合(これを「重任(じゅうにん)」といいます)も、いったん任期が終わり、改めて選ばれたことになるため、2週間以内の変更登記が必要とされています(組合等登記令3条1項)。株式会社の役員の重任と同じ考え方です。

理事長の重任の登記を2年ごとにきちんと続けていくことが、医療法人の登記の基本になります。あわせて、登記をしたら都道府県知事への届出(医療法施行令5条の12)も忘れないようにしましょう。

5. つまずきやすい点② 資産の総額の変更登記

資産の総額は、組合等登記令の別表で医療法人について定められた登記事項です(株式会社の登記にはない項目です)。資産の総額は決算のたびに変わるため、登記の期限にも特別なルールがあります。

  • 資産の総額の変更の登記は、毎事業年度の末日現在の金額で、その末日から3か月以内にすれば足ります(組合等登記令3条3項)。
  • 医療法人の会計年度は、定款・寄附行為に別段の定めがなければ、4月1日から翌年3月31日までです(医療法53条)。3月末で年度が終わる医療法人なら、6月末までが登記の目安になります。
  • 登記の申請書には、その変更を証する書面を添付します(組合等登記令17条1項)。

ちょうど同じ時期に、医療法人は毎会計年度終了後3か月以内に、事業報告書などを都道府県知事に届け出る必要があります(医療法52条1項)。決算が確定したら、「都道府県への決算の届出」と「法務局への資産の総額の登記」をセットで進めると、どちらかの漏れを防ぎやすくなります。

NPO法人の記事で紹介したとおり、NPO法人では「資産の総額」は2018年に登記事項から外れました。一方、医療法人については、現行の組合等登記令の別表に今も資産の総額が掲げられています。NPO法人など他の法人についての情報と混同しないよう注意が必要です。

6. 定款変更をともなう登記──ここでも原則は認可が先

名称や目的、事務所の所在地などを変えるときは、多くの場合、定款または寄附行為の変更をともないます。社団たる医療法人の定款変更は社員総会の決議で行い(医療法54条の9第1項)、財団たる医療法人が寄附行為を変更するときは、あらかじめ評議員会の意見を聴きます(同条2項)。

そのうえで、定款・寄附行為の変更は、厚生労働省令で定める一部の事項を除き、都道府県知事の認可を受けなければ効力を生じません(医療法54条の9第3項)。つまり、名称や目的の変更のように認可が必要な事項は、総会で決議しただけでは変更の効力はまだ生じておらず、認可を受けてから変更の登記を申請する流れになります。これに対し、事務所の所在地と公告の方法の変更は認可の対象から外れており(医療法施行規則33条の26)、変更後の定款・寄附行為を遅滞なく都道府県知事に届け出れば足ります(医療法54条の9第5項)。事務所の所在地だけを変える移転であれば、認可を待たずに変更の登記を申請できます。いずれの場合も、登記をしたら都道府県知事への登記の届出が必要です(医療法施行令5条の12)。

どの変更に認可が必要で、どの変更が届出で足りるのかの確認や、認可申請の書類については、都道府県の担当窓口や行政書士にご相談ください。

7. 登記を怠ったら・費用は

登記を怠った場合 … 医療法にもとづく政令の規定による登記をすることを怠ったときは、医療法人の理事・監事・清算人が20万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭の制裁)に処せられることがあります(医療法93条1号)。また、登記しなければならない事項は、登記の後でなければ第三者に対抗する(主張する)ことができません(同法43条2項)。たとえば理事長が交代したのに登記をしないままでいると、取引の相手方などに交代を主張できない場面が生じえます。

登録免許税 … 登録免許税は、登録免許税法の別表第一に掲げる登記などについて課される税金です(登録免許税法2条)。別表第一には医療法人の登記が掲げられていないため、医療法人の設立や変更の登記には登録免許税がかかりません。

なお、医療法人の設立や運営にともなう税金の扱いは、この記事では立ち入りません。税務については税理士にご相談ください。

まとめ

  • 医療法人は、都道府県知事の認可を受けてから設立の登記をすることで成立します(医療法44条1項・46条1項)。登記は認可などの手続が終わった日から2週間以内です(組合等登記令2条1項)。
  • 登記されるのは、目的・名称・事務所・理事長の氏名と住所・資産の総額などです。理事長以外の役員は登記されませんが、役員の変更は都道府県知事への届出が必要です。
  • 役員の任期は2年以内で、同じ人が理事長を続ける「重任」でも2週間以内の変更登記が必要です。
  • 資産の総額は、毎事業年度末日から3か月以内に変更登記をします。都道府県への決算の届出とセットで進めると漏れを防げます。
  • 定款変更をともなう登記は、原則として都道府県知事の認可を受けてから申請します(事務所の所在地と公告の方法の変更は、認可ではなく届出で足ります)。

医療法人の登記は、都道府県の認可や届出と組み合わさって進むのが特徴です。理事長の重任や資産の総額の登記に不安があるときは、登記事項証明書と定款・寄附行為を用意して、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 医療法人の登記には、どのくらい費用がかかりますか? 医療法人の登記は登録免許税法の別表第一に掲げられていないため、設立の登記も変更の登記も登録免許税はかかりません(登録免許税法2条)。このほか、登記事項証明書などの取得費用がかかります。手続を専門家に依頼する場合は、その報酬が別にかかるので、事前に見積もりを確認すると安心です。

Q. 期限を過ぎたり、登記を放置したりするとどうなりますか? 理事長の変更などは変更から2週間以内(組合等登記令3条1項)、資産の総額は事業年度末日から3か月以内(同条3項)が期限です。登記を怠ると、理事・監事・清算人が20万円以下の過料に処せられることがあります(医療法93条1号)。期限を過ぎていても登記の申請はできるので、気づいた時点でできるだけ早く手続をするのが基本です。

Q. 自分で登記できますか?どこに相談すればよいですか? 設立の登記は法人を代表すべき者が申請するものとされており(組合等登記令16条1項)、制度上は理事長ご自身で申請することもできます。登記の手続はお近くの司法書士に、設立や定款変更の認可申請、都道府県への届出の書類は都道府県の担当窓口や行政書士に、税金のことは税理士に、と相談先を分けるのが確実です。

【さらに深掘り】医療法人の登記申請──添付書面・資産の総額の中身・登記期間の起算点

ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

以下で「法務局の記載例」というときは、法務局ホームページ「商業・法人登記の申請書様式」に掲載されている医療法人の登記申請書の記載例(6-11「医療法人設立登記申請書」、6-13「医療法人役員変更登記申請書(理事長の重任、資産の総額の変更)」。2026年11月1日閲覧)を指します。

設立登記の申請書──登記の事由は「設立の手続終了」

設立の登記は、「設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内」にしなければなりません(組合等登記令2条1項)。そして、登記すべき事項であって官庁の認可を要するものについては、「その認可書の到達した時から登記の期間を起算する」とされています(同令24条)。法務局の記載例(6-11)でも、登記の事由を「令和○年○月○日設立の手続終了」とし、その日付には所轄庁の認可があった日(認可書到達の年月日)を記載するよう注記したうえで、申請書に「認可書到達の年月日」の欄を設けています。期限の管理は、認可書が届いた日を基準に行うことになります。

添付書面は、組合等登記令16条2項・3項と商業登記法19条(組合等登記令25条で準用)を受けて、記載例では次のように整理されています。

  • 定款(または寄附行為) … 設立当初の役員は、定款または寄附行為で定める必要があります(医療法44条4項)。
  • 理事長の選出を証する書面 … 記載例には、設立時理事が集まって設立時理事長を選出する「設立時理事長選出書」の例が示されています。設立当初の理事長を定款(または寄附行為)で定めた場合は、その定款(寄附行為)を添付すれば足りるとされています。ただし、その場合も就任承諾書は必要とされています。
  • 理事長の就任承諾書 … 理事に就任することと、理事長に就任することの両方を承諾したことを証する書面が必要とされています。選出の席上で就任を承諾し、その旨が選出書に記載されている場合は、申請書に「就任承諾書は、設立時理事長選出書の記載を援用する。」と記載することで、別途の添付は不要とされています。
  • 資産の総額を証する書面 … 財産目録がこれに当たるとされています。
  • 認可書(または所轄庁の認証のある謄本) … 商業登記法19条は、官庁の許可を要する事項の登記を申請するには、申請書に官庁の許可書またはその認証がある謄本を添付しなければならないと定めています。

また、記載例の冒頭では、理事長が申請書や委任状に印鑑を押す場合は登記所に提出した印鑑を押す必要があり、印鑑の提出は印鑑届書によって行うと案内されています。

理事長の重任──登記の事由は「理事長の変更」

法務局の記載例(6-13)では、同じ人が引き続き理事長に選ばれる場合も、登記の事由を「理事長の変更」とし、登記すべき事項に理事長の資格・住所・氏名とあわせて「原因年月日 令和○年○月○日重任」と記載する形が示されています。同じ記載例の理事会議事録の例では、理事長が理事の任期を満了することにより「理事長の資格を喪失し退任することになる」ため、改めて理事長を選出するという流れが書かれています。理事長は理事の中から選ばれるので(医療法46条の6第1項)、理事の任期が満了すれば理事長の地位も終わり、選び直された時点で「代表権を有する者」(組合等登記令2条2項4号)に変更が生じた、という整理です。本文で紹介した「重任でも2週間以内の変更登記が必要」(同令3条1項)という扱いは、この記載例の形と一致しています。

記載例が挙げる添付書面は次のとおりです。

  • 社員総会議事録(財団の場合は評議員会議事録) … 理事の選任を証する書面です。
  • 理事会議事録 … 記載例では「理事長に選出されたことを証する書面として添付します」と注記されています。
  • 就任承諾書 … 理事への就任と理事長への就任の両方について、承諾したことを証する書面が必要とされています。理事会などの席上で就任を承諾し、その旨が議事録に記載されている場合は、申請書にその議事録の記載を援用する旨を書けば、別途の添付は不要とされています。
  • 医師(歯科医師)免許証の写し … 記載例では、理事長は医師または歯科医師である理事のうちから選出するとされていることから、その就任(重任を含む)による変更登記の申請書には、医師(歯科医師)免許証の写し(欄外に「これは医師(歯科医師)免許証の写しである。」旨を記載し、記名したもの)を添付すると注記されています。
  • 都道府県知事の認可書(該当する場合) … 知事の認可を受けて医師・歯科医師でない理事を理事長に選出した場合(医療法46条の6第1項ただし書)や、知事の認可を受けて理事を1人または2人とした医療法人(医療法46条の5第1項ただし書)では、その認可書を添付し、申請書に認可書の到達年月日を記載するとされています。理事を2人とする場合は、認可書に加えて理事長の医師(歯科医師)免許証の写しなども添付するとされています。

設立の記載例(6-11)の添付書類欄には医師(歯科医師)免許証の写しは挙げられておらず、変更の記載例(6-13)で求められている点に注意が必要です。

議事録の押印と印鑑証明書

法務局の記載例(6-13)は、理事長を選出した議事録等の押印について、次のように注記しています。

  • 理事長の印鑑については、理事長が登記所に提出している印鑑を押す必要がある。
  • 登記所に提出している印鑑が押されていない場合は、理事会議事録について、出席した理事と監事の全員が実印を押し、そのすべての印鑑について市町村長が作成した印鑑証明書を添付する必要がある。
  • 知事の認可を受けて理事を1人とした医療法人や、社員総会または評議員会の決議で理事長を選出した場合は、議長と出席した理事の全員が印鑑を押し、その印鑑について市町村長が作成した印鑑証明書を添付する。

理事長が交代せず重任する場合でも、議事録に登記所への届出印が押されているかどうかで添付書面が変わります。議事録を作る段階で、誰がどの印鑑を押すかを確認しておくことが大切です。

資産の総額──登記するのは「差引正味財産」の額

「資産の総額」という言葉からは、貸借対照表の資産の部の合計額を思い浮かべがちです。しかし、法務局の記載例(6-13)に付された財産目録の例では、「差引正味財産」の欄に「『資産の部の合計』から『負債の部の合計額』を減じた金額を記載します。この金額が、『資産の総額』として登記されることになります。」と注記されています。登記する金額は、負債を差し引いた後の正味の財産額です。

資産の総額の変更登記に添付する「変更を証する書面」(組合等登記令17条1項)について、記載例は、財産目録がこれに当たり、資産の総額が判明する貸借対照表でも差し支えないとしています。財産目録の証明者は監事でも差し支えないとされています。

期限は、毎事業年度末日現在により、その末日から3か月以内です(組合等登記令3条3項)。法務局の記載例(6-13)は、理事長の重任と資産の総額の変更を1通の申請書でまとめて申請する形になっています。ただし、2つの登記の期限は別々で、理事長の変更は変更が生じた時から2週間以内(同条1項)、資産の総額は事業年度末日から3か月以内(同条3項)です。決算を承認する社員総会で役員の改選も行う医療法人が2つをまとめて申請するなら、2つの期限のうち早く来るほうに間に合わせる必要があります。

主たる事務所の移転──定款変更の認可は不要、管轄外なら2か所で登記

事務所の所在地は定款・寄附行為の必要的記載事項です(医療法44条2項4号)。定款・寄附行為の変更は原則として都道府県知事の認可を受けなければ効力を生じませんが(医療法54条の9第3項)、認可が不要とされる「厚生労働省令で定める事項」は、医療法施行規則33条の26で「法第四十四条第二項第四号及び第十二号に掲げる事項」、つまり事務所の所在地と公告の方法とされています。この2つに係る変更をしたときは、遅滞なく、変更後の定款・寄附行為を都道府県知事に届け出ます(医療法54条の9第5項)。

ただし、移転にともなって病院・診療所などの開設場所(医療法44条2項3号)といった他の記載事項も変わる場合、その変更は施行規則33条の26の対象ではないため、認可の対象になります。どの手続が必要になるかは、事前に都道府県に確認してください。

主たる事務所を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、2週間以内に、旧所在地では移転の登記をし、新所在地では組合等登記令2条2項各号の事項を登記します(組合等登記令4条)。組合等登記令25条により準用される商業登記法51条により、新所在地での登記の申請は旧所在地を管轄する登記所を経由して行い、旧所在地での登記の申請と同時にしなければなりません(同条1項・2項)。新所在地での登記の申請書には、代理人の権限を証する書面(同法18条)を除き、他の書面の添付を要しないとされています(同法51条3項)。

登記期間の整理──起算点が違う3つの期限

ここまでの内容を、期限の起算点で整理すると次のとおりです。

場面 期限 起算点 根拠
理事長の変更(重任を含む)・事務所の移転など 2週間以内 変更が生じた時 組合等登記令3条1項・4条
資産の総額の変更 3か月以内 毎事業年度の末日 組合等登記令3条3項
設立、認可を要する定款変更など 2週間以内 認可書が到達した時 組合等登記令2条1項・3条1項・24条

知事の認可を受けて医師・歯科医師でない理事を理事長に選出する場合に、登記の期間を認可書の到達時から数えるのか(同令24条)、選出・就任の時から数えるのかは、条文と法務局の記載例だけでは明らかではありません(記載例は、申請書に認可書の到達年月日を記載するとしているだけです)。この場合は、あらかじめ管轄の登記所に確認しておくと安心です。

登記をした後は、登記事項と登記の年月日を遅滞なく都道府県知事に届け出ます。ただし、設立の認可(医療法44条1項)や定款・寄附行為変更の認可(同法54条の9第3項)などの知事の認可に係る事項に当たるときは、届け出るのは登記の年月日とされています(医療法施行令5条の12)。


参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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