この記事の要点

  • NPO法人(特定非営利活動法人)は、所轄庁の設立認証を受けたあと、法務局で設立の登記をすることによって法人として成立します(特定非営利活動促進法13条1項)。
  • 認証申請に必要な定款・設立趣旨書・事業計画書等の書類作成の代行は行政書士の業務です。司法書士が担うのは、認証を受けたあとの設立登記・変更登記の手続です。
  • 「資産の総額」はかつてNPO法人の登記事項で、忘れず変更登記をする必要がありましたが、2018年10月1日から登記事項ではなくなり、現在は毎年の貸借対照表の公告義務に置き換わっています。
  • 設立登記の登録免許税は非課税(0円)です。ただし代表者の氏名・住所変更などの変更登記は、変更が生じてから2週間以内に必要です。
  • 認証手続そのものについてのご相談は、所轄庁または行政書士へ。

「NPOを立ち上げたいが、認証と登記でどこまでが司法書士の仕事なのか分からない」という声をよく耳にします。結論から言うと、NPO法人の設立は「所轄庁による設立の認証」と「法務局での設立の登記」という2つの手続きからなり、司法書士が担うのは後者(登記)です。この記事では、NPO法人の設立登記までの流れと業務の境界線、そして「かつて忘れやすいと言われていた資産の総額の変更登記」が現在どうなっているかを整理します。

1. NPO法人とは──株式会社や一般社団法人との違い

NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号。以下「NPO法」)にもとづく法人です。株式会社が会社法にもとづく「会社」であるのに対し、NPO法人は会社ではありません。一般社団法人と同じく、構成員(社員)に利益を分配できない非営利法人という点は共通していますが、NPO法人には一般社団法人にはない大きな特徴があります。それは、法人を作る前提として、所轄庁(都道府県知事または指定都市の長)による「設立の認証」を受けなければならないという点です(NPO法9条・10条)。一般社団法人や株式会社の設立に行政庁の認証は不要ですが、NPO法人は公益的な活動を行う団体として一定の要件を満たしていることを、設立前に行政がチェックする仕組みになっています。

2. 設立の流れ──認証と登記、2つの手続き

NPO法人の設立は、おおむね次の順序で進みます。

  1. 定款の作成・設立時社員の確保 … 目的・事業内容などを定款に定めます。認証の要件として、社員(構成員)が10人以上必要です(NPO法12条1項4号)。
  2. 所轄庁への設立認証の申請 … 定款、役員名簿、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書などを添えて、主たる事務所の所在地を管轄する所轄庁に認証を申請します(NPO法9条・10条1項)。この認証申請書類一式の作成を代行することは行政書士の業務であり、司法書士が担うのはこのあとの登記の手続です。認証の要件や申請そのものについてのご相談は、所轄庁または行政書士にご相談ください。
  3. 公衆の縦覧 … 申請書を受理した所轄庁は、定款など一定の書類を、申請書受理の日から2週間、公衆の縦覧に供します(NPO法10条2項)。
  4. 所轄庁による認証・不認証の決定 … 縦覧期間が終わった日から2か月以内に、所轄庁が認証するかどうかを決定します(NPO法12条2項)。
  5. 設立の登記 … 認証を受けたら、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で設立の登記を申請します。NPO法人は、この登記をすることによって法人として成立します(NPO法13条1項)。認証申請の書類作成が行政書士の業務範囲であるのに対し、この登記の申請代理は司法書士の業務です(司法書士法3条1項1号)。設立の登記は、認証を受けた日から6か月を経過しても行わないと、所轄庁が認証を取り消すことができるとされている(NPO法13条3項)ため、認証後は速やかに進める必要があります。
  6. 登記後の届出 … 登記をしたら、遅滞なく登記事項証明書と財産目録を添えて、その旨を所轄庁に届け出ます(NPO法13条2項)。

株式会社や一般社団法人の設立が「定款作成→(株式会社は定款認証→)登記」という流れであるのに対し、NPO法人は登記の前に行政庁の認証手続が入る点が最大の違いです。認証手続にかかる期間は、縦覧2週間+決定までの2か月を合わせると、2か月半程度を見込む必要があります。

3. 「資産の総額」の変更登記──かつての落とし穴は、すでに廃止

インターネット上には「NPO法人は資産の総額を毎年変更登記しなければならず、忘れがちなので注意」という趣旨の解説が今も数多く残っています。これはかつては正しい情報でしたが、現在は状況が変わっています。

かつて、NPO法人の登記事項を定める組合等登記令(昭和39年政令第29号)の別表には、NPO法人についても「資産の総額」が登記事項として掲げられていました。資産の総額は毎事業年度末日の金額に応じて変わるため、事業年度が終わるたびに変更登記をする必要があり、この年次の変更登記を失念する例が実務上少なくありませんでした。

しかし、2016年(平成28年)のNPO法改正にともなう整備により、この「資産の総額」はNPO法人の登記事項から廃止されました(2018年10月1日から。現行の組合等登記令別表で、NPO法人の登記事項として掲げられているのは「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」のみで、資産の総額は含まれていません)。

廃止に代わって設けられたのが、貸借対照表の公告義務です。NPO法人は、毎事業年度の貸借対照表を作成したあと遅滞なく、官報への掲載、日刊新聞紙への掲載、電子公告など、定款で定めた方法によりこれを公告しなければなりません(NPO法28条の2第1項)。あわせて、事業報告書・計算書類・財産目録などを事務所に備え置き、社員などから閲覧を求められたら応じる義務もあります(NPO法28条)。つまり、「資産の総額の変更登記」という登記の手続としての義務は無くなった一方で、財務情報を対外的に開示するという趣旨そのものは、公告・備置きという別の形で今も続いている、というのが正確な理解です。

4. 今も注意が必要な変更登記

資産の総額の登記は廃止されましたが、それ以外の登記事項に変更が生じた場合の変更登記は、今も必要です。組合等登記令の原則により、登記事項に変更が生じたときは、変更が生じてから2週間以内に変更登記をしなければなりません(組合等登記令3条1項)。

NPO法人でとくに変更登記を忘れやすいのは、次のような場面です。

  • 代表者(理事)の交代・住所変更
  • 主たる事務所の移転
  • 目的・名称など定款記載事項の変更(このうち一定の重要事項は、変更登記の前提として所轄庁の認証も必要です。NPO法25条3項)

変更登記を怠ると、NPO法人の理事・監事・清算人が20万円以下の過料に処される可能性があります(NPO法80条1号)。資産の総額の登記が無くなったことで「NPO法人はもう登記のことを気にしなくていい」というわけではなく、代表者や事務所の変更は今も2週間以内の登記が必要という点は変わっていません。

5. 設立登記にかかる費用

NPO法人の設立登記は、株式会社や一般社団法人と異なり、登録免許税が課されません(非課税=0円)。登録免許税は登録免許税法別表第一に掲げられた登記についてのみ課される仕組みで、NPO法人の設立登記はこの別表に掲げられていないためです。費用面では、株式会社や一般社団法人よりも設立時の負担が軽い法人形態といえます。


まとめ

  • NPO法人の設立は「所轄庁の設立認証」と「法務局での設立の登記」の2段階です。登記をすることで法人として成立します(NPO法13条1項)。
  • 認証申請書類の作成代行は行政書士の業務、設立登記・変更登記の手続は司法書士の業務です。認証手続自体のご相談は所轄庁または行政書士へ。
  • 「資産の総額」の変更登記は2018年10月1日から廃止されており、現在は貸借対照表の公告義務に代わっています。ただし代表者変更などの変更登記(2週間以内)は今も必要です。
  • 設立登記の登録免許税は非課税です。

NPO法人の設立・登記の進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. NPO法人の設立登記にかかる費用はどれくらいですか? 設立登記そのものの登録免許税は非課税(0円)です。株式会社(資本金の0.7%・最低15万円)のように資本金に連動する税額はかかりません。ただし、認証申請にあたって定款や事業計画書などの書類作成を専門家に依頼する場合は、別途その分の費用がかかります。

Q. 認証や登記の手続を放置するとどうなりますか? 所轄庁の認証を受けてから6か月を経過しても登記をしないと、所轄庁が設立の認証を取り消すことができます(NPO法13条3項)。また、成立後に代表者の交代や事務所移転などがあったのに変更登記をしないままにしておくと、理事・監事・清算人が20万円以下の過料に処される可能性があります(NPO法80条1号)。

Q. 認証申請や登記は自分で行うことができますか? 制度上は、設立時社員自身で認証申請・登記のいずれも行うことができます。ただし、専門家に依頼する場合は役割が分かれ、認証申請書類の作成は行政書士、登記の手続は司法書士が担当します。認証手続については所轄庁または行政書士に、登記の手続についてはお近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】NPO法人の登記事項と株式会社の登記実務との違い

ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

NPO法人の設立登記・変更登記は、株式会社の登記と同じ法務局の窓口で扱われますが、根拠となる法令の体系は異なります。株式会社の登記は会社法・商業登記法にもとづく登記であるのに対し、NPO法人の登記は前述の組合等登記令(昭和39年政令第29号)にもとづく登記です。法務局に備えられる登記簿も、株式会社等を対象とする商業登記簿(商業登記法6条)と、NPO法人など会社以外の法人を対象とする各種法人等の登記簿(各種法人等登記規則)とに分かれており、この違いは登記事項にも表れます。組合等登記令2条2項は、目的及び業務、名称、事務所の所在場所、代表権を有する者の氏名・住所・資格、存続期間又は解散の事由(定めたとき)、そして別表に掲げる事項(NPO法人の場合は前述の代表権の範囲又は制限に関する定め)を登記事項として列挙しており、株式会社の登記事項証明書にある資本金の額や発行可能株式総数、発行済株式の総数といった項目は、NPO法人の登記事項には含まれていません。

実務上とくに注意したいのが、「代表権の範囲又は制限に関する定め」の登記です。定款で理事のうち特定の者だけに代表権を認める(他の理事の代表権を制限する)定めを置いている法人では、この定めが登記事項になります。株式会社の代表取締役についても、定款や取締役会決議で代表権に事実上の制限を加える例はありますが、対外的な登記事項として公示されるのは代表取締役の氏名・住所であり、代表権の内部的な制限そのものを登記する仕組みとは前提が異なります。NPO法人の設立登記・代表理事の変更登記にあたっては、定款上「理事全員が代表権を有する」のか「代表権を有する理事を限定している」のかをまず確認し、後者であればその定めの登記漏れがないかを点検する必要があります。

設立登記の添付書類でも、補正が生じやすいポイントがあります。所轄庁の認証を受けたことを証する認証書(またはその謄本)の添付は、NPO法人の設立登記に固有の必須書類であり、株式会社の設立登記にはない要素です。あわせて、設立当初に代表権を有する者(理事)が定款所定の方法(設立総会での選任等)で適法に選ばれたことを示す書面と、登記申請書に記載する代表者の資格との整合性も点検対象になります。株式会社の設立登記で発起人の意思確認や出資の履行を確認する作業とは着眼点が異なりますが、「定款の定めと実際の手続の一致を書面で示す」という点検の考え方自体は共通しています。

変更登記の期間についても整理しておきます。組合等登記令3条1項により、登記事項に変更が生じてから2週間以内に変更登記をする必要がある点は、株式会社の変更登記の期間(会社法915条1項。こちらも2週間)と同じですが、根拠となる法令が会社法・商業登記法ではなく組合等登記令である点は、NPO法人の登記を扱ううえで押さえておきたい違いです。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月)。

  • 特定非営利活動促進法9条・10条・12条・13条・25条・28条・28条の2・80条(所轄庁・設立の認証・認証の基準等・成立の時期等・定款の変更・事業報告書等の備置き等及び閲覧・貸借対照表の公告・過料)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007
  • 組合等登記令2条・3条・16条・25条・別表(設立の登記・変更の登記・設立の登記の申請・商業登記法の準用・特定非営利活動法人の登記事項)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029
  • 特定非営利活動促進法の一部を改正する法律(平成28年法律第70号)附則1条2号・組合等登記令の一部を改正する政令(平成30年政令第270号)附則(「資産の総額」の登記事項からの廃止と貸借対照表の公告義務の施行日=2018年10月1日。各改正附則は上記2法令のe-Gov法令検索ページ末尾の附則欄に収載)
  • 司法書士法3条1項1号(業務──登記に関する手続についての代理)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
  • 登録免許税法2条・別表第一(課税の範囲──別表第一にNPO法人の設立登記は掲げられていないため非課税)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
  • 商業登記法6条・19条(商業登記簿の種類・官庁の許可書の添付〔組合等登記令25条1項による準用〕)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
  • 各種法人等登記規則1条・2条(趣旨・登記簿の編成)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010046
  • 会社法915条1項(変更の登記)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

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