この記事の要点
- 株主名簿は、すべての株式会社が作成し、本店に備え置かなければならない帳簿です(会社法121条・125条1項)。記載するのは、株主の氏名・住所、株式の数、株式を取得した日など4項目です
- 会社法が定めているのは記載事項で、決まった書式(ひな形)はありません。紙でも電子データでも作れます
- 名簿を作り、書き換えるのは会社です。株式の発行など会社自身が関わる場面では会社が記載し、譲渡や相続で株主が変わる場面では、株式を取得した人からの請求を受けて書き換えます(会社法132条・133条)
- 株主は登記事項ではないため、名簿を作り直しても、それだけで登記は必要ありません。ただし、登記の申請に添付する「株主リスト」は名簿の内容が土台になります
- 名簿がない・古いままの会社は、設立時の資料、増資や譲渡承認の議事録などで「今の株主」を確かめてから作り直します。誰が株主かで争いがあるときは弁護士、税金のことは税理士が相談先です
経営者の方に知っておいてほしいのは、株主名簿は「上場会社のような大きな会社だけが作るもの」ではない、ということです。株主が社長1人だけの会社でも、家族だけで株を持っている会社でも、株式会社であれば株主名簿を作り、本店に置いておく義務があります(会社法121条・125条1項)。
結論から言うと、株主名簿の作り方そのものは難しくありません。会社法が決めている4つの記載事項を、株主ごとに一覧にすれば形はできます。難しいのは、設立から年月がたち、名簿が作られていなかったり、譲渡や相続が反映されないまま古くなっていたりする会社で、「今の株主は誰か」を確かめ直す部分です。この記事では、名簿を作る会社の側から、記載事項、書き換えの場面、備え置きと閲覧、そして名簿がない・古いままの会社が作り直す手順を順に整理します。
なお、本記事は執筆時点(2026年10月)の法令に基づく一般的な解説です。
株主名簿に書くこと──会社法121条の4項目
会社法121条は、株主名簿に次の事項を記載(電子データの場合は記録)しなければならないと定めています。この4項目を、法律上「株主名簿記載事項」と呼びます。
| 記載事項 | 内容 | 根拠(会社法121条) |
|---|---|---|
| 株主の氏名・住所 | 法人が株主の場合は名称と住所 | 1号 |
| 株主が持っている株式の数 | 種類株式を発行している会社では、株式の種類と種類ごとの数 | 2号 |
| 株式を取得した日 | その株主が株式を取得した日 | 3号 |
| 株券の番号 | 株券発行会社で、株券が実際に発行されている株式に限る | 4号 |
株券を発行するのは、定款で株券を発行すると定めた会社(株券発行会社)だけです(会社法214条)。株券発行会社でない会社では、4号の株券の番号は記載しません。
決まった書式はあるか
会社法121条が定めているのは、上の記載事項です。どのような表の形にするかといった書式(ひな形)までは決められていません。株主ごとに1行ずつ並べる一覧表の形でも、株主ごとに1枚のカードにする形でもかまいません。
また、名簿は紙で作っても、電子データ(会社法では「電磁的記録」といいます)で作ってもよいとされています。会社法121条が「記載し、又は記録しなければならない」と書き、閲覧の請求について書面で作った場合と電子データで作った場合の両方を定めているためです(会社法125条2項1号・2号)。表計算ソフトで作った一覧を名簿として管理することもできます。
書き添えておくと後で役立つこと
次のような事項は、会社法上の記載事項ではありませんが、書き添えておくと、後で株主が変わった経緯をたどりやすくなります(この記事の整理です)。
- 株式を取得した原因(設立時の引受け、増資による引受け、譲渡、相続など)
- 根拠になった資料(議事録や契約書の日付など)
- 過去の株主(書き換える前の記載を消さずに履歴として残す)
株主名簿の記載は、のちに株主が変わったとき、相続が起きたとき、事業承継で株を集めるときの出発点になります。「なぜこの人がこの株数を持っているのか」を名簿から追える状態にしておくと、後の手続きが進めやすくなります。
誰が作り、いつ書き換えるのか
株主名簿を作るのは会社です(会社法121条)。会社によっては、株主名簿管理人(会社に代わって名簿の作成・備え置きなどの事務を行う者)を定款で定めて事務を任せることもできますが(会社法123条)、株主名簿管理人を置かない会社では、会社自身が作成・管理します。
名簿を書き換える場面は、大きく次の2つに分かれます。
会社自身が記載する場面(会社法132条)
会社が自分で手続きをした結果として株主や株式数が変わる場面では、会社が株主名簿に記載しなければなりません。
- 株式を発行した場合(増資など)(会社法132条1項1号)
- 会社が自社の株式を取得した場合(自己株式の取得)(同項2号)
- 会社が持っている自己株式を処分した場合(同項3号)
- 株式の併合・株式の分割をした場合(同条2項・3項)
たとえば増資をしたときは、増資(募集株式の発行)の登記とは別に、新しく株式を引き受けた株主を名簿に記載する作業が必要です。登記をしたから名簿も自動的に変わる、という関係ではありません。
株式を取得した人からの請求で書き換える場面(会社法133条)
株主どうしの譲渡(売買・贈与)や相続のように、会社以外の人から株式を取得した場合は、取得した人(会社法では「株式取得者」といいます)が会社に対して、名簿の書き換え(名義書換)を請求します(会社法133条1項)。この請求は、原則として、名簿上の株主(亡くなっていればその相続人など)と共同でしなければなりません(同条2項)。
株式に譲渡制限がある会社では、譲渡による取得は、会社の承認を受けていなければ原則として名義書換を請求できません(会社法134条1号・2号)。一方、相続などによる取得には会社の承認は要りません(同条4号)。贈与のときの承認と名義書換の進め方は後継者に株を生前贈与する記事、相続した側から見た名義書換は非上場株式を相続したときの名義書換の記事で整理しています。
名簿に載せることの意味
株式を譲り受けた人は、名簿に自分の氏名・住所が記載されなければ、株式を取得したことを会社その他の第三者に対抗する(主張する)ことができません(会社法130条1項。株券発行会社では、対抗できない相手は会社とされています。同条2項)。
また、会社が株主に送る通知や催告は、名簿に記載された住所あてに出せば足りるとされています(会社法126条1項)。株主総会の招集通知も、ふだんは名簿の記載をもとに送られます。名簿が古いままだと、住所が変わった株主や、相続で株主が変わった家庭に通知が届かない、ということが起こりえます。
株主の住所や氏名が変わったときに、どのような方法で会社に届け出るかを定めた条文は、株主名簿に関する会社法の規定(121条〜126条)の中には見当たりません。会社法126条1項は、株主が通知を受ける場所や連絡先を別に会社に通知していればそこへ通知を出せば足りるとしていますが、届出の様式や手順を定めたものではありません。会社の株式の取扱いに関する規程などで、届出の方法をあらかじめ決めておくと管理しやすくなります。
備え置きと閲覧──本店に置き、株主・債権者に見せる
本店に備え置く
株主名簿は、本店(株主名簿管理人がいる場合はその営業所)に備え置かなければなりません(会社法125条1項)。株主総会議事録のような「10年」という期間(会社法318条2項)はなく、会社が続いている間は常に備え置くものです。会社が備え置く書類の全体像と期間は会社が備え置くべき書類と保存期間の記事で一覧にしています。
閲覧・謄写の請求
株主と債権者は、会社の営業時間内であれば、いつでも、請求の理由を明らかにして、株主名簿の閲覧や謄写(書き写すこと・写しをとること)を請求できます(会社法125条2項)。
会社は、原則としてこの請求を拒めません。拒むことができるのは、次のような場合に限られます(会社法125条3項)。
- 権利の確保や行使に関する調査以外の目的で請求したとき(1号)
- 会社の業務の遂行を妨げる目的や、株主の共同の利益を害する目的で請求したとき(2号)
- 名簿で知った事実を、利益を得て第三者に知らせるために請求したとき(3号)
- 過去2年以内に、名簿で知った事実を、利益を得て第三者に知らせたことがあるとき(4号)
株主が自分の記載内容の証明を求めるとき
株券を発行しない会社の株主は、会社に対し、自分についての株主名簿の記載内容を記載した書面(または電子データ)の交付を請求できます(会社法122条1項)。この書面には代表取締役が署名または記名押印します(同条2項)。株券がない会社では、株主が自分の持ち株を示す手段になるものです。なお、この仕組みは株券発行会社には適用されません(同条4項)。
作らない・備え置かないとどうなるか
会社法は、株主名簿に記載すべき事項を記載しなかったり、うその記載をしたりしたとき(会社法976条7号)、株主名簿を備え置かなかったとき(同条8号)、正当な理由なく閲覧などを拒んだとき(同条4号)に、取締役などが100万円以下の過料に処せられる場合があると定めています。
名簿を作り直しても登記はいらない──ただし株主リストの土台になる
株主名簿を作り直したら法務局で手続きが要るのか、という疑問を持たれる方もいます。
株式会社の登記事項は会社法911条3項に並んでいますが、そこに「株主の氏名」は含まれていません。株主が誰かは、登記ではなく、会社の株主名簿で管理するしくみです。そのため、名簿を新しく作ったり、記載を直したりしても、それだけで登記が必要になることはありません。登記事項証明書(会社の登記簿の写し)を見ても、株主が誰かはわかりません。
一方で、役員変更など株主総会の決議を経てする登記では、議決権の多い株主の氏名・住所・株式数などを記載した「株主リスト」を添付します(商業登記規則61条3項)。株主リストは名簿とは別の書類ですが、名簿の内容が土台になります。名簿が古いままだと、株主リストに誰を記載するのかという前提が揺らぎます。違いは「株主リスト」とは──登記のたびに求められる書類と株主名簿との違いで整理しています。
名簿がない・古いままの会社が作り直す手順
設立から年月がたった会社では、名簿が見当たらない、何年も前の記載のまま、ということがあります。名簿を作り直すときは、いきなり表を作るのではなく、資料で「今の株主」を確かめるところから始めます。法律で手順が決められているわけではないため、ここでは一般的な考え方として整理します。
ステップ1 登記事項証明書で「株式の総数」を確かめる
まず、法務局で会社の登記事項証明書を取り、発行済株式の総数(種類株式を発行している会社では種類ごとの数)を確かめます。作り直した名簿の株式数の合計は、本来この数と一致するはずです。一致しないときは、名簿の記載漏れのほか、増資や自己株式の消却などで株式の数が変わったのに登記がされていない可能性もあるため、どちらが実際の経緯と合っているかをステップ2の資料で確かめます。登記が追いついていなかった場合は、名簿とは別に変更の登記が必要になります(会社法915条1項)。会社が自社の株式(自己株式)を持っている場合は、その分も会社自身が持つ株式として名簿に記載されます(会社法132条1項2号)。
あわせて、株式に譲渡制限があるか、株券発行会社か(会社法911条3項7号・10号)も確かめます。株券発行会社であれば、名簿には株券の番号も記載することになります(会社法121条4号)。
発行済株式の総数がいつ、どう変わってきたかは、履歴事項全部証明書(請求した日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消・変更された事項まで載ります)や、それより古い記録であれば閉鎖事項証明書(閉鎖された登記記録に記録されている事項が載ります)で、増資や株式の分割などの登記の記録としてたどれることがあります(商業登記規則30条1項2号・3号)。
ステップ2 株主の変化を資料で一つずつたどる
次に、設立から現在まで、株主がどう変わってきたかを資料でたどります。確かめられる資料の例は次のとおりです。
| 場面 | 確かめられる資料の例 |
|---|---|
| 設立時 | 設立時の定款(原始定款。発起人の氏名・住所が記載されています。会社法27条5号)、設立登記の申請書類の控え、払込みの記録 |
| 増資 | 株主総会・取締役会の議事録、募集株式の引受けの申込みや総数引受契約の書面、払込みの記録 |
| 譲渡(売買・贈与) | 譲渡承認の請求書、承認した株主総会・取締役会の議事録、売買契約書・贈与契約書、名義書換の請求書 |
| 相続 | 名義書換の請求書と、添付された戸籍や遺産分割協議書の写し |
| 自己株式の取得・処分、株式の併合・分割 | それぞれの株主総会・取締役会の議事録、取得の契約書など |
このほか、法人税の申告書の別表二(同族会社等の判定に関する明細書)には、「判定基準となる株主等の株式数等の明細」として、判定の基準となる株主等の住所・氏名、株式数、議決権の数を記載する欄があるため、過去の株主構成の手がかりになることがあります。ただし、すべての株主が載るとは限らず、税務上の書類であって、会社法上の株主を決めるものではありません。申告書の見方は、顧問の税理士に確認するのが確実です。
ステップ3 確かめられた範囲で名簿を作り直す
資料でたどれた結果をもとに、現在の株主について、121条の4項目を記載した名簿を作ります。作り直した日付と、どの資料にもとづいたかを記録しておくと、後で説明を求められたときの根拠になります。
資料から譲渡や相続で株式が移ったことがわかっても、名義書換の請求がされていない株式については、会社が資料だけを根拠に書き換えるのではなく、株式を取得した人からの請求を受けて反映するのが、上で見た会社法133条の仕組みに沿った進め方です(この記事の整理です)。
株主の住所が古いままの場合は、株主本人に確認して最新の住所を記載します。株式を取得した日が資料で特定できない株主がいる場合など、資料だけでは埋めきれない項目の扱いは、作り直しの方針とあわせて専門家に確認しておくのが安心です。
ステップ4 資料でたどれない部分・食い違う部分は無理に決めない
作り直しの作業で注意したいのは、資料で確認できる範囲に限って名簿に反映することです。次のような場合は、会社だけの判断で名簿を書き換えないようにします。
- 名前だけ借りた株主(名義株)が残っている疑いがある:名簿上の名義人と、実際にお金を出した人が食い違っている株式の整理は、資料の確認と名義人の側との認識のすり合わせが前提になります。考え方と流れは名義株とは──設立時に名前を借りた株主が残っているときの整理で整理しています
- 誰が株主か、何株持っているかで言い分が対立している:当事者どうしの交渉や裁判の領域に入るため、弁護士に相談すべき場面です
- 株主と連絡が取れない:一定の条件を満たせば、所在不明株主の株式を整理する制度が使える場合があります
税金の論点は税理士へ
名簿の作り直しの過程で、過去の譲渡や贈与、相続が名簿に反映されていなかったことがわかる場合があります。そうした株式の移動には、相続税・贈与税、売買であれば所得税などの税金が関わることがあります。どの税金がどう関わるか、株式をいくらと評価するかといった判断は、税理士の専門領域です。名簿の記載を動かす前に、税理士にご相談ください。
まとめ
株主名簿は、すべての株式会社が作成して本店に備え置く帳簿で、株主の氏名・住所、株式の数、株式を取得した日、(株券発行会社では)株券の番号を記載します(会社法121条・125条1項)。決まった書式はなく、紙でも電子データでも作れます。増資や自己株式の取得では会社が自ら記載し、譲渡や相続では株式を取得した人からの請求で書き換えます。
株主は登記事項ではないため、名簿を作り直しても、それだけで登記は必要ありません。それでも、株主総会の招集、登記に添付する株主リストの作成、相続や事業承継といった場面で、名簿が「今の株主」を正しく示していることが前提になります。名簿がない・古いままの会社は、登記事項証明書と設立以来の資料で株主の変化をたどり、確かめられた範囲で作り直すのが基本です。
株主名簿の整備や、株主リストを含む登記の手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください。誰が株主かで争いがある場合は弁護士、税金のことは税理士が相談先になります。
よくある質問
Q. 株主名簿を作るのに費用はかかりますか?
株主名簿は会社が自分で作る帳簿なので、作成そのものに手数料はかかりません。名簿を作り直すこと自体には登記は不要なため、登録免許税(登記の際に国に納める税金)もかかりません。資料をそろえるために登記事項証明書や閉鎖事項証明書を取る場合は、法務局の手数料がかかります。専門家に資料の確認や名簿の整備を依頼する場合の報酬は、事務所や事案の内容によって異なりますので、依頼前に見積もりを確認しましょう。
Q. 株主名簿を作っていない・古いままだと、どうなりますか?期限はありますか?
株主名簿の作成と備え置きは、会社がある限り続く義務で、「いつまでに作ればよい」という猶予の期限はありません。記載すべき事項を記載しなかったときや、名簿を備え置かなかったときは、取締役などが100万円以下の過料に処せられる場合があります(会社法976条7号・8号)。実際の場面では、株主総会の通知が正しく届かない、登記の株主リストが作れない、相続や事業承継で株の持ち主がはっきりしない、といった形で問題が表に出ます。時間がたつほど経緯を知る人や資料がなくなるため、早めの整備が基本です。
Q. 自分たちで作れますか?どこに相談すればいいですか?
株主が少なく、設立以来の資料がそろっている会社であれば、会社自身で作ることもできます。ただし、資料でたどれない株主や名義株の疑いがある場合、過去の譲渡・相続が反映されていない場合は、名簿の記載の仕方によって会社法の手続きや税金の扱いが変わることがあります。株主名簿の整備や株主リスト・登記の手続きはお近くの司法書士に、誰が株主かで争いがある場合は弁護士に、税金のことは税理士にご相談ください。
【さらに深掘り】株主名簿と商業登記の接点──株主リスト・発行済株式の総数・株主名簿管理人
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
株主リストは「その決議で議決権を行使できる株主」を名簿から拾う書面
株主総会(種類株主総会)の決議を要する登記で添付する株主リストについて、商業登記規則61条3項が定めているのは、記載する株主の範囲(議決権の割合が高い順に、10名と、割合を足して3分の2に達するまでの人数とのいずれか少ない人数)と、記載事項(氏名または名称・住所、株式の数、議決権の数、議決権の割合)です。どの帳簿から情報を取るかまでは書かれておらず、商業登記規則の本則には「株主名簿」という語が出てくる条文自体がありません(e-Gov法令APIで確認した範囲。規則の別表の登記記録の区分に「株主名簿管理人」の語があるだけです)。
それでも株主リストが名簿の記載をもとに作られることになるのは、会社法の側の仕組みによるものです(以下はこの記事の整理です)。
- 原則として名簿上の株主が議決権を行使する:株式を譲り受けた人は、名簿に記載されなければ株式の取得を会社に対抗できません(会社法130条1項)。会社が基準日を定めた場合は、基準日に名簿に記載されている株主を、議決権を行使できる者とすることができます(会社法124条1項)。基準日後に株式を取得した人に議決権の行使を認めることもでき(同条4項。ただし、基準日に名簿に記載されている株主の権利を害することはできません)、その場合はその人も株主リストの計算に入ります
- 数えるのは「その決議で行使できる議決権」:商業登記規則61条3項は、議決権を「当該決議において行使することができるもの」に限っています。会社は自己株式について議決権を持たないため(会社法308条2項)、名簿に会社自身が自己株式の株主として記載されていても、株主リストの議決権の計算からは外れます
名簿から株主リストを作るときは、①どの時点の名簿の記載を使うか(基準日を定めたか)、②自己株式など議決権のない株式を除いたか、の2点を確かめることになります。名簿の記載と実際の株主が食い違っている疑いがあるときの株主リストの考え方は、名義株の記事の深掘りで整理しています。誰が株主かで当事者の言い分が対立している場合は、名簿や株主リストの作り方の問題ではなく、弁護士に相談すべき場面です。
発行済株式の総数が変わる登記と、名簿で更新する箇所
発行済株式の総数(種類株式発行会社では種類と種類ごとの数)は登記事項で(会社法911条3項9号)、変わったときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(会社法915条1項)。総数が変わる主な場面を、決める機関・株主リスト・名簿の三つの面から並べると次のようになります。
| 場面 | 決める機関(会社法) | 株主リスト(商業登記規則61条3項) | 名簿で更新する箇所 |
|---|---|---|---|
| 募集株式の発行(増資) | 原則は株主総会(199条2項)。公開会社は取締役会(201条1項) | 株主総会の決議を要した場合(募集事項を株主総会で定めた場合など)に添付 | 株式を引き受けた株主の記載(132条1項1号) |
| 自己株式の消却 | 消却する自己株式の数を定める。取締役会設置会社では取締役会の決議(178条) | 取締役会の決議で定めた場合、その決議は株主総会の決議ではないため、この規定による添付の対象外 | 会社名義の自己株式の数を、消却した分だけ減らす(132条に消却の定めはなく、この記事の整理) |
| 株式の分割 | 株主総会(取締役会設置会社では取締役会)(183条2項) | 株主総会で決議した場合に添付 | 分割した株式の記載(132条3項) |
| 株式の併合 | 株主総会(180条2項) | 添付 | 併合した株式の記載(132条2項) |
あわせて押さえておきたいのは、次の2点です。
- 株式の分割は基準日の名簿で割り当てが決まる:分割では、基準日に名簿に記載されている株主が、効力発生日に、持っている株式の数に分割の割合を掛けた数の株式を取得します(会社法184条1項)。譲渡や相続の名義書換が済んでいないまま基準日を迎えると、名簿上の株主を基準に割り当てが行われることになるため、分割を予定している会社は、基準日の前に名簿の書換えが済んでいるかを確かめておくことになります
- 発行可能株式総数も動くことがある:株式の併合では、株主総会で効力発生日における発行可能株式総数も定めます(会社法180条2項4号)。株式の分割では、現に二以上の種類の株式を発行している会社を除き、株主総会の決議によらずに、分割の割合の範囲内で発行可能株式総数を増やす定款の変更ができます(会社法184条2項)。発行可能株式総数も登記事項なので(会社法911条3項6号)、総数の変更とあわせて登記の要否を確認します
どの場面でも、登記をしたからといって名簿が自動的に書き換わるわけではありません。登記の申請と名簿の更新を同じ日の作業として組んでおき、更新後の名簿の株式数の合計(会社が持つ自己株式を含む)が、登記された発行済株式の総数と一致していることを確かめておくと、次に株主リストを作るときの前提がぶれません(この記事の整理です)。
種類株式発行会社で名簿に持たせておく情報
種類株式発行会社では、名簿にも、登記にも、株主リストにも「種類」が出てきます。
- 名簿:株主ごとに、株式の種類と種類ごとの数を記載します(会社法121条2号)
- 登記:発行可能種類株式総数と各種類の株式の内容(会社法911条3項7号)、発行済株式の種類と種類ごとの数(同項9号)が登記されます
- 株主リスト:種類株主総会の決議を要する登記では、その種類の株式の総株主の議決権を基準に上位の株主を選び、その種類の株式の数を記載します(商業登記規則61条3項)。種類株主全員の同意を要する登記では、その種類株主全員について、氏名または名称・住所、その種類の株式の数と議決権の数を記載します(同条2項2号)
株主総会で議決権を行使できる事項を種類ごとに変える定め(会社法108条1項3号)を置いている会社では、決議の内容によって、株式の数とその決議で行使できる議決権の数が一致しないことがあります。株主リストは議決権の数と割合で上位の株主を選ぶため、名簿で種類ごとの数を正確に分けて持っておくことが、株主リストを正しく作る前提になります(この記事の整理です)。
株主名簿管理人を置く場合の登記
本文で触れた株主名簿管理人を置くと、名簿と登記の関係が一つ増えます。
- 定款の定めが前提:株主名簿管理人は、置く旨を定款で定めたうえで、名簿の作成・備置きなどの事務を委託するものです(会社法123条)
- 登記事項になる:置いたときは、その氏名または名称・住所と営業所が登記されます(会社法911条3項11号)。変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をします(会社法915条1項)
- 添付書面:株主名簿管理人を置いたことによる変更の登記の申請書には、定款と、その者との契約を証する書面を添付します(商業登記法64条)
- 備置きの場所が変わる:株主名簿管理人がいる場合、名簿の備置き場所は本店ではなく、株主名簿管理人の営業所になります(会社法125条1項)
株主名簿管理人を置いた後は、名簿を備え置く場所が株主名簿管理人の営業所になるため、登記された営業所と、委託契約で名簿の事務を行う営業所がそろっているかを確かめておくことになります(この記事の整理です)。
名簿の様式が法令で決まっていないことの確認
本文のとおり、会社法121条が定めているのは記載事項で、様式ではありません。会社法施行規則で「株主名簿」の語が出てくる条文(定義の2条、名義書換の請求の22条など)を確かめた範囲でも、名簿の様式を定めた規定は見当たりませんでした(e-Gov法令APIで本則を確認)。様式が自由である分、上で見たように、株主リストの作成(議決権の数の計算)や登記された株式の総数との照合に使える形で、種類・自己株式・取得の経緯を区別して持っておくことが、名簿の使い勝手を左右します。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 会社法 第27条・第108条・第121条〜第126条・第130条・第132条〜第134条・第178条・第180条・第183条・第184条・第199条・第201条・第204条・第205条・第214条・第308条・第318条・第911条・第915条・第976条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法施行規則 第2条・第22条ほか「株主名簿」の語を含む条文(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012
- 商業登記法 第64条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則 第30条・第61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 法務省「『株主リスト』が登記の添付書面となりました」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html
- 法務省「株主リストに関するよくあるご質問」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00103.html
- 法務省 株主リストの書式例(A-1 統合簡易書式): https://www.moj.go.jp/content/001338385.pdf
- 国税庁 法人税申告書別表二「同族会社等の判定に関する明細書」(令和7年4月1日以後終了事業年度分): https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2025/01.htm