この記事の要点

  • 相続が起きたことだけで、仮登記が消えることはありません。仮登記で守られている権利も、仮登記がされた不動産の所有権も、原則として相続人に引き継がれます(民法896条)
  • 仮登記の権利者が亡くなった場合は、相続人が亡くなった人に代わって本登記の手続をする方法(不動産登記法62条)などがあり、どの方法になるかは仮登記の中身と、本登記の条件が整ったのが亡くなる前か後かで変わります
  • 不動産の所有者が亡くなった場合、本登記の手続で所有者の側に立つのは原則として相続人です。相続人が相続で所有権を取得したのであれば、相続登記の申請義務(3年以内・同法76条の2)もかかります
  • 古い仮登記は、年月がたっても自動では消えません。仮登記の名義人(亡くなっていればその相続人)の協力か承諾を得て抹消するのが基本です(同法110条)。協力が得られないときは判決による登記が必要になり、弁護士に相談すべき場面です
  • 仮登記の抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一第1号(十五))

仮登記がある不動産で相続が起きても、相続が起きたことだけで仮登記が消えることはありません。仮登記で守られている権利の側にも、仮登記をされた不動産の所有者の側にも相続が起こりえて、そのたびに「誰が、どの手続に関わるのか」が変わります。

仮登記そのもののしくみ(1号仮登記と2号仮登記の違い、本登記で順位がさかのぼること、申請のしかた)は、別記事「仮登記(かりとうき)とは?登記の「順位」を確保する仮のしくみ」で整理しています。この記事では、相続の場面に絞り、次の3つのケースで何が起き、相続人に何が求められるのかを解説します。なお、ここでは登記簿でよく見かける、所有権に関する仮登記(甲区に記録されるもの)を念頭に置いています。

場面 亡くなった人 相続人の立場 主に問題になる手続
① 仮登記の権利者(仮登記名義人) 仮登記で守られた権利を引き継ぐ側 本登記、仮登記の権利の引き継ぎの登記
② 不動産の所有者(仮登記義務者) 仮登記の負担が付いた不動産を引き継ぐ側 相続登記、本登記への協力
③ どちらか一方(または両方) 古い仮登記を消したい側/消すのに協力する側 仮登記の抹消

まず登記簿で確かめること

どの場面でも、出発点は登記事項証明書(登記簿)です。甲区に記録された仮登記について、次の点を書き出しておきます。

  • 登記の目的:「所有権移転仮登記」か「所有権移転請求権仮登記」か。前者は権利の移転がすでに起きているが手続上の条件が整っていないもの、後者は将来の移転の請求権を守るためのもの、というのが基本の読み方です(不動産登記法105条1号・2号)。なお、「条件付所有権移転仮登記」「始期付所有権移転仮登記」のように条件や始期が付いた書き方もあります。名前に「請求権」が入っていなくても、移転がまだ先のものとして後者(2号)の側に入るので(同条2号の括弧書き)、目的欄の文字だけで決めず、原因欄とあわせて読みます
  • 原因とその日付:「売買」「売買予約」「贈与(始期 贈与者の死亡)」「代物弁済予約」など。どんな約束にもとづく仮登記なのかの手がかりになります
  • 権利者:仮登記の名義人は誰か。その人が今も存命か
  • 受付の年月日:いつ登記されたものか

あわせて、仮登記のもとになった契約書や承諾書、登記の際に交付された書類(登記識別情報や、古いものなら登記済証)が残っていないかも探しておきます。登記簿の記載だけでは、その仮登記がいまどういう状態にあるのか(契約が続いているのか、すでに目的を終えているのか)までは分からないことが多いからです。

① 仮登記の権利者が亡くなった場合

たとえば、親が生前に土地を買う約束をして仮登記を入れていたものの、本登記をしないまま亡くなった、というケースです。

仮登記で守られた権利も相続の対象

相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。仮登記で守られている所有権や、所有権の移転を求める権利も、原則としてこれに含まれます。相続人が複数いれば、誰がその権利を引き継ぐのかを遺産分割の話し合いで決めることも考えられます。

本登記の進め方は大きく2通り

相続人がこの仮登記を本登記にしていく進め方は、大きく分けて次の2通りが考えられます。

  • 相続人が、亡くなった人に代わって本登記を申請する:登記の申請人になれる人に相続があったときは、相続人がその登記を申請できるとされています(不動産登記法62条)。亡くなる前にすでに権利が移っていた、本登記の条件が整っていたといった場合には、相続人が亡くなった人の立場で本登記を申請し、そのうえで相続人への相続登記をする、という流れが考えられます
  • 仮登記の権利が相続人に移ったことを登記してから、本登記をする:仮登記の権利そのものを相続人が引き継いだことを先に登記し、そのあと相続人の名義で本登記をする、という流れです

どちらの進め方になるかは、仮登記が1号か2号か、そして本登記の条件(代金の支払い、予約を完結させる意思表示、約束の時期の到来など)が整ったのが亡くなる前か後か、によって変わります。ここは個別の事情で判断が分かれるところなので、登記簿と契約書をそろえたうえで確認することになります。

本登記には所有者側の協力が要る

どちらの進め方でも、本登記は、原則として仮登記の権利者側(ここでは相続人)と、不動産の所有者側(仮登記義務者)とが共同で申請します(不動産登記法60条)。所有権に関する仮登記の本登記では、仮登記より後に登記を受けた人など、登記上の利害関係を有する第三者がいれば、その承諾も必要です(同法109条1項)。

所有者側が本登記の手続に応じない場合は、登記手続を命じる確定判決を得て、権利者側が単独で申請する道があります(同法63条1項)。ただしこれは裁判で争う場面であり、交渉や訴訟の進め方は弁護士に相談すべき事柄です。

② 不動産の所有者が亡くなった場合

今度は反対に、仮登記をされている不動産の所有者が亡くなったケースです。たとえば、親名義の土地を相続したら、甲区に第三者の仮登記が残っていた、という場面です。

相続しても、仮登記の負担は付いたまま

所有者が亡くなれば、その不動産の所有権も原則として相続人に引き継がれます(民法896条)。ただし、仮登記が付いた状態のまま引き継ぐことになります。相続人が相続登記をしても仮登記は消えません。そして、仮登記にもとづいて本登記がされると、その本登記の順位は仮登記の順位になり(不動産登記法106条)、所有権に関する仮登記の本登記がされると、登記上の利害関係を有する第三者の権利に関する登記は登記官の職権で抹消されます(同法109条2項)。

相続登記の申請義務との関係

所有権の登記名義人に相続があったときは、相続によって所有権を取得した人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。仮登記が付いた不動産でも、相続人が相続で所有権を取得したのであれば、この義務の対象です。

この申請義務は令和6年4月1日に始まった制度ですが、それより前に開始した相続にも適用されます。その場合の3年の期限は、相続の開始と所有権の取得を知った日と令和6年4月1日のうち、いずれか遅い日から数えます(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項)。何十年も前の相続で名義が亡くなった人のままになっている不動産も、対象になるということです。

一方、仮登記の中身によっては、所有者が亡くなった時点で所有権が仮登記の権利者に移るものもあります。代表的なのが、「私が死んだらこの土地をあげる」という死因贈与の約束にもとづく仮登記です。死因贈与と仮登記の関係は「「死因贈与」と「遺贈」はどう違う?──生前に『あげる約束』をするときの注意点」で解説しています。このような場合は、相続人の相続登記ではなく、仮登記の権利者への本登記が問題になります。どちらにあたるのかは、仮登記の原因と契約の中身で変わるため、登記簿の原因欄と契約書を確認することが出発点です。

本登記の手続で所有者の側に立つのは、原則として相続人

仮登記の権利者が本登記を求めてきたとき、所有者の側で手続に関わるのは、原則として相続人です。相続登記をする前であれば、相続人が亡くなった所有者の立場を引き継いで登記を申請する形(不動産登記法62条)が考えられ、相続人が複数いれば、原則としてその全員が関わることになります。死因贈与の契約で執行者が定められていれば、執行者が関わる場合もあります。

相続人として本登記への協力を求められたら、まず契約書や経緯を確かめ、仮登記の原因と内容が合っているかを確認します。内容に納得できない、契約の有効性に争いがある、といった場合は、弁護士に相談すべき場面です。また、お金の貸し借りの担保として入れられた仮登記(代物弁済の予約など)では、清算をめぐる決まり(仮登記担保契約に関する法律)が関わります。その清算をめぐって争いになっている場合も、弁護士への相談が必要です。

③ 古い仮登記を抹消したい場合

親から相続した土地に、何十年も前の仮登記が残っていた。売却や融資の話が出て、消しておきたい──という場面があります。買主の側から見た仮登記の注意点は「中古住宅を買う前に登記簿でチェックする5項目──所有者・抵当権・差押え・仮登記・共有」で整理していますが、ここでは消したい所有者の側から見ていきます。

年月がたっても、仮登記は自動では消えない

まず押さえておきたいのは、古い仮登記も、抹消の登記をしない限り登記簿に残り続けるということです。仮登記のもとになった約束がすでに果たされた、取りやめになった、あるいは時効などで権利が消えているのではないか、と考えられる場合でも、登記簿から消すには抹消の手続が必要です。そして、権利が本当に消えているかどうかは個別の事情による判断で、登記簿の記載や年数だけで決まるものではありません。

抹消の方法は3通り

仮登記の抹消は、次のいずれかの方法で申請します。

方法 申請する人 主なポイント
仮登記の名義人による単独申請 仮登記の名義人 共同申請の原則によらず単独でできる(不動産登記法110条前段)。名義人の登記識別情報の提供が必要(不動産登記令8条1項9号)
利害関係人による単独申請 所有者など、仮登記の登記上の利害関係人 仮登記の名義人の承諾が必要(同法110条後段)。承諾を証する名義人作成の情報などを添付(不動産登記令別表70項)
共同申請 所有者と仮登記の名義人 権利に関する登記の原則どおりの申請(同法60条)

いずれの方法でも、仮登記の名義人の関与(申請、承諾、または共同申請)が必要になる点は共通です。所有者だけの判断で消せるわけではありません。

仮登記の名義人が亡くなっている場合

古い仮登記では、名義人がすでに亡くなっていることも珍しくありません。その場合、名義人の立場は相続人に引き継がれ(民法896条)、相続人が名義人に代わって抹消を申請したり(不動産登記法62条)、抹消を承諾したりする形で手続に関わることになります。相続人が複数いれば、全員の協力や承諾が必要になるのが通常です。

名義人の相続人を確定するには、戸籍をさかのぼって集める必要があります。相続の世代が進むほど相続人は増え、連絡を取るのも難しくなります。古い仮登記に気づいたら、早めに動くほうが手間は少なくて済みます。

協力が得られない・相手が見つからないとき

仮登記の名義人やその相続人が抹消に協力も承諾もしない場合は、抹消の登記手続を命じる確定判決を得て、単独で申請することになります(不動産登記法63条1項)。これは裁判で争う場面ですので、弁護士に相談してください。お金の貸し借りの担保として入れられた仮登記で、清算をめぐって争いがある場合も同様です。

また、共同で抹消を申請すべき相手の所在が知れない場合には、裁判所の公示催告という手続を経て除権決定を受け、単独で抹消を申請する制度があります(不動産登記法70条1項・3項)。この制度が使えるかどうかは、所在調査の状況などの事情で変わるため、個別に確認が必要です。

まとめ

仮登記がある不動産で相続が起きても、仮登記が消えるわけではありません。仮登記の権利者が亡くなれば相続人が本登記に向けた手続を引き継ぎ、所有者が亡くなれば相続人が本登記の相手方の立場に立ちます。古い仮登記を消したいときは、仮登記の名義人、亡くなっていればその相続人の協力や承諾を得て抹消するのが基本です。

どの場面でも、まず登記簿で仮登記の目的・原因・名義人を確かめ、契約書などの書類を探すところから始まります。仮登記の中身の読み取りや、本登記・抹消の手続の組み立てに迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。相手方との間で争いがある場合は、弁護士への相談が必要です。

よくある質問

Q. 仮登記の抹消や本登記には、どのくらい費用がかかりますか?

仮登記の抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一第1号(十五))。土地と建物の両方に仮登記があれば2個分になります。本登記の登録免許税は、仮登記の段階で一部を納め、本登記のときに残りを納める枠組みが基本で、税率は登記の原因などで変わります。このほか、相続人の確定に必要な戸籍の取得費用や、専門家に依頼する場合の報酬がかかります。

Q. 期限はありますか?放っておくとどうなりますか?

相続で所有権を取得した所有者側の相続人には、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。令和6年4月1日より前に開始した相続では、知った日と同日のいずれか遅い日から3年以内です(令和3年法律第24号附則5条6項)。一方、仮登記の抹消は、同法164条が過料の対象として挙げる申請義務には含まれていません。ただ、放っておくと仮登記の名義人の側でも相続が重なり、協力を求める相手が増えていきます。売却や融資の場面で、仮登記が支障になることもあります。

Q. 自分で手続できますか?どこに相談すればよいですか?

相手方が協力的で、必要な書類がそろうのであれば、ご自身で申請することも制度上は可能です。ただ、仮登記の種類の読み取りや、相続人が亡くなった人に代わって申請する場合の組み立ては専門的な判断を要します。登記の手続は司法書士、相手方との争いや仮登記担保の清算をめぐる問題は弁護士、税金の問題は税理士が相談先です。まずはお近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】仮登記と相続が重なるときの申請の組み立てと添付情報

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文で触れた3つの場面について、条文から読み取れる申請の組み立てと添付情報を整理します。

権利者側の相続:62条が使えるのは「亡くなった人が申請人になれた」場合

不動産登記法62条は、登記権利者・登記義務者・登記名義人が「権利に関する登記の申請人となることができる場合」に相続があったとき、相続人がその登記を申請できると定めています。文言上、62条は、亡くなった人自身がその登記の申請人になれる状態にあったことを前提にしています。

  • 本登記の条件が亡くなる前に整っていた場合(1号仮登記のように、所有権が生前にすでに移っていた場合を含みます):亡くなった人は生前に本登記の登記権利者になれる立場にあったので、相続人が62条により、亡くなった人を登記権利者とする本登記を申請し、続けて相続人への相続登記をする、という二段階の組み立てになります。62条による申請では、相続その他の一般承継があったことを証する情報(戸籍など)を添付します(不動産登記令7条1項5号イ)
  • 条件が整ったのが亡くなった後の場合(2号仮登記で、相続人が予約完結の意思表示をした場合など):亡くなった人が本登記の申請人になれた時点がないため、62条による申請には当たらないと考えられます。この場合は、仮登記で守られた権利が相続人に移ったことをまず登記し、そのうえで相続人の名義で本登記をする組み立てになると考えられます(この整理は条文の文言からの読み取りで、先例で確認したものではありません)

その「権利が移ったことの登記」の形については、付記登記で移転を記録できるのは「所有権以外の権利」に限られています(不動産登記法4条2項、不動産登記規則3条6号)。1号仮登記(所有権移転仮登記)のように所有権そのものがすでに移っている場合、その所有権の相続は付記登記の形にはなりません。2号仮登記のうち「所有権移転請求権仮登記」で守られているのは所有権の移転を求める請求権で、所有権そのものではないため、条文の文言上は「所有権以外の権利の移転の登記」として付記登記によるものと読めます。登記簿の「登記の目的」欄が1号と2号のどちらの書き方になっているかが、組み立てを決める最初の手がかりです。

所有者側の相続:相続登記の後に入った登記と109条

所有権に関する仮登記の本登記では、登記上の利害関係を有する第三者がいれば、その承諾がなければ申請できず(不動産登記法109条1項)、本登記をするときにはその第三者の権利に関する登記は職権で抹消されます(同条2項)。承諾を証する情報としては、その第三者が作成した承諾書か、その第三者に対抗できる裁判があったことを証する情報を添付します(不動産登記令別表69項)。承諾書には作成者の記名押印と印鑑証明書が必要です(同令19条1項・2項)。

相続の場面で注意したいのは、所有者の相続人が相続登記を済ませた後に、その不動産を担保に融資を受けて抵当権を設定していた、といったケースです。この抵当権者は仮登記より後に登記を受けた第三者にあたるため、本登記にはその承諾が必要になり、本登記がされればその抵当権の登記は職権で抹消されます。相続人の側で、仮登記が付いたまま担保設定や売却を進めることには、こうした問題が伴います。

なお、相続登記をする前に本登記をする場合は、相続人が62条により亡くなった所有者に代わって登記義務者側として申請し、相続を証する情報を添付します(不動産登記令7条1項5号イ)。

抹消の3つの方法と添付情報の違い

本文の表で挙げた3つの方法は、添付情報の面でも違いがあります。

方法 主な添付情報 仮登記名義人の登記識別情報
仮登記名義人による単独申請(110条前段) 登記原因を証する情報(不動産登記令別表26項ヘ) 必要(不動産登記法22条、同令8条1項9号)
利害関係人による単独申請(110条後段) 登記原因を証する情報、仮登記名義人の承諾書またはこれに対抗できる裁判があったことを証する情報、登記上の利害関係を有する第三者がいればその承諾書等(同令別表70項) 不要(同令8条1項9号は名義人の単独申請に限られる)
共同申請(60条) 登記原因を証する情報 必要(登記義務者として。同法22条本文)

利害関係人による単独申請では、名義人の登記識別情報の代わりに、名義人の承諾書が中心になります。この承諾書にも、記名押印と印鑑証明書が必要です(不動産登記令19条1項・2項)。

名義人が亡くなっている場合、名義人による単独申請や共同申請の名義人側は、相続人が62条により名義人に代わって申請します。この場合は、相続を証する情報(不動産登記令7条1項5号イ)とあわせて、亡くなった名義人の登記識別情報を提供することになります。62条の文言上は、相続人は、仮登記の権利を相続した旨の登記を先にしなくても、亡くなった名義人の立場で抹消を申請できると読めます(先例での確認はできていません)。

古い仮登記で、登記識別情報ではなく登記済証が交付されている場合は、その登記済証を提出すれば、登記識別情報が提供されたものとみなされます(不動産登記法附則7条)。登記済証が見つからないなど、登記識別情報を提供できない場合の手当てとしては、登記官から登記義務者(ここでは名義人)への事前通知の制度(同法23条1項)や、資格者代理人による本人確認情報の提供(同条4項1号)、公証人の認証(同項2号)があります。

70条(公示催告・除権決定)の射程

不動産登記法70条1項は、登記権利者が、共同して権利に関する登記の抹消を申請すべき者の所在が知れないためにその者と共同して申請できないとき、公示催告の申立てをすることができると定め、除権決定があれば登記権利者が単独で抹消を申請できるとしています(同条3項。添付情報は除権決定があったことを証する情報=不動産登記令別表26項ロ)。1項の文言は抹消する登記の種類を限っていないため、仮登記の名義人の所在が知れない場合も、条文上は対象に含まれます。

一方で、同条の他の項は対象が限られています。

  • 2項(相当の調査をしても所在が判明しないときに「所在が知れない」とみなす規定)は、地上権・永小作権・質権・賃借権・採石権に関する登記と買戻しの特約に関する登記で、存続期間や買戻しの期間が満了しているものが対象です。所有権に関する仮登記はこれにあたりません
  • 4項(被担保債権の消滅を証する情報や供託による単独抹消)は、先取特権・質権・抵当権に関する登記の抹消に限られています。休眠担保権の抹消で使われるこの方法は、所有権に関する仮登記には使えません

70条はあくまで「所在が知れない」場合の制度で、相手方の所在は分かっているが協力しない、という場合の制度ではありません。その場合は判決による登記(同法63条1項)の場面となり、弁護士への相談が必要です。また、70条の手続を経れば必ず抹消できると決まっているわけではなく、所在の調査の状況などによって判断が変わります。仮登記担保をめぐる清算の問題が残っている場合も、弁護士に相談すべき事柄です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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