問題:

建物の個数の認定及び附属建物に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は、所有者の意思にかかわらず、常に1個の建物として取り扱われる。

イ. 1棟の建物に構造上区分された数個の部分があり、その各部分が独立して店舗又は倉庫としての用途に供することができる場合において、当該各部分の所有者が異なるときは、その各部分は、各別に1個の建物として取り扱う。

ウ. 前記イの各部分の所有者が同一であるときは、その所有者の意思にかかわらず、常に1棟の建物の全部を1個の建物として取り扱わなければならない。

エ. 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室、エレベーター室、屋上等建物の構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、各別に1個の建物として取り扱うことができない。

オ. 母屋に対する離れ座敷のように、数棟の建物が相互に効用を高める関係にある場合は、所有者の意思にかかわらず、必ず1個の附属建物として登記しなければならない。

答え:

正しいものは、イ・エの2つである。

解説:

建物の個数の認定に関する基準は、不動産登記事務取扱手続準則78条に定められている。

アは誤りである。効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は、所有者の意思に反しない限り、1個の建物として取り扱うものとする(準則78条1項)。1個の建物として取り扱われるのは所有者の意思に反しない場合に限られるのであって、「所有者の意思にかかわらず、常に」1個の建物として取り扱われるわけではない。

イは正しい。1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には、その各部分は、各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする(準則78条2項本文)。この本文の原則は、各部分の所有者が異なる場合にそのまま適用され、各部分は当然に別個の建物として扱われる。

ウは誤りである。前記イの各部分の所有者が同一であるときは、その所有者の意思に反しない限り、1棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする(準則78条2項ただし書)。所有者が同一であっても、あくまで「その所有者の意思に反しない限り」1個の建物とされるにとどまり、「所有者の意思にかかわらず、常に」1個としなければならないわけではない。

エは正しい。数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室、エレベーター室、屋上等建物の構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、各別に1個の建物として取り扱うことができない(準則78条3項)。

オは誤りである。母屋に対する離れ座敷のように、数棟の建物が相互に効用を高める関係(効用上の一体性)にある場合であっても、これを1個の建物(主である建物とその附属建物)として登記するか、各別の建物として登記するかは、なお準則78条1項の「所有者の意思に反しない限り」という要件にかかっており、所有者の意思にかかわらず一律に1個の附属建物としなければならないわけではない。

以上より、正しいものはイ・エの2つである。効用上一体性の判断枠組み(78条1項)と、構造上独立した部分の取扱い(78条2項)とは、いずれも「所有者の意思」を最終的な分かれ目とする点で共通しており、区分建物としての登記とは異なる、非区分建物における建物の個数の伝統的な認定基準として押さえておきたい。


問題:

土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人に対する懲戒に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 調査士に対する懲戒処分の種類は、戒告、2年以内の業務の停止及び業務の禁止の3種であり、これらの処分は、いずれも法務大臣が行う。

イ. 懲戒の事由があったときから7年を経過したときは、法務大臣は、当該調査士に対し、戒告又は業務の禁止の処分の手続を開始することができない。

ウ. 調査士法人に対する懲戒処分の種類には、戒告及び2年以内の業務の全部又は一部の停止のほか、解散がある。

エ. 法務大臣は、調査士に対し戒告の処分をしようとするときは、行政手続法13条1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

オ. 何人も、調査士にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができるが、この通知を受けた法務大臣は、通知された事実について調査をする義務を負わない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

調査士及び調査士法人に対する懲戒については、土地家屋調査士法42条から45条の2までに規定されている。

アは正しい。調査士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該調査士に対し、戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の処分をすることができる(土地家屋調査士法42条各号)。懲戒処分の権限は、令和元年改正前は法務局又は地方法務局の長にあったが、現在は法務大臣に一元化されている。

イは誤りである。懲戒の事由があったときから7年を経過したときは、第42条又は第43条第1項の規定による処分の手続を開始することができない(同法45条の2)。除斥期間の対象は「戒告又は業務の禁止」の2種類に限られるのではなく、42条の処分(戒告・業務の停止・業務の禁止のいずれも)及び43条1項の処分(調査士法人に対する処分)の全てが対象である。「戒告又は業務の禁止の処分」に限定する点が誤りである。

ウは正しい。調査士法人がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該調査士法人に対し、戒告、2年以内の業務の全部又は一部の停止、解散の処分をすることができる(同法43条1項各号)。

エは正しい。法務大臣は、第42条第1号若しくは第2号又は前条第1項第1号若しくは第2号に掲げる処分をしようとするときは、行政手続法13条1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない(同法44条3項)。42条1号は戒告であるから、戒告処分にも聴聞が必要である。

オは誤りである。何人も、調査士又は調査士法人にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができ(同法44条1項)、前項の規定による通知があったときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない(同条2項)。通知を受けた法務大臣の調査は義務であって、「調査をする義務を負わない」とする点が誤りである。

以上より、正しいものはア・ウ・エの3つである。令和元年改正(令和元年法律第29号・令和2年8月1日施行)で新設された45条の2の除斥期間は、懲戒事由の存否をめぐって長期にわたり資料保管等の負担を課すことを避ける趣旨のものであり、その対象が42条・43条1項の処分全般に及ぶ点(一部の処分類型に限定されない点)を正確に押さえておきたい。


問題:

水流に関する相隣関係についての次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。

イ. 前記アの場合において、他人の工作物を使用する者は、工作物の設置及び保存の費用の全額を負担しなければならない。

ウ. 水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときは、当該対岸の土地の所有者の承諾を得なければ、その堰を対岸に付着させて設けることができない。

エ. 対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、水流地の所有者が設けた堰を使用することができ、この場合には、その利益を受ける割合に応じて、堰の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

オ. 水流地の所有者が対岸に堰を付着させて設けたことにより対岸の土地の所有者に損害が生じた場合であっても、水流地の所有者は、償金を支払うことを要しない。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

水流に関する相隣関係のうち、通水用工作物の使用及び堰の設置・使用については、民法221条及び222条に規定されている。

アは正しい。土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる(民法221条1項)。

イは誤りである。前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない(同条2項)。費用は「利益を受ける割合に応じて」分担するのであって、「全額」を負担するわけではない。

ウは誤りである。水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる(民法222条1項本文)。対岸の土地の所有者の承諾を要件とする規定はなく、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない(同項ただし書)という償金支払義務が課されるにとどまる。「承諾を得なければ…設けることができない」とする点が誤りである。

エは正しい。対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができ(同条2項)、前条(221条)第2項の規定は、この場合について準用される(同条3項)。したがって、対岸の土地の所有者が堰を使用する場合には、その利益を受ける割合に応じて堰の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

オは誤りである。前記ウのとおり、水流地の所有者が対岸に堰を付着させて設けたことによって対岸の土地の所有者に損害が生じたときは、水流地の所有者は、その損害に対して償金を支払わなければならない(民法222条1項ただし書)。「償金を支払うことを要しない」とする点が誤りである。

以上より、正しいものはア・エの2つである。221条(通水用工作物の使用・利益に応じた費用分担)と222条(堰の設置・使用及び償金、並びに222条3項による221条2項の準用)とは、いずれも水流をめぐる隣地間の利用調整を図る規定であり、越境した竹木の枝の切除(233条)や境界線付近の建築の制限(234条・235条)等と並ぶ相隣関係の一類型として、条文の対応関係を整理しておきたい。


問題:

下表の座標値で表される土地ABCD(閉合トラバース、A→B→C→Dの順に測点が存在する)の面積を、倍横距法(ダブル・メリディアン・ディスタンス法)により求めた場合、最も近いものはどれか。

測点 X座標(m) Y座標(m)
A 50.000 20.000
B 85.000 15.000
C 95.000 60.000
D 40.000 70.000

ア. 1,262.5 ㎡

イ. 2,137.5 ㎡

ウ. 2,387.5 ㎡

エ. 2,812.5 ㎡

オ. 4,275.0 ㎡

答え:

イ(2,137.5 ㎡)

解説:

倍横距法は、各測線についてX座標の差(緯距)とY座標の差(経距)を求めたうえで、各測線の「倍横距(DMD:ダブル・メリディアン・ディスタンス)」を順次算出し、これに当該測線の緯距を乗じた値の総和(倍面積)を2で除して面積を求める方法である。座標法(交差乗法)と数学的に同じ結果を与える計算方法であり、閉合トラバースの面積計算に用いられる。

各測線の緯距($\Delta X$)及び経距($\Delta Y$)を求めると、次のとおりである。

$$ \begin{aligned} A\to B:\quad &\Delta X_1=85.000-50.000=35.000\\ &\Delta Y_1=15.000-20.000=-5.000\\[4pt] B\to C:\quad &\Delta X_2=95.000-85.000=10.000\\ &\Delta Y_2=60.000-15.000=45.000\\[4pt] C\to D:\quad &\Delta X_3=40.000-95.000=-55.000\\ &\Delta Y_3=70.000-60.000=10.000\\[4pt] D\to A:\quad &\Delta X_4=50.000-40.000=10.000\\ &\Delta Y_4=20.000-70.000=-50.000 \end{aligned} $$

緯距の総和($35.000+10.000-55.000+10.000=0$)及び経距の総和($-5.000+45.000+10.000-50.000=0$)が、いずれも0となることを確認し、トラバースが閉合していることを検算する。

倍横距(DMD)は、最初の測線についてはその経距そのものを、2番目以降の測線については「直前の測線のDMD+直前の測線の経距+当該測線の経距」により順次算出する。

$$ \begin{aligned} DMD_1&=\Delta Y_1=-5.000\\[4pt] DMD_2&=DMD_1+\Delta Y_1+\Delta Y_2\\ &=-5.000-5.000+45.000=35.000\\[4pt] DMD_3&=DMD_2+\Delta Y_2+\Delta Y_3\\ &=35.000+45.000+10.000=90.000\\[4pt] DMD_4&=DMD_3+\Delta Y_3+\Delta Y_4\\ &=90.000+10.000-50.000=50.000 \end{aligned} $$

最後の測線のDMDにその経距を加えた値が0となること($DMD_4+\Delta Y_4=50.000-50.000=0$)を確認し、計算の検算とする。

各測線のDMDに、その測線の緯距を乗じた値の総和(倍面積)を求めると、

$$ \begin{aligned} DMD_1\times\Delta X_1&=-5.000\times35.000=-175.00\\ DMD_2\times\Delta X_2&=35.000\times10.000=350.00\\ DMD_3\times\Delta X_3&=90.000\times(-55.000)=-4{,}950.00\\ DMD_4\times\Delta X_4&=50.000\times10.000=500.00 \end{aligned} $$

総和は、$-175.00+350.00-4{,}950.00+500.00=-4{,}275.00$であり、倍面積の絶対値4,275.00を2で除すと、面積は

$$ \frac{4{,}275.00}{2}=2{,}137.5\ \text{㎡} $$

となる。したがって、正解はイである(座標法による検算値も2,137.5 ㎡で一致する)。

アの1,262.5 ㎡は、DMDの漸化式において「直前の測線の経距」を加算し忘れ、$DMD_i=DMD_{i-1}+\Delta Y_i$として計算してしまった誤りである。DMDの算出は、直前の測線と当該測線の経距を2回分加算する点に注意を要する。

ウの2,387.5 ㎡は、最後の測線(D→A)を計算に含めず、A→B、B→C、C→Dの3測線のみで倍面積を求めてしまった誤りである。閉合トラバースの面積計算では、必ず起点に戻る最後の測線まで含めて計算しなければならない。

エの2,812.5 ㎡は、C→D測線の緯距の符号を取り違え、$\Delta X_3=-55.000$を$+55.000$として計算してしまった誤りである。測線が「戻る」方向にある場合、緯距・経距の符号がマイナスになる点を見落としやすい。

オの4,275.0 ㎡は、倍面積を求めた段階で2による除算を失念した誤りである。倍横距法は、その名のとおり面積の2倍の値をいったん算出する手法であることから、最終的に2で除すことを忘れないようにしたい。

関数電卓(プログラム機能のないもの・2台まで)の持込みが認められている土地家屋調査士試験では、加減乗除のみで完結する本問のような計算は電卓の基本機能で正確に処理できる一方、DMDの漸化式や測線の順序を取り違えないよう、計算過程を表に整理しながら進めることが有効である。


問題:

建物図面及び各階平面図の内容に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 建物図面は、建物の敷地並びにその一階(区分建物にあっては、その地上の最低階)の位置及び形状を明確にするものでなければならない。

イ. 建物図面には、方位及び縮尺のほか、敷地の地番及びその形状、隣接地の地番を記録しなければならないが、附属建物があるときであっても、附属建物の符号までは記録することを要しない。

ウ. 建物図面は、五百分の一の縮尺により作成しなければならず、建物の状況その他の事情があっても、この縮尺以外の縮尺によることはできない。

エ. 各階平面図には、各階ごとの建物の周囲の長さ、床面積及びその求積方法を記録しなければならないが、その縮尺は二百五十分の一によることを原則とする。

オ. 各階平面図の縮尺と建物図面の縮尺は、いずれも二百五十分の一である。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

建物図面及び各階平面図の内容については、不動産登記規則82条及び83条に規定されている。

アは正しい。建物図面は、建物の敷地並びにその一階(区分建物にあっては、その地上の最低階)の位置及び形状を明確にするものでなければならない(不動産登記規則82条1項)。

イは誤りである。建物図面には、方位、縮尺、敷地の地番及びその形状、隣接地の地番並びに附属建物があるときは主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号を記録しなければならない(同条2項)。附属建物がある場合には、その符号も記録事項に含まれており、「符号までは記録することを要しない」とする点が誤りである。

ウは誤りである。建物図面は、五百分の一の縮尺により作成しなければならないが、建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない(同条3項)。「この縮尺以外の縮尺によることはできない」とする点が誤りであり、事情に応じた縮尺変更の余地が認められている。

エは正しい。各階平面図には、縮尺、各階の別、各階の平面の形状、一階の位置、各階ごとの建物の周囲の長さ、床面積及びその求積方法並びに附属建物があるときは主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号を記録しなければならず(不動産登記規則83条1項)、各階平面図は、二百五十分の一の縮尺により作成しなければならない(同条2項本文)。

オは誤りである。前記のとおり、各階平面図の縮尺は二百五十分の一を原則とするが(同条2項)、建物図面の縮尺は五百分の一を原則とする(同規則82条3項)ものであって、両者は異なる。「いずれも二百五十分の一である」とする点が誤りである。

以上より、正しいものはア・エの2つである。建物図面(82条・五百分の一)と各階平面図(83条・二百五十分の一)とは、いずれも「建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないとき」に例外が認められる点(ただし書)は共通するものの、原則となる縮尺自体は異なる点、また附属建物がある場合にはいずれの図面にも主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号の記録を要する点(82条2項・83条1項)を、あわせて押さえておきたい。


出題分野の振り分け

分野 主な論点 根拠条文
第1問 不動産登記法(表示) 建物の個数の認定・附属建物(効用上の一体性、所有者の意思、構造上区分された部分の取扱い) 不動産登記事務取扱手続準則78条1項・2項・3項
第2問 土地家屋調査士法 調査士及び調査士法人に対する懲戒(処分の種類、除斥期間、聴聞、調査義務) 土地家屋調査士法42条、43条1項、44条1項・2項・3項、45条の2
第3問 民法(相隣関係) 水流に関する相隣関係(通水用工作物の使用、堰の設置及び使用、費用分担、償金) 民法221条1項・2項、222条1項・2項・3項
第4問 測量計算 倍横距法(ダブル・メリディアン・ディスタンス法)による面積計算
第5問 作図・書式 建物図面及び各階平面図の内容(記録事項、原則的な縮尺、附属建物の符号) 不動産登記規則82条1項・2項・3項、83条1項・2項