問題:
時効に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 先順位抵当権の被担保債権が消滅すると後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって配当額が増加することがあり得るが、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
イ. 債務者が、消滅時効の完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効の援用をすることは許されない。
ウ. 詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅したとしても、それによって反射的な利益を受けるにすぎないから、その債権の消滅時効を援用することができない。
エ. 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない。
オ. 裁判上の請求がされた後に、その訴えが取り下げられたときは、時効の完成猶予の効力は初めから生じなかったことになり、時効は、訴えの取下げの前に完成すべきであった時に完成する。
答え:
誤っているものは、ウ・オの2つである。
解説:
ア 正しい。最判平成11年10月21日(民集53巻7号1190頁)の裁判要旨は、「後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。」としている。同判決は、平成29年改正前の民法145条所定の当事者として消滅時効を援用し得る者は権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるとしたうえで、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、配当額が増加することがあり得るが、「この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎない」と判示している。同判決は、抵当不動産の第三取得者が被担保債権の消滅時効を援用することができるとした最判昭和48年12月14日(民集27巻11号1586頁)との関係について、第三取得者は被担保債権が消滅すれば抵当権が消滅し所有権を全うすることができる関係にあるのに対し、後順位抵当権者は消滅時効を援用することができないとしても従前の順位に応じて弁済を受ける地位が害されることはないとして、両者の置かれた地位が異なるとしている。現行の民法145条は、「時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」と定め、第三取得者を明示している。
イ 正しい。最大判昭和41年4月20日(民集20巻4号702頁)の裁判要旨は、「債務者が、消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかつたときでも、その後その時効の援用をすることは許されないと解すべきである。」としている。同判決の裁判要旨は、あわせて、「消滅時効完成後に債務の承認をした場合において、そのことだけから、右承認はその時効が完成したことを知つてしたものであると推定することは許されない」ともしている。承認の事実だけから時効完成を知っていたと推定することはできないとしつつ、時効完成を知らなかったときでもその後の援用は許されないとしている、という二段の構成を押さえたい。なお、時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)。また、時効の完成前にされた権利の承認は、時効の更新事由であり、その時から時効が新たにその進行を始める(同法152条1項)。
ウ 誤り。最判平成10年6月22日(民集52巻4号1195頁)の裁判要旨は、「詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権の消滅時効を援用することができる。」としている。同判決は、詐害行為の受益者は、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、これが行使されると同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば右の利益喪失を免れることができる地位にあるから、右債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たるとし、これと見解を異にする大審院の判例(大判昭和3年11月8日・民集7巻980頁)を変更している。受益者の利益を「反射的な利益」と位置づける本肢は、アの後順位抵当権者についての判示と取り違えたものである。
エ 正しい。民法150条1項は、「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定め、同条2項は、「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。」と定めている。催告を繰り返すことによって時効の完成を先延ばしにすることはできない。これと似た規定として、同法151条3項は、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた権利についての協議を行う旨の合意は、時効の完成猶予の効力を有しないとし、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予されている間にされた催告についても同様とすると定めている。他方で、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意は、時効の完成猶予の効力を有する(同条2項本文)。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない(同項ただし書)。
オ 誤り。民法147条1項は、裁判上の請求(1号)等の事由がある場合には、「その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。」と定めている。訴えが取り下げられた場合は、確定判決等によって権利が確定することなく裁判上の請求という事由が終了した場合に当たるから、完成猶予の効力が初めから生じなかったことになるのではなく、取下げによる終了の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成しない。これに対し、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、その事由が終了した時から新たにその進行を始める(同条2項)。権利が確定しないまま終了した場合には、時効の更新の効力は生じず、6箇月の完成猶予にとどまる点を区別して押さえたい。
問題:
占有権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対しては、その承継人が侵奪の事実を知っていたときでなければ、提起することができない。
イ. 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならないが、工事により占有物に損害を生じた場合には、その工事に着手した時から1年を経過したときであっても、その工事が完成するまでの間は、これを提起することができる。
ウ. 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げないが、占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
エ. 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その敗訴の判決が確定した時から悪意の占有者とみなされる。
オ. 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、民法186条1項により所有の意思が推定されるから、その相続人の占有が所有の意思のないものであることを、取得時効の成立を争う相手方において証明しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウの2つである。
解説:
ア 正しい。民法200条1項は、「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。」と定め、同条2項は、「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」と定めている。特定承継人に対しては、侵奪の事実について悪意である場合に限って占有回収の訴えを提起することができる。なお、占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない(同法201条3項)。
イ 誤り。民法201条1項は、「占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。」と定めている。工事による損害の場合には、工事着手から1年の経過と工事の完成のいずれかがあれば、占有保持の訴えを提起することができなくなる。工事着手から1年を経過していれば、工事が未完成であっても提起することはできない。同条2項は、占有保全の訴えは妨害の危険の存する間は提起することができるとしたうえで、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは同条1項ただし書を準用している。
ウ 正しい。民法202条1項は、「占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。」と定め、同条2項は、「占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。」と定めている。占有の訴えと本権の訴えとは別個の訴えであり、一方の存在が他方の提起を妨げることはない。他方で、占有の訴えの審理においては、本権に関する理由を判断の基礎とすることはできない。
エ 誤り。民法189条1項は、「善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。」と定め、同条2項は、「善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。」と定めている。悪意の占有者とみなされるのは、判決確定の時からではなく、訴えの提起の時からである。悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う(同法190条1項)から、訴え提起後に収取した果実についてはこの義務を負うことになる。
オ 誤り。最判平成8年11月12日(民集50巻10号2591頁)の裁判要旨は、「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。」としている。民法186条1項は、「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」と定めているが、他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効を主張する場面では、所有の意思を基礎づける事情の証明責任は相続人の側にあるとされている。権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合の占有の性質の変更については、同法185条が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めることを要すると定めている。なお、占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができ(同法187条1項)、前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する(同条2項)。
問題:
相続の承認及び放棄に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 相続人が、相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続の放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算される。
イ. 甲が死亡し、その相続人である乙が甲からの相続について承認又は放棄をしないで死亡し、丙が乙の相続人となった場合には、甲からの相続に係る丙の熟慮期間は、丙が乙が甲の相続人であったことを知らなかったときであっても、丙が自己のために乙からの相続が開始したことを知った時から起算される。
ウ. 相続人が数人ある場合において、共同相続人の一人が単純承認をしたときであっても、他の共同相続人は、単独で限定承認をすることができる。
エ. 相続人が、相続財産に属する建物について、民法602条に定める期間を超えない賃貸をしたときは、単純承認をしたものとみなされる。
オ. 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。
解説:
ア 正しい。最判昭和59年4月27日(民集38巻6号698頁)の裁判要旨は、「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。」としている。民法915条1項本文は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定めており、同判決は、この起算点について、原則として相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が相続人となった事実を知った時をいうとしつつ、上記の場合に例外を認めたものである。この期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされる(同法921条2号)。なお、熟慮期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる(同法915条1項ただし書)。
イ 誤り。民法916条は、「相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」と定めている。最判令和元年8月9日(民集73巻3号293頁)の裁判要旨は、「民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう。」としている。同判決は、再転相続人である丙は、自己のために乙からの相続が開始したことを知ったからといって、当然に乙が甲の相続人であったことを知り得るわけではなく、乙が甲の相続人であったことを知らなければ甲からの相続について承認又は放棄のいずれかを選択することはできないとし、丙が乙から甲の相続人としての地位を承継したことを知らないにもかかわらず、乙からの相続が開始したことを知ったことをもって甲からの相続に係る熟慮期間が起算されるとすることは、同条の趣旨に反するとしている。また、同判決は、乙において自己が甲の相続人であることを知っていたか否かにかかわらず同条が適用されるとしている。
ウ 誤り。民法923条は、「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。」と定めている。共同相続人の一人が単純承認をしたときは、その者は単純承認を撤回することができない(同法919条1項)から、全員が共同して限定承認をすることができなくなり、他の共同相続人が単独で限定承認をすることもできない。これに対し、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる(同法939条)から、共同相続人の一部の者が相続の放棄をした場合には、923条にいう「共同相続人の全員」は、放棄をした者を除いた相続人の全員を指すと解される。
エ 誤り。民法921条1号は、相続人が単純承認をしたものとみなされる場合として、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」を掲げるが、そのただし書は、「保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」と定めている。民法602条に定める期間を超えない賃貸(いわゆる短期賃貸借)をしても、同号ただし書により、単純承認をしたものとはみなされない。なお、同条3号は、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときも、単純承認をしたものとみなすとしている(ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない〔同号ただし書〕)。
オ 正しい。民法940条1項は、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と定めている。同項は、放棄をした者が保存義務を負う場面を、放棄の時に相続財産に属する財産を「現に占有している」ときと定めている。同条2項は、この場合について、645条、646条並びに650条1項及び2項の規定を準用している。なお、相続の承認及び放棄は、915条1項の期間内でも、撤回することができない(同法919条1項)。
問題:
表題部所有者に関する登記に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 所有権の登記がない建物の表題部所有者Aが死亡した場合には、Aの相続人Bは、表題部所有者をAからBとする登記を申請することはできないが、表題部所有者の相続人として、当該建物について所有権の保存の登記を申請することができる。
イ. 区分建物でない建物の表題部所有者Aから当該建物を買い受けたCは、Aの承諾を証する情報を提供すれば、当該建物について所有権の保存の登記を申請することができる。
ウ. 土地の表題部所有者としてAが記録されているが、当該土地の真実の所有者はDである場合には、Aは、表題部所有者をDとする表題部所有者についての更正の登記を申請することができる。
エ. ウの場合において、Dが表題部所有者についての更正の登記を申請するときは、Dが所有権を有することを証する情報及びDの住所を証する情報のほか、Aの承諾を証するAが作成した情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければならない。
オ. 表題部所有者であるA及びBの持分がそれぞれ2分の1と記録されている土地について、Aが、自己の持分を3分の2、Bの持分を3分の1とする持分についての更正の登記を申請する場合には、Bの承諾を要しない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法32条は、「表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することができない。」と定めている。相続によって所有者が変わった場合も、表題部所有者を被相続人から相続人に変更する登記をすることはできない。他方、同法74条1項1号は、所有権の保存の登記を申請することができる者として「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」を掲げているから、Bは、表題部所有者の相続人として所有権の保存の登記を申請することができる。
イ 誤り。所有権の保存の登記を申請することができる者は、不動産登記法74条1項各号に掲げる者(表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者)に限られる。表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請することができるのは、同条2項により区分建物の場合に限られ(当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。同項後段)、区分建物でない建物にはこの規定の適用がない。区分建物でない建物の買主Cは、Aの承諾があっても自ら所有権の保存の登記を申請することはできず、同法32条のとおり、Aが所有権の保存の登記をした後、AからCへの所有権の移転の登記の手続をすることになる。
ウ 誤り。不動産登記法33条1項は、「不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができない。」と定めている。申請することができるのは真実の所有者Dであり、表題部所有者として記録されているAではない。なお、表題部所有者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、表題部所有者以外の者は申請することができない(同法31条)。31条は表題部所有者の氏名・住所の登記の話であり、33条は誰が表題部所有者かという登記の話であって、申請人が逆になる点を対比して押さえたい。
エ 正しい。不動産登記法33条2項は、「前項の場合において、当該不動産の所有者は、当該表題部所有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。」と定めている。不動産登記令別表2の項(表題部所有者についての更正の登記)は、添付情報として、「イ 当該表題部所有者となる者が所有権を有することを証する情報」、「ロ 当該表題部所有者となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」及び「ハ 表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げている。
オ 誤り。不動産登記法33条3項は、「不動産の表題部所有者である共有者の持分についての更正の登記は、当該共有者以外の者は、申請することができない。」と定め、同条4項は、「前項の更正の登記をする共有者は、当該更正の登記によってその持分を更正することとなる他の共有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。」と定めている。Aの持分を増やす更正の登記はBの持分を減らすことになるから、Bの承諾が必要である。不動産登記令別表3の項も、添付情報として、「持分を更正することとなる他の共有者の承諾を証する当該他の共有者が作成した情報又は当該他の共有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げている。
問題:
共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 登記官は、共用部分である旨の登記をするときは、当該建物が所有権の登記がない建物であれば表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録し、所有権の登記がある建物であれば権利に関する登記の抹消をしなければならない。
イ. 所有権の登記がある建物に賃借権の設定の登記がされている場合において、当該建物について共用部分である旨の登記を申請するときは、当該賃借権の登記名義人の承諾を証する情報を提供することを要しない。
ウ. 共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から1月以内に、共用部分である旨の登記の抹消を申請しなければならない。
エ. 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、附属の建物を共用部分とする規約を設定することができ、その者が当該附属の建物について共用部分である旨の登記を申請するときは、当該規約を設定したことを証する情報を提供する。
オ. 団地共用部分である旨の登記を申請する場合において、団地共用部分を共用すべき者の所有する建物が区分建物であるときは、当該区分建物の家屋番号を申請情報の内容としなければならない。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法58条4項は、「登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。」と定め、不動産登記規則141条は、その方法として、「所有権の登記がない建物にあっては表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録し、所有権の登記がある建物にあっては権利に関する登記の抹消をしなければならない。」と定めている。共用部分である旨の登記に係る建物の表示に関する登記の登記事項からは、所有者の氏名又は名称及び住所等(同法27条3号)と建物が共用部分である旨(同法44条1項6号)が除かれ、共用部分である建物が当該建物の属する一棟の建物以外の一棟の建物に属する建物の区分所有者の共用に供されるものであるときはその旨が登記事項とされている(同法58条1項1号)。なお、共用部分である旨の登記は、当該建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができない(同条2項)。
イ 誤り。不動産登記法58条3項は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該建物に「所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは」、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ申請することができないと定めている。ここにいう「所有権等」とは、同法50条括弧書により「所有権、地上権、永小作権、地役権及び採石権」をいい、この定義は同条を含む第四章第二節第三款(建物の表示に関する登記)に及ぶから、賃借権はこれに含まれない。不動産登記令別表18の項も、添付情報として、「所有権以外の権利に関する登記があるときは」、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人の承諾を証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報を掲げている(添付情報欄ロ)。したがって、賃借権の登記名義人の承諾を証する情報の提供を要する。
ウ 誤り。不動産登記法58条6項は、「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」と定めている。申請すべきものは共用部分である旨の登記の抹消ではなく、建物の表題登記である。規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者も、その所有権の取得の日から1月以内に当該建物の表題登記を申請しなければならない(同条7項)。この表題登記をするときは、登記官は、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所並びに所有者が二人以上であるときはその所有者ごとの持分並びに敷地権があるときはその内容を記録すれば足り、共用部分である旨の記録を抹消する記号を記録しなければならない(不動産登記規則143条)。添付情報は、規約を廃止したことを証する情報、表題部所有者となる者が所有権を有することを証する情報、その者の住所を証する情報等である(不動産登記令別表21の項添付情報欄イ〜ハ。このほか、同欄ニ・ホに敷地権に関する情報が定められている)。
エ 正しい。建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)4条2項前段は、「第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。」と定め、同法32条は、「最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。」と定めている。共用部分である旨の登記の添付情報として、不動産登記令別表18の項添付情報欄イは、「共用部分である旨を定めた規約を設定したことを証する情報」を掲げている。なお、区分所有法4条2項後段は、規約により共用部分とした場合には、「その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。」と定めている。
オ 誤り。不動産登記令別表19の項(団地共用部分である旨の登記)の申請情報欄は、団地共用部分を共用すべき者の所有する建物が区分建物でないときは当該建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番並びに当該建物の家屋番号を(イ)、区分建物であるときは、「当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番」及び「当該一棟の建物の構造及び床面積又はその名称」を(ロ)、それぞれ申請情報の内容とするものとしている。区分建物の場合に申請情報の内容となるのは、個々の区分建物の家屋番号ではなく、それが属する一棟の建物を特定する事項である。これは、団地共用部分である旨の登記の登記事項が「当該団地共用部分を共用すべき者の所有する建物(当該建物が区分建物であるときは、当該建物が属する一棟の建物)」とされていること(不動産登記法58条1項2号)に対応している。なお、団地共用部分について定める区分所有法67条は、一団地内の附属施設たる建物(1条に規定する建物の部分を含む。)は、同法66条において準用する30条1項の規約により団地共用部分とすることができるとし(1項前段)、一団地内の数棟の建物の全部を所有する者は、公正証書により、この規約を設定することができるとしている(2項)。
問題:
筆界特定に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定しているときは、筆界特定の申請は却下されるが、その判決が訴えを不適法として却下したものであるときは、そのことを理由として筆界特定の申請が却下されることはない。
イ. 対象土地の筆界について、既に筆界特定登記官による筆界特定がされているときは、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合であっても、筆界特定の申請は却下される。
ウ. 筆界特定の申請の取下げは、筆界特定書が作成された後は、筆界特定の申請人に対する筆界特定書の内容の通知が発送される前であっても、することができない。
エ. 筆界特定手続記録は、筆界特定書に記載され、又は記録された情報に限らず、その全部が永久に保存される。
オ. 筆界特定の申請を却下する決定は、登記官の処分とみなされる。また、筆界特定登記官は、筆界特定の申請があった旨の公告をした後に筆界特定の申請を却下したときは、その旨を公告しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・オの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法132条1項6号は、筆界特定の申請の却下事由として、「対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき。」を掲げている。訴えを不適法として却下した判決は筆界について判断していないから、括弧書により除かれている。
イ 誤り。不動産登記法132条1項7号は、「対象土地の筆界について、既に筆界特定登記官による筆界特定がされているとき。」を却下事由として掲げているが、そのただし書で「ただし、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除く。」としている。既に確定判決がある場合(同項6号)にはこのようなただし書がないのと対比して押さえたい。
ウ 誤り。不動産登記規則245条2項は、「筆界特定の申請の取下げは、法第百四十四条第一項の規定により申請人に対する通知を発送した後は、することができない。」と定めている。取下げの可否を分けるのは申請人に対する通知の発送であり、筆界特定書の作成の時点ではない。筆界特定書が作成された後であっても、通知の発送前であれば取下げをすることができる。取下げは、筆界特定電子申請の場合は電子情報処理組織を使用して取り下げる旨の情報を提供する方法、筆界特定書面申請の場合は取り下げる旨の情報を記載した書面を提出する方法によってしなければならない(同条1項)。また、筆界特定登記官は、不動産登記法133条1項の規定による公告をした後に取下げがあったときはその旨を公告しなければならず(同規則245条4項)、同項の規定による通知をした後に取下げがあったときは、その旨を当該通知に係る関係人に通知しなければならない(同条5項)。
エ 誤り。不動産登記規則235条1項は、筆界特定手続記録の保存期間について、「筆界特定書に記載され、又は記録された情報」は永久(1号)、「筆界特定書以外の筆界特定手続記録に記載され、又は記録された情報」は「対象土地の所在地を管轄する登記所が第二百三十三条の規定により筆界特定手続記録の送付を受けた年の翌年から三十年間」(2号)と定めている。筆界特定手続記録は、対象土地の所在地を管轄する登記所において保管される(不動産登記法145条)。なお、何人も、手数料を納付して筆界特定手続記録の閲覧を請求することができるが、筆界特定書等以外のものについては、請求人が利害関係を有する部分に限られる(同法149条2項)。
オ 正しい。不動産登記法132条2項は、「前項の規定による筆界特定の申請の却下は、登記官の処分とみなす。」と定めている。土地家屋調査士法3条1項4号が、筆界特定の手続として「筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続」を掲げているのは、この規定を前提とするものである。却下は、理由を付した決定でするものとされ(不動産登記法132条1項柱書)、筆界特定登記官は決定書を作成して申請人に交付しなければならない(不動産登記規則244条1項)。また、同条4項前段は、「筆界特定登記官は、法第百三十三条第一項の規定による公告をした後に筆界特定の申請を却下したときは、その旨を公告しなければならない。」と定めている。
問題:
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)となる資格及び土地家屋調査士名簿の登録に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して10年以上になる者は、そのことのみをもって、調査士となる資格を有する。
イ. 公務員であって懲戒免職の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者は、調査士となる資格を有しない。
ウ. 測量法の規定に違反し罰金以上の刑に処せられたことにより、同法52条2号の規定により測量士又は測量士補の登録を消除された者は、その処分の日から3年を経過しない間は、調査士となる資格を有しない。
エ. 登録の申請をした者は、その申請の日から3月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して審査請求をすることができる。
オ. 日本土地家屋調査士会連合会は、調査士の登録をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもって公告しなければならないが、調査士の登録の取消しをしたときは、官報による公告を要しない。
答え:
誤っているものは、ア・オの2つである。
解説:
ア 誤り。土地家屋調査士法4条2号は、調査士となる資格を有する者として、「法務局又は地方法務局において不動産の表示に関する登記の事務に従事した期間が通算して十年以上になる者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第六号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認めたもの」を掲げている。従事期間の要件に加えて法務大臣の認定が必要である。また、法務大臣の認定の対象は3条1項1号から6号までの業務に必要な知識及び技能であり、同項7号・8号の民間紛争解決手続代理関係業務は含まれていない。
イ 正しい。土地家屋調査士法5条4号は、「公務員であつて懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者」を、調査士となる資格を有しない者として掲げている。同条は、このほか、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者(1号)、未成年者(2号)、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(3号)、同法42条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者(5号)を掲げている。
ウ 正しい。土地家屋調査士法5条6号は、「測量法(昭和二十四年法律第百八十八号)第五十二条第二号の規定により、登録の抹消の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者」を掲げている。測量法52条は、国土地理院の長は、測量士又は測量士補の登録を受けた者が各号のいずれかに該当する場合にはその登録を消除しなければならないとし、その2号で「この法律の規定に違反し罰金以上の刑に処せられたとき。」を掲げている(測量法の見出し・本文は「消除」、土地家屋調査士法5条6号は「登録の抹消の処分」という語を用いている)。土地家屋調査士法5条は、他の資格に関する処分として、このほか、建築士法10条の規定により免許の取消しの処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者(7号)及び司法書士法47条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者(8号)を掲げている。欠格事由に該当する者は「調査士となる資格を有しない」から、登録の申請があっても、日本土地家屋調査士会連合会(以下「調査士会連合会」という。)は、同法10条1項により、その登録を拒否しなければならない。
エ 正しい。土地家屋調査士法12条2項は、「第九条第一項の規定による登録の申請をした者は、その申請の日から三月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して審査請求をすることができる。」と定めている。登録を拒否された者も、当該処分に不服があるときは、法務大臣に対して審査請求をすることができ(同条1項)、この場合、法務大臣は、行政不服審査法25条2項及び3項並びに46条2項の規定の適用については、調査士会連合会の上級行政庁とみなされる(同条3項)。なお、登録の取消し(同法15条1項・16条1項)については、同法17条が12条1項及び3項を準用しているが、2項(申請後3月の不作為による拒否の擬制)は準用の対象となっていない。
オ 誤り。土地家屋調査士法18条は、「調査士会連合会は、調査士の登録をしたとき、及びその登録の取消しをしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもつて公告しなければならない。」と定めている。登録の取消しをしたときも、官報による公告を要する。
問題:
表示に関する登記の申請における登記識別情報の提供並びに申請書への記名押印及び印鑑に関する証明書の添付に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、申請人はいずれも自然人とし、申請書又は委任状について公証人等の認証を受ける場合は考慮しないものとする。
ア. 所有権の登記名義人をいずれもAとする甲土地及び乙土地の合筆の登記を申請する場合には、甲土地又は乙土地のいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足りる。
イ. 所有権の登記がある土地の分筆の登記を所有権の登記名義人が申請する場合には、当該所有権の登記名義人の登記識別情報を提供しなければならない。
ウ. 所有権の登記名義人をAとする甲建物と所有権の登記名義人をBとする乙建物とが合体して一個の建物となった場合において、合体による登記等を申請するときは、甲建物又は乙建物のいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足りる。
エ. 所有権の登記がない甲土地及び乙土地(表題部所有者はいずれもA)の合筆の登記をAが自ら書面により申請する場合には、Aが申請書に署名したときは、申請書への記名押印を要せず、印鑑に関する証明書の添付も要しない。
オ. 所有権の登記がある甲土地及び乙土地(所有権の登記名義人はいずれもA)の合筆の登記をAが自ら書面により申請する場合には、Aは、申請書に記名押印し、作成後3月以内の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法22条本文は、登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請情報と併せて登記名義人の登記識別情報を提供しなければならないとしており、これを受けた不動産登記令8条1項は、その登記として、「所有権の登記がある土地の合筆の登記」(1号)、「所有権の登記がある建物の合体による登記等」(2号)及び「所有権の登記がある建物の合併の登記」(3号)を掲げている。そして、同条2項1号は、所有権の登記がある土地の合筆の登記については、「当該合筆に係る土地のうちいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報」を提供すれば足りるとしている。なお、所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記はすることができない(不動産登記法41条5号)。
イ 誤り。不動産登記令8条1項は、表示に関する登記としては合筆の登記、合体による登記等及び建物の合併の登記を掲げるのみで、分筆の登記は掲げていない。したがって、所有権の登記がある土地の分筆の登記を申請する場合であっても、登記識別情報を提供することを要しない。また、分筆の登記は後記エ・オで扱う不動産登記規則47条3号イ(6)の登記に含まれておらず、分筆の登記を申請する所有権の登記名義人は同号イからホまでに掲げる者のいずれにも当たらないから、所有権の登記名義人が申請する場合であっても、申請書に署名したときは記名押印を要せず(同号)、印鑑に関する証明書の添付も要しない(同規則48条1項5号)。
ウ 誤り。不動産登記令8条2項2号は、いずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足りる場合を、「登記名義人が同一である所有権の登記がある建物の合体による登記等」に限定している。合体前の建物の所有権の登記名義人が異なる場合には、この特則の適用はなく、同条1項2号及び不動産登記法22条本文の原則どおり、A及びBの登記識別情報をそれぞれ提供しなければならない。これに対し、合筆の登記(令8条2項1号)及び建物の合併の登記(同項3号)には「登記名義人が同一である」との限定が付されていないが、これらの登記は、所有権の登記名義人が相互に異なる場合にはすることができない(不動産登記法41条3号、56条2号)。
エ 正しい。不動産登記令16条1項は、申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならないとし、不動産登記規則47条3号は、その場合の一つとして、申請人が同号イからホまでに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、申請人等が申請書に署名した場合を掲げている。同号イは「所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの」とし、その(6)で「合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記」を掲げているが、所有権の登記がない土地の表題部所有者Aは所有権の登記名義人ではないから、同号イには当たらない(「表題部所有者」は所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に所有者として記録されている者をいい、「登記名義人」は登記記録の権利部に権利者として記録されている者をいう。不動産登記法2条10号・11号)。また、所有権の登記がない土地の合筆の登記によってAが権利部に権利者として記録されるものではないから、同号ホ(法21条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人)にも当たらず、同号ロからニまでにも当たらない。所有権の登記がない土地の合筆の登記は、登記識別情報の提供を要する登記(不動産登記令8条1項1号)にも当たらない。そして、不動産登記規則48条1項5号は、印鑑に関する証明書の添付を要しない場合として、「申請人が前条第三号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合(前号に掲げる場合を除く。)」を掲げている。したがって、Aは、申請書に署名すれば記名押印を要せず、印鑑に関する証明書の添付も要しない。
オ 正しい。所有権の登記名義人Aが合筆の登記を申請する場合は、不動産登記規則47条3号イ(6)に当たるから、署名による記名押印の省略(同号)の適用がなく、Aは申請書に記名押印しなければならない(不動産登記令16条1項)。記名押印した者の印鑑に関する証明書は、法務省令で定める場合を除き添付しなければならず(同条2項)、作成後3月以内のものでなければならない(同条3項)。印鑑に関する証明書の添付を要しない場合を定める同規則48条1項のうち、4号は「申請人が前条第三号ホに掲げる者に該当する場合(同号イ(6)に掲げる者に該当する場合を除く。)」として合筆の登記等を申請する所有権の登記名義人を除外しており、5号は申請人が47条3号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合に限られるから、いずれも適用されない。なお、委任による代理人によって申請する場合には、代理人の権限を証する情報を記載した書面(委任状)についても、同様の構造で記名押印及び印鑑に関する証明書の添付の要否が定められている(令18条1項・2項、規則49条1項2号・2項4号)。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・時効) | 時効の援用権者(後順位抵当権者・詐害行為の受益者)、時効完成後の債務の承認、催告と再度の催告、裁判上の請求の取下げと完成猶予 | 民法145条、146条、147条、150条、152条 |
| 第2問 | 民法(物権・占有権) | 占有回収の訴えと特定承継人、占有保持の訴えの提起期間、占有の訴えと本権の訴えの関係、本権の訴えに敗訴した善意占有者、他主占有者の相続人と所有の意思 | 民法186条、189条、200条、201条、202条 |
| 第3問 | 民法(相続・承認及び放棄) | 熟慮期間の起算点、再転相続と熟慮期間、共同相続人の限定承認、法定単純承認と短期賃貸借、相続放棄をした者の保存義務 | 民法602条、915条、916条、921条、923条、940条 |
| 第4問 | 不動産登記法(表示に関する登記・表題部所有者) | 表題部所有者の変更の登記の禁止と相続人による所有権の保存の登記、区分建物以外の建物の買主による所有権の保存の登記の可否、表題部所有者についての更正の登記の申請人と表題部所有者の承諾、表題部所有者である共有者の持分の更正と他の共有者の承諾、表題部所有者の氏名等の変更・更正の登記との対比 | 不動産登記法31条、32条、33条1項〜4項、74条1項1号・2項、不動産登記令別表2の項・3の項 |
| 第5問 | 不動産登記法(表示に関する登記・建物・区分建物) | 共用部分である旨の登記の際の表題部所有者の登記・権利に関する登記の職権抹消の方法、承諾を要する権利の範囲(「所有権等」の定義と賃借権)、規約廃止による建物の表題登記の申請義務、公正証書による規約の設定と規約設定証明情報、団地共用部分である旨の登記の申請情報(区分建物の場合は一棟の建物を特定する事項) | 不動産登記法27条3号、44条1項6号、50条、58条1項〜4項・6項・7項、不動産登記令別表18の項・19の項・21の項、不動産登記規則141条、143条、区分所有法4条2項、32条、66条、67条1項・2項 |
| 第6問 | 筆界特定 | 確定判決がある場合の却下と不適法却下判決の除外、既に筆界特定がある場合の却下と特段の必要による例外、申請の取下げの時的限界(通知の発送)、筆界特定手続記録の保存期間と保管・閲覧、却下の処分性と却下の公告 | 不動産登記法132条1項6号・7号・2項、145条、149条2項、不動産登記規則235条1項、244条1項・4項、245条1項・2項・4項・5項、土地家屋調査士法3条1項4号 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(資格・登録) | 表示に関する登記の事務の従事経験者の資格と法務大臣の認定、欠格事由(懲戒免職・測量法の登録抹消等と3年)、登録の申請後3月の不作為と審査請求、登録の取消しへの準用の範囲、登録及び登録の取消しの官報公告 | 土地家屋調査士法4条、5条、10条1項、12条1項〜3項、17条、18条 |
| 第8問 | 不動産登記令・不動産登記規則(表示に関する登記の申請) | 登記識別情報の提供を要する表示に関する登記(合筆・合体・合併)と提供すれば足りる登記識別情報、分筆の登記との対比、登記名義人が異なる建物の合体、所有権の登記の有無による申請書への記名押印・印鑑に関する証明書の要否、委任状の扱い | 不動産登記法2条10号・11号、21条、22条、41条3号・5号、56条2号、不動産登記令8条1項・2項、16条1項〜3項、18条1項・2項、不動産登記規則47条、48条1項、49条1項・2項 |