この記事の要点
- 根抵当権の債務者(お金を借りていた人)が亡くなった場合、引き続き同じ根抵当権の「枠」で借入れを続けるには、相続開始から6か月以内に「指定債務者の合意」の登記をする必要があります(民法398条の8第2項・第4項)
- 登記には順番があり、まず「相続による債務者の変更」の登記、そのあとに「合意」の登記です(不動産登記法92条)。所有者も亡くなっている場合は、先に相続登記で名義を移しておく段取りも考えておく必要があります
- 6か月は、亡くなったことを知った日ではなく、亡くなった日(相続開始)を基準に数えます。相続放棄の「知った時から3か月」とは起点が違います
- 合意の登記をしないまま6か月を過ぎると、元本は相続開始の時に確定したものとみなされ、その後の新しい借入れはこの根抵当権では担保されなくなります。融資を続けられるかどうかは金融機関に確認が必要です
- 登録免許税は、債務者の変更・合意の登記それぞれについて不動産1個につき1,000円です。早めにお近くの司法書士にご相談ください
事業用の不動産に根抵当権がついたまま、借りていた本人が亡くなった──。このとき結論として押さえておきたいのは、何もしないまま6か月が過ぎると、根抵当権の「枠」が締め切られるということです。枠を引き継いで借入れを続けたいのであれば、相続開始から6か月以内に、金融機関と不動産の所有者との間で「これからは相続人の誰の借入れを担保するか」を決め、その合意を登記する必要があります。
根抵当権そのもののしくみ(極度額の「枠」、元本確定とは何か)は「根抵当権とは?──普通抵当権との違いと、事業融資での使われ方」で紹介しています。この記事では、その中で触れた「相続が起きたら6か月」のルールについて、登記の順番・期間の数え方・期間を過ぎたときの扱いに絞って整理します。
なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の法令に基づく一般的な解説です。
まず確認したい3つのこと
6か月のルールが当てはまるかどうかは、次の3点で見当をつけます。
1. 登記されているのは「根抵当権」か
登記簿(登記事項証明書)の乙区に「極度額」「債権の範囲」と書かれていれば根抵当権です。「債権額」と書かれていれば普通の抵当権で、6か月のルールはありません。普通の抵当権の場合の手続きは「抵当権付きの不動産を相続したとき──団信で完済されない場合の「債務者変更登記」」をご覧ください。乙区の読み方は「登記簿の『乙区』を読み解く」で整理しています。
2. 亡くなったのは「債務者」か
6か月のルール(民法398条の8)は、根抵当権の債務者または根抵当権者(お金を貸している側)について相続が始まったときのルールです。
- 債務者が会社(法人)の場合、社長が亡くなっても会社そのものに相続は起きないため、このルールの対象にはなりません
- 不動産の所有者(根抵当権設定者)だけが亡くなり、債務者は別の人という場合も、このルールの対象ではありません。この場合は、不動産の名義を相続人に移す相続登記が必要になります
3. 元本がすでに確定していないか
このルールは「元本の確定前」に相続が始まった場合のものです。あらかじめ定めた確定期日がすでに過ぎている場合や、競売・破産などの確定事由がすでに生じている場合(民法398条の20)は、相続の前に枠が締め切られているため、話の前提が変わります。登記簿の乙区に確定期日の定めが記録されていないかも確認しておきましょう。
6か月以内に必要な「指定債務者の合意」とは
民法398条の8第2項は、元本の確定前に債務者について相続が始まったとき、根抵当権は次の2つを担保すると定めています。
- 相続開始の時にすでにある債務(亡くなった方の借入れの残り)
- 根抵当権者と根抵当権設定者との合意で定めた相続人が、相続の開始後に負担する債務
この「合意で定めた相続人」が、一般に指定債務者と呼ばれる人です。たとえば、亡くなった父親の事業を長男が継ぐ場合に、金融機関と不動産の所有者が「これからは長男の借入れをこの根抵当権で担保する」と合意するイメージです。
合意の当事者は、根抵当権者(金融機関など)と根抵当権設定者(不動産の所有者)です。この合意をするときに、後順位の抵当権者など第三者の承諾は要らないとされています(民法398条の8第3項による398条の4第2項の準用)。
そして同条第4項は、この合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は相続開始の時に確定したものとみなすと定めています。合意をしただけでは足りず、6か月以内に登記まで済ませる必要がある点が大切です。
登記の順番──「債務者の変更」が先、「合意」が後
不動産登記法92条は、「指定債務者の合意」の登記は、その相続による債務者の変更の登記をした後でなければ、することができないと定めています。所有者も亡くなっている場合を含めると、流れはおおむね次のとおりです。
| 順番 | 登記 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 相続登記(所有者も亡くなった場合) | 不動産の名義を、亡くなった方から相続人に移す |
| ② | 相続による債務者の変更の登記 | 根抵当権の「債務者」を、亡くなった方から相続人に書き換える |
| ③ | 指定債務者の合意の登記 | 相続後の借入れを担保する相続人(指定債務者)を記録する |
①が問題になるのは、債務者と所有者が同じ人(自宅や事業用の土地を担保に、本人が借りていた場合など)だったときです。合意の当事者となる根抵当権設定者は不動産の所有者なので、所有者が亡くなった後に合意をするのは、その不動産を相続した人です。一方、登記の申請では、申請書に書いた登記義務者(登記によって直接に不利益を受ける登記名義人)の氏名・住所が登記記録と合っていないと、申請は却下されます(不動産登記法25条7号)。登記記録上の所有者が亡くなった方のままでは手続きを進めにくいため、先に相続登記で名義を移しておく段取りが考えられます。相続登記をどの段階で済ませるかを含め、具体的な順序はお近くの司法書士に確認しておくと安心です。
②と③は、金融機関(根抵当権者)と不動産の所有者が共同で申請するのが原則です(不動産登記法60条)。②で誰を債務者として記録するかは、相続人どうしの話し合い(遺産分割)だけで決まるものではなく、金融機関(債権者)との調整も関わるため、個別の確認が必要です。
枠を引き継ぐ場合、②と③はどちらも6か月以内に終える必要があります。③は②の後でなければできないので、②に手間取ると、その分だけ③の時間がなくなります。
6か月はいつからいつまでか
起点は「亡くなった日」
相続は死亡によって開始します(民法882条)。民法398条の8第4項は「相続の開始後六箇月以内」としているので、6か月は亡くなった日を基準に数えます。
相続に関係するほかの期限と比べると、違いがよくわかります。
| 期限 | 長さ | いつから数えるか |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認(民法915条1項) | 3か月 | 自分のために相続の開始があったことを知った時から |
| 相続登記の申請義務(不動産登記法76条の2第1項) | 3年 | 相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から |
| 指定債務者の合意の登記(民法398条の8第4項) | 6か月 | 相続の開始(亡くなった日)から |
相続放棄や相続登記の期限は「知った時」が起点ですが、根抵当権の6か月にはそうした定めがありません。亡くなったことを知るのが遅れた相続人がいても、期限は亡くなった日から進んでいきます。
数え方の例
民法の期間の数え方の原則(民法138条・140条・143条)に従うと、初日(亡くなった日)は数えず翌日から起算し、6か月後の応当日(起算日と同じ日付の日)の前日で期間が終わります。
- 例:4月10日に亡くなった場合 → 4月11日から数えて、10月10日までに登記をする
なお、期間の末日が日曜日や祝日などに当たる場合については民法142条に定めがありますが、この期限で末日が後ろにずれるかどうかを当てにせず、末日より前に申請を終えておくのが安全です。
また、②③の登記には金融機関との調整や書類の準備が必要です。末日を前提に段取りを組むのではなく、相続が分かった時点ですぐに動き出すことが大切です。
相続放棄・遺産分割と時期が重なる
亡くなってから6か月の間には、相続放棄をするかどうかの判断(知った時から3か月)や、遺産分割の話し合いも進みます。「遺産分割がまとまってから考えよう」と後回しにしていても、6か月の期限は止まりません。事業を継ぐ相続人が決まっている場合は、早い段階で金融機関に連絡し、登記の段取りを相談しておくことが大切です。
6か月を過ぎたら──元本の確定とその後
「相続開始の時」にさかのぼって確定する
6か月以内に合意の登記をしなかった場合、担保すべき元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(民法398条の8第4項)。6か月が過ぎた日に確定するのではなく、亡くなった時点にさかのぼって枠が締め切られる、という扱いです。
確定すると、根抵当権が担保するのは、相続開始の時点で残っていた元本と、その利息・遅延損害金などに限られ、極度額を上限として担保されます(民法398条の3第1項)。
根抵当権が消えるわけではない
注意したいのは、元本が確定しても根抵当権そのものがすぐに消えるわけではないという点です。相続開始の時点で借入れが残っていれば、その残りは相続人に引き継がれ(民法896条)、根抵当権は確定した元本を担保する権利として残ります。
変わるのは、相続人が相続後に新しく借りたお金は、この根抵当権では担保されないという点です。事業を継いで運転資金の借入れを続けたい場合、同じ枠ではもう借りられないということになります。新たな担保の設定が必要になるか、どのような条件で融資を続けられるかは、金融機関の判断によるため、金融機関に確認してください。
確定後の手続き
元本が確定した後の根抵当権は、普通の抵当権に近い扱いになります。確定後には、所有者の側から極度額を減らすよう求める「減額請求」(民法398条の21)や、一定の場合に極度額に相当する金額を払って根抵当権を消す「消滅請求」(民法398条の22)といった、確定後に使える手続きもあります。残った借入れを返済し終えれば、根抵当権の抹消の登記に進むことになります。確定前後でできることの違いは「根抵当権とは?」で整理しています。
確定後に、残った借入れを相続人の誰が引き継ぐかに応じてどのような登記が必要になるかは、事案ごとに異なります。具体的な進め方は、お近くの司法書士にご確認ください。
お金を貸している側(根抵当権者)が亡くなった場合
個人が貸主(根抵当権者)になっている場合には、その貸主が亡くなることもあります。この場合も同じく6か月のルールがあり、根抵当権は、相続開始の時にある債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意で定めた相続人が相続開始後に取得する債権を担保します(民法398条の8第1項)。
登記の順番も同様で、まず相続による根抵当権の移転の登記をし、その後に合意の登記をします(不動産登記法92条)。6か月以内に合意の登記をしなければ、元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(民法398条の8第4項)。
登記の外側の問題は、それぞれの相談先へ
根抵当権の相続では、登記以外にも決めなければならないことがあります。
- 融資を続けられるか・新しい担保が必要か:金融機関の判断です。まず取引のある金融機関に確認してください
- 相続人の間で、誰が借入れを引き継ぐかで争いになっている場合:弁護士にご相談ください
- 相続開始の時に残っていた借入れが相続税の計算でどう扱われるか(債務控除):税理士にご確認ください
まとめ
根抵当権の債務者が亡くなったとき、同じ根抵当権の枠で借入れを続けるには、相続開始から6か月以内に、②相続による債務者の変更の登記、③指定債務者の合意の登記を、この順番で済ませる必要があります。所有者も亡くなっている場合は、①相続登記を先に済ませておく段取りも考えておきます。6か月は亡くなった日を基準に数え、相続人が亡くなったことを知った日は関係ありません。期間を過ぎると元本は相続開始の時に確定したものとみなされ、相続後の新しい借入れは担保されなくなります。
金融機関との調整や書類の準備には時間がかかります。事業用の不動産に根抵当権がついている方が亡くなったら、できるだけ早く金融機関に連絡し、登記の段取りはお近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 指定債務者の合意の登記には、どのくらい費用がかかりますか?
登録免許税は、相続による債務者の変更の登記と、合意の登記のそれぞれについて、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一1号(14))。たとえば土地1筆と建物1棟なら、2つの登記で合計4,000円になります。所有者も亡くなっている場合は、別に相続登記の登録免許税(原則として不動産の価額の1,000分の4)がかかります。司法書士に依頼する場合は、これに報酬が加わります。
Q. 6か月を過ぎてしまったら、もう取り返しはつかないのですか?
6か月以内に合意の登記をしなければ、元本は相続開始の時に確定したものとみなされます。ただし、亡くなった時点で借入れが残っていれば、根抵当権はその残りを担保する権利として残ります。困るのは、相続後の新しい借入れがこの根抵当権では担保されない点です。融資を続けるために何が必要かは金融機関に確認し、登記の進め方はお近くの司法書士にご相談ください。
Q. 自分たちだけで手続きできますか?どこに相談すればよいですか?
合意の当事者は金融機関(根抵当権者)と不動産の所有者で、登記も原則として両者の共同申請です。まずは取引のある金融機関に連絡し、相続が起きたことを伝えましょう。登記の順番や期限の管理、相続登記を含めた段取りは、お近くの司法書士にご相談ください。相続人の間で借入れの引き継ぎについて争いがある場合は弁護士、相続税の扱いは税理士が相談先です。
【さらに深掘り】指定債務者の合意と元本確定──登記手続を条文から整理する
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文では手続きの流れを中心に紹介しました。ここでは、不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則と民法の条文から読み取れる、手続上のポイントを整理します。
合意の登記は「付記登記」でされる
不動産登記規則3条は、付記登記によってする登記を定めています。その2号は「法第66条に規定する場合における権利の変更の登記又は更正の登記」として、いくつかの登記を例に挙げており、その中に「民法398条の8第1項又は第2項の合意の登記」が含まれています(同号ロ)。登記記録の上では、合意の内容は根抵当権の登記に付け加える形で記録されることになります。
法66条は、権利の変更の登記を付記登記でするには、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるか、そうした第三者がいないことが必要だとしています。これに対して合意そのものは、本文で触れたとおり、後順位の抵当権者などの承諾が要らないとされています(民法398条の8第3項による398条の4第2項の準用)。規則3条2号ロが合意の登記を付記登記によるものとして掲げているのは、この点と整合するものと理解できます。登録免許税は、付記登記・変更の登記として不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一1号(14))。
申請に添える主な情報──根抵当権は「印鑑証明書を省ける例外」から外れている
②の債務者の変更の登記と③の合意の登記は、いずれも権利に関する登記の共同申請です。共通して、次の情報を申請に添えるのが基本になります。
- 登記原因を証する情報(不動産登記法61条)
- 登記義務者の登記識別情報(同法22条。提供できないことに正当な理由がある場合の例外があります)
- 申請書や委任状に記名押印した人の印鑑証明書(不動産登記令16条2項・18条2項。作成後3か月以内のものに限られます=同令16条3項・18条3項)
このうち印鑑証明書については、法務省令で定める場合には添付を要しないとされ(同令16条2項・18条2項)、その例外が不動産登記規則48条(申請書)・49条2項(委任状)に置かれています。どちらも、申請書に記名押印を要しない場合を定めた規則47条3号の区分を引いているので、注目したいのは規則47条3号イ(1)の書き方です。
同号イ(1)は、所有権の登記名義人が「登記義務者となる権利に関する登記」を申請する場合を挙げたうえで、そこから「担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記」を除いています。つまり、
- 普通の抵当権の債務者の変更:所有者が登記識別情報を提供して申請する限り、所有者の印鑑証明書を省ける側に置かれている(規則47条3号イ(1)の括弧書き・48条5号)。登記識別情報を提供できずに申請するときは、同号ロに当たるため省けない
- 根抵当権の債務者の変更:この除外から外されているため、所有者が登記義務者として申請するときは、登記識別情報を提供するかどうかにかかわらず、原則どおり印鑑証明書が必要な側に残る
という違いがあります。普通の抵当権の債務者変更の感覚で書類を準備すると不足が出やすい点なので、注意しておきたいところです。所有者も亡くなっていて先に相続登記をした場合は、②③で所有者の側として申請するのは、名義を引き継いだ相続人です。
誰を「債務者」として登記するか──条文から言えること
②で誰を債務者として記録し、③で誰を指定債務者とするかは、相続の効果と金融機関との合意内容によって組み立てが変わります。前提となる条文は次のとおりです。
- 各共同相続人は、その相続分に応じて亡くなった方の権利義務を承継します(民法899条)
- 遺言で相続分の指定がされていても、金融機関などの債権者は、法定相続分に応じて各相続人に権利を行使できます。ただし、債権者が相続人の一人に対して、指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは別です(民法902条の2)
- 元本の確定前に免責的債務引受があったときは、債権者は、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができません(民法398条の7第3項)
最後の点は、普通の抵当権との大きな違いです。普通の抵当権では、相続人の一人が借入れを引き継ぐ場合に「相続」と「免責的債務引受」の2段階で債務者を書き換える流れが紹介されることがありますが(「抵当権付きの不動産を相続したとき」参照)、根抵当権の元本確定前には民法398条の7第3項があるため、同じ発想をそのまま当てはめることはできません。
また、申請情報の内容は登記原因を証する情報の内容と合致している必要があります(不動産登記法25条8号)。登記原因を証する情報は金融機関との合意の内容を反映して作ることになるため、②③の書類を整えるのは、金融機関との調整内容が固まってからになります。融資を続ける条件や新しい担保の要否は金融機関に確認し、相続人の間で借入れの引き継ぎに争いがある場合は弁護士に、相続開始時の借入れの相続税上の扱い(債務控除)は税理士にご相談ください。
所有者も亡くなっている場合の段取りを条文から見る
本文で触れた①の相続登記について、関係する条文を整理しておきます。
- 申請情報の内容である登記義務者の氏名・住所が登記記録と合致しないときは、申請は却下されます(不動産登記法25条7号)
- 登記義務者などが亡くなった場合に相続人が申請できる仕組み(同法62条)は、亡くなった方自身が申請人となることができた登記を、相続人が代わって申請するためのものです
指定債務者の合意は、根抵当権者と根抵当権設定者とが結ぶものです(民法398条の8第2項)。所有者が亡くなった後にこの合意をする場合、合意をするのは亡くなった所有者自身ではなく、不動産を相続した人です。そのため、62条の仕組みでそのまま申請する場面とは性質が異なると考えられ、名義を引き継いだ相続人が登記義務者として申請できるよう、先に相続登記を済ませておく段取りが考えられます。具体的な順序は、事案に応じてお近くの司法書士に確認してください。
6か月を過ぎた後の「元本確定の登記」
民法398条の8第4項は、合意について6か月以内に「登記をしないときは」元本は相続開始の時に確定したもの「とみなす」と定めています。条文上、確定の効果は、期間内に合意の登記をしなかったことによって生じ、確定の登記がされることは要件として書かれていません。
確定の登記を申請する場合について、不動産登記法93条は、根抵当権の登記名義人(根抵当権者)が単独で申請できる場面を、次の確定に限って定めています。
- 民法398条の19第2項(根抵当権者からの確定請求)による確定
- 民法398条の20第1項3号(競売手続の開始などを知った時から2週間の経過)・4号(債務者または設定者の破産手続開始の決定)による確定
398条の8第4項による確定はここに挙げられていません。そのため、この確定について確定の登記をする場合には、この単独申請の特例は使えず、権利に関する登記の原則である共同申請(不動産登記法60条)によることになります。確定後に残った借入れをどう返していくか、根抵当権の抹消や確定後の手続き(本文で触れた減額請求・消滅請求)をどう進めるかは、金融機関との調整を踏まえて段取りを組むことになります。
期限から逆算する
③の合意の登記は、②の債務者の変更の登記をした後でなければすることができません(不動産登記法92条)。6か月の期限が直接かかるのは③ですが(民法398条の8第4項)、実際には、③の前に②を、所有者も亡くなっている場合はさらにその前に①の相続登記をどう進めるかも含めて、段取りを考えておく必要があります。戸籍の収集、金融機関との合意内容の確定、登記原因を証する情報の作成と、それぞれに時間がかかるため、期限の末日から逆算するのではなく、相続が分かった時点で金融機関と段取りを共有しておくことが大切です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第138条・第140条・第142条・第143条・第398条の3・第398条の4・第398条の7・第398条の8・第398条の19〜第398条の22・第882条・第896条・第899条・第902条の2・第915条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第2条・第22条・第25条・第60条〜第62条・第66条・第76条の2・第92条・第93条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第16条・第18条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第3条・第47条〜第49条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 登録免許税法 別表第一 第一号(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035