この記事の要点

  • 受託者は、親の財産を「もらう人」ではなく「預かって管理する人」です。財産から利益を受けるのは受益者で、受託者は、自分が受益者を兼ねる場合を除いて、信託の利益を受けることはできません(信託法8条)
  • 信託法が受託者になれない人として定めているのは未成年者(18歳未満)です。一方、受託者を引き受けることを営業として行うには、信託業法の免許や登録が必要です
  • 選ぶときは「長く続けられるか」「お金と書類をきちんと管理できるか」「家族から信頼されているか」「続けられなくなったときの後継がいるか」を確かめます
  • 子の一人に任せるなら、本人(親)が元気なうちに、ほかのきょうだいにも目的と仕組みを説明し、情報共有のしかたを決めておくことが大切です。受託者を見守る立場として、信託監督人・受益者代理人という制度もあります
  • 誰に任せるか迷ったらお近くの司法書士に、家族の間ですでに意見が対立している場合は弁護士にご相談ください

家族信託で受託者を誰にするかは、仕組み全体の安定を左右する大事な決めごとです。結論から言うと、受託者には家族の中で「長く、きちんと、ほかの家族にも見える形で」管理を続けられる人を選び、子の一人に任せる場合は、ほかのきょうだいに早めに説明し、情報共有のしかたを決めておくことが大切です。

委託者(財産を託す人)・受託者(託されて管理する人)・受益者(財産から利益を受ける人)という家族信託の基本的な仕組みは、家族信託(民事信託)とはで解説しています。この記事では、そのうち「受託者を誰にするか」と、そのときのほかの家族への配慮に絞って整理します。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

受託者は「財産をもらう人」ではなく「預かって管理する人」

親の自宅やアパートを信託すると、登記簿の名義は受託者に移ります。このため、ほかのきょうだいから「兄(姉)が親の財産をもらったのでは」と受け止められることがあります。

しかし、受託者は、受益者として利益を受ける場合を除いて、誰の名義を使っても信託の利益を受けることはできないとされています(信託法8条)。親が受益者の典型的な家族信託であれば、名義が子に移っても、そこから生じる家賃などの利益は親のものです。

受託者には、次のような義務もあります。

  • 信託の本旨(信託をした趣旨)に従い、一般に求められる程度の注意(善良な管理者の注意)をもって管理する(信託法29条。注意の程度については、契約で別の定めをすることもできます)
  • 受益者のために忠実に管理する(信託法30条)
  • 信託財産を自分の財産と自由に行き来させるような、受益者と利益がぶつかる取引は、原則としてしてはならない(信託法31条1項。契約で認めている場合や受益者の承認を得た場合などの例外があります。同条2項)
  • 信託財産を自分の財産と分けて管理する(信託法34条)
  • 帳簿などを作り、毎年1回、一定の時期に貸借対照表・損益計算書などを作って、その内容を受益者に報告する(信託法37条1項〜3項。報告については、契約で別の定めをすることもできます)

また、受託者が信託財産から報酬を受けられるのは、原則として、契約に報酬を受ける旨の定めがある場合に限られます(信託法54条1項)。

つまり受託者は、「親の財産を預かり、決められた目的のために、記録を残しながら管理する役」です。ほかのきょうだいに説明するときも、まずこの点を共有しておくと、誤解を防ぎやすくなります。

なお、信託が終わったときに残った財産を誰が受け取るかは、契約で指定する事柄です(信託法182条1項)。受託者を誰にするかとは別の決めごとなので、「受託者になる子=最後に財産を受け取る子」とは限りません。この点をどう決めるかは、きょうだいの間の公平や相続税などの税金にも関わるため、設計の段階で専門家と一緒に検討します。

受託者になれる人・なれない人

信託法の定め──未成年者は受託者になれない

信託法は、未成年者を受託者として信託をすることはできないと定めています(信託法7条)。成年は18歳なので(民法4条)、18歳未満の子や孫を受託者にすることはできません。

また、受託者は、委託者と信託契約を結ぶ当事者です(信託法3条1号)。契約の内容を理解し、引き受ける意思があることが前提になります。

信託業法との関係──「仕事として」受託者を引き受けるには免許などが必要

信託業法は、信託の引受けを行う営業を「信託業」とし(信託業法2条1項)、信託業は内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営むことができないと定めています(同法3条)。管理だけを行う一定の型の信託業(管理型信託業)は、登録を受けて営むことができます(同法7条1項)。

家族信託は、親の財産を子が預かるように、家族が受託者を引き受ける形を指して使われる呼び名です。信託業法でいう営業信託(営業として信託を引き受けること)の意味について、国会では政府から、「営利の目的を持って反復継続して行うこと」と理解されており、その営利の目的とは「少なくとも収支相補うこと(収入と支出が釣り合うこと)が予定されている」ことだと説明されています(第165回国会 衆議院法務委員会〔2006年10月25日・第4号〕の内閣府副大臣の答弁)。この意味での営業として受託者を引き受けるには、免許や登録が必要です。受託者の候補が家族以外の人や法人(会社など)になる場合は、この点にも注意が必要です。

受託者を選ぶときの観点

誰が受託者にふさわしいかは、家族の事情によって答えが違います。ここでは、どの家庭でも確かめておきたい一般的な観点を挙げます。

  • 長く続けられるか:家族信託は、親が亡くなるまでなど、長い期間続くことがあります。受託者になる人の年齢や健康、親や財産のある場所との距離も考えます
  • お金と書類をきちんと管理できるか:信託財産を自分の財産と分けて管理し、帳簿を作り、毎年報告する必要があります。通帳や領収書を整理し続けられるかが大切です
  • 時間と手間をかけられるか:不動産の管理、金融機関や税務の手続きなど、思った以上に手間がかかることがあります。仕事や子育てとの両立も考えておきます
  • 家族から信頼されているか:受託者に権限が集まる仕組みなので、本人(親)だけでなく、ほかの家族が「この人なら」と思えるかどうかも、あとで話がこじれないための大切な要素です
  • 続けられなくなったときの後継がいるか:受託者の任務は、受託者の死亡などによって終わります(信託法56条1項)。契約に次の受託者の定めがない場合などは、委託者と受益者の合意で新しい受託者を選ぶことができます(信託法62条1項)。委託者(親)がすでに亡くなっている場合は受益者が選ぶこと、必要があれば利害関係人の申立てにより裁判所が選ぶことも定められています(同条4項・8項)。受託者が欠けて新しい受託者が就かない状態が1年間続くと、信託は終わってしまいます(信託法163条3号)。後継の受託者をどうするかも、最初の段階で考えておきます

受託者を決めることを含めた家族信託の進め方全体は、家族信託の手続きの流れで整理しています。

子の一人に任せるときの「ほかのきょうだい」への配慮

子が複数いる家庭で、そのうち一人に受託者を任せる場合、ほかのきょうだいが「自分だけ知らされていない」「親のお金を勝手に使われるのでは」と感じると、あとで大きなもめごとにつながることがあります。財産の名義を一人に寄せるという点では、実家を兄弟で共有にするかどうかの話とも通じるところがあり(実家を兄弟の共有名義にしてはいけない理由)、家族の間で早めに話し合っておくことが大切です。

本人(親)から、元気なうちに説明する

なぜ家族信託をするのか、なぜこの子を受託者にするのか、信託で何が変わり何が変わらないのかを、本人が元気なうちに、ほかのきょうだいにも伝えておくことが大切です。受託者になる子が一人で説明するより、本人の考えとして伝わるほうが、納得を得やすいこともあります。

説明しておきたいのは、たとえば次のような点です。

  • 信託の目的(認知症になっても自宅を売って施設の費用に充てられるようにする、など)
  • 受託者は財産を預かって管理する役で、財産をもらうわけではないこと
  • 信託が終わったとき、財産を誰が受け取るのか

情報共有のしかたを決めておく

信託法が、受託者に信託事務の処理の状況などの報告を求めることができると定めているのは、委託者と受益者です(信託法36条)。受託者が毎年作る書類の内容を報告する相手も、受益者とされています(信託法37条3項)。受益者ではないきょうだいについて、信託法36条のような報告を求める権利は定められていません。

そのため、ほかのきょうだいへの情報共有は、法律の定めに任せきりにせず、家族の間でどう共有するかを話し合っておくことが大切です。たとえば、年に1回、信託財産の状況を家族で確かめる機会を持つ、通帳の記録や領収書を見せられるように整理しておく、といった工夫が考えられます。報告の相手や方法を契約の中でどう扱うかは、設計の段階で専門家に相談します。

すでに意見が割れているときは

家族の間ですでに意見が対立している場合や、ほかのきょうだいが家族信託に強く反対している場合は、話し合いの進め方そのものについて、弁護士への相談が必要になります。

受託者を見守る立場──信託監督人と受益者代理人

家族信託には、成年後見のように家庭裁判所が日常的に監督する仕組みはありません。その代わりに、信託法には、受託者を見守る立場の人を置く制度があります。ここでは「こういう制度がある」という入口だけを紹介します。

  • 信託監督人:受益者のために、受託者を監督する人です。契約で、信託監督人となる人を指定しておくことができます(信託法131条1項)。受益者のために、自分の名前で、受益者が持つ権利のうち信託法92条各号に掲げる権利(一部の号を除きます)を行使する権限を持ちます(信託法132条1項。契約で別の定めをすることもできます)。受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情があり、契約に定めがない場合などには、利害関係人の申立てにより、裁判所が選ぶこともできます(信託法131条4項)
  • 受益者代理人:受益者を代理して、受益者の権利を行使する人です。契約で、受益者代理人となる人を指定しておくことができます(信託法138条1項・139条1項)。受益者代理人がいると、受益者本人が自分で行使できる権利は一定のものに限られる点に注意が必要です(信託法139条4項)

どちらも、未成年者と、その信託の受託者自身はなることができません(信託法124条を137条・144条で準用)。また、報酬は、原則として契約に報酬を受ける旨の定めがある場合に限って請求できるとされています(信託法127条3項を137条・144条で準用)。

受託者以外の家族がこうした立場に就くことで、受託者の仕事を確かめられるようにする、という考え方もあります。ただし、置くかどうか、誰に任せるか、どこまでの権限にするかは、家族の事情や本人の希望によって変わります。具体的な組み立ては、専門家と一緒に検討してください。

まとめ

受託者は、親の財産をもらう人ではなく、預かって管理し、記録を残して報告する人です。信託法上、未成年者は受託者になれず、受託者の引受けを営業として行うには信託業法の免許や登録が必要です。誰に任せるかは、長く続けられるか、きちんと管理できるか、家族から信頼されているか、後継がいるかといった観点で考えます。子の一人に任せるときは、本人が元気なうちにほかのきょうだいへ説明し、情報共有のしかたを決めておくことが、あとのもめごとを防ぐ近道です。受託者を誰にするかで迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 受託者や信託監督人を置くと、費用や報酬はかかりますか?

受託者が信託財産から報酬を受けられるのは、原則として契約に報酬の定めがある場合に限られます(信託法54条1項)。信託監督人・受益者代理人の報酬も、原則として契約の定めによります。このほか、契約書の作成や信託の登記などの費用がかかります。報酬を受け取る場合の所得税などの扱いは、税理士にご確認ください。

Q. 受託者を決めないまま先延ばしにすると、どうなりますか?

家族信託は本人(親)が結ぶ契約なので、本人の判断能力がなくなると、契約を結んでも無効となり、事実上結べなくなることがあります(民法3条の2)。民法3条の2は、契約に必要な判断能力(意思能力)の中身までは定めていませんが、法務省の資料は、たとえば日常生活に必要な安い食料品を買うことと不動産に抵当権を設定することとでは、その行為の意味を理解するのに必要な能力の程度に違いがあるとして、その契約の性質や難しさも考えて判断するという考え方が有力だと説明しています(法務省民事局参事官室「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」〔2013年4月〕7〜8頁)。この考え方によれば、信託契約の場合も、どの程度の判断能力が求められるかは契約の内容や本人の状態に照らして個別に判断されることになり、一律には言えません。

また、契約後に受託者が欠け、新しい受託者が就かない状態が1年間続くと信託は終わってしまいます(信託法163条3号)。受託者と後継の受託者は、早めに考えておくことが大切です。

Q. 受託者選びは家族だけで決められますか? どこに相談すればよいですか?

誰に任せるかを話し合うのは家族ですが、その内容を契約にどう反映させるかで、後々の安定が変わります。設計や契約書、信託の登記はお近くの司法書士に、税金は税理士に、公正証書の作成は公証役場に相談するのが一般的です。家族の間で争いになっている場合は、弁護士にご相談ください。

【さらに深掘り】受託者を2人以上にする場合と、受託者が受益者を兼ねる場合──受益者でない家族の閲覧請求と税目の整理

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文の「受託者を選ぶときの観点」と「ほかのきょうだいへの配慮」を、信託法などの条文の面から補います。信託の登記の申請のしくみと受託者・受益者が変わったときの登記は家族信託の手続きの流れの深掘りで、受益者連続型の設計と遺留分は家族信託(民事信託)とはの深掘りで、残余財産の行き先と信託が終わったときの登記は信託目録の読み方で扱っているため、ここでは、①受託者を2人以上にする場合、②受託者が受益者を兼ねる場合、③受益者でない家族と書類の閲覧、④税目の整理、の4点に絞ります。

受託者を2人以上にする場合──「合有」と「過半数」

子の一人だけに任せるのではなく、2人以上を受託者にする形も、信託法は想定しています。受託者が2人以上ある信託には、次のような特則があります。

  • 信託財産は、受託者の「合有」となります(信託法79条)
  • 信託事務の処理は、受託者の過半数で決めます(信託法80条1項)。ただし、保存行為は各受託者が単独で決めることができます(同条2項)。信託行為(信託契約)に受託者の職務の分掌(役割分担)の定めがある場合は、各受託者はその定めに従って決め、執行します(同条4項)。これらと異なる定めを信託行為で置くこともできます(同条6項)
  • 信託事務を処理するにあたって各受託者が第三者に対して債務を負ったときは、各受託者は連帯債務者となります(信託法83条1項。職務の分掌の定めがある場合の特則が同条2項にあります)
  • 2人以上の受託者が任務に違反する行為をして損失のてん補などの責任(信託法40条)を負う場合、その行為をした各受託者は連帯債務者となります(信託法85条1項)
  • 受託者の一人の任務が死亡などの事由(信託法56条1項各号)で終わったときは、その時点の信託に関する権利義務は他の受託者が当然に承継し、任務は他の受託者が行います(信託法86条4項。信託行為に別段の定めがあれば、それによります)。不動産については、任務の終了が死亡など不動産登記法100条1項に掲げる事由によるときは、その受託者の任務の終了による権利の変更の登記を、他の受託者が単独で申請できるとされています(同条2項)。辞任など、同条1項に掲げられていない事由で任務が終わった場合の登記の扱いは、家族信託の手続きの流れの深掘りで触れた単独申請の範囲の問題と同じく、別に確認が必要です

たとえば受託者が2人の場合、過半数は2人ですから、職務の分掌などの定めがなければ、保存行為を除いて、2人の意見が分かれたときに信託事務の処理を決められない場面が生じえます。また、上記のとおり、受託者になったきょうだいは、信託事務の処理で第三者に負った債務について連帯債務者となり、任務違反の行為を2人以上でした場合には、その行為をした受託者どうしが連帯して責任を負う立場になります。複数のきょうだいが受託者として管理に関わる形にするか、一人に任せて別の方法で見守りを置くかは、家族の事情によって答えが異なります。

受託者が受益者を兼ねる場合──「1年間」で信託が終わる定め

受託者は、受益者として信託の利益を受ける場合を除いて、信託の利益を受けることができません(信託法8条)。この条文は、受託者が受益者として信託の利益を受ける場合を、禁止の対象から明文で除いています。

ただし、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したときは、信託は終了します(信託法163条2号)。家族信託では、たとえば当初の受益者である親が亡くなった後の次の受益者を、受託者を務める子だけとする形(受益権の全部をその子が持つ形)を考えるときに、この定めとの関係が問題になります。信託が終了すると清算の手続きに入り、残った財産は信託行為の定めなどに従って帰属します(信託法182条)。

受託者が2人以上いる場合について、信託法の立案段階(要綱試案)で法務省が公表した補足説明は、そのうち1人が受益権の全部を固有財産で持つ状態も、この「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態」に含むと整理していました。ほかの受託者との間に監督の関係が残るので信託は続く、という考え方もありうるとしたうえで、これを採らないとしています(法務省民事局参事官室「信託法改正要綱試案 補足説明」〔2005年〕12頁)。これは法律が成立する前の資料ですが、成立した信託法163条2号の文言も、受託者が1人の場合と2人以上の場合を書き分けていません。このため、上で触れた「受託者を2人以上にする形」をとっても、そのうち1人が受益権の全部を持つ状態になれば、この終了事由との関係を確かめておく必要があります。

次の受益者を誰にするかは、受託者を誰にするかとは別の決めごとですが、受託者と受益者が同じ人に重なる場面があるかどうかは、この終了事由との関係で、設計の段階で確かめておきたい点です。

受益者でない家族と、書類の閲覧

本文では、受益者ではないきょうだいについて、信託法36条のような報告を求める権利は定められていないと説明しました。書類の閲覧については、信託法38条が、請求できる人と対象の書類を分けて定めています。

  • 受益者:受託者が作る信託財産の帳簿などの書類(信託法37条1項)や、信託財産の処分に係る契約書などの信託事務の処理に関する書類(同条5項)について、閲覧・謄写を請求できます。請求の理由を明らかにする必要があり(信託法38条1項)、受託者が請求を拒むことができる場合も定められています(同条2項)
  • 利害関係人:受託者が毎年1回作る貸借対照表・損益計算書などの書類(信託法37条2項)について、閲覧・謄写を請求できます(信託法38条6項)

信託法は、38条6項の「利害関係人」がどの範囲の人を指すかを条文で定めていません。受益者でないきょうだいがこれにあたるかどうかは、条文の文言だけからは定まりません。なお、信託法の立案段階(要綱試案)で法務省が公表した補足説明は、受益者以外の利害関係人の例として信託債権者(受託者が信託財産で支払う責任を負う債務のうち、受益者への給付以外のものの債権者。信託法2条9項・21条2項2号・4号)を挙げ、利害関係があることの立証責任は請求する側が負うとしていました(法務省民事局参事官室「信託法改正要綱試案 補足説明」〔2005年〕57〜58頁)。これは例として挙げられたもので、受益者でない家族がこれにあたるかどうかが、この例示によって決まるわけではありません。

また、信託が終わったときに残余財産を受け取る帰属権利者として指定されたきょうだいは、受益者とみなされますが、それは「信託の清算中は」とされています(信託法183条6項)。

このように、受益者でない家族が利害関係人にあたるかどうかは条文からは定まらず、仮にあたるとしても、閲覧・謄写を請求できるのは37条2項の書類(貸借対照表・損益計算書など)に限られます。信託法の定めだけでは、受益者でない家族が信託の状況を知る手段は限られます。本文で触れた、家族の間での情報共有の取り決めが実際上の意味を持つのは、このためです。

税務上の観点──どの税目が関わるか

税額の計算や申告の要否は、個別の事情によって変わるため税理士の領域です。ここでは、受託者の選び方に関係して、どの税目が問題になりうるかだけを整理します。

  • 信託財産から生じる収益(家賃など):所得税法は、信託の受益者(受益者としての権利を現に有するもの)が信託財産に属する資産・負債を有するものとみなし、信託財産に帰せられる収益・費用もその受益者のものとみなすと定めています(所得税法13条1項)。名義が受託者に移っても、所得税の面では受益者を基準に考えるのが原則です
  • 受託者が受け取る報酬:契約に定めがあって受託者が信託報酬を受ける場合(信託法54条1項)、その報酬は受託者自身の収入として、所得税の扱いが問題になります
  • 受託者が受益者になる・受益者が加わる・変わる場合:適正な対価を負担せずに受益者等となる人がいるときなどは、信託に関する権利を贈与(死亡がきっかけの場合は遺贈)によって取得したものとみなされ、贈与税・相続税の対象になりえます(相続税法9条の2第1項〜3項)
  • 信託が終わって残余財産を受け取る場合:前述の信託法163条2号による終了を含め、信託が終了した場合に、適正な対価を負担せずに残余財産の給付を受ける人などがいるときは、その残余財産を贈与(死亡がきっかけの場合は遺贈)によって取得したものとみなされます。ただし、終了の直前に受益者等であった人については、受益者等として有していた権利に相当する部分が除かれます(相続税法9条の2第4項)

受託者を何人にするか、受託者と受益者を重ねるかどうか、受益者でない家族に何をどう伝えるかといった組み立ては、家族の事情や本人の希望によって変わります。設計と信託の登記はお近くの司法書士に、税金の扱いは税理士に、公正証書の作成は公証役場に、家族の間で意見が対立している場合は弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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