この記事の要点

  • 家族信託の手続きは、おおむね「相談 → 財産と家族の状況の整理 → 設計 → 契約書案 → 契約の締結(公正証書にする場合は公証役場) → 信託の登記 → 信託口口座の開設 → その後の管理と報告」の順に進みます
  • 家族信託は本人(財産を託す親など)が結ぶ契約なので、本人に判断能力があるうちに契約まで終える必要があります
  • 不動産を信託する場合は、名義を移す登記と信託の登記を同時に申請します。お金は受託者自身のお金と分けて管理します
  • 全体で何か月かかるかは、家族の話し合いや金融機関との調整などで大きく変わり、一律には言えません
  • 進め方に迷ったら、早めにお近くの司法書士にご相談ください

家族信託の手続きは、「契約書を作って終わり」ではありません。結論から言うと、家族で話し合って中身を決め、契約を結び、不動産があれば登記をし、お金を管理する口座を用意し、その後も受託者が管理と報告を続ける、という一連の流れです。この記事では、その順番と、各段階でやること・関わる窓口を整理します。

委託者(財産を託す人)・受託者(託されて管理する人)・受益者(財産から利益を受ける人)という家族信託の仕組みそのものは、家族信託(民事信託)とはで解説しています。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

手続きの全体像

まず、全体の流れを一覧にします。

段階 主にやること 主に関わる窓口・相手
1. 相談 家族信託が合うかどうか、ほかの方法も含めて検討する 司法書士など専門家
2. 財産と家族の状況の整理 託したい財産、家族関係、目的を書き出す 本人と家族
3. 設計 誰に・何を・どう管理してもらい、いつ終えるかを決める 本人・家族と専門家(税金は税理士)
4. 契約書案 決めた内容を契約書の案にし、家族で確かめる 本人・家族と専門家
5. 契約の締結 契約を結ぶ。公正証書にする場合は公証役場で作る 公証役場(公正証書にする場合)
6. 信託の登記 不動産があれば、名義を移す登記と信託の登記をする 法務局
7. 信託口口座の開設 信託するお金を管理する口座を用意する 取引銀行など金融機関
8. その後の管理と報告 受託者が財産を管理し、帳簿を作り、受益者に報告する 受託者(税務は税理士)

順番は家庭によって前後することがあります。たとえば、口座の扱いは契約書の中身に関わるため、契約書を作る前の段階から金融機関に相談しておくと、あとで手戻りが生じるのを防ぎやすくなります。

段階1:相談──本人の判断能力があるうちに

家族信託は、委託者と受託者が結ぶ契約です(信託法3条1号)。親の財産を子に託す形なら、契約の当事者は親本人です。子だけで進めることはできません。

民法は、意思表示をした時に意思能力(自分の行為の結果を判断できる力)がなかった場合、その法律行為は無効になると定めています(民法3条の2)。認知症などで判断能力が大きく下がってからでは、家族信託の契約を結べないことがあります。相談は、本人が元気なうちに、本人も交えて始めるのが前提です。

相談の段階では、家族信託だけでなく、遺言や任意後見など、ほかの備え方も比べて検討します。両者の違いは家族信託と任意後見はどう違う?で整理しています。

段階2:財産と家族の状況を整理する

設計に入る前に、次のような情報を書き出しておくと、話がスムーズに進みます。

  • 託したい財産:自宅やアパートなどの不動産(登記事項証明書や固定資産税の課税明細書で確認できます)、預貯金など
  • 家族関係:配偶者、子、その配偶者など、関わる人の顔ぶれ
  • 目的:「認知症になっても自宅を売って施設の費用に充てられるようにしたい」「アパートの管理を続けたい」など、何のために信託するのか

この段階で、受託者になる予定の人だけでなく、ほかの家族にも話を共有しておくことが大切です。財産の管理が一人に任される仕組みのため、知らされていなかった家族が不信感を持つと、あとで話がこじれることがあります。家族の間ですでに意見が対立している場合は、弁護士への相談が必要になります。

段階3:設計──何を決めるのか

設計では、主に次のような点を決めます。

  • 信託の目的
  • 信託する財産(どの不動産、いくらのお金)
  • 受託者と受益者を誰にするか
  • 受託者がどこまでの管理・処分をしてよいか
  • 信託をいつ、どんなときに終えるか、終わったあと財産を誰が受け取るか
  • 受託者が亡くなったり、続けられなくなったりしたときにどうするか

信託法は、受託者に信託財産を管理・処分する権限があるとしたうえで、契約などでその権限に制限を加えることも認めています(信託法26条)。どこまで任せ、どこに歯止めをかけるかは、家庭ごとに答えが違うところです。具体的な組み立て方や、誰を受託者・受益者にするかは、本人と家族の事情を踏まえて専門家と一緒に設計します。

また、誰を受益者にするかなどによって、贈与税・相続税・所得税などの税金が関わることがあります。税金の扱いは、設計の段階で税理士に確認しておきましょう。

段階4:契約書案を作り、家族で確かめる

決めた内容を契約書の案にします。案ができたら、本人が内容を理解し、納得しているかを確かめながら、家族で読み合わせます。言葉の意味があいまいな箇所は、あとで解釈が分かれる原因になるため、この段階で直しておきます。

段階5:契約を結ぶ──公正証書にする場合は公証役場へ

信託契約による家族信託は、委託者と受託者の間で契約を結んだ時に効力が生じます(信託法4条1項)。信託法は、契約による信託について、公正証書で作ることを効力が生じる条件にはしていません(信託法3条1号・4条1項。一方、自分の財産を自分で管理する「自己信託」は、公正証書などで作る方法が定められています。同法3条3号・4条3項)。

それでも、契約書を公正証書(公証人が作る公文書)にする方法がとられることがあります。公正証書にする場合は、公証役場に連絡して、事前の打ち合わせや作成の日時を調整します。公証人に支払う手数料は公証人手数料令で定められており、日本公証人連合会の手数料の案内にも、信託の公正証書の手数料についての説明があります。必要な書類や手数料の額は、公証役場に確認してください。

段階6:信託の登記──不動産を信託する場合

自宅などの不動産を信託する場合は、法務局で登記をします。名義を委託者から受託者に移す登記と、その不動産が信託財産であることを示す「信託の登記」は、同時に申請しなければなりません(不動産登記法98条1項)。信託の登記は、受託者が単独で申請できるとされています(同条2項)。

信託の登記をしないと、その不動産が信託財産であることを第三者に主張できません(信託法14条)。また、登記ができる財産について信託の登記をする受託者の義務は、契約で免除することができないとされています(信託法34条2項)。契約を結んだら、登記まで進めておくことが大切です。

費用の面では、委託者から受託者に信託のために財産を移す登記は、登録免許税がかからないとされています(登録免許税法7条1項1号)。一方、信託の登記には登録免許税がかかります。登記簿がどう変わるかは家族信託と不動産登記──信託すると登記簿はどうなる?で解説しています。

段階7:信託口口座を開く──お金を分けて管理する

お金を信託する場合、受託者は、信託されたお金を自分自身のお金と分けて管理しなければなりません。お金については、その計算を明らかにする方法で分けて管理することとされています(信託法34条1項2号ロ)。

そのための方法として、受託者の名義で信託のためのお金を管理する専用の口座(一般に「信託口口座」と呼ばれます)を開き、委託者の口座からお金を移す形がとられることがあります。もっとも、こうした口座を扱っているか、どんな書類や条件が求められるかは、金融機関ごとに確認が必要です。取引銀行に、契約書を作る前の段階から相談しておくと安心です。

段階8:契約後の管理と報告──手続きはここからが本番

契約と登記、口座の準備が終わると、受託者による管理が始まります。受託者には、次のような義務があります。

  • 信託の本旨(信託の目的・趣旨)に従って事務を処理し、善良な管理者の注意(一般に求められる程度の注意)をもって管理する(信託法29条1項・2項。注意の程度については、契約で別の定めをすることもできます)
  • 受益者のために忠実に管理する(信託法30条)
  • 信託財産についての帳簿などを作る(信託法37条1項)
  • 毎年1回、一定の時期に、貸借対照表・損益計算書などの書類を作り、その内容を受益者に報告する(同条2項・3項。報告については、契約で別の定めをすることもできます)

このほか、受託者は、原則として毎年、税務署に「信託の計算書」を出す必要があります(所得税法227条)。ただし、受益者ごとに見た信託財産の収益の額の合計が一定額以下の場合などには、提出しなくてよいとされています(所得税法施行規則96条2項)。提出が必要かどうか、どう作るかは税理士にご確認ください。

家族の状況が変わって契約の内容を変えたいときは、委託者・受託者・受益者の合意などで変更できます(信託法149条)。受託者や受益者が変わったときなど、登記の内容にも影響する変更は、登記の手続きも必要になることがあります。

全体で何か月かかる?──時間がかかりやすい段階

家族信託を始めるまでに何か月かかるかは、家族の人数や財産の内容、関わる窓口の予定によって変わるため、一律には言えません。そのうえで、本人と家族だけでは進み具合を決められない段階や、決めることが多い段階は、時間がかかることがあります。たとえば、次のような段階です。

  • 家族の話し合い:誰に任せるか、ほかの家族がどう受け止めるかで、合意までに時間がかかることがあります
  • 設計の詰め:終わり方や、受託者が続けられなくなったときの定めなど、決めることが多いと、検討に時間がかかることがあります
  • 金融機関との調整:口座の扱いや求められる書類を確かめ、契約書の中身と合わせる必要があります
  • 公証役場の予約と打ち合わせ:公正証書にする場合は、作成日の調整が必要です
  • 書類の取り寄せ:登記事項証明書や印鑑証明書など、登記や契約に使う書類をそろえます

注意したいのは、手続きの途中で本人の判断能力が下がると、契約を結べなくなるおそれがあることです。家族の状況が許すなら、時間に余裕をもって早めに動き始めることが大切です。

まとめ

家族信託の手続きは、相談、財産と家族の状況の整理、設計、契約書案、契約の締結(公正証書にする場合は公証役場)、信託の登記、信託口口座の開設、そしてその後の管理と報告という順に進みます。本人が結ぶ契約なので、本人に判断能力があるうちに契約まで終えることが前提です。どのくらい時間がかかるかは家族の話し合いや金融機関との調整などで変わるため、早めに準備を始めることが大切です。家族信託の進め方に迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 家族信託の手続きには、どんな費用がかかりますか?

主なものとして、契約書の作成を専門家に頼む場合の報酬、公正証書にする場合の公証人の手数料(公証人手数料令で定められています)、不動産を信託する場合の登録免許税(名義を移す登記は非課税、信託の登記にはかかります)や登記事項証明書などの実費があります。金額は財産の内容や設計によって変わるため、それぞれの窓口で見積もりを確認してください。

Q. 手続きに期限はありますか? 先延ばしにするとどうなりますか?

家族信託を始めること自体に、法律上の期限はありません。ただし、本人に判断能力がなくなると契約を結べなくなるため(民法3条の2)、実際には「本人が元気なうち」が期限のようなものです。また、契約を結んでも不動産の信託の登記をしていないと、信託財産であることを第三者に主張できません(信託法14条)。

Q. 家族だけで手続きを進められますか? どこに相談すればよいですか?

契約は家族の間で結ぶものですが、設計を誤ると後々のトラブルにつながりやすく、登記の手続きも必要です。設計や契約書、信託の登記はお近くの司法書士に、税金は税理士に、公正証書の作成は公証役場に、口座の扱いは取引銀行に相談するのが一般的です。家族の間で争いになっている場合は、弁護士にご相談ください。


【さらに深掘り】信託の登記の申請のしくみと、受託者・受益者が変わったときの登記──設計段階で確かめておきたい項目

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文の段階6(信託の登記)と段階8(その後の管理)を、登記の手続きの面から補います。信託目録の記載内容や、信託が終わったときの登記は、家族信託と不動産登記と信託目録の読み方で扱っているため、ここでは、①最初の申請のしくみ、②受託者が変わったとき、③受益者が変わったとき、④設計段階で確かめておきたい項目、の4点に絞ります。

最初の申請は「一つの申請情報」で行う

信託の登記の申請は、その信託に係る権利の移転などの登記の申請と同時にしなければならず(不動産登記法98条1項)、さらに、両者は一の申請情報によってしなければならないとされています(不動産登記令5条2項)。家族信託で不動産を託す典型的な場面では、「信託を原因とする所有権の移転の登記」と「信託の登記」を、一つの申請書(申請情報)にまとめて申請することになります。

申請人の組み立ては、2つの登記で異なります。

  • 所有権の移転の登記:権利に関する登記の原則である共同申請(不動産登記法60条)により、登記義務者となる委託者と、登記権利者となる受託者が共同して申請するのが基本です。共同申請なので、委託者の登記識別情報(以前の登記済証にあたるもの)の提供が必要になります(同法22条)
  • 信託の登記:受託者が単独で申請できます(同法98条2項)。また、受益者や委託者が、受託者に代わって信託の登記を申請することもできます(同法99条)

申請情報とあわせて提供する情報(添付情報)として、信託の登記については、登記原因を証する情報と、「信託目録に記録すべき情報」が定められています(不動産登記令別表六十五の項)。信託目録そのものは、この情報をもとに登記官が作成します(不動産登記規則176条1項)。

登録免許税は、委託者から受託者への移転の部分が非課税とされ(登録免許税法7条1項1号)、信託の登記の部分に課税されます。所有権の信託の登記の課税標準は不動産の価額、税率は本則で1000分の4です(同法別表第一第1号(十)イ)。土地については、令和11年3月31日までの間、1000分の3とする軽減の定めがあります(租税特別措置法72条1項2号)。具体的な税額は、不動産の価額をもとに個別に計算します。

受託者が変わったとき──単独で申請できる場合と、そうでない場合

受託者の任務は、受託者の死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、辞任、解任、信託行為(信託契約)で定めた事由などで終了します(信託法56条1項)。後見開始・保佐開始の審判と破産手続開始の決定については、信託行為で別段の定めをすることもできます(同項ただし書)。

信託契約に新しい受託者の定めがないときなどは、委託者と受益者の合意で新受託者を選任でき(同法62条1項)、必要があれば裁判所が選任することもあります(同条4項)。

新受託者への名義の移転(受託者の変更による権利の移転の登記)について、不動産登記法100条1項は、前の受託者の任務が死亡、後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散、裁判所・主務官庁の解任命令によって終了した場合に限り、新受託者が単独で申請できると定めています。

この列挙には、受託者の辞任(信託法57条)、委託者と受益者の合意による受託者の解任(同法58条1項)、信託行為で定めた事由による任務の終了は含まれていません。不動産登記法100条1項は、「第六十条の規定にかかわらず」単独での申請を認める特則として書かれています。この条文の構造からすると、列挙にない事由で任務が終わった場合は特則の対象外となり、原則どおり共同申請(不動産登記法60条)、つまり前の受託者と新受託者が共同して申請する形になると考えられます。前の受託者の協力が得られるかどうかが、手続きの進み方に影響しうる点です。

なお、成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)と、それに伴う関係法律の整備法(令和8年法律第46号)が2026年6月24日に公布されています。整備法の施行後は、信託法56条1項2号の「後見開始又は保佐開始の審判」と不動産登記法100条1項の「後見開始若しくは保佐開始の審判」が、いずれも「特定補助人を付する処分の審判」に改められます。施行日は、公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日とされており、執筆時点ではまだ定まっていません。施行前に後見開始・保佐開始の審判を受けた人についての経過措置も設けられています(令和8年法律第46号附則2条)。

このほか、次の点も押さえておきます。

  • 受託者が2人以上いて、そのうち1人の任務が上記の事由で終了したときは、権利の変更の登記を、他の受託者が単独で申請できます(不動産登記法100条2項)
  • 新受託者への権利の移転の登記(受託者の任務の終了と新受託者の就任によって信託に関する権利義務が承継される、信託法75条1項・2項による権利の移転の登記)をするときは、単独申請・共同申請のどちらの場合でも、受託者の変更についての信託の変更の登記は登記官が職権で行います(不動産登記法101条1号)。信託目録の記録も、このとき登記官が変更します(不動産登記規則176条3項)
  • 受託者の変更に伴って前の受託者から新受託者に信託財産を移す登記は、登録免許税が非課税とされています(登録免許税法7条1項3号)

受益者が変わったとき──名義は動かず、「信託の変更の登記」をする

受益者の氏名・住所は信託の登記の登記事項です(不動産登記法97条1項1号。受益者の指定に関する条件や受益者代理人などを登記した場合には、受益者の氏名・住所の登記を要しない場合があります。同条2項)。受益者が変わっても、甲区の名義人は受託者のままなので、所有権の移転の登記は生じません。その代わり、登記事項に変更があったものとして、受託者が遅滞なく信託の変更の登記を申請しなければならないとされています(同法103条1項)。受託者が申請しない場合に備えて、受益者や委託者が受託者に代わって申請できる定めもあります(同条2項による99条の準用)。登記官は、信託の変更の登記をするときに、信託目録の記録を変更します(不動産登記規則176条3項)。

この信託の変更の登記の登録免許税について、登録免許税法の別表は、(一)から(十三)までに掲げるもの以外の「登記事項の更正若しくは変更の登記」を、不動産の個数を課税標準として1個につき1,000円と定めています(登録免許税法別表第一第1号(十四))。同号には信託の変更の登記のための別の区分は置かれていないため、この区分によることになります(法務局の「登録免許税の計算」の案内も、所有者の住所・氏名の変更の登記などを「不動産1個につき1,000円」と説明していますが、信託の変更の登記そのものには触れていません)。また、東京国税局は、信託の併合に伴う権利の変更の登記について、別表第一第1号(十四)の「変更の登記」に当たり不動産1個につき1,000円とする文書回答を公表しています(平成20年10月27日回答)。ただし、受益者の変更による信託の変更の登記そのものの税額を示した法務局・国税庁の公開資料は、執筆時点で確認できませんでした。

なお、受益者が代わる場面では、相続税・贈与税の課税が問題になることがあるため、税理士に確認しておく必要があります。

設計段階で確かめておきたい項目──あとで手続きが止まらないために

契約の文言そのものではなく、「ここを確かめておかないと、登記や手続きの段階で止まりやすい」という観点で、確認項目を挙げます。

  • 対象の不動産の登記記録:登記事項証明書で、地番・家屋番号、現在の名義人、担保の登記の有無を確かめる。登記されていない建物がある場合は、信託の対象に含める前に必要な登記を確認する
  • 委託者の氏名・住所が登記記録と一致しているか:申請情報の内容である登記義務者の氏名・住所が登記記録と合致しないときは、申請の却下事由とされています(不動産登記法25条7号)。引っ越しなどで住所が変わっている場合は、その変更の登記を先に済ませる必要があります
  • 委託者の登記識別情報(登記済証)の所在:共同申請で必要になるため(同法22条)、見当たらない場合の手当ても含めて早めに確認する
  • 農地が含まれていないか:農地法3条の許可が必要な農地について、信託の引受けによって所有権などが取得される場合は、許可をすることができない場合として定められています(農地法3条2項3号)。対象財産に農地があるかは、最初の段階で確認が必要です
  • 抵当権など担保の登記がある場合:借入先の金融機関との契約上、名義を受託者に移すことの扱いがどうなるかを、事前に金融機関に確認する
  • 受託者の任務が終わったときの備え:後継の受託者の定めがあるか、どの事由で任務が終わる定めか。前述のとおり、任務の終了の事由によって、新受託者が単独で登記を申請できるかどうかが変わります。なお、受託者が欠けて新受託者が就任しない状態が1年間続くと、信託は終了します(信託法163条3号)
  • 受益者の変わり方:次の受益者をどう定めるか(受益者の指定に関する条件などの定めは、それ自体が登記事項になります。不動産登記法97条1項2号)。受益者が変わったときに誰が信託の変更の登記を申請するかも、あわせて確認しておく
  • 終了の事由と残余財産の行き先:信託が終わったときに、誰に名義が移るのかが定まっているか(終了時の登記は前掲の関連記事を参照)

これらの項目をどのような内容で定めるか、誰を受託者・受益者にするかは、家族の事情によって答えが異なります。設計と登記の具体的な進め方はお近くの司法書士に、税金の扱いは税理士に、家族の間で意見が対立している場合は弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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