この記事の要点

  • 成年後見の申立費用や後見人等の報酬の全部または一部を助成する「成年後見制度利用支援事業」があり、市区町村が実施しています
  • 対象となる人や費用、助成額の上限は市区町村ごとに異なり、助成制度を設けていない市区町村もあるため、必ず利用できるとは限りません
  • まずはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターで、助成の有無と条件を確かめるところから始めます

成年後見にかかる費用の負担が難しいときは、お住まいの市区町村に「成年後見制度利用支援事業」による助成があるかを確かめるのが第一歩です。厚生労働省の資料では、この事業は、成年後見制度を利用することが有用で、費用の補助を受けなければ利用が難しい認知症高齢者、知的障害者、精神障害者に対し、申立ての経費と後見人等の報酬の全部または一部を助成するものと説明されています。執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。

助成の対象になり得る費用

助成の対象になり得る費用は、大きく分けて2つあります。

1つ目は申立ての経費です。厚生労働省の資料は、申立手数料、登記手数料、鑑定費用などを例に挙げています。申立てにかかる実費の内訳は成年後見の申立てにかかる費用と期間で整理しています。

2つ目は後見人等の報酬です。報酬は、家庭裁判所が本人の財産の中から与えることができるとされているものです(民法第862条。報酬付与の仕組み)。

高齢の方と障害のある方で、根拠が異なる

障害のある方については、障害者総合支援法第77条第1項第4号が、市町村の地域生活支援事業の1つとして定めています。障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用で、費用の補助を受けなければ利用が困難と認められる障害者に、費用を支給する事業です。支給の対象となる費用は、同法施行規則第65条の10の2が定めており、審判の請求に要する費用、登記の手数料、後見人等の報酬など「全部又は一部」とされています。厚生労働省の実施要領は、対象者を、障害福祉サービスを利用し、または利用しようとする知的障害者または精神障害者としています。

高齢の方については、介護保険法の条文に「成年後見」という言葉は出てきません。同法第115条の45第3項(令和8年法律第51号の改正により、2027年4月1日からは第4項に繰り下がります)は、市町村が地域支援事業として「行うことができる」事業を定めており、国の地域支援事業実施要綱が、同項第3号の規定に基づく「その他の事業」の1つとして成年後見制度利用支援事業を挙げています。要綱では、低所得の高齢者に係る申立ての経費や成年後見人等の報酬の助成等を行う事業とされ、市町村申立てに限らず、本人申立てや親族申立てなども「対象となりうる」とされています。

市区町村によって内容が異なる

助成の内容は全国一律ではありません。第二期成年後見制度利用促進基本計画は、市町村により実施状況が異なるとの指摘に触れています。厚生労働省の調査(令和7年4月1日時点)では、全国1,741市町村のうち、高齢者関係で42、障害者関係で44の市町村が、申立費用と報酬のどちらの助成制度も設けていないと集計されています。助成制度のある市町村でも、本人の申立てを助成の対象としているのは、高齢者関係で75.9%、障害者関係で75.4%です。

そのため、窓口では次の点を確かめると話が早く進みます。

  • 助成制度があるか。申立費用と報酬の両方が対象か
  • 誰が申し立てた場合が対象か(市区町村長、本人、親族など)
  • どのような人が対象か(生活保護を受けている方に限るのか、低所得の判断を本人だけで見るのか世帯全体で見るのか)
  • 助成額の上限はいくらか
  • 保佐人、補助人、監督人の報酬も対象か
  • いつ、どのように申請するのか

同じ調査では、助成の要綱などを整備している市町村のうち、それをホームページなどで公表していない市町村が、高齢者関係で申立費用の助成について35.0%、報酬の助成について31.9%あります。ホームページで見つからなくても、窓口に問い合わせてみてください。

なお、申し立てる親族がいない場合などに市区町村長が家庭裁判所に申立てをする仕組み(老人福祉法第32条、知的障害者福祉法第28条、精神保健福祉法第51条の11の2)は、費用の助成とは別の制度です。

専門家に依頼する費用は法テラスの立替えも

申立てを弁護士や司法書士に依頼する費用については、資力が乏しい方の場合、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助による立替えを受けられる場合があると、法務省が案内しています。法テラスの案内が挙げる要件は、収入と資産が一定の基準を超えていないこと、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することです。後見の申立ての場合にこれらの要件がどう当てはまるかは、法テラスに確かめてください。

これは助成ではなく立替えの制度なので、立替金は返済するのが原則です。生活保護を受けている方やそれに準じる程度に生計が困難な方は、申請により返済の猶予や免除が認められる場合があります。

制度の見直しについて

決まったことから説明します。2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)と、関係する法律を整える整備法(令和8年法律第46号)が成立し、同月24日に公布されました。法務省の案内によると、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化する内容です。整備法による改正後の条文を見ると、障害者総合支援法第77条第1項第4号の文言は変わらず、老人福祉法第32条、知的障害者福祉法第28条、精神保健福祉法第51条の11の2は、いずれも引用する民法の条文を改めたうえで残ります。

施行の時期は未定です。成年後見制度の見直しに係る部分の施行日は、公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされており、執筆時点で具体的な日は確認できません。施行後に助成の対象や手続きがどう扱われるかは、その時点の市区町村の案内で確かめてください。

まとめ

成年後見の申立費用や報酬の負担が難しいときは、市区町村の成年後見制度利用支援事業による助成を受けられる場合があります。ただし、対象となる人や費用、上限額は市区町村ごとに異なり、必ず利用できるとは限りません。

まずはお住まいの市区町村の高齢者福祉や障害福祉の担当窓口、地域包括支援センターに確かめてください。申立ての手続きについては家庭裁判所の案内を、制度全般の相談先としては、お近くの司法書士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどをご利用ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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