この記事の要点

  • 「罰金」と「科料(かりょう)」は刑法9条が列挙する刑罰で、罰金は一万円以上(15条)、科料は千円以上一万円未満(17条)。科されれば、有罪とされたことになる
  • 「過料(かりょう)」は刑法9条の刑の種類に入っていない、刑罰ではない金銭の制裁。相続登記を怠ったときの過料(不動産登記法164条1項)や会社の登記を怠ったときの過料(会社法976条)はこちら
  • これらの過料は刑罰ではないので、刑罰を受けた経歴(いわゆる前科)にはならないが、法律上の義務に違反した結果として裁判所が科す制裁であることに変わりはない

「相続登記をしないと過料」「役員変更の登記を忘れると過料」という言い方を耳にしたとき、「かりょう」と読むのが「過料」なのか「科料」なのか、また罰金と何が違うのか、はっきり区別できる方は少ないと思います。結論から言うと、「罰金」と「科料」は刑罰、「過料」は刑罰ではないという点が、三つを読み分ける軸になります。

罰金と科料は、刑法が定める「刑」

刑法9条は、刑の種類を「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」と定めています。罰金と科料はこの中に名前が出てくるので、どちらも刑罰です。両者の違いは金額の範囲で、罰金は「一万円以上」(15条本文。減軽する場合は一万円未満に下げられる=同条ただし書)、科料は「千円以上一万円未満」(17条)です。主刑の重さは9条に並んでいる順番で決まるため(10条1項)、科料は主刑のうち最も軽いものになります。

刑法のこの総則の規定は、刑法以外の法律に置かれた罪にも適用されます(8条本文)。したがって、会社法や不動産登記法など別の法律に「罰金に処する」「科料に処する」とあれば、それも刑法が定める刑罰です。

刑罰ですから、科されるには刑事手続を経て有罪とされる必要があり、有罪とされれば刑罰を受けた経歴になります。日常の言葉でいう「前科」はこの経歴を指す通称で、刑法の条文に出てくる用語ではありません。

過料は刑法9条に出てこない=刑罰ではない

一方、「過料」は刑法9条の刑の種類に含まれていません。刑罰ではない金銭の制裁です。相続登記や会社の登記の過料のように、法律上の義務に違反したことに対する金銭の制裁は「秩序罰」と呼ばれます。読み方が同じで混同されやすいため、国語辞典や百科事典では、科料を「とがりょう」、過料を「あやまちりょう」と呼び分けることがあると説明されています。

身近な例が、相続登記の申請を正当な理由なく怠ったときの「十万円以下の過料」(不動産登記法164条1項)と、会社の登記を怠ったときなどに取締役ら個人に科される「百万円以下の過料」(会社法976条)です。会社法976条の柱書には「ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない」というただし書があり、法律そのものが「過料」と「刑」を別のものとして書き分けていることが条文からも読み取れます。

誰が、どの手続で決めるのか

刑罰である罰金・科料は、刑事手続の中で裁判所が科します。相続登記や会社の登記の過料も裁判所が決めますが、使う手続が違います。過料事件は、他の法令に特別の定めがない限り、過料を受ける人の普通裁判籍(個人の場合は原則としてその人の住所地。民事訴訟法4条2項)を管轄する地方裁判所が扱います(非訟事件手続法119条)。裁判所は、あらかじめ検察官の意見を聴き、本人の陳述も聴いたうえで、理由を付した裁判をします(同法120条1項・2項)。この裁判には即時抗告(不服申立て)ができ、過料の裁判に対する即時抗告には執行停止の効力があります(同条3項)。

相続登記の過料については、裁判所の手続に入る前に、法務局の登記官が相当の期間を定めて申請を促す催告をし、その期間内に申請がされないときに限って管轄の地方裁判所に事件を通知する流れが置かれています(不動産登記規則187条1号)。会社の登記の過料も、登記官が過料に当たる人がいることを職務上知ったときに管轄の地方裁判所へ通知する仕組みです(商業登記規則118条)。相続登記の催告の流れと「正当な理由」の中身は相続登記の義務化、放置すると過料10万円の落とし穴で、会社法976条の条文の構造は商業登記を放置するとどうなるか──「過料」の根拠条文(会社法976条)を確認するで、それぞれ取り上げています。

「刑罰ではない」の意味と、意味しないこと

過料が刑罰ではないことから、過料を受けても有罪判決を受けたことにはならず、刑罰を受けた経歴(いわゆる前科)にはなりません。法律が「刑に処せられた者」を資格制限の対象にしている場面でも、過料はそもそも「刑」ではないため、これに当たりません。

ただし、「刑罰ではないから放っておいてよい」という意味ではありません。相続登記や会社の登記の期限は法律が「しなければならない」と定めた義務で、過料はその義務違反に対して裁判所が科す制裁です。金額の上限が定められているだけで、実際の額は裁判所が個別に決めます。義務は期限内に果たすのが前提で、過料が刑罰かどうかは、違反したあとの扱いがどう違うかという話にとどまります。

執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

まとめ

「罰金」と「科料」は刑法9条が定める刑罰で、違いは金額(罰金は一万円以上、科料は千円以上一万円未満)です。「過料」は刑法9条に出てこない、刑罰ではない金銭の制裁です。相続登記や商業登記を怠ったときに科されるのは「過料」で、地方裁判所が非訟事件手続法に基づいて決めます。前科にはなりませんが、法律上の義務に違反した結果であることは同じです。登記の期限に間に合うか心配なときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、辞典・事典の二次資料ですが、「科料」「過料」の読み分けの説明を確認するために参照したため、一次情報と区別して掲載しています。

  • デジタル大辞泉(小学館)「科料」「過料」の項
  • 日本大百科全書(ニッポニカ)(小学館)「科料」「過料」の項
  • 改訂新版 世界大百科事典(平凡社)「科料」「過料」の項

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