問題:

弁済に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができず、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときであっても、同様である。

イ. 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。

ウ. 受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であったときは、過失があったとしても、その効力を有する。

エ. 弁済をするについて正当な利益を有する者が債務者のために弁済をして債権者に代位した場合には、債権者から債務者に対する通知又は債務者の承諾がなくても、その代位を債務者に対抗することができる。

オ. 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができ、この場合において、債務の不履行による契約の解除は、代位者もすることができる。

答え:

正しいものは、イ・エの2つである。

解説:

ア 誤り。民法474条2項は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。」と定め、同条3項は、「前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。」と定めている。その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、債権者の意思に反しても弁済をすることができる。

イ 正しい。民法477条は、「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。」と定めている。

ウ 誤り。民法478条は、「受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。」と定めている。弁済をした者に過失があったときは、その弁済は効力を有しない。

エ 正しい。民法499条は、「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。」と定め、同法500条は、「第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。」と定めている。同法467条1項は、「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」と定めているが、弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合には、同条の規定は準用されないから、債権者からの通知又は債務者の承諾がなくても、代位を債務者に対抗することができる。これに対し、弁済をするについて正当な利益を有する者でない者が債権者に代位する場合には、同条の規定が準用される。

オ 誤り。民法502条1項は、「債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。」と定め、同条4項は、「第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。」と定めている。本肢の前半(代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる)は同条1項のとおりであるが、債務の不履行による契約の解除は債権者のみがすることができ、代位者はすることができないから、「代位者もすることができる」としている後半が誤りである。なお、同条2項は、「前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。」と定め、同条3項は、債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先すると定めている。

ポイント:弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができないが、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは別であり(民法474条2項)、債権者の意思に反して弁済をすることもできないが、債務者の委託を受けて弁済をする場合でそのことを債権者が知っていたときは別である(同条3項)。預金又は貯金の口座への払込みによる弁済は、債権者が払戻しを請求する権利を取得した時に効力を生ずる(同法477条)。受領権者としての外観を有する者に対する弁済が効力を有するのは、弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限られる(同法478条)。弁済による代位を債務者に対抗するのに通知又は承諾(同法467条)を要するのは、弁済をするについて正当な利益を有する者でない者が代位する場合だけである(同法500条)。一部弁済による代位では、代位者は債権者の同意を得て債権者とともに権利を行使するにとどまり、債権者は単独で権利を行使でき、契約の解除は債権者のみがすることができる(同法502条1項・2項・4項)。「474条は2項が債務者の意思、3項が債権者の意思の問題で、ただし書はどちらも債権者の認識で決まるが、2項は債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとき、3項は債務者の委託を受けていることを債権者が知っていたときに弁済ができるという向きの違い」に注意して押さえる。


問題:

持分会社に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 合資会社の有限責任社員は、その出資の価額(既に会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、会社の債務を弁済する責任を負う。

イ. 業務を執行しない有限責任社員は、持分の譲渡について定款に別段の定めがない場合には、業務を執行する社員の過半数の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。

ウ. 社員が2人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定するが、持分会社の常務は、その完了前に他の社員が異議を述べた場合を除き、各社員が単独で行うことができる。

エ. 業務を執行する社員が自己のために持分会社の事業の部類に属する取引をするには、定款に別段の定めがない場合には、当該社員以外の社員の過半数の承認を受ければ足りる。

オ. 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合において、退社について定款に別段の定めがないときは、各社員は、6箇月前までに持分会社に退社の予告をして、事業年度の終了の時において退社をすることができるが、やむを得ない事由があるときであっても、事業年度の途中で退社をすることはできない。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。会社法580条2項は、「有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。」と定めている。合資会社は、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする持分会社である(同法576条3項)。

イ 誤り。会社法585条1項は、「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。」と定め、同条2項は、「前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。」と定めている。業務を執行する社員の過半数ではなく、全員の承諾が必要である。なお、同条4項は、「前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。」と定めている。

ウ 正しい。会社法590条2項は、「社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。」と定め、同条3項は、「前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。」と定めている。

エ 誤り。会社法594条1項は、「業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定め、1号に「自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。」を掲げている。過半数ではなく、全員の承認が必要である。これに対し、業務を執行する社員が自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき等の利益相反取引については、同法595条1項が、「当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。」と定めている。

オ 誤り。会社法606条1項は、「持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。」と定めているが、同条3項は、「前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。」と定めている。やむを得ない事由があるときは、事業年度の途中であっても退社をすることができる。なお、同条2項は、同条1項の規定は定款で別段の定めをすることを妨げないと定めている。

ポイント:有限責任社員の責任は、出資の価額から既に履行した出資の価額を除いた額が限度である(会社法580条2項)。持分の譲渡には他の社員の全員の承諾が必要であるが、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡は、業務を執行する社員の全員の承諾で足りる(同法585条1項・2項)。業務は社員の過半数で決定し、常務は、完了前に他の社員が異議を述べた場合を除き、各社員が単独で行うことができる(同法590条2項・3項)。競業には当該社員以外の社員の全員の承認が必要であり、利益相反取引には当該社員以外の社員の過半数の承認が必要である(同法594条1項・595条1項)。持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合等の任意退社は、6箇月前までの予告をして事業年度の終了の時にするのが原則であるが、やむを得ない事由があるときはいつでもできる(同法606条1項・3項)。持分の譲渡、業務の決定、競業、利益相反取引及び任意退社(6箇月前までの予告による事業年度の終了の時の退社)については、定款で別段の定めをすることができるが、やむを得ない事由があるときの退社は、同法606条3項が「前二項の規定にかかわらず」と定めているから、同条2項により定款で別段の定めをした場合であってもいつでもできる(同法585条4項・590条2項・594条1項ただし書・595条1項ただし書・606条2項・3項)。「持分の譲渡と競業は全員、業務の決定と利益相反取引は過半数」と押さえる。


問題:

民事執行法に規定する金銭債権に対する強制執行に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発せられ、差押えの効力は、差押命令が債務者に送達された時に生ずる。

イ. 退職手当に係る債権については、その給付の4分の3に相当する部分は、差し押さえてはならないが、その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分に限り、差し押さえてはならない。

ウ. 給料に係る債権を差し押さえた債権者は、差押債権者の債権に民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれていないときは、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過したときに、その債権を取り立てることができる。

エ. 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。

オ. 転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が確定した時に弁済されたものとみなされる。

答え:

正しいものは、ウ・エの2つである。

解説:

ア 誤り。民事執行法145条2項は、「差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。」と定め、同条3項は、「差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。」と定めているが、同条5項は、「差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。」と定めている。差押えの効力は、債務者に送達された時ではなく、第三債務者に送達された時に生ずる。

イ 誤り。民事執行法152条1項は、「次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。」と定め、2号に「給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」を掲げている。これに対し、同条2項は、「退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。」と定めており、政令で定める額による括弧書きの限定は置かれていない。なお、同条3項は、債権者が同法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権を請求する場合には、同法152条1項・2項の「四分の三」を「二分の一」とすると定めている。

ウ 正しい。民事執行法155条1項は、「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。」と定め、同条2項は、「差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。」と定めている。給料に係る債権は同法152条1項2号に掲げる債権であるから、差押債権者の債権に同法151条の2第1項各号に掲げる義務(夫婦間の協力及び扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務)に係る金銭債権が含まれていないときは、取立てができるのは、債務者に対して差押命令が送達された日から4週間を経過したときである。

エ 正しい。民事執行法159条3項は、「転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。」と定めている。なお、同条5項は、「転付命令は、確定しなければその効力を生じない。」と定めている。

オ 誤り。民事執行法160条は、「転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。」と定めている。弁済されたものとみなされるのは、転付命令が確定した時ではなく、転付命令が第三債務者に送達された時である。

ポイント:差押命令は債務者及び第三債務者を審尋しないで発し、その両者に送達するが、差押えの効力は第三債務者に送達された時に生ずる(民事執行法145条2項・3項・5項)。同法152条1項各号の債権(給料・賃金等に係る債権など)は、支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(政令で定める額を超えるときは政令で定める額に相当する部分)が、退職手当に係る債権は、その給付の4分の3に相当する部分が差押禁止となり、扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合はいずれも2分の1となる(同法152条)。取立ては債務者への差押命令の送達の日から1週間経過後にできるが、給料等・退職手当に係る債権を差し押さえた場合は、扶養義務等に係る金銭債権が含まれているときを除き4週間経過後となる(同法155条1項・2項)。転付命令は、第三債務者への送達時までに他の債権者の差押え、仮差押えの執行又は配当要求があれば効力を生ぜず、確定しなければ効力を生じないが、効力を生じたときは第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなされる(同法159条3項・5項・160条)。「差押えの効力も転付による弁済の擬制も第三債務者への送達時、取立ての起算点は債務者への送達日」と区別して押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権・弁済) 正当な利益を有する者でない第三者の弁済と債権者の意思(委託・債権者の悪意)、預金・貯金口座への払込みによる弁済の効力発生時期、受領権者としての外観を有する者に対する弁済(善意無過失)、弁済による代位の対抗要件、一部弁済による代位(債権者の同意・契約の解除) 民法467条1項、474条2項・3項、477条、478条、499条、500条、502条1項〜4項
第2問 会社法(持分会社) 有限責任社員の責任の限度、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡、業務の決定と常務、競業の禁止と利益相反取引の承認、任意退社とやむを得ない事由 会社法576条3項、580条2項、585条1項・2項・4項、590条2項・3項、594条1項、595条1項、606条1項〜3項
第3問 民事執行法(債権執行) 差押命令の発令・送達と差押えの効力発生時期、給料等・退職手当に係る債権の差押禁止の範囲、取立権の発生時期(1週間・4週間)、転付命令の効力の発生と阻止事由、転付命令による弁済の擬制の時期 民事執行法145条2項・3項・5項、151条の2第1項、152条、155条1項・2項、159条3項・5項、160条