この記事の要点
- 代表者が亡くなると、その時点で代表者の地位は終わります。ご遺族が地位を引き継ぐ仕組みはなく、法人が後任を選びます。
- 後任の選び方は法人ごとに違います。一般社団法人は社員総会・理事会など、NPO法人は定款、宗教法人は規則(法人の根本ルール)で決まります。
- 登記は共通して、変更が生じてから2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更登記をします(一般社団法人は一般法人法303条、NPO法人は組合等登記令3条1項、宗教法人は宗教法人法53条)。
- 添付する書類の柱は、亡くなったことがわかる書類と、後任を選んだことがわかる書類です。NPO法人と宗教法人は、登記のあとに所轄庁(しょかつちょう。法人を監督する役所)への届出もあります。
- 登記はお近くの司法書士へ、所轄庁への届出は所轄庁の窓口や行政書士へ、後任選びをめぐって争いがあるときは弁護士へ、と相談先を分けるのが確実です。
会社以外の法人で代表者が亡くなったときにまず押さえたいのは、「後任の選び方は法人ごとに違うが、登記の期限と書類の考え方はほぼ共通している」という点です。どの法人でも、代表者の死亡と後任の就任を、2週間以内に登記簿へ反映させる必要があります。
株式会社の代表取締役が亡くなった場合は、代表取締役が亡くなったときの登記──会社が最初にすべき手続きの順番で整理しています。この記事は、一般社団法人・NPO法人(特定非営利活動法人)・宗教法人の3つに絞り、法人ごとの違いと共通点を並べて説明します。学校法人や社会福祉法人など、ほかの法人の根拠法や代表者の名称は、末尾の「あわせて読みたい」に挙げた法人の一覧の記事で確かめられます。
なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の法令に基づく一般的な解説です。法人の運営方針や、誰を後任にすべきかについては扱いません。
1. 3つの法人に共通すること
代表者の地位は相続されない
代表者が亡くなると、その時点で代表者としての地位は終わります。代表者の地位は財産ではないので、相続人が引き継ぐことはありません。
一般社団法人では、法人と理事などの役員との関係は「委任に関する規定に従う」とされており(一般法人法64条)、委任は受任者の死亡によって終わります(民法653条1号)。宗教法人法も、代表役員が「死亡その他の事由に因つて欠けた場合」を想定した定めを置いています(宗教法人法20条1項1号)。
ここで注意したいのは、任期満了や辞任で退任した場合との違いです。一般社団法人では、理事や代表理事が欠けたとき、任期満了や辞任で退任した人が後任の就任まで引き続き権利義務を持つ定めがあります(一般法人法75条1項・79条1項)。しかし、この定めは任期満了と辞任の場合に限られており、亡くなった場合は当てはまりません。前任者に「つなぎ」をお願いすることができないので、後任を選ぶ手続きを早めに始める必要があります。
登記の期限は2週間、場所は主たる事務所の所在地
3つの法人とも、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更登記をします。ただし、ルールが書かれている法令は法人ごとに別々です。
| 法人 | 登記のルールが書かれている法令 | 変更登記の期限 |
|---|---|---|
| 一般社団法人 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法) | 2週間以内(303条) |
| NPO法人 | 組合等登記令(特定非営利活動促進法7条1項にもとづく政令) | 2週間以内(3条1項) |
| 宗教法人 | 宗教法人法(第7章) | 2週間以内(53条) |
登記をしないままにしておくと
登記を怠ると、過料(かりょう。刑罰ではない金銭の制裁)の対象になります。金額の上限は法人ごとに違います。
| 法人 | 過料の上限 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 一般社団法人 | 100万円以下 | 一般法人法342条1号(登記を怠ったとき) |
| NPO法人 | 20万円以下 | 特定非営利活動促進法80条1号(登記を怠ったとき) |
| 宗教法人 | 10万円以下 | 宗教法人法88条9号(登記を怠ったとき) |
また、登記すべき事項は、登記をしたあとでなければ第三者に主張できないのが原則です(一般法人法299条1項、特定非営利活動促進法7条2項、宗教法人法8条)。亡くなった方が代表者として登記簿に残ったままだと、取引先や金融機関とのやりとりで支障が出ることもあります。
2. 法人ごとの違い──後任をどう選ぶか
3つの法人の違いを先に表で示します。
| 一般社団法人 | NPO法人 | 宗教法人 | |
|---|---|---|---|
| 代表者の名称 | 代表理事(定めない場合は理事) | 理事(定款で代表権を理事長などに限ることができる) | 代表役員 |
| 登記簿に載る役員 | 理事全員の氏名と、代表理事の氏名・住所 | 代表権を有する者の氏名・住所・資格 | 代表権を有する者の氏名・住所・資格 |
| 後任の選び方の根拠 | 一般法人法と定款 | 定款 | 規則(定めがなければ責任役員の互選) |
| すぐに後任を選べないとき | 裁判所が一時理事・一時代表理事の職務を行う者を選ぶ制度 | 所轄庁が仮理事を選ぶ制度 | 規則に従い代務者(だいむしゃ)を置く |
| 登記のあとの所轄庁への届出 | なし(公益社団法人は別途確認) | 役員の変更の届出(23条) | 登記の届出(9条) |
以下、法人ごとに順に見ていきます。
一般社団法人──社員総会・理事会・定款の定め
代表理事の選び方は、理事会を置いているかどうかで分かれます。
- 理事会を置いている法人:理事会が、理事の中から代表理事を選定します(一般法人法90条2項3号・3項)。
- 理事会を置いていない法人:定款、定款の定めにもとづく理事の互選(ごせん。理事どうしで選ぶこと)、または社員総会の決議のいずれかで、理事の中から代表理事を定めることができます(一般法人法77条3項)。代表理事を定めていなければ、理事が各自法人を代表します(同条1項・2項)。
どちらの方法になるかは、まず定款を確認するところから始まります。
理事の人数が足りなくなった場合は、まず社員総会で新しい理事を選任するのが基本です(一般法人法63条1項)。理事会を置いている法人は理事が3人以上必要なので(同法65条3項)、理事3人の法人で1人が亡くなると、法律が求める人数を欠いた状態になり、理事の補充を急ぐ必要があります。残った理事だけの理事会で先に代表理事を選べるかどうかは、法律や定款が求める人数を欠いた状態での理事会の扱い、定款の定め、理事会の定足数(ていそくすう。会議が成立するために必要な出席者の数)に関わる問題で、この記事では結論を示しません。管轄の登記所や司法書士に確認してください。
社員総会をすぐに開けないなど、後任を選べない事情があるときは、利害関係人の申立てにより、裁判所が一時理事や一時代表理事の職務を行う者を選任する制度があります(一般法人法75条2項・79条2項)。この申立てを弁護士に依頼するか、申立書の作成を司法書士に依頼するかは、事情によって変わります。
一般社団法人で見落としやすいのが、代表理事でない理事が亡くなった場合も登記が必要になる点です。一般社団法人の登記簿には理事全員の氏名が載るので(一般法人法301条2項5号)、どの理事が亡くなっても変更登記の対象になります。
NPO法人──定款で決めた方法で選ぶ
NPO法人には、理事3人以上と監事1人以上を置かなければなりません(特定非営利活動促進法15条)。理事の選び方は法律で一律に決まっているのではなく、定款の「役員に関する事項」として定めます(同法11条1項6号)。
NPO法人で登記簿に載るのは「代表権を有する者」です(組合等登記令2条2項4号)。理事は原則として全員が法人を代表しますが、定款で代表権を制限することができます(特定非営利活動促進法16条)。そのため、定款の書き方によって、誰が亡くなったら登記が必要かが変わります。
- 定款で「理事長がこの法人を代表する」などと定めている法人:登記簿に載っているのは理事長だけです。理事長が亡くなったら、定款の定め(理事の互選など)に従って新しい理事長を選び、変更登記をします。理事長以外の理事が亡くなった場合は、登記はいりませんが、所轄庁への届出は必要です。
- 代表権を制限していない法人:理事全員が代表権を持ち、登記されています。どの理事が亡くなっても変更登記が必要です。
理事の人数が足りなくなった場合、理事または監事のうち定数の3分の1を超える人が欠けたときは、遅滞なく補充しなければなりません(特定非営利活動促進法22条)。理事が欠けて業務が遅れると損害が生じるおそれがあるときは、利害関係人の請求により、または職権で、所轄庁が仮理事を選任する仕組みがあります(同法17条の3)。一般社団法人では裁判所が選ぶのに対し、NPO法人では所轄庁が選ぶ点が違います。
所轄庁への届出も忘れずに。役員の氏名などに変更があったときは、遅滞なく、変更後の役員名簿を添えて所轄庁に届け出ます(特定非営利活動促進法23条1項)。新しく役員が就任したときは、一定の書類もあわせて提出します(同条2項)。届出を怠ると、登記を怠ったときと同じく過料の対象になります(同法80条3号)。届出の様式や添付書類は、所轄庁の窓口や行政書士に確認してください。
宗教法人──規則で決めた方法で選ぶ
宗教法人には3人以上の責任役員を置き、そのうち1人を代表役員とします(宗教法人法18条1項)。代表役員は、規則に別段の定めがなければ、責任役員の互選で定めます(同条2項)。代表役員の資格や任免の方法は規則に書くことになっているので(同法12条1項5号)、まず規則を確認するのが出発点です。
登記簿に載るのは代表役員などの「代表権を有する者」で(宗教法人法52条2項6号)、責任役員の氏名は載りません。責任役員が亡くなっただけなら変更登記はありませんが、互選で代表役員を選ぶ法人では、後任選びの前に、責任役員の人数が欠けていないかを確かめておく必要があります。
代表役員が亡くなって、すみやかに後任を選べないときは、規則で定めるところにより代務者(代表役員に代わって職務を行う人)を置かなければなりません(宗教法人法20条1項1号)。代表役員も代務者もいない状態が1年以上続くと、裁判所が解散を命じることができる事由の一つに当たります(同法81条1項4号)。
登記をしたら、遅滞なく、登記事項証明書を添えて所轄庁に届け出ます(宗教法人法9条)。代務者の登記や届出の扱いを含め、宗教法人の登記の詳しい流れは宗教法人の登記で整理しています。なお、この記事は法人の役員としての代表役員について述べるもので、宗教上の地位やその承継については立ち入りません(同法18条6項参照)。
3. 登記の申請で共通する書類の考え方
法人ごとに条文の言葉は違いますが、申請書に添付する書類の柱は共通しています。「前の代表者が退任したこと」と「新しい代表者が就任したこと」の両方を書類で示す、という考え方です。
| 書類の役割 | 一般社団法人 | NPO法人 | 宗教法人 |
|---|---|---|---|
| 条文上の位置づけ | 退任を証する書面(一般法人法320条5項)、就任を承諾したことを証する書面(同条1項)、決議の議事録など(同法317条) | 登記事項の変更を証する書面(組合等登記令17条1項) | 登記事項の変更を証する書類(宗教法人法63条3項) |
| 亡くなったことがわかる書類 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 後任を選んだことがわかる書類 | 社員総会・理事会の議事録、互選を証する書面など | 定款に従って選んだことがわかる書類 | 規則に従って選んだことがわかる書類 |
亡くなったことがわかる書類としては、法務局が公開している役員変更の申請書の記載例で、一般社団法人・NPO法人とも「死亡届(ご親族が法人にあてて出すもの)又は法定相続情報一覧図の写し」が挙げられています。株式会社の代表取締役の場合に使われる戸籍謄本や死亡診断書の写し(代表取締役の交代の登記)と同じ考え方です。宗教法人は、法務局ホームページの全国向けの申請書様式には記載例がありませんが、松江地方法務局が公開している代表役員の死亡・就任の記載例では、「死亡を証する書面」「規則」「代表役員の就任を証する書面」「就任承諾書」の4点が添付書類として挙げられ、ご親族が故人との続柄を書いて法人にあてて出す死亡届の例が付いています。どの書類で足りるかは、管轄の登記所に確認してください。
NPO法人と宗教法人については、条文が「変更を証する書面(書類)」とだけ定めていて、書類の名前を並べていません。NPO法人は、法務省の通知(平成24年2月3日付け民商第298号)と法務局の記載例で、退任を証する書面、定款、定款に従って選任・選定したことを証する書面、就任承諾書などが具体的に示されています。宗教法人は、同じ形の法務省の通知は確認できていませんが、松江地方法務局の記載例で上の4点が示されています。「代表役員の就任を証する書面」の中身は、規則で定めた選び方(責任役員の互選など)によって変わるので、管轄の登記所で確認するのが確実です。
このほか、新しい代表者が書面で申請するときは、申請書に押す印鑑を前もって登記所に届け出ておく必要があります(詳しくは下の【さらに深掘り】で説明します)。
また、2026年12月1日からは、後任の代表者の就任の登記を申請するときに、登記事項証明書などに代表者の住所の一部を表示しないよう申し出ることもできるようになります(こちらも【さらに深掘り】で説明します)。
登記の申請のタイミングにも注意が必要です。3つの法人の条文は、いずれも登記事項に「変更が生じたとき」から2週間以内と定めているので(一般法人法303条、組合等登記令3条1項、宗教法人法53条)、代表者の死亡という変更については、亡くなった日から数えることになります。後任選びに時間がかかる場合でも、期限を過ぎていることに気づいたら、できるだけ早く手続きをするのが基本です。退任と就任をまとめて申請するか、退任だけを先に申請するかは、後任選びの見通しをふまえて管轄の登記所や司法書士に相談してください。
登録免許税(登記のときに納める税金)は、法人によって違います。
| 法人 | 代表者の変更登記の登録免許税 |
|---|---|
| 一般社団法人 | 申請1件につき1万円(登録免許税法別表第一第24号(一)カ。公益社団法人は同号の対象から除かれています) |
| NPO法人 | かからない(登録免許税法の別表第一に掲げられていないため。同法2条) |
| 宗教法人 | かからない(同上) |
4. 相談先の振り分け
代表者が亡くなったときは、いくつもの手続きが重なります。相談先を分けておくと迷いません。
- 変更登記(退任・就任の登記):お近くの司法書士へ。
- 所轄庁への届出(NPO法人の役員変更届、宗教法人の登記の届出など):所轄庁の窓口や行政書士へ。
- 後任選びをめぐって法人の内部で争いになっているとき(誰が代表者になるか、総会や理事会の決議が有効かなど):弁護士へ。
- 一時理事・一時代表理事の選任の申立て(一般社団法人):申立ての代理は弁護士、申立書の作成は司法書士に相談できます。
まとめ
- 代表者が亡くなると、その時点で地位は終わり、相続人が引き継ぐことはありません。一般社団法人では、任期満了・辞任のときのような「つなぎ」の定めも当てはまりません。
- 後任の選び方は、一般社団法人は一般法人法と定款(理事会・社員総会など)、NPO法人は定款、宗教法人は規則で決まります。
- 登記は共通して、変更が生じてから2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更登記をします。添付書類の柱は、亡くなったことがわかる書類と、後任を選んだことがわかる書類です。
- 登記簿に載る役員の範囲が違うため、一般社団法人は代表理事以外の理事の死亡でも登記が必要です。NPO法人は定款の代表権の定めによって変わります。
- NPO法人と宗教法人は、登記のほかに所轄庁への届出があります。
代表者が亡くなった直後は、ご遺族への対応や法人の運営で手一杯になりがちですが、登記の期限は2週間です。定款や規則、登記事項証明書を手元に用意して、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 代表者の変更登記には、どのくらい費用がかかりますか?
登録免許税は、一般社団法人なら申請1件につき1万円、NPO法人と宗教法人はかかりません。このほか、戸籍謄本や登記事項証明書などの取得費用がかかります。手続きを専門家に依頼する場合は、その報酬が別にかかるので、事前に見積もりを確認すると安心です。
Q. 2週間の期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?
期限を過ぎても登記の申請はできます。ただし、登記を怠ったとして、一般社団法人は100万円以下、NPO法人は20万円以下、宗教法人は10万円以下の過料の対象になることがあります。また、登記をしないと、代表者の交代を第三者に主張できないのが原則です。気づいた時点でできるだけ早く手続きをするのが基本です。
Q. 自分たちで登記できますか?どこに相談すればよいですか?
制度上は、法人の新しい代表者が自ら申請することもできます。ただし、後任の選び方が定款や規則に合っているか、添付書類がそろっているかで補正(書類の手直し)を求められることもあります。登記はお近くの司法書士に、所轄庁への届出は所轄庁の窓口や行政書士に、後任選びで争いがあるときは弁護士に、と相談先を分けるのが確実です。
【さらに深掘り】代表者死亡後の変更登記──申請する人・期限の数え方・印鑑の扱い
ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
亡くなったことを示す書類と、記載例に並ぶ添付書類
法務局のホームページ「商業・法人登記の申請書様式」に掲載されている役員変更の記載例(2026年5月11日更新版)では、亡くなった場合の添付書類が次のように案内されています。
- 一般社団法人(辞任等により新たな役員が就任した場合の記載例):「親族からの死亡届又は法定相続情報一覧図の写し等」
- NPO法人(理事の重任又は辞任等の記載例):「死亡届又は法定相続情報一覧図の写し」。死亡届の例は、ご親族(例では妻)が法人にあてて、理事(または理事長)が亡くなった日を届け出る形です。
NPO法人の同じ記載例では、添付書類として、社員総会議事録、理事長を選んだときの理事の互選書(または理事会議事録)、定款、就任承諾書、死亡届等、印鑑証明書が並んでいます。法務省の通知(平成24年2月3日付け民商第298号)も、理事の変更の登記で組合等登記令17条1項の「変更を証する書面」に当たるものとして、理事の退任を証する書面、定款、定款所定の方法で選任・選定されたことを証する書面、就任承諾書を挙げています。宗教法人については、法務局ホームページの全国向けの申請書様式(2026年11月6日時点)に記載例は掲載されていませんが、松江地方法務局の「商業・法人登記申請書様式及び記載例について」(2023年3月6日更新)に、代表役員の死亡及び就任の記載例があります。登記の事由は「代表役員の変更」、登記すべき事項は「代表役員○○○○は令和○年○月○日死亡」「代表役員○○○○は令和○年○月○日就任」、添付書類は「死亡を証する書面」「規則」「代表役員の就任を証する書面」「就任承諾書」の各1通で、申請人は新しい代表役員(法務局届出印を押印)です。NPO法人のような法務省の通知は確認できていないため、宗教法人法63条3項の「変更を証する書類」として何を添付するかは、この記載例を手がかりに管轄の登記所に確認してください。
誰が登記を申請するのか
変更登記の申請人は法人で、申請書には法人の代表者が記名押印します(商業登記法17条2項。一般法人法330条、組合等登記令25条、宗教法人法65条でそれぞれ準用)。ご遺族は申請人にはなりません。ご遺族が関わるのは、上の死亡届を法人に渡す場面です。
このため、代表者が亡くなったときは、まず「いま代表権を持っている人が残っているか」を確かめます。
| 状況 | 申請の考え方 |
|---|---|
| 代表権を持つ人がほかにも残っている(一般社団法人で代表理事が複数いる、代表理事を定めず理事が各自代表している〔一般法人法77条1項・2項〕、NPO法人で代表権を制限していない〔特定非営利活動促進法16条〕など) | 残っている代表者が、死亡による退任の登記を先に申請できます。理事の人数が法律や定款の定めを下回ることになる場合の扱いは、下の「2週間の数え方と、申請のまとめ方」で触れます。 |
| 代表権を持つ人が残っていない(NPO法人で定款により理事長だけが代表する場合に、その理事長が亡くなったときなど) | 後任が決まるまで、申請書に記名押印できる人がいません。後任が決まってから、新しい代表者が退任と就任をまとめて申請するのが通常の流れです。 |
| 一般社団法人で、裁判所が一時代表理事の職務を行うべき者を選任した(一般法人法79条2項) | その選任の登記は、裁判所書記官が職権で嘱託します(一般法人法315条1項2号イ)。亡くなった代表理事の退任の登記は、選任された者が法人を代表して申請することになると考えられます(要確認)。 |
| NPO法人で、所轄庁が仮理事を選任した(特定非営利活動促進法17条の3) | 組合等登記令14条が定める登記の嘱託の対象には、仮理事の選任は挙げられていません。仮理事を登記するか、誰が申請するかは、管轄の登記所に確認してください(要確認)。 |
| 宗教法人で代務者を置いた(宗教法人法20条1項1号) | 代務者は、規則で定めるところにより代表役員に代わって職務を行います(同条2項)。松江地方法務局の記載例では、代表役員代務者の退任・就任を「代表役員代務者の変更」として登記し、申請人は代表役員代務者(法務局届出印を押印)、添付書類は規則・退任を証する書面・就任を証する書面・就任承諾書の各1通とされています。亡くなった代表役員の退任の登記を代務者が申請できるかは、規則の定めとあわせて管轄の登記所に確認してください(要確認)。 |
2週間の数え方と、申請のまとめ方
期限は「変更ごと」に進みます。 3つの法人の条文は、いずれも「変更が生じたとき」から2週間以内と定めています(一般法人法303条、組合等登記令3条1項、宗教法人法53条)。死亡による退任という変更は亡くなった時に生じ、後任の就任という変更は就任した時に生じます。3つの条文には、死亡による退任の期限を後任の就任まで遅らせる定めは置かれていません。このため、後任選びに時間がかかると、死亡による退任の分は、期限を過ぎてから申請することになる場合があります。
退任と就任は1通の申請書でまとめられます。 亡くなった日と就任した日が離れていても、退任と就任を1通の申請書で申請できます(法務局の記載例でも、一般社団法人・NPO法人は辞任と就任を、宗教法人〔松江地方法務局の記載例〕は死亡と就任を、1通で申請する形が示されています)。登記すべき事項には、退任は「令和○年○月○日死亡」、就任は「令和○年○月○日就任」と、それぞれの日付を書きます。一般社団法人では、理事の氏名と代表理事の氏名・住所の両方が登記されているので、亡くなったのが代表理事なら、理事としての退任と代表理事としての退任の両方が登記の対象になります。
一般社団法人は、まとめると登録免許税が1件分で済みます。 一般社団法人の役員変更の登録免許税は「申請件数1件につき」1万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。退任と就任を1通にまとめれば1万円、別々に申請すれば2件分の2万円になります。NPO法人と宗教法人は、本文のとおり登録免許税はかかりません。
人数が足りなくなっても、死亡による退任の登記はできると考えられます。 一般社団法人で任期満了や辞任により理事・代表理事が足りなくなった場合は、退任した人が後任の就任まで権利義務を持ち続けるので(一般法人法75条1項・79条1項)、その間は退任の登記ができないと解されています(要確認)。死亡の場合はこの定めが当てはまらず、亡くなった人が権利義務を持ち続けることもないので、人数が足りなくなっても、死亡による退任の登記をすること自体は妨げられないと考えられます(要確認)。
印鑑の届出と、就任の登記で求められる印鑑証明書
印鑑の届出は法律上の義務ではなくなりましたが、書面で申請するなら必要です。 以前は商業登記法20条1項が「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない」と定めていましたが、この条文は令和元年法律第71号により削除されました(2021年2月15日施行)。一方で、代表者が申請書に押印する場合は、登記所に提出している印鑑を押さなければなりません(商業登記規則35条の2第1項)。この規定は、一般社団法人には一般社団法人等登記規則3条で、NPO法人と宗教法人には各種法人等登記規則5条で準用されています。法務局の記載例も、一般社団法人・NPO法人とも、申請書に押す印鑑は登記所に提出した印鑑でなければならないと案内しています。
新しい代表者が印鑑を届け出るときは、印鑑届書に、本人の市町村長作成の印鑑証明書で作成後3か月以内のものを添付するのが原則です(商業登記規則9条5項1号の準用。NPO法人の記載例にも同じ案内があります)。電子署名を使うオンライン申請では申請書に押印しないため、印鑑を届け出ないまま申請する方法もありますが、必要な電子証明書などは別途確認が必要です(要確認)。
代表者が亡くなると、印鑑証明書を省ける例外が使えないことがあります。 法務局の記載例では、後任の代表者を選んだ書類に押された印鑑について、次のように案内されています。
- 一般社団法人:社員総会・理事会の決議や理事の互選で代表理事を選んだときは、その議事録等に押印した理事全員(社員総会議事録は議長、理事会議事録は出席した監事を含む)の印鑑について、市町村長作成の印鑑証明書を添付します。ただし、議事録等に変更前の代表理事が法務局に提出した印鑑と同じものが押されていれば不要です(商業登記規則61条6項。一般社団法人等登記規則3条で準用)。
- NPO法人:定款で理事長だけが代表する法人が、理事の互選(または理事会)で理事長を選んだときは、互選書(議事録)に押印した理事全員の印鑑について印鑑証明書を添付します。ただし、重任した理事が法務局に提出している印鑑を押していれば不要です。理事が各自代表する法人では、社員総会議事録に押印した全員の印鑑証明書が必要で、同じ例外があります。
亡くなった代表者だけが法務局に印鑑を届け出ていた場合は、どちらの例外も使えないので、押印した人全員の印鑑証明書をそろえることになります。印鑑を届け出ている代表者がほかに残っていて、その人が届出印を押した場合に例外が使えるかは、管轄の登記所に確認してください(要確認)。
就任承諾書の印鑑証明書・本人確認書類は、法人によって違います。 一般社団法人の記載例では、理事会を置く法人は代表理事の就任承諾書、それ以外の法人は各理事の就任承諾書に押した印鑑について、再任の場合を除き印鑑証明書を添付し、印鑑証明書を添付しない新任の理事・監事には本人確認証明書(住民票記載事項証明書や、本人が原本と相違ない旨を記載した運転免許証のコピーなど)を添付すると案内されています(商業登記規則61条4項・5項・7項。一般社団法人等登記規則3条で準用)。なお、商業登記規則61条4項〜6項は会社の取締役・代表取締役を前提にした文言で、一般社団法人等登記規則3条は61条については7項にだけ読替えの定めを置いているため、4項〜6項は理事・代表理事に置き換えて読むことになります(上の記載例の案内は、この読み方と一致しています)。これに対し、各種法人等登記規則5条が各種法人(NPO法人・宗教法人を含む)に準用する商業登記規則61条の規定は1項・6項・8項で、4項・5項・7項は含まれていません。NPO法人の記載例でも、就任承諾書について印鑑証明書や本人確認証明書を求める案内はありません。宗教法人の具体的な取扱いは、管轄の登記所に確認してください(要確認)。
2026年12月1日からの、代表者の住所を一部表示しない措置
2026年10月30日に「商業登記規則等の一部を改正する省令」(令和8年法務省令第51号)が公布され、2026年12月1日から施行されます(同省令附則1条)。これにより、これまで株式会社に限られていた代表者の住所の非表示措置(商業登記規則31条の3)が、一般社団法人(一般社団法人等登記規則3条で準用)や、NPO法人・宗教法人を含む各種法人(各種法人等登記規則5条で準用)にも広がります。
施行後は、代表者の住所が登記される登記(後任の代表者の就任の登記など)を申請するときに、登記事項証明書などに住所のうち行政区画以外の部分を表示しないよう申し出ることができます。住所そのものは、これまでどおり登記されます。申し出るときは、申請書に対象となる代表者の氏名と住所を書き、主たる事務所が実在することを示す書面など、定められた書面を添付します。法人ごとに必要な書面の具体的な組み合わせは、法務局の案内や管轄の登記所で確認してください(要確認)。
相談先の線引き
ここで扱ったのは、登記の申請と添付書類の組み立てです。登記はお近くの司法書士へ、NPO法人の役員変更の届出(特定非営利活動促進法23条)や宗教法人の登記の届出(宗教法人法9条)は所轄庁の窓口や行政書士へ、後任選びや決議の有効性をめぐって法人の内部で争いがあるときは弁護士へ相談してください。誰を後任にするかなど、法人の運営方針には立ち入りません。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第63条・第64条・第65条・第75条・第77条・第79条・第90条・第299条・第301条・第303条・第315条・第317条・第320条・第330条・第342条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000048
- 民法 第653条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 特定非営利活動促進法 第7条・第11条・第15条・第16条・第17条の3・第22条・第23条・第80条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007
- 組合等登記令 第2条・第3条・第14条・第17条・第25条・別表(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029
- 宗教法人法 第8条・第9条・第12条・第18条・第20条・第52条・第53条・第63条・第65条・第81条・第88条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000126
- 商業登記法 第17条・第20条(削除)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則 第9条・第31条の3・第35条の2・第61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 一般社団法人等登記規則 第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/420M60000010048
- 各種法人等登記規則 第1条・第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010046
- 登録免許税法 第2条・別表第一第24号(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務省「商業登記規則等の一部を改正する省令(令和8年法務省令第51号)」省令本文・新旧対照表(e-Gov パブリック・コメント 結果公示): https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040?CLASSNAME=PCM1040&id=300080357&Mode=1
- 法務省民事局商事課長「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて(依命通知)」(平成24年2月3日付け法務省民商第298号): https://www.moj.go.jp/content/001385000.pdf
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
- 法務局「一般社団法人役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員が就任した場合)」記載例: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252921.pdf
- 法務局「NPO法人役員変更登記申請書(理事の重任又は辞任等)」記載例: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252907.pdf
- 松江地方法務局「商業・法人登記申請書様式及び記載例について」(宗教法人の代表役員の死亡及び就任/代表役員代務者の退任及び就任): https://houmukyoku.moj.go.jp/matsue/page000001_00185.html