この記事の要点
- 「予告登記」は、旧不動産登記法(明治32年法律第24号)の時代の登記です。登記原因が無効であるなどとして登記の抹消を求める訴えが起こされると、裁判所の嘱託でされていました。2005年(平成17年)3月7日から施行されている現在の不動産登記法には、この制度はありません。
- 廃止の理由として、法案の国会審議では、競売の妨害などのために濫用されているとの指摘が説明されました。
- 残っている予告登記は、登記官が職権で抹消することができ、その不動産について登記をするときは職権で抹消しなければならない、と定められています(不動産登記規則附則18条)。
古い登記簿を見ていたら、「予告登記」という見慣れない記載があった──。結論からいうと、これは現在は廃止された制度の名残です。残っている予告登記は、法務局の登記官が、申請を待たずに自らの判断で(これを「職権で」といいます)抹消できることが、規則に定められています。
なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。
予告登記とは何だったのか
現在の不動産登記法(平成16年法律第123号)は、明治32年にできた旧不動産登記法の全部を改正した法律で(同法の制定文)、2005年(平成17年)3月7日に施行されました(不動産登記規則附則1条)。予告登記は、この旧法の3条に定められていた登記です。不動産登記規則附則18条1項は、これを「旧法第三条に規定する予告登記」と呼んでいます。現在の不動産登記法の条文には、「予告登記」という語は出てきません。
どのような登記だったかについては、法案を審議した2004年(平成16年)5月14日の衆議院法務委員会で、法務省民事局長が次のように説明しています。
- 登記原因が無効であるといった理由で登記の抹消を求める訴訟を起こすと、裁判所からの嘱託によって予告登記がされる
- 予告登記は警告的な機能を持つだけで、それ以上の法律上の効果はないと言われている
つまり、登記簿を見る人に「この登記は、訴訟の結果によっては無効になるかもしれない」と知らせる目印だったといえます。裁判所や役所が法務局に頼んでする登記(嘱託登記)のしくみは、自分で申請していない登記が載っているのはなぜ?で紹介しています。
なぜ廃止されたのか
2004年5月11日の衆議院法務委員会での法務大臣の提案理由説明では、改正点の一つとして「執行妨害のため濫用されているとの指摘がある予告登記制度の廃止」が挙げられています。
5月14日の答弁では、その中身として、次のような使われ方が説明されました。
- 抵当権に基づく競売が申し立てられると、なれ合いで登記の抹消を求める訴えを起こして予告登記を付ける。登記簿に「登記が無効になるかもしれない」と表示されるため、買い受けようとする人がいなくなる
- なれ合いの訴訟で勝訴判決を得ても、予告登記はそのままでは抹消されず、いつまでも残ってしまう
残っている予告登記は、登記官が職権で抹消する
制度は廃止されても、すでに登記簿に記録されている予告登記は残ります。その扱いを定めているのが、不動産登記規則附則18条です。
- 1項:登記官は、職権で、旧法3条に規定する予告登記の抹消をすることができる
- 2項:登記官は、この省令の施行後、登記をする場合に、その登記に係る不動産の登記記録または登記用紙に予告登記がされているときは、職権で、その予告登記の抹消をしなければならない
2項により、売買や相続などでその不動産について登記をするときは、その機会に予告登記は職権で抹消されることになります。2項は「登記記録又は登記用紙」と書いており、コンピュータ化された登記記録に残っている場合も、紙の登記用紙に残っている場合も対象としています。
一方、何の登記もしない段階で予告登記だけを消してほしい場合について、1項は登記官が「することができる」と定めていますが、所有者などが抹消を求める手続き(申出の方法や必要な書類)は、附則18条には書かれていません。実際の窓口での扱いは、その不動産を管轄する法務局に確認してください。
予告登記が消えても、訴訟の結果まではわからない
附則18条は、もとになった訴訟がどう決着したかを、抹消の条件にしていません。そのため、予告登記が抹消されていることだけでは、訴訟の結果や現在の権利関係まではわかりません。権利関係に争いがある、または心配があるという場面は、登記簿の読み方の範囲を超えます。その相談先は弁護士です。
なお、訴訟などに関係して現在の登記簿に載ることがある記載として、処分禁止の仮処分の登記があります。予告登記とは別の制度で、読み方は「処分禁止の仮処分」の登記で整理しています。
まとめ
予告登記は、登記の抹消などを求める訴訟が起きたことを登記簿に示す、旧不動産登記法の時代の登記でした。執行妨害に濫用されているとの指摘を受けて、2005年3月7日施行の現在の不動産登記法では廃止されています。残っている予告登記は、登記官が職権で抹消することができ、その不動産について登記をするときは職権で抹消しなければならないとされています(不動産登記規則附則18条)。登記の手続きや登記簿の読み方について確認したいときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月)。
- 不動産登記規則 附則第1条・第3条・第18条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)制定文(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 官報 明治32年2月24日 第4692号「法律第二十四号 不動産登記法」第3条(国立国会図書館デジタルコレクション): https://dl.ndl.go.jp/pid/2947983
- 第159回国会 衆議院 法務委員会 第23号(平成16年5月11日)法務大臣の提案理由説明(国会会議録検索システム): https://kokkai.ndl.go.jp/txt/115905206X02320040511/68
- 第159回国会 衆議院 法務委員会 第25号(平成16年5月14日)法務省民事局長の答弁(国会会議録検索システム): https://kokkai.ndl.go.jp/txt/115905206X02520040514/122
※ 次の資料は一次情報ではなく、条文の翻刻ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。
- Wikisource「旧不動産登記法」(明治32年法律第24号・最終改正時の条文翻刻)第3条: https://ja.wikisource.org/wiki/%E6%97%A7%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E7%99%BB%E8%A8%98%E6%B3%95