この記事の要点
- 宗教法人の登記のルールは、会社法や組合等登記令ではなく、宗教法人法の第7章に書かれています(52条以下)。手続の細かな部分は、商業登記法の一部を準用しています(65条)。
- 代表役員が替わったら、2週間以内に変更登記をします(53条)。文化庁は、同じ人の再任も含めて登記が必要だと案内しています。登記をしたら、遅滞なく所轄庁(しょかつちょう。都道府県知事または文部科学大臣)に届け出ます(9条)。
- 不動産の売却や担保の設定をするときは、規則(法人の根本ルール)で定めた手続に加えて、少なくとも1か月前に公告(信者などに広く知らせること)をします(23条)。
- 境内建物・境内地である不動産や財産目録に掲げる宝物について、規則で定めた手続や公告を欠いてした行為は無効です。ただし、事情を知らず、そのことに重大な過失もない相手方や第三者には、無効を主張できません(24条と最高裁の判決)。
- 登記や届出、公告を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(88条)。規則変更の認証は所轄庁や行政書士へ、税金は税理士へ、登記はお近くの司法書士へ、と相談先を分けるのが確実です。
宗教法人の登記で押さえておきたいのは、「代表役員が替わったら2週間以内に登記し、そのあと所轄庁に届け出る」ことと、「不動産を処分するときは、登記の前に1か月前の公告が必要になる」ことの2点です。公告は登記とは別の手続で、法務局に出すものではありません。
この記事では、宗教法人法の条文をもとに、登記簿に載る事項から代表役員の変更、不動産の処分までを整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説で、宗教上の事項や特定の宗教団体について述べるものではありません。
1. 宗教法人の登記は、宗教法人法の中にルールがある
宗教法人とは、宗教法人法により法人となった宗教団体をいいます(宗教法人法4条2項。以下、法律名のない条文は宗教法人法です)。宗教団体とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成することを主たる目的とする団体で、礼拝の施設を備える神社・寺院・教会・修道院などや、それらを包括する教派・宗派・教団などを指します(2条)。
法人の登記のルールがどの法令に書かれているかは、法人の種類によって違います。
| 法人の種類 | 登記のルールが書かれている主な法令 |
|---|---|
| 株式会社 | 会社法・商業登記法 |
| 一般財団法人 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 |
| 医療法人・NPO法人 | 組合等登記令 |
| 宗教法人 | 宗教法人法(第7章) |
宗教法人の登記は、宗教法人法の第7章「登記」に定めがあります。第1節が法人そのものの登記(52条〜65条)、第2節が礼拝用の建物と敷地の登記(66条〜70条)です。組合等登記令には、宗教法人は掲げられていません。また、登記を扱うのは株式会社と同じ法務局などの登記所で、宗教法人登記簿という専用の登記簿があります(62条)。手続の細かな部分は、商業登記法の規定の一部を準用しています(65条)。
もう一つ、登記とあわせて出てくるのが所轄庁です。原則は主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事で(5条1項)、他の都道府県内に境内建物を備える宗教法人などは文部科学大臣です(同条2項)。
設立については、規則を作成して所轄庁の認証(団体が宗教団体であることや、規則が法令に適合していることなどを所轄庁が審査して認めること)を受け(12条1項・14条1項)、規則の認証書の交付を受けた日から2週間以内に設立の登記をします(52条1項)。宗教法人は、この設立の登記によって成立します(15条)。規則の認証の申請は、所轄庁の窓口や行政書士に相談する領域です。
2. 宗教法人の登記簿に載ること
登記される事項は、52条2項に並んでいます。右の列は、文化庁の案内で、変更の登記の前に所轄庁による規則変更の認証が必要とされている事項かどうかを示したものです。
| 登記される事項(52条2項) | 変更登記の前に規則変更の認証が必要か |
|---|---|
| 目的(事業を行う場合は、その種類を含む) | 必要 |
| 名称 | 必要 |
| 事務所の所在場所 | 必要 |
| 包括する宗教団体がある場合の、その名称と、宗教法人か非宗教法人かの別 | 必要 |
| 基本財産がある場合の、その総額 | 不要 |
| 代表権を有する者の氏名・住所・資格 | 不要 |
| 規則で定めた、境内建物・境内地である不動産や財産目録に掲げる宝物の処分などに関する事項 | 必要 |
| 規則で定めた解散の事由 | 必要 |
| 公告の方法 | 必要 |
52条2項に掲げられている役員は「代表権を有する者」で、通常は代表役員のことです。責任役員の氏名は掲げられていません。株式会社では取締役全員の氏名が登記されるので、この点は違いがあります。もっとも、役員名簿は事務所に備え付け(25条2項2号)、毎会計年度終了後4か月以内にその写しを所轄庁に提出することになっています(同条4項)。
なお、代表役員の代務者(だいむしゃ。代表役員に代わって職務を行う人)も、代表役員と同様に登記事項とされています(文化庁の案内)。
代表権を有する者の住所については、2026年12月1日から変更があります。2026年10月30日に公布された商業登記規則等の一部を改正する省令(令和8年法務省令第51号)により、宗教法人を含む各種法人の代表者についても、登記事項証明書などに住所の行政区画以外のものを記載しない措置を申し出ることができるようになります(改正後の各種法人等登記規則5条が準用する商業登記規則31条の3)。住所を登記事項から外す制度ではなく、住所が登記すべき事項に含まれる登記を申請するときに、申請書に記載して書面を添付して申し出るものです。各種法人等で対象となる役員や必要な添付書類は、法務省が整理したうえでホームページ等で周知することを検討するとしていますが(意見募集の結果)、2026年11月2日に法務省の案内ページを確認した時点では載っていないので、管轄の登記所に確認してください。
3. 代表役員が替わったときの登記
代表役員と責任役員
宗教法人には3人以上の責任役員を置き、そのうち1人を代表役員とします(18条1項)。代表役員は、規則に別段の定めがなければ責任役員の互選で定めます(同条2項)。つまり、誰がどのように代表役員になるかは、まず規則を確認する必要があります。任期も、宗教法人法で一律に定められているのではなく、規則に記載する事項です(12条1項5号)。
なお、代表役員と責任役員の権限は法人の事務に関するもので、宗教上の機能に対する支配権などを含むものではないとされています(18条6項)。この記事で扱うのは、法人の役員としての代表役員です。
次の人は代表役員になることができません(22条)。
- 未成年者
- 心身の故障により、職務を行うのに必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない人
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、または執行を受けることがなくなるまでの人
手続の流れ
- 規則で定めた方法で、新しい代表役員を決める
- 2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更の登記をする(53条)
- 登記をしたら、遅滞なく所轄庁に届け出る(9条)
申請書には、変更を証する書類を添付します(63条3項本文)。どの書類がこれに当たるかは、規則で定めた選び方によって変わりうるので、規則を手元に用意して確認します。代表権を有する者の氏名や住所の変更の登記では、この添付はいりません(同項ただし書)。住所は登記事項なので、代表役員が引っ越した場合も変更の登記の対象になります。
所轄庁への届出には、登記事項証明書を添えます(9条)。文化庁は、文部科学大臣が所轄庁である宗教法人に限り、この添付を省略できると案内しています。都道府県知事が所轄庁の場合の様式や提出先は、所轄庁に確認してください。
同じ人が続けるときも登記が必要とされている
ここで間違えやすいのが、「同じ人が続けるのだから、何も変わらない」という思い込みです。文化庁の案内では、代表役員の変更には再任も含むとされており、所轄庁への届出の様式にも「重任」(じゅうにん。任期満了後に同じ人が引き続き就任すること)の例が用意されています。株式会社の役員の重任と似た考え方です。規則で任期を定めている以上、任期が来るたびに登記を確認する必要があります。
代表役員が亡くなった、長く職務を行えないとき
代表役員が死亡などで欠けて、すみやかに後任を選べないときや、病気などで3か月以上職務を行えないときは、規則で定めるところにより代務者を置かなければなりません(20条1項)。
代表役員も代務者もいない状態を続けるのは危険です。1年以上にわたって代表役員とその代務者を欠いていることは、裁判所が解散を命じることができる事由の一つとされています(81条1項4号)。
登記をしないとどうなるか
登記しなければならない事項は、登記の後でなければ第三者に対抗する(主張する)ことができません(8条)。文化庁も、代表役員の変更や再任を放置して取引の相手方に損害を与えた場合には、損害を賠償する責任が生じると注意を促しています。
4. 不動産を処分するときは、1か月前の公告が必要
公告が必要な行為
宗教法人(宗教団体を包括する宗教法人を除きます)が次の行為をしようとするときは、規則で定めるところによるほか、その行為の少なくとも1か月前に、信者その他の利害関係人に対し、行為の要旨を示して公告しなければなりません(23条)。
- 不動産または財産目録に掲げる宝物を処分し、または担保に供すること
- 借入(その会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く)または保証をすること
- 主要な境内建物の新築・改築・増築・移築・除却・著しい模様替をすること
- 境内地の著しい模様替をすること
- 主要な境内建物や境内地の用途を変更し、または宗教法人の目的以外の目的に供すること
ここで注意したい点が2つあります。
1つ目は、1号の対象が「不動産」と書かれていることです。境内建物・境内地に限られていません。文化庁は、不動産の処分の例として、売却などの譲渡、交換、長期の賃貸借、地上権・地役権の設定を挙げています。
2つ目は、例外の範囲です。緊急の必要にもとづく場合や軽微な場合に公告をしなくてよいとする23条ただし書は、3号から5号についての定めです(5号はさらに、一時の期間に係る場合も含みます)。1号の不動産の処分と2号の借入・保証は、ただし書に挙がっていません。
境内建物とは、本殿・拝殿・本堂・会堂・社務所・庫裏・教職舎など、宗教法人の目的のために必要な固有の建物や工作物をいいます。境内地とは、それらの建物が存する一画の土地、参道、儀式行事に用いる土地、尊厳や風致を保持するための庭園・山林などをいいます(3条)。
手続の順番
文化庁の案内と条文を合わせると、不動産を処分するときの順番は次のようになります。
- 規則に定める手続を踏む … 文化庁は、責任役員会の議決、総代会の同意、包括宗教団体の承認を例に挙げています。何が必要かは法人の規則によります。規則に別段の定めがなければ、責任役員の定数の過半数で決します(19条・23条)。
- 公告をする … 処分する物件、価格、相手先、目的、方法、年月日などを示します(文化庁の案内)。公告の方法は規則に定めるもので、新聞紙や機関紙への掲載、事務所の掲示場への掲示など、信者その他の利害関係人に周知させるのに適当な方法でします(12条1項11号・2項)。
- 少なくとも1か月待つ … 文化庁は、意見の申し出などのために1か月の期間を据え置くことが必要とし、反対意見があれば責任役員会で再検討する流れを示しています。
- 処分(売買契約、引渡しなど)と不動産の名義変更の登記 … 売買にともなう所有権移転登記は、法人の登記とは別の手続です。
- 基本財産の総額が変わるなら、変更の登記 … 2週間以内です(52条2項5号・53条)。医療法人の資産の総額には「事業年度末日から3か月以内」という別枠がありますが(組合等登記令3条3項)、宗教法人法53条にはそうした定めは書かれていません。
- その登記をしたら、所轄庁に届け出る(9条)
基本財産とは、文化庁の案内によれば、宗教活動を行っていくうえで必要な財政的基礎となるもので、境内地や境内建物のほか、基本財産として設定した一定の基金がある場合などが当たります。どの財産が基本財産に当たるかは、規則と財産目録で確認します。
公告を掲示する場合について、文化庁は、人目につきやすい場所に掲示し、控えに確認した人の署名をもらって保管するなど、証拠として残しておくことをすすめています。規則の手続や公告の進め方に迷うときは、所轄庁の窓口や行政書士に相談してください。
「所轄庁への届出」はどの場面で必要か
混同しやすいのが、公告と所轄庁への届出の関係です。23条と24条には、公告や処分について所轄庁に届け出ることは書かれていません。この場面で条文に所轄庁への届出が出てくるのは、登記をしたときです(9条)。処分によって基本財産の総額の変更登記をしたときに届け出る、という順番になります。このほか、財産目録などの写しは毎年の提出の対象です(25条4項)。規則や所轄庁の案内で別の扱いがないかは、所轄庁の窓口で確認してください。
公告を忘れるとどうなるか
境内建物もしくは境内地である不動産、または財産目録に掲げる宝物について、23条に違反してした行為は無効です。23条は規則で定めた手続と公告の両方を求めているので、公告を欠いた場合だけでなく、規則で定めた手続を踏まなかった場合も無効になります(深掘りで述べる最高裁の判決)。ただし、善意の(事情を知らない)相手方や第三者には、その無効を主張できません(24条)。もっとも、知らなかったことに重大な過失がある相手方や第三者は保護されません(深掘りで述べる最高裁の判決)。また、公告をしないで23条各号の行為をしたときは、代表役員などが10万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭の制裁)に処せられることがあります(88条3号)。
無効かどうかをめぐって争いになった場合は、弁護士に相談する領域です。
宗教法人から不動産を買う側にとっても、無関係ではありません。規則で境内建物・境内地の処分について定めていれば、その事項は登記事項です(52条2項7号)。取引の前に登記事項証明書を確認し、規則の手続と公告がされているかを宗教法人に確かめておくと安心です。
代表役員本人が相手方になるとき
代表役員は、宗教法人と利益が相反する事項については代表権を持ちません。この場合は、規則で定めるところにより仮代表役員を選びます(21条1項)。たとえば、宗教法人の不動産を代表役員本人が買い受けるような場面は、この規定との関係を確認する必要があります。責任役員も、自分と特別の利害関係がある事項については議決権がありません(同条2項)。
5. 礼拝用の建物と敷地の登記
不動産については、もう一つ宗教法人特有の登記があります。宗教法人が所有する礼拝の用に供する建物とその敷地について、その旨の登記をすることができます(66条1項)。敷地についての登記は、その上の建物に登記がある場合に限られます(同条2項)。
この登記をすると、不動産の先取特権・抵当権・質権の実行のためにする場合や破産手続開始の決定があった場合を除き、登記後に原因が生じた私法上の金銭債権のためには差し押さえることができなくなります(83条)。
この登記は、所有権移転の登記をしたときに登記官が抹消します(70条1項。合併の場合を除きます。同条3項)。礼拝の用に供しなくなったときは、宗教法人が遅滞なく抹消を申請します(69条1項)。
6. 規則の変更が絡むとき──順番は「認証→登記→届出」
名称や目的など、2の表で「必要」とした事項を変えるときは、規則の変更をともないます。規則の変更は所轄庁の認証を受けなければならず(26条1項)、認証書の交付によって効力を生じます(30条)。したがって、順番は次のとおりです。
- 規則で定める手続をして、所轄庁の認証を受ける
- 認証書の交付を受けて変更の効力が生じたら、2週間以内に変更の登記をする(53条)。主たる事務所を他の登記所の管轄区域内に移す場合は、移転したときから2週間以内に、旧所在地で移転の登記を、新所在地で登記事項の登記をします(54条)。申請書には、所轄庁の証明がある認証書の謄本を添付します(63条6項)。
- 登記をしたら、所轄庁に届け出る(9条)
規則変更の認証の申請は、所轄庁の窓口や行政書士に相談する領域です。認証を受けたあとの登記の手続は、司法書士が扱う分野です。
7. 怠ったときの過料と、登記の費用
過料 … 次の場合などに、代表役員、その代務者、仮代表役員または清算人は10万円以下の過料に処せられることがあります(88条)。
- 登記をすることを怠ったとき(9号)
- 所轄庁への登記の届出を怠り、または虚偽の届出をしたとき(2号)
- 公告をしないで23条各号の行為をしたとき(3号)
- 財産目録などの写しの提出を怠ったとき(5号)
登録免許税 … 登録免許税は、登録免許税法の別表第一に掲げる登記などについて課される税金です(登録免許税法2条)。別表第一には宗教法人の登記が掲げられていないため、宗教法人の設立や変更の登記には登録免許税がかかりません。
不動産の登記は別です。売買などによる所有権移転の登記は別表第一の第1号に掲げられています。一方、宗教法人が専ら自己またはその包括する宗教法人の宗教の用に供する境内建物の所有権や境内地の権利を取得する登記などは、財務省令で定める書類を添付すれば非課税となる定めがあります(同法4条2項・別表第三第12号)。
不動産の処分などにともなう税金の扱いは、この記事では立ち入りません。税務については税理士にご相談ください。
まとめ
- 宗教法人の登記のルールは、宗教法人法の第7章に書かれています。組合等登記令には掲げられておらず、手続の細かな部分は商業登記法の一部を準用しています(65条)。
- 代表役員が替わったら、2週間以内に変更登記をします(53条)。文化庁は再任も含むと案内しています。登記をしたら、遅滞なく所轄庁に届け出ます(9条)。
- 不動産の処分や担保の設定は、規則の手続に加えて、少なくとも1か月前の公告が必要です(23条)。境内建物・境内地である不動産や財産目録に掲げる宝物について、規則の手続や公告を欠くと無効になります。ただし、善意で、そのことに重大な過失もない相手方や第三者には主張できません(24条と最高裁の判決)。
- 基本財産の総額が変わったら、2週間以内に変更登記をして、所轄庁に届け出ます。
- 名称や目的などの変更は、規則変更の認証を受けてから登記をします。
宗教法人の登記は、規則の定めと所轄庁の手続が組み合わさって進むのが特徴です。代表役員の変更登記や、不動産の処分にともなう登記に不安があるときは、規則と登記事項証明書を用意して、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 宗教法人の登記には、どのくらい費用がかかりますか?
宗教法人の登記は登録免許税法の別表第一に掲げられていないため、設立の登記も代表役員の変更の登記も登録免許税はかかりません(登録免許税法2条)。このほか、登記事項証明書の取得費用などがかかります。手続を専門家に依頼する場合は、その報酬が別にかかるので、事前に見積もりを確認すると安心です。不動産の名義変更の登記は別で、原則として登録免許税がかかります。
Q. 期限を過ぎたり、登記を放置したりするとどうなりますか?
代表役員の変更などの登記は、変更が生じたときから2週間以内が期限です(53条)。怠ると、代表役員などが10万円以下の過料に処せられることがあります(88条9号)。また、登記の後でなければ第三者に主張できません(8条)。期限を過ぎていても登記の申請はできるので、気づいた時点でできるだけ早く手続をするのが基本です。代表役員も代務者もいない状態が1年以上続くと、解散命令の事由の一つにも当たります(81条1項4号)。
Q. 自分で登記できますか?どこに相談すればよいですか?
登記の申請書には申請人の代表者または代理人が記名押印するものとされており(65条で準用する商業登記法17条2項)、制度上は宗教法人の代表者が自ら申請することもできます。ただし、どの書類で変更を証するかは規則によって変わります。登記の手続はお近くの司法書士に、規則変更の認証や所轄庁への届出については所轄庁の窓口や行政書士に、税金のことは税理士に、関係者の間で争いになっているときは弁護士に、と相談先を分けるのが確実です。
【さらに深掘り】宗教法人の登記申請──添付書類・商業登記法の準用・登記期間の起算点・24条の無効の範囲
ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
以下でも、法律名のない条文は宗教法人法です。
代表役員の変更登記の添付書類──条文は書類の名前を挙げていない
52条2項各号の事項の変更の登記の申請書には、「当該事項の変更を証する書類」を添付します(63条3項本文)。条文が定めるのはここまでで、どの書類がこれに当たるかの列挙はありません。また、会社の登記で議事録の添付を定める商業登記法46条2項は、宗教法人の登記の準用規定に挙がっていません(65条。各種法人等登記規則5条が準用するのは同法46条1項です)。
そのため、何を添付するかは、規則に書かれた選任の方法から考えることになります。代表役員の呼称・資格・任免・任期は規則の記載事項で(12条1項5号)、規則に別段の定めがなければ責任役員の互選で定めます(18条2項)。条文の構造からは、①規則で定めた手続で選ばれたこと、②その結果として代表役員が替わったこと、の2点を示す書類が必要になると考えられます。互選であれば、互選を証する書面が中心になると考えられます。これは条文からの整理で、公式の記載例で確かめたものではありません。
法務局ホームページの「商業・法人登記の申請書様式」には医療法人などの記載例が掲載されていますが、2026年11月2日に閲覧した時点で、宗教法人の記載例は見当たりません。就任承諾書や規則の写しの要否、互選の前提となる責任役員の選任を証する書類まで求められるかは、確認できていません。申請の前に、規則と選任の経過が分かる書類を用意して、管轄の登記所に確認するのが確実です。
なお、63条3項ただし書は、「代表権を有する者の氏名又は住所の変更の登記」には添付を要しないとしています。改姓や転居のように、同じ人の氏名や住所が変わる場面を指すと読むのが自然です(文言からの読みで、先例等は確認できていません)。同じ人が続ける重任では氏名も住所も変わらないので、文言上、このただし書には当たりません。
商業登記法の準用──19条が挙がっていないことに注意
65条が準用する商業登記法の規定は、次のとおりです。
| 準用される条文 | 主な内容 |
|---|---|
| 2条〜5条 | 登記所と登記官 |
| 7条〜15条 | 会社法人等番号、登記事項証明書、印鑑証明、当事者申請主義など |
| 17条・18条 | 申請書の方式、代理人の権限を証する書面 |
| 19条の2・19条の3 | 電磁的記録の添付、添付書面の特例 |
| 21条〜23条の2 | 受付、受領証、登記の順序、登記官による本人確認 |
| 24条(14号・15号を除く) | 申請の却下 |
| 26条・27条 | 行政区画等の変更、同一の所在場所における同一商号の登記の禁止 |
| 51条〜53条 | 管轄外への主たる事務所の移転の手続 |
| 71条1項・3項、79条、82条、83条 | 解散と合併の登記 |
| 第3章第10節、第4章 | 登記の更正・抹消、雑則 |
読むときの注意点が3つあります。
1つ目は、官庁の許可書の添付を定める商業登記法19条が挙がっていないことです。医療法人では組合等登記令25条によりこの19条が準用されますが、宗教法人では、法律自身が「所轄庁の認証を要する事項に係る登記」に所轄庁の証明がある認証書の謄本を添付すると定めています(63条6項)。
2つ目は、却下の事由のうち、登録免許税を納付しないことを定めた商業登記法24条15号が除かれていることです。本文で述べた、宗教法人の登記が登録免許税法の別表第一に掲げられていないことと符合します。
3つ目は、印鑑です。65条が準用するのは印鑑証明の12条や申請書の方式の17条で、印鑑を提出する手続の細目は省令にあります。宗教法人は各種法人等登記規則の「各種法人」(同規則1条)に当たり、同規則5条を通じて商業登記規則の9条(印鑑の提出)や35条の2(申請書や委任状に押印する場合は、登記所に提出している印鑑を押す)が準用されます。
同じ5条は、商業登記規則61条のうち1項・6項・8項も準用しています。6項は代表者の就任の際に議事録などに押した印鑑の証明書、8項は辞任を証する書面に押した印鑑の証明書についての規定です。もっとも、これらの文言は会社の機関を前提としたままで、宗教法人向けの読み替えは置かれていません。代表役員の就任や辞任にどう当てはまるかを示す公式の記載例は確認できていないので、誰がどの印鑑を押すかは、書類を作る前に登記所に確認してください。
登記期間の起算点──「変更が生じたとき」
条文の書き方は、場面によって違います。
| 場面 | 条文の言葉 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設立 | 規則の認証書の交付を受けた日から2週間以内 | 52条1項 |
| 登記事項の変更 | 変更が生じたときは、2週間以内 | 53条 |
| 管轄外への主たる事務所の移転 | 移転したときは、2週間以内 | 54条 |
医療法人の登記には、官庁の認可を要する事項について認可書の到達の時から期間を起算するという規定があります(組合等登記令24条)。宗教法人法には、これに当たる規定は置かれていません。
規則の変更は、認証書の交付によって効力を生じます(30条)。名称や目的のように、規則の変更そのものが登記事項の変更になるものは、交付の時に「変更が生じた」と読むのが自然です。ただし、これは30条と53条を合わせた読みで、起算点を定めた明文があるわけではありません。
主たる事務所の移転は、同じようには言い切れません。規則の変更の効力が生じた時と、実際に事務所を移した時がずれる場合に、どの時点を起算点とするかは、条文だけでは決まらないからです。移転の日程を組む前に、認証の手続は所轄庁に、登記は管轄の登記所に確認してください。
代表役員の変更についても、選任を決めた時か、本人が就任を承諾した時か、前任者の任期が満了した時かを定めた条文はありません。任免と任期は規則の記載事項なので(12条1項5号)、規則と選任の経過に照らして、代表役員が替わった時を確かめる必要があります。
代務者と責任役員
代表役員が死亡などで欠けて速やかに後任を選べないとき(20条1項1号)や、病気などで3か月以上職務を行えないとき(同項2号)は、規則で定めるところにより代務者を置かなければなりません。代務者の呼称・資格・任免・職務権限も規則の記載事項です(12条1項5号)。
文化庁の宗教法人のための運営ガイドブック(令和5年11月発行)は、代表役員代務者を代表役員と同様に登記事項とし、登記の注意点でも「代表役員(代務者を含む。)」が変更(再任を含む)になった場合に触れ、所轄庁への届出についても代務者の就任・退任の様式例を紹介しています。代務者を置いた場合も、2週間の期間(53条)を意識しておくことになります。
1号の場面と2号の場面は、代表役員が欠けているかどうかが違います。2号の場面で代表役員の登記がどう扱われるか、代務者の選任を証する書類に何を用いるかは、確認できていません。この点は管轄の登記所に確認してください。
責任役員の氏名は登記事項に掲げられていないので(52条2項)、責任役員だけの交代に変更の登記はありません。ただし、規則に別段の定めがなければ、事務は責任役員の「定数」の過半数で決します(19条)。在任者の過半数ではないので、欠員が多いと議決できない場面が生じえます(文言からの読みです)。互選で代表役員を定める法人では、責任役員が適法に在任していることが代表役員の変更の前提になります。責任役員についても、20条の場面に当たれば代務者を置くことになります。
代表役員と法人の利益が相反する事項では、規則で定めるところにより選ばれた仮代表役員が職務を行います(21条1項・3項)。この場面で、登記の申請にあたり仮代表役員の資格をどう証するかは、確認できていません。
不動産の名義変更の申請に、公告や規則の手続を証する書面は要るか
この点について、確定した答えを示すことはできません。
権利に関する登記の申請では、「登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するとき」に、その旨を証する情報を提供します(不動産登記令7条1項5号ハ)。一方、不動産登記令の本文と別表に、宗教法人の公告や規則の手続を名指しした定めはありません。責任役員の議決、包括団体の承認、23条の公告がこの「第三者の許可、同意又は承諾」に当たるかを判断した先例については、原典を確認できませんでした。そのため、ここでは要否を述べません。申請の前に管轄の登記所に確認してください。
条文から言えるのは、添付の要否と処分の効力は別の問題だということです。処分の効力は23条・24条が定めています。書面の添付を求められなかったことや、登記が完了したことをもって、公告や規則の手続が適法にされたことにはなりません。
24条の無効は何に及ぶか──最高裁の判決から
24条については、次の最高裁判決があります。
- 昭和43年11月19日第三小法廷判決(昭和42年(オ)第576号、集民93号379頁)
- 昭和47年11月28日第三小法廷判決(昭和45年(オ)第1239号、民集26巻9号1686頁)
- 昭和48年11月22日第一小法廷判決(昭和45年(オ)第74号、民集27巻10号1411頁)
- 平成22年4月20日第三小法廷判決(平成20年(行ヒ)第463号、集民234号79頁)
対象となる財産 24条本文が掲げるのは「境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物」です。23条の公告の対象(不動産全般、借入・保証など)より狭くなっています。昭和43年判決は、24条は本文に掲げられた物件以外の物件に関する行為には適用がなく、そうした行為が23条に違反しても、そのために無効となるものではないとしています。もっとも、判決の文言は「そのために無効となるものではなく」で、23条違反を理由とする無効についての判断と読めます。他の理由で効力が問題になる場合については述べていません。また、公告をしないで23条各号の行為をすれば、過料の対象になります(88条3号)。文化庁のガイドブックは公告を欠いた行為を一般に無効と説明していますが、効力の範囲を考えるときは条文と判決を確認してください。
規則の手続を欠いた場合 23条は「規則で定めるところによる外」と定めており、問題は公告に限られません。昭和47年判決は、23条と規則所定の手続を踏まずに境内地を譲渡した事案で、その譲渡を24条本文により無効としました。昭和43年判決も、規則で求められる総長の承認を欠く売買契約を無効としたうえで、のちに承認があれば、その承認の時から有効になると述べています。
公告の時期のずれ 昭和43年判決は、公告の時期や期間が法律や規則の定めと違っていても直ちに無効となるのではなく、公告で行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しようとする法の趣旨が維持されているかを考慮すべきだとしました。事案では、責任役員の承認を得て総代に諮問したうえで本堂に公告がされ、異議もなかったと認定されています。判決が事案へのあてはめで述べたのは「若干」の相違で、1か月の期間を短くしてよいと述べたものではありません。
善意の相手方 24条ただし書の文言は「善意」だけです。昭和47年判決は、対象の財産が宗教法人の存続の基礎となる重要な財産であることなどを理由に、善意であっても重大な過失のある相手方や第三者までは保護しないとしました。事案では、相手方の代理人に重大な過失があるとした原審の判断を、是認できないものではないとしています。一方、昭和48年判決は、ただし書は宗教法人の重要な財産の保全と取引の安全の保護との調和を図る趣旨のものだとし、昭和47年判決を引いたうえで、善意の相手方や第三者に過失がない場合はもちろん、過失があっても重大な過失がなければ、無効を対抗できないとしました。手続を欠いて境内地を建物所有の目的で賃貸した事案で、賃借人に重大な過失はなかったとした原審の判断が是認されています。昭和43年判決では、相手方が承認されたものと信じ、そう信じることに相当の理由があったとして、無効を対抗できないとした原審の判断が是認されています。規則の処分の定めが登記されている場合(52条2項7号・8条)に善意や重大な過失の判断に影響するかどうかは、これらの判決からは直接には言えません。
規則に処分の定めが見当たらない場合 平成22年判決は、規則に財産の処分に関する明示的な規定がなくても、それだけでは12条1項8号に違反するとはいえないとしました。このような規則でも、23条により、規則に別段の定めがなければ19条によって決し、公告もしなければなりません。
指定宗教法人の特例
本文では、23条と24条に所轄庁への届出は書かれていないと述べました。これには別の法律による特例があります。特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律(令和5年法律第89号)です。
同法では、一定の解散命令の請求等がされた宗教法人のうち、所轄庁が指定して公示した「指定宗教法人」(同法2条1項・7条)は、23条の公告のほか、不動産を処分し、または担保に供する少なくとも1か月前に、所轄庁に要旨を通知しなければなりません(同法10条1項)。これに違反した処分等には24条が準用されます(同条3項)。売主などの宗教法人がこの指定を受けているかどうかは、取引の前に確認すべき事項の一つです。
もっとも、同法は期限のある法律です。施行の日(2023年12月30日)から起算して3年を経過した日に効力を失うと定められています(同法附則5条1項。計算すると2026年12月30日です)。施行後3年を目途に、延長や財産保全の在り方を含めて検討するともされていますが(同法附則6条)、2026年11月2日に確認した時点で、e-Gov法令検索に延長の改正は載っておらず、衆議院の第222回国会の議案一覧にも同法の改正案は見当たりません。延長されるかどうかは分からないので、取引の時期が近づいたら所轄庁に確認してください。
規則の変更の認証や公告の進め方、所轄庁への通知は、所轄庁の窓口や行政書士に相談する領域です。税金は税理士に、処分の効力をめぐる争いは弁護士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。
- 宗教法人法 第2条・第3条・第4条・第5条・第8条・第9条・第12条・第14条・第15条・第18条〜第26条・第30条・第52条〜第54条・第62条・第63条・第65条・第66条・第69条・第70条・第81条・第83条・第88条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000126
- 商業登記法 第12条・第17条〜第19条の3・第23条の2・第24条・第26条・第27条・第46条・第51条〜第53条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 各種法人等登記規則 第1条・第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010046
- 商業登記規則 第9条・第35条の2・第61条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 組合等登記令 第3条・第24条・第25条・別表(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029
- 不動産登記令 第7条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 登録免許税法 第2条・第4条・別表第一・別表第三(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律(令和5年法律第89号)第2条・第7条・第10条・附則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000089
- 法務省「『商業登記規則等の一部を改正する省令案』に関する意見募集の結果について」(令和8年法務省令第51号の本文と意見募集の結果・e-Govパブリック・コメント): https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040?CLASSNAME=PCM1040&id=300080357&Mode=1
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
- 文化庁「宗教法人のための運営ガイドブック」(令和5年11月): https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/kanri/pdf/93980601_01.pdf
- 文化庁「登記は宗教法人の実体を正確に表していますか」: https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/kanri/toki.html
- 文化庁「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律の公布について(通知)」: https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/93982401.html
- 衆議院「議案一覧(第222回国会)」: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/menu.htm
- 最高裁判所 昭和43年11月19日第三小法廷判決(昭和42年(オ)第576号・集民93号379頁): https://www.courts.go.jp/hanrei/70298/detail2/index.html
- 最高裁判所 昭和47年11月28日第三小法廷判決(昭和45年(オ)第1239号・民集26巻9号1686頁): https://www.courts.go.jp/hanrei/52640/detail2/index.html
- 最高裁判所 昭和48年11月22日第一小法廷判決(昭和45年(オ)第74号・民集27巻10号1411頁): https://www.courts.go.jp/hanrei/52016/detail2/index.html
- 最高裁判所 平成22年4月20日第三小法廷判決(平成20年(行ヒ)第463号・集民234号79頁): https://www.courts.go.jp/hanrei/80128/detail2/index.html