この記事の要点

  • 共有の私道の補修費用は、取決めがなければ、各共有者が持分の割合で負担するのが基本(民法253条1項)
  • 陥没の穴埋めや傷んだ側溝の取替えは、一般に共有者1人でもできる「保存行為」。予防のための全面再舗装や、砂利道の新規舗装は、持分の過半数で決める
  • 払わない共有者については、1年以内に払わないときの持分取得(同条2項)などの定めがある。請求をめぐる争いは弁護士へ(簡易裁判所で扱える額なら認定司法書士も)
  • 分筆して各自が1筆ずつ持つ私道(相互持合型)は共有ではないので、多数決も持分による割り振りもそのままは当たらない
  • 最初の一歩は、私道部分の登記事項証明書で、持ち方と持分を確かめること

家の前の私道に穴が開いた、側溝が傷んで段差ができた、街灯が切れた。直したいと思っても、「誰の同意が要るのか」「費用は誰が出すのか」が分からず、手が止まることがあります。

最初に結論を書くと、共有の私道では、傷んだところを元の状態に戻す補修であれば、一般に共有者1人の判断でできます。費用は、共有者の間に取決めがなければ、持分の割合で負担するのが民法の定めです(民法253条1項)。ただし、私道が分筆されていて各自が別々の筆を持っている場合は、そもそも共有ではないので、考え方が変わります。

この記事では、舗装・側溝・街灯の補修と維持に場面を絞って整理します。共有のルールが改正された経緯や、裁判所を使う制度の全体は兄弟と共有の実家、どう動かす?で、水道管やガス管を通すための工事と承諾書は私道の掘削承諾書とはで解説しています。

根拠としてたびたび引くのは、法務省が公表している「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」(共有私道の保存・管理等に関する事例研究会・令和4年6月。以下「共有私道ガイドライン」)です。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説で、個別の私道で工事ができるかどうかや、費用の請求が認められるかどうかの見通しには踏み込みません。

はじめに確かめる2つのこと

1つ目は、私道の持ち方です。 共有私道ガイドラインは、私道全体を複数の人が所有し、民法の共有の規定が適用されるものを「共同所有型」、複数の筆に分かれていて各自がそれぞれの筆を所有し、互いに利用させ合うものを「相互持合型」と呼んで区別しています(7頁)。見分け方は、先ほど紹介した掘削承諾書の記事で説明しています。次の章からしばらくは共同所有型の話で、相互持合型は後ろの章でまとめて取り上げます。

2つ目は、共有者の間の取決めです。 私道の修繕や費用の割合について取決めがされていることもあり、その場合、工事は取決めに基づいて実施されます。長年一緒に使う中で黙示の合意ができていることもあり、まずはそれに従い、取決めがない場合に民法の共有の規定で対応することになります(共有私道ガイドライン16〜17頁)。この記事で説明する民法のルールは、取決めがない場合の話です。

舗装・側溝・街灯は、どの区分に当たるのか

共有私道ガイドラインの事例を、補修と維持の場面に絞って並べると次のようになります。いずれも「一般的には」という整理です。

工事の場面 区分 決め方 事例(頁)
舗装の陥没を塞いで、元の状態に戻す部分補修 保存行為 共有者が単独で 事例1(62頁)
段差のある部分だけでなく、今は支障のない部分も、予防のために全面再舗装 管理 持分の過半数 事例3(66頁)
全面再舗装でも、早晩陥没が予想される具体的な徴候がある場合 保存行為 共有者が単独で 事例3(66頁)
砂利道を新たにアスファルト舗装 軽微変更 持分の過半数 事例5(71頁)
老朽化して段差ができた側溝の取替えと、そのために必要な範囲の再舗装 保存行為 共有者が単独で 事例7(76頁)
側溝の取替えを機に、支障のない路面全体まで再舗装 管理 持分の過半数 事例9(81頁)
坂道の全面を階段にして、自動車や自転車を通れなくする 変更 共有者全員の同意 事例30(154頁)

分かれ目は、今ある支障を直して現状を維持する工事なのか、それとも今よりよくする工事なのかという点です。現状を維持する工事は保存行為(民法252条5項)、私道を良い状態にする改良は管理(同条1項)に当たるというのが基本の整理です(共有私道ガイドライン17〜18頁)。「軽微変更」は、形や働きを変える工事のうち、著しい変更を伴わないものをいい、これも持分の過半数で決められます(民法251条1項・252条1項)。砂利道の舗装は、改正前は全員の同意が必要と考えられてきましたが、今は軽微変更に当たると整理されています(事例5)。

読むときの注意が3つあります。

  • 舗装と側溝の事例は、自治体の助成制度が定める材質や施工方法に従った工事を前提にしています(たとえば事例1の工事は助成制度の基準に沿って陥没前と同様に戻すものです)。同じ「舗装工事」でも、前提が違えば同じ結論になるとは限りません
  • 区分は、私道の形や使われ方、工事で変わる程度などの事情を踏まえて決まり、必ずしも明確に判断できるわけではないとされています。工事費用の多さは、それだけで区分を決めるものではありませんが、効用の著しい変更に当たるかを判断するときに考慮されることがあります(共有私道ガイドライン19頁)
  • 持分の過半数で決められる工事でも、少数の共有者と話し合う機会を設けることが望ましいとされています(同18頁)

「持分の過半数」の数え方

過半数は頭数ではなく、持分の割合で数えます(民法252条1項)。6人が6分の1ずつ持つ私道なら、3人の賛成では合計6分の3でちょうど半分にとどまり、足りません。4人の賛成(合計3分の2)が必要です。

連絡のつかない人の持分も、そのまま全体に含めて数えます。事例5は、6人のうち1人が所在不明でも、6人全体の持分の過半数の同意で舗装工事ができるとしています。賛否が分からない人や連絡のつかない人が多くて過半数に届かないときは、裁判所の裁判を得て、その人たちを除いた持分の過半数で決める仕組みがあります(民法252条2項。事例5・72頁)。制度の説明は、先ほど紹介した実家の共有の記事をご覧ください。

街灯は、事例がないので一般の基準に当てはめて考える

共有私道ガイドラインの全37事例の中に、街灯や防犯灯を取り上げた事例は見当たりません(「街灯」「防犯灯」「照明」の語は本文に出てきません)。ですから、以下はガイドラインの結論ではなく、同じ基準に当てはめた考え方です。

  • 切れた電球や壊れた器具を、同じ程度のものに取り替える:現状を維持する行為なので、保存行為と考えやすい場面です
  • 街灯を新しく立てる:共有私道ガイドラインは、私道への電柱の新設(事例27・145頁)や階段への手すりの設置(事例32・160頁)を、私道の機能を変えないなどの理由で持分の過半数で決める「管理」と整理しています。ただ、事例27は電力会社(一般送配電事業者)が所有する電柱のために土地を使う権利を設定する場面、事例32は既にある階段の事例で、どちらも街灯の新設そのものではありません。街灯も同じように考える余地はありますが、規模や場所によっては結論が変わることがあります
  • 立てる場所:電柱やゴミボックスの事例では、宅地からの出入りの妨げになることもあるので、設置位置を話し合い、少なくとも家の前に置かれる共有者の同意を得るなど十分に配慮することが望ましいとされています(事例27・146頁、事例33・162頁)

もう一つ、その街灯が誰の設備なのかを先に確かめる必要があります。私道の上に立っているからといって、共有者の持ち物とは限らず、上の当てはめは街灯が共有者の設備である場合の話です。誰が設置して誰が電気代を払っているのかによって、修理を頼む先も、費用の話も変わります。

費用は「持分の割合」が基本

民法253条1項は、各共有者は持分に応じて管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う、と定めています。ここでいう管理の費用とは、共有物の維持や改良のための必要費・有益費(必要な出費と、価値を高めるための出費)をいい、私道の共有者は、補修などのための費用を持分に応じて支払う義務を負うとされています(共有私道ガイドライン18頁)。

仮の数字で計算すると、工事費が60万円、持分が6分の1の共有者の負担は10万円です。条文は「持分に応じ」と定めているので、世帯ごとの均等割や、よく通る人が多く払う形にしたいときは、共有者の間で取り決めることになります。

場面ごとに気をつけたい点を挙げます。

  • 1人で工事した場合:保存行為は単独でできますが、その費用も管理の費用に含まれるので、他の共有者に持分の分を求めることになります。ただ、「単独で工事できる」ことと「かかった金額を全額そのまま請求できる」ことは別の話です。その工事が必要だったか、金額が妥当かでもめることもあるので、着工前に見積もりを見せて説明しておくと、後の話がしやすくなります
  • 過半数の決定に反対した共有者:253条1項は、賛成した人と反対した人で負担を分けて書いてはいません。ただ、反対する人がいると、その工事が過半数で決められる区分に当たるのかをめぐって深刻な争いになることがあるとされています(共有私道ガイドライン19頁)。費用を求められるかも含めて、個別の判断は弁護士の分野です(請求額が140万円を超えないものは認定司法書士も相談や代理を受けることができます)
  • 持分を持っていない沿道の家:253条は「各共有者」の負担を定めた条文です。沿道に住んでいても私道の持分がない人に、この条文を根拠に負担を求めることはできません。別に費用についての約束があれば、その約束の話になります。約束がないときに他の根拠で求められるかどうかは、個別の判断です。逆に、沿道の宅地の所有者以外の人が共有者になっている私道もあります(共有私道ガイドライン16頁)。誰が共有者かは、登記事項証明書で確かめます

自治体の補助金があるか、先に調べる

自治体の中には、一般の交通に使われている私道の整備・舗装や排水施設の工事に補助金を出しているところがあります。ただし、所有者全員の承諾書を申請の必要書類にしている自治体が多いとされています(共有私道ガイドライン85頁)。

つまり、民法上は1人で補修できる工事でも、補助金を使うなら全員分の承諾書を求められることがあります。民法の話と補助金の要件は別物です。同じページでは、一定の条件のもとで承諾書の添付を省略できるようにした熊本市の例も紹介されています。工事を頼む前に、制度の有無と必要書類を市区町村の窓口で確認してください。

払わない共有者がいるとき

まず押さえておきたいのは、工事を決めることと、費用を集めることは別の問題だという点です。保存行為や過半数で決められる工事は、1人が費用を払わないからといって工事ができなくなるわけではありません。一方で、払わない人の分を誰がどう回収するかは、工事の後にも残ります。

民法には、次の定めがあります。

  • 1年以内に払わないとき:共有者が1年以内に負担の義務を果たさないときは、他の共有者は、相当の償金(埋め合わせのお金)を払って、その人の持分を取得できます(民法253条2項)。「1年」をいつから数えるかは、条文に書かれていません。条文の要件に当たるか、償金がいくらになるかは個別の事情によるので、この記事では立ち入りません
  • 持分が売られたとき:共有者の1人が共有物について他の共有者に持つ債権は、持分を買ったり贈与を受けたりした人(特定承継人)に対しても請求できます(民法254条)。これから私道の持分つきの家を買う方は、前の持ち主に未払いの工事費がないか確認しておくと安心です
  • 共有者が亡くなったとき:相続人は亡くなった方の権利義務を受け継ぎます(民法896条本文)。私道の持分が亡くなった方の名義のままだと、請求の相手を確かめるところから始まります(私道の相続登記を忘れずにで整理しています)

連絡のつかない共有者がいる場合、補修そのものは保存行為であれば進められますが(事例1)、その人の分の費用を受け取れるとは限りません。所在の分からない共有者の持分を裁判で取得する制度(民法262条の2)もありますが、費用の回収のための制度ではなく、裁判所の手続と費用がかかります。

話し合いで解決せず、費用の請求をめぐって争いになったら、弁護士にご相談ください。請求額が140万円を超えない場合は簡易裁判所の扱いとなり(裁判所法33条1項1号)、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)も、相談や代理を受けることができます(司法書士法3条1項6号・7号、2項)。

分筆して各自が持つ私道(相互持合型)との違い

ここまでの話がそのまま当てはまらないのが、私道が細長く何筆にも分かれ、各自が別々の筆を持っている相互持合型です。民法上の共有関係にはないので(共有私道ガイドライン26頁)、持分の過半数で決める仕組みがありません。

かわりに登場するのが地役権(他人の土地を自分の土地の便益のために使う権利。民法280条)です。分譲の際に開設された相互持合型では、お互いに通行のための地役権を黙示に設定していることが通常だとされています(同27頁)。自分の筆は自分の土地、他人の筆は「通行のために使わせてもらう土地」という関係になります。

場面 共同所有型 相互持合型
陥没の部分補修 共有者が単独で(事例1) 他の筆の所有者の同意がなくても、通行を確保するために補修できると考えられる(事例2・64頁)
老朽化した側溝の取替え 共有者が単独で(事例7) 通行を確保するために必要最小限の工事なら、その筆の所有者は受け入れるべきものと考えられる(事例8・78頁)
支障のない部分も含む全面再舗装 持分の過半数(事例3) 賛成者の筆は可能。通行に支障がない他人の筆は同意なしにはできない。早晩陥没する具体的な徴候があれば受け入れる義務を負うこともある(事例4・68〜69頁)
砂利道の新規舗装 持分の過半数(事例5) 賛成者の筆のみ。他人の筆は所有者の承諾なしにはできない(事例6・74頁)
連絡のつかない人がいるとき 裁判を得て、残りの共有者の持分の過半数で決める(民法252条2項) 不在者財産管理人の選任や所有者不明土地管理命令の申立てをして、選ばれた管理人から同意を得る(事例4・69頁、事例6・74頁)
費用 持分の割合(民法253条1項) 持分で割るこの条文は、共有でない以上そのままは当たらない。まず取決めの内容を確かめる(定めがないときの分け方を一律に決める条文は見当たらない)

費用については、共有私道ガイドラインの相互持合型の事例は工事ができるかどうかを検討したもので、費用の分け方までは示していません。民法286条は、地役権を設定するときの定めや後の契約で、通路の土地の所有者が自分の費用で工作物を設けたり修繕したりする義務を負ったときは、その土地を後に買った人もその義務を負うと定めています(同28頁で触れられています)。分譲時の書類や近隣の取決めに定めがないかを、まず確かめることになります。

なお、相互持合型でも、1つの筆を数人で共有していることがあります。その場合、その筆の中については共有のルールで処理する選択肢があるとされています(事例2・事例4)。

先に決めておくと、もめにくいこと

工事のたびに話がこじれないよう、次のような点を共有者の間で話し合い、書面に残しておくと役立ちます。

  • 誰が業者に連絡し、費用をどの割合で分けるか
  • 工事の前に見積もりを共有すること
  • 連絡先と、持分を売るときや相続があったときの引継ぎ方

共有の私道では、共有者の持分の過半数で「管理者」を選ぶこともできます(民法252条1項・252条の2)。管理者は管理に関する行為をすることができますが、著しい変更を加えるには共有者全員の同意が必要です(民法252条の2第1項)。

まとめ

共有の私道の補修は、傷んだところを元の状態に戻す工事であれば一般に保存行為として1人でもでき、予防のための全面再舗装や砂利道の新規舗装は持分の過半数で決める、というのが共有私道ガイドラインの整理です。街灯には事例がないので、同じ基準に当てはめて考えます。

費用は、取決めがなければ持分の割合で負担するのが基本です。払わない人がいても、持分を買った人や相続人に話が引き継がれることがあり、1年以内に払わないときの持分取得の定めもあります。請求をめぐって争いになれば弁護士の分野で、簡易裁判所で扱える額なら認定司法書士も相談や代理を受けることができます。一方、分筆して各自が持つ私道は共有ではないので、多数決も持分による割り振りもそのままは当たりません。

まずは私道部分の登記事項証明書で、持ち方、持分、名義人を確かめるところから始めてください。名義が亡くなった方のままになっている、誰に確かめればよいか分からないといった場合は、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどのくらいかかりますか。誰がいくら払うのですか。

工事費は工事の内容と業者の見積もりによるので、この記事では金額を示せません。誰がいくら負担するかは、取決めがなければ持分の割合です(民法253条1項)。自治体の補助金があるかも先に確かめてください。持ち方や持分を確かめる登記事項証明書の手数料は、書面での請求なら1通600円、オンライン請求なら490円(郵送で受け取るなら520円)で、1通が50枚を超えると加算があります(登記手数料令2条1項・3条1項)。

Q. 補修や支払いに期限はありますか。放置するとどうなりますか。

民法の共有の条文に、いつまでに補修せよという期限は書かれていません。ただ、傷みを放置すると通行の支障になり、舗装や側溝が原因で事故が起きた場合は、土地の工作物の責任(民法717条)が問題になることがあります(当たるかどうかは個別の判断です)。立て替えた費用の請求権は債権なので、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効の問題が生じます(民法166条1項。いつから数えるかは個別の事情によります)。私道持分の相続登記は、相続があったことと持分を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2第1項・164条1項)。

Q. 自分でできますか。どこに相談すればよいですか。

共有者への連絡や業者への発注は、ご自身で進められます。工事の内容は工事業者、補助金は市区町村の窓口に確認してください。私道の名義の確認や相続登記、裁判所に出す書類の作成は、お近くの司法書士にご相談ください。私道の境界の確認は土地家屋調査士の分野です。費用の請求や工事への反対をめぐる争いは弁護士へ。費用の請求で請求額が140万円を超えないものは、認定司法書士も相談や代理を受けることができます。


【さらに深掘り】相互持合型の費用と民法288条・団地の特則・登記記録で分かること

ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、補修の区分と費用の基本を整理しました。ここでは、本文でまず取決めの内容を確かめるとした相互持合型の費用について地役権の条文を読み、共同所有型の私道が区分所有法の「団地」に当たる場合の特則、登記記録から分かることの範囲、連絡のつかない共有者がいるときの裁判の位置づけを、条文と共有私道ガイドラインの記載に沿って確かめます。

1. 民法288条2項は、相互持合型の費用をどこまで決めているか

民法288条2項が定めているのは、地役権がある場合に工作物を使う承役地の所有者の分担です。相互持合型の補修費用を関係者全員に割り振る条文ではありません。同条1項は、承役地の所有者は地役権の行使を妨げない範囲で、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用できるとし、2項は「前項の場合には」、承役地の所有者は利益を受ける割合に応じて工作物の設置及び保存の費用を分担すると定めています。文言から確かめられるのは次の点です。

  • 前提は地役権があること:「承役地」「地役権の行使」を前提にした地役権の章の規定なので、民法の共有の規定が適用される共同所有型の費用は、本文のとおり253条の問題です。相互持合型でも、地役権がなければこの条文の前提を欠きます。もっとも、地役権は明示の設定に限られません。共有私道ガイドラインは、分譲の際に開設された相互持合型では黙示の設定がされていることが通常であるとし(27頁)、時効による取得も可能としています(28頁。民法163条・283条)
  • 対象は工作物:舗装面や側溝がここでいう工作物に当たるのかについて、条文は例を挙げていません。共有私道ガイドラインの本文にも288条への言及は見当たらないため、ここでは結論を置きません
  • 分担する人として書かれているのは承役地の所有者:甲・乙・丙が1筆ずつ持つ私道で、丙の筆の工作物を甲が取り替えた場面を考えます。丙は、自分の筆の工作物を使う承役地の所有者として、この条文の場面に入り得ます。一方、同じ筆を通る乙は、丙の筆については要役地の側に立つので、2項に乙の分担は書かれていません。乙に負担があるともないとも、この条文からは決まりません
  • 割合は利益を受ける割合:持分の割合ではなく、算定の方法も条文には示されていません。費用の範囲は「設置及び保存」で、予防のための全面再舗装のような工事の費用が含まれるかも、書かれていません

先に確かめたいのは、設定の内容です。地役権の内容と効力は設定行為で定められます(共有私道ガイドライン28頁)。承役地の所有者が自分の費用で工作物を設け、または修繕する義務を設定行為や後の契約で負担したときは、その土地を後に取得した人(特定承継人)も義務を負います(民法286条)。この義務は、承役地の所有者が地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転することで免れることができます(同法287条)。そして、この286条の定めは地役権の登記の登記事項です(不動産登記法80条1項3号)。そのため、分譲時の書類や近隣の取決めと、承役地の乙区を確かめたうえで、なお定めがない部分について288条の当てはめを考える、という順序になります。なお、民法286条の条文に登記の文言はありません。定めが登記されていないときに後の取得者まで義務が及ぶかどうかは、民法286条と不動産登記法80条1項3号の文言だけでは読み切れないので、ここでは結論を置きません。

また、共有私道ガイドラインは、承役地の損傷で通行に支障が生じた場合、要役地の所有者は補修工事をすることができ、承役地の所有者に修繕を求めることもできると考えられるとしています(28頁)。ただし、費用の割合には触れていません。工事ができることと費用を誰が負うかは別の問題で、費用をめぐる争いは弁護士の分野です(請求額が140万円を超えないものは認定司法書士も相談や代理を受けることができます)。

2. 共同所有型の私道が区分所有法の「団地」に当たるとき

戸建ての分譲地でも、区分所有法の団地の規定が適用されることがあります。要件は、一団地内に数棟の建物があり、その団地内の土地がそれらの建物の所有者の共有に属することです(建物の区分所有等に関する法律65条)。共有私道ガイドラインは、共同所有型の私道とこれに接する宅地が客観的に一区画をなしていると認められる場合があり、建物は戸建てでもよいとしています(29頁)。当たる場合、建物の所有者(団地建物所有者)は法律上当然に、全員で管理のための団体を構成し(30頁)、集会を開くことなどができます。

もっとも、関係者が団地関係を認識していないことも少なからずあり、規約を定めるなどの措置を講じていない限り、民法の共有の規律の適用が排除されるものではないと考えられています(29頁)。つまり、民法の決め方に加えて、集会の決議という別の道があるという位置づけです。各筆を別々に持つ相互持合型は共有に属さないので、この規定の対象外です。

ガイドラインを読むときの注意点は、手続の説明が令和4年時点のものだということです。区分所有法は、令和7年法律第47号による改正が2026年4月1日に施行され、集会の決議の要件が変わりました。現行の条文(同法66条で団地に準用)と比べると、次のとおりです。

場面 現行の条文 共有私道ガイドライン第2版の記載
形状・効用の著しい変更 団地建物所有者の過半数で議決権の過半数を持つ人が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上の多数。規約で、出席の割合は上げることが、決議の割合は2分の1を超える範囲で下げることができる(17条1項)。瑕疵の除去やバリアフリーのために必要な変更は3分の2(同条5項) 団地建物所有者及び議決権の各4分の3以上(31頁、事例30・154頁)
軽微変更を含む管理 出席した団地建物所有者とその議決権の各過半数(18条1項・39条1項) 団地建物所有者及び議決権の各過半数(32頁)
所在等が分からない人 裁判を得ると、その人以外で決議することができ、その人は議決権を持たない(38条の2) 民法251条2項の裁判を得た場合について、不明の人を含む全体を母数とする(31頁注1。38条の2の裁判とは別の裁判についての記載)
招集通知の内容 1週間前までに、会議の目的と議案の要領を示す(35条1項) 議案の要領は著しい変更の場合に通知する(31頁)

2026年4月1日より前に招集の手続が始まった集会は、改正前の例によります(令和7年法律第47号附則2条2項)。施行前からの規約の定めは、改正後の条文に抵触する部分が施行日に効力を失います(同条3項)。これから招集する集会には、現行の条文が当たります。

頭数と議決権の両方を数える点は、持分だけで数える民法252条1項との大きな違いです。議決権は、規約に別段の定めがなければ土地の持分の価格の割合によります(38条)。管理者がいなければ、団地建物所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を持つ人が集会を招集できます(34条5項)。保存行為は各共有者が単独ですることができ(18条1項ただし書)、決議が建物の使用に特別の影響を及ぼすときは、その建物の所有者の承諾が必要です(17条2項・18条3項)。

事例30(154〜155頁)は、4人が各4分の1で共有し、うち1人が所在等不明の坂道を全面的に階段にする場面で、民法251条2項の裁判、管理人からの同意、団地の集会の決議という3つの道を示し、集会の決議については残る3人の同意で設置できると考えられるとしています。現行の17条1項で数えても、団地に当たり、規約で割合を変えていなければ、残る3人が出席して賛成することで、出席の要件(頭数・議決権とも4分の3で過半数)にも決議の割合(出席者全員の賛成)にも計算の上では届きます。ただし、これは割合の計算の話で、招集の手続を踏むことや、決議が建物の使用に特別の影響を及ぼすときの承諾(17条2項)は別に必要です。

費用の面でも違いがあります。各共有者は、規約に別段の定めがない限り持分に応じて負担するとされ(19条)、土地等について他の団地建物所有者に対して持つ債権には先取特権が認められ(7条)、その債権は特定承継人に対しても行うことができます(8条)。

団地に当たるかどうかは事情によるので、決議の前に確かめる必要があります。決議の効力をめぐる争いは、弁護士の分野です。

3. 登記記録で分かること、分からないこと

共同所有型と相互持合型の見分け方の基本は、私道の掘削承諾書とはの深掘りで整理しています。補足すると、相互持合型では、宅地とそれに接する通路の土地が同じ所有者に属さないように分けられていることがあります(共有私道ガイドライン26頁)。家の前の筆が自分の名義とは限らないので、通路を構成する筆をすべて確かめます。

費用や決定の話と関わる事項を、登記記録に現れるかどうかで分けると次のようになります。

事項 登記記録との関係 根拠
共有者と各自の持分 甲区に記録される 不動産登記法59条4号
共有物分割禁止の定め 定めがあれば登記事項 同条6号
地役権の目的と範囲 登記があれば承役地に記録され、要役地の登記記録にも記録される 同法80条1項2号・4項、不動産登記規則159条1項
承役地の所有者の修繕義務の定め(民法286条) 定めがあれば、地役権の登記の登記事項 不動産登記法80条1項3号
黙示に設定された地役権 設定の登記がなければ現れない 共有私道ガイドライン27頁
共有物の管理者 登記事項に挙げられていない 不動産登記法59条各号
共有者間の修繕や費用の取決め、未払いの工事費 登記事項に挙げられていない 同条各号

持分の移転:売買や相続で持分が移ると、移転の登記によって甲区の名義人と持分が書き換わります。売買などによる持分の取得を第三者に主張するには登記が必要で(民法177条)、相続による取得には申請の義務があります(不動産登記法76条の2第1項。私道の相続登記を忘れずに参照)。一方、費用を負担するのは「各共有者」(民法253条1項)で、登記名義人とは書かれていません。名義が亡くなった方のままなら、負担する人は登記記録の名前とは一致しません。逆に、持分を買う場面では、民法254条の債権があるかどうかを登記記録から読み取ることはできないので、売主や他の共有者に確かめることになります。

管理者の選任:共有物の管理者の選任と解任は、持分の価格の過半数で決めます(民法252条1項)。管理者の氏名などは権利の登記の登記事項に挙げられておらず、不動産登記法・同令・同規則の条文にも、共有物の管理者についての定めは見当たりません。そのため、持分を取得した人は登記記録から管理者の有無を知ることができず、選任の決定を示す書面が手がかりになります。管理者が共有者の決定に反して行った行為は共有者に効力を生じませんが、善意の第三者には対抗できない(同法252条の2第3項・4項)ので、決定の内容も書面で残しておく意味があります。

なお、共有者間の取決めが持分を取得した人にどこまで及ぶかには、考え方の対立があります。法制審議会の部会資料は、民法254条の「債権」には管理費用の償還請求権のほか、使用や管理の定め、負担の割合の定めなどの合意も含まれると理解されているとし、持分を取得しようとする人は合意に拘束されることを前提に判断することを求められている、と説明しています。一方で同じ資料は、取得した人に不測の損害を生じさせるおそれがあるとして、合意の履行を求めるには登記を必要とすべきだとする見解も有力だと紹介しています(法制審議会民法・不動産登記法部会「部会資料27」9〜10頁)。その後の部会資料ではこの点の規律を設けないこととされ(同「部会資料40」5頁)、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)でも254条は改められていません。254条の文言のうえで、どちらかの考え方に決着したわけではありません。個別の取決めがどこまで及ぶかの見通しには、ここでは立ち入りません。

4. 連絡のつかない共有者がいるときの民法252条2項1号の裁判

補修の場面でこの裁判が問題になるのは、限られた場合です。元の状態に戻す補修が保存行為に当たるなら、単独でできるので裁判は要りません(事例1・62頁)。持分の過半数で決める工事でも、連絡のつかない人の持分を含む全体の過半数の同意が得られれば足ります(事例5・71頁)。賛成が過半数に届かないときに、この裁判を検討することになります(同72頁)。要件や公告の手続、裁判の後に別途決定が必要なこと(共有私道ガイドライン21〜22頁)は、掘削承諾書の記事の深掘りで扱っています。分筆された相互持合型は共有ではないので、この裁判の対象になりません。

費用との関係では、民法252条2項は決め方についての条文で、費用の定めを置いていません。裁判で持分が移るわけではないので、除かれた人も「各共有者」(同法253条1項)のままだと読むのが文言に沿いますが、裁判を得たからといって、その人の分の費用を受け取れることまで保証されるわけではありません。

申立ての先は共有物の所在地を管轄する地方裁判所です(非訟事件手続法85条1項1号)。簡易裁判所の手続ではないので、認定司法書士の代理の対象(司法書士法3条1項6号)には当たらず、手続代理人は原則として弁護士です(非訟事件手続法22条1項)。申立書類の作成は、司法書士の業務の範囲です(司法書士法3条1項4号)。

私道の持ち方、取決めの有無、登記記録の内容によって、当たる条文が変わります。どの筆の記録を確かめるべきか、裁判所に出す書類をどう整えるかは、お近くの司法書士にご相談ください。工事の可否や費用をめぐる争いは弁護士へ(費用の請求で請求額が140万円を超えないものは認定司法書士も)、境界の確認は土地家屋調査士の分野です。


参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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