この記事の要点

  • 社会福祉法人の登記は、社会福祉法29条を受けて組合等登記令に定められています。役員で登記されるのは理事長だけで、ほかの理事・監事・評議員は登記されません。
  • 理事長が替わったら、2週間以内に変更登記をします(組合等登記令3条1項)。任期が満了して同じ人が続ける「重任」でも、登記が必要です。
  • 資産の総額は、毎年度末の金額で、その末日から3か月以内に変更登記をします(同条3項)。会計年度は3月31日に終わるので、期限は6月末です。
  • 所轄庁(しょかつちょう)との関係は、定款変更の認可、定款変更の届出、毎年の決算の届出で別々です。理事長の変更を届け出るかどうかは、所轄庁の案内で扱いが分かれているので確認が必要です。
  • 登記を怠ると、理事などが20万円以下の過料の対象になります(社会福祉法165条1号)。認可や届出は所轄庁の窓口や行政書士へ、税金や会計は税理士へ、登記はお近くの司法書士へ。

社会福祉法人の登記で定期的に出てくるのは、「理事の任期ごとの理事長の登記」と「毎年6月末までの資産の総額の登記」の2つです。どちらも期限が条文で決まっています。一方で、所轄庁への届出は登記とは別の手続で、登記をすれば済むものでも、届出をすれば登記がいらなくなるものでもありません。

この記事では、登記の手続を中心に、所轄庁の手続との順番を整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。以下、法律名のない条文は社会福祉法です。

1. 社会福祉法人の登記のルールはどこに書かれているか

社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人をいいます(22条)。設立、事務所の移転、登記事項の変更、解散などの場面で登記をしなければならないことは29条1項に書かれていますが、中身は「政令の定めるところ」に委ねられています。その政令が組合等登記令(くみあいとうとうきれい。会社以外のさまざまな法人の登記について定めた政令)です。医療法人と同じ政令で、別表に社会福祉法人が掲げられています。

設立の流れは次のとおりです。

  1. 定款を作り、所轄庁の認可を受ける(31条1項)
  2. 認可書が届いてから2週間以内に、主たる事務所の所在地で設立の登記をする(組合等登記令2条1項・24条)
  3. 登記によって法人が成立する(34条)

設立の登記の申請書の添付書類は、法務局の記載例では、定款、設立時理事長の選定を証する書面、就任承諾書、資産の総額を証する書面、認可書(または所轄庁の認証がある謄本)です。定款の認可の申請は、所轄庁の窓口や行政書士に相談する領域です。

所轄庁は、原則として主たる事務所の所在地の都道府県知事です。ただし、主たる事務所が市の区域内にあって事業がその市の区域を越えない法人は市長(特別区の区長を含みます)、一つの都道府県の中で二つ以上の市町村にまたがって事業を行う指定都市内の法人などは指定都市の長、二つ以上の地方厚生局の管轄にわたる一定の法人は厚生労働大臣です(30条)。自分の法人の所轄庁がどこかは、最初に確認しておきましょう。

2. 社会福祉法人の登記簿に載ること

登記される事項は、組合等登記令2条2項と別表に並んでいます。

登記される事項 中身
目的及び業務 定款に定めた目的など
名称 「社会福祉法人〇〇会」など
事務所の所在場所 主たる事務所・従たる事務所
代表権を有する者の氏名・住所・資格 社会福祉法人では理事長
存続期間または解散の事由 定めたときだけ
資産の総額 別表で社会福祉法人について定められた登記事項

法人の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持つのは理事長です(45条の17第1項)。理事は6人以上、監事は2人以上置きますが(44条3項)、登記簿に氏名が載るのは理事長だけです。株式会社では取締役全員の氏名が登記されるので、この点は違いがあります。

もっとも、理事・監事・評議員の氏名と住所は、役員等名簿として作成して備え置き(45条の34第1項2号)、毎年の決算の届出の対象にもなります(59条2号)。理事だけが交代した場合、変更の登記はありませんが、名簿は直す必要があります。

3. 理事長の変更登記

任期が切れたら、同じ人でも登記が必要

役員の任期は、選任後2年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までです。定款で短くすることはできます(45条)。たとえば、2025年6月の定時評議員会で選任された理事なら、2027年3月に終わる会計年度に関する2027年6月の定時評議員会の終結の時までとなります。

理事長は理事の中から選ぶので(45条の13第3項)、理事の任期が終われば、理事長の地位も続きません。法務局の記載例の議事録の例も、「理事の任期を満了することにより理事長の資格を喪失し、退任することになる」と書いています(後任が就任するまでの扱いは、下の「理事長が急に欠けたとき」で説明します)。同じ人が再び理事に選ばれ、理事長に選ばれた場合を「重任(じゅうにん)」といい、法務局の記載例にも「理事長の重任」の変更登記申請書が用意されています。理事長の顔ぶれが変わらなくても、任期のたびに登記が必要になると考えてください。株式会社の役員の重任と似た考え方です。

手続の流れ

  1. 評議員会で理事を選任する(43条1項)
  2. 理事会で理事長を選定する(45条の13第2項3号・3項)
  3. 本人が理事と理事長への就任を承諾する
  4. 2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更の登記をする(組合等登記令3条1項)

定時評議員会とその後の理事会の日程を決める段階で、登記の期限まで見込んでおくと安心です。評議員会と理事会の日がずれるときなど、2週間をどの日から数えるかがはっきりしない場面は、後半の深掘りで整理します。

必要な書類

法務局の記載例では、添付書類は次のように示されています。

書類 重任の場合 別の人に交代する場合
評議員会議事録 必要 必要
理事会議事録 必要 必要
就任承諾書 理事と理事長の2通(議事録の記載で援用も可) 同じ
印鑑証明書 議事録に理事長が登記所に提出している印鑑を押さないときは、出席した理事・監事全員の実印と印鑑証明書 原則として出席した理事・監事全員の実印と印鑑証明書(変更前の理事長が登記所に提出した印鑑が押されていれば不要)
定款 定足数や決議要件に別段の定めがある場合など、一定の場合 同じ
辞任届・死亡届など ― 辞任なら辞任届、死亡なら死亡届または法定相続情報一覧図の写し

新しい理事長が申請書や委任状に押印する場合は、登記所に提出した印鑑を押します。印鑑の提出は印鑑届書で行います(法務局の記載例)。法人の実情によって変わることがあるので、書類を作る前に、法務局の記載例と管轄の登記所で確認してください。

理事長が急に欠けたとき

任期満了や辞任で理事長が欠けた場合は、新しい理事長が就任するまで、退任した理事長がなお理事長としての権利義務を持ちます(45条の17第3項が準用する45条の6第1項)。事務が遅れて損害が生じるおそれがあるときは、所轄庁が、利害関係人の請求または職権で、一時理事長の職務を行うべき者を選任できます(同条2項)。

この「権利義務を持ち続ける」定めは、条文上、任期満了と辞任の場合のものです。理事長が亡くなった場合は、速やかに理事会で後任を選定し、登記をすることになります。

理事長が引っ越したときと、住所の表示

理事長の住所は登記事項なので、転居した場合も2週間以内に変更の登記をします(組合等登記令3条1項)。氏名や住所だけの変更では、変更を証する書面の添付はいりません(同令17条1項ただし書)。

また、2026年12月1日からは、理事長の住所を登記する申請と同時に申し出れば、登記事項証明書に載る住所を市区町村までの表示にとどめられるようになります(令和8年法務省令第51号による改正後の各種法人等登記規則5条が準用する商業登記規則31条の3)。住所が登記されなくなるわけではありません。対象となる役員や必要な書面は、法務省が整理して周知することを検討するとしている段階なので、管轄の登記所に確認してください。

4. 資産の総額の変更登記

資産の総額は、組合等登記令の別表で社会福祉法人について定められた登記事項です。決算のたびに変わるため、期限に特別な定めがあります。

  • 変更の登記は、毎事業年度の末日現在の金額で、その末日から3か月以内にすれば足ります(組合等登記令3条3項)。
  • 社会福祉法人の会計年度は4月1日に始まり翌年3月31日に終わると法律で決まっているので(45条の23第2項)、期限は6月末です。厚生労働省の社会福祉法人指導監査実施要綱も「毎年度6月末まで」としています。
  • 登記される金額は、財産目録の「差引正味財産」、つまり資産の部の合計から負債の部の合計を引いた金額です。資産の部の合計ではないので注意してください(法務局の記載例)。
  • 添付するのは資産の総額を証する書面で、財産目録または資産の総額が判明する貸借対照表がこれに当たります(組合等登記令17条1項、法務局の記載例)。

ちょうど同じ6月末が、所轄庁への決算の届出の期限でもあります(59条)。財産目録などの作成も毎会計年度終了後3か月以内です(45条の34第1項)。監事の監査、決算の理事会、定時評議員会の日程は、登記の期限も見込んで組むことになります。理事の任期が切れる年は、理事長の重任の登記も近い時期に重なります。

ただし、決算の届出をしても、登記をしたことにはなりません。所轄庁への届出と法務局への登記は別の手続です。

なお、NPO法人では資産の総額は登記事項から外れましたが、社会福祉法人については、現行の組合等登記令の別表に今も掲げられています。

5. 所轄庁への認可・届出と、登記の順番

混同しやすいのは、所轄庁との手続が場面によって違うことです。

場面 所轄庁との関係 法務局の登記
目的・名称の変更 定款変更の認可を受ける(45条の36第2項) 認可書が届いてから2週間以内(組合等登記令3条1項・24条)
事務所の移転 定款変更をともなうときは、認可は不要で、遅滞なく届出(45条の36第4項、施行規則4条1項1号) 移転してから2週間以内(組合等登記令3条1項。他の登記所の管轄へ移るときは同令4条)
公告の方法の変更 定款変更は認可不要で、遅滞なく届出(45条の36第4項、施行規則4条1項3号) 登記事項ではない
基本財産の増加 定款変更は認可不要で、遅滞なく届出(45条の36第4項、施行規則4条1項2号) 資産の総額は年度末の金額で登記
理事長の変更 法律上の定めは見当たらない(下記) 2週間以内(組合等登記令3条1項)
毎年の決算 毎会計年度終了後3か月以内に届出(59条) 資産の総額に変更があれば6月末まで(組合等登記令3条3項)

定款の変更は評議員会の決議によらなければならず(45条の36第1項)、議決に加わることができる評議員の3分の2以上の多数が必要です(45条の9第7項3号)。認可が必要な変更は、評議員会で決議しただけでは効力を生じません(45条の36第2項)。法務局の記載例でも、目的の変更の登記の変更年月日は、認可書が届いた日を記載するとされ、申請書には評議員会議事録と認可書(または所轄庁の認証がある謄本)を添付します。

どの変更に認可が必要か、届出の書類をどう作るかは、所轄庁の窓口や行政書士に相談してください。

理事長が替わったことの届出は、所轄庁に確認する

ここが医療法人との違いです。医療法人には、登記をしたら都道府県知事に届け出るという定めがあります(医療法施行令5条の12)。これに対し、社会福祉法とその施行令・施行規則、厚生労働省の通知(「社会福祉法人の認可について」の審査基準・定款例・審査要領と、社会福祉法人指導監査実施要綱)を確認した範囲では、登記をしたら所轄庁に届け出るという一般的な定めは見当たりません。

もっとも、定めが見当たらないからといって届出がいらないとまでは言えず、所轄庁の案内も分かれています。

  • 佐世保市は、理事長を変更したら「法務局に登記のうえ、遅滞なく佐世保市に届け出てください」と案内し、履歴事項全部証明書などの添付を求めています。
  • 伊勢崎市も、理事長に変更があったときは届け出るよう案内し、届出の前に法務局へ登記するよう求めています。
  • 大和市の手引『社会福祉法人の事務手続について』(令和7年6月)は、「理事長変更に係る所轄庁への届出は、必要ありません」としています。

したがって、理事長が替わるときは、自分の法人の所轄庁の案内を確認してください。届出を求めている上の2市の案内では、どちらも登記が先です。所轄庁の扱いにかかわらず、登記の2週間の期限は変わりません。

6. 怠ったときの過料と、登記の費用

過料 … 政令の規定による登記をすることを怠ったときは、評議員、理事、監事、清算人などが20万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭の制裁)に処せられることがあります(165条1号)。定款変更の届出をしない、または虚偽の届出をしたときも同様です(同条4号)。

第三者への影響 … 登記しなければならない事項は、登記の後でなければ第三者に対抗する(主張する)ことができません(29条2項)。理事長が交代したのに登記をしないままでいると、取引の相手方などに交代を主張できない場面が生じえます。

登録免許税 … 登録免許税は、登録免許税法の別表第一に掲げる登記などについて課される税金です(登録免許税法2条)。別表第一には社会福祉法人の登記が掲げられていないため、社会福祉法人の設立や変更の登記には登録免許税がかかりません。

不動産の登記は別です。社会福祉法人が社会福祉事業の用に供する建物の所有権の取得登記や土地の権利の取得登記などは、財務省令で定める書類を添付すれば非課税となる定めがあります(同法4条2項・別表第三第10号)。

法人の税金や会計の扱いは、この記事では立ち入りません。税務や会計については税理士にご相談ください。

まとめ

  • 社会福祉法人の登記のルールは、社会福祉法29条を受けた組合等登記令に書かれています。役員で登記されるのは理事長だけです。
  • 理事長が替わったら2週間以内に変更登記をします。任期が満了して同じ人が続ける重任でも必要です。
  • 資産の総額は、年度末の差引正味財産の金額で、6月末までに変更登記をします。所轄庁への決算の届出とは別の手続です。
  • 目的や名称の変更は、所轄庁の認可を受けてから登記をします。定款変更をともなう事務所の移転は、定款変更の届出と登記の両方が必要です。
  • 理事長の変更を所轄庁に届け出るかどうかは、所轄庁の案内を確認します。

社会福祉法人の登記は、所轄庁の手続と組み合わさって進むのが特徴です。理事長の重任や資産の総額の登記に不安があるときは、定款と登記事項証明書、財産目録を用意して、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 社会福祉法人の登記には、どのくらい費用がかかりますか?

社会福祉法人の登記は登録免許税法の別表第一に掲げられていないため、設立の登記も変更の登記も登録免許税はかかりません(登録免許税法2条)。このほか、登記事項証明書や印鑑証明書などの取得費用がかかります。手続を専門家に依頼する場合は、その報酬が別にかかるので、事前に見積もりを確認すると安心です。不動産の名義変更の登記は別で、非課税の定めに当たるかどうかの確認が必要です。

Q. 期限を過ぎたり、登記を放置したりするとどうなりますか?

理事長の変更などは変更から2週間以内(組合等登記令3条1項)、資産の総額は年度末から3か月以内(同条3項)が期限です。登記を怠ると、理事などが20万円以下の過料に処せられることがあります(社会福祉法165条1号)。また、登記の後でなければ第三者に主張できません(同法29条2項)。期限を過ぎていても登記の申請はできるので、気づいた時点でできるだけ早く手続をするのが基本です。

Q. 自分で登記できますか?どこに相談すればよいですか?

法務局のホームページに、社会福祉法人の登記申請書の記載例が掲載されており、理事長が申請人として申請する形が示されています。制度上は法人自身で申請することもできます。登記の手続はお近くの司法書士に、定款変更の認可や所轄庁への届出については所轄庁の窓口や行政書士に、税金や会計のことは税理士に、と相談先を分けるのが確実です。

【さらに深掘り】理事長の変更登記と資産の総額の登記──期間の数え方と添付書面の細部

ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

以下で「法務局の記載例」というときは、法務局ホームページ「商業・法人登記の申請書様式」に掲載されている社会福祉法人の記載例(6-7 資産の総額、6-9 理事長の重任、6-10 理事長の退任・就任)を指します。「平成29年通知」というときは、社会福祉法人の登記事務の取扱いを示した平成29年2月23日付け法務省民商第29号の通知を指します。

2週間は選定の日からか、承諾の日からか

どちらの日から数えるかを直接定めた条文や通達は、確認した範囲では見つかりません。組合等登記令3条1項は「変更が生じたとき」から2週間以内と定めるだけです。理事長の選定に所轄庁の認可を要するとの定めも見当たらないので、認可書が届いた時から数える同令24条の場面でもありません。

手がかりになるのは次の4つです。

  • 委任の考え方 … 法人と役員の関係は委任に関する規定に従い(38条)、委任は相手方の承諾によって効力を生じます(民法643条)。ただし、38条の「役員」は理事と監事のことで(31条1項6号)、理事長の地位について直接定めたものではありません。
  • 厚生労働省のFAQ … 『社会福祉法人制度改革の施行に向けた留意事項について』に関するFAQ(令和6年9月19日付け事務連絡で改訂)の問44-6は、評議員・理事・監事の就任日を「選任及び本人による就任の承諾があった日」としています。任期の始期は選任された日で、就任日とは分けて説明されています。ただし、理事長について述べたものではありません。
  • 添付書面の組み立て … 平成29年通知も法務局の記載例も、理事長を選定した理事会の議事録とは別に、理事長の就任を承諾したことを証する書面を求めています。
  • 株式会社の取締役についての学説 … 2009年の論文は、選任決議に加えて会社と本人の間で任用契約を結ぶことで取締役の地位に就くとする契約説を通説、選任決議を本人の承諾を条件とする単独行為とみる説を有力説と整理しています(重田麻紀子「取締役の選任行為とその地位」法学研究82巻12号〔2009年〕576〜577頁)。どちらでも、本人の承諾が地位に就くための条件になります。同論文は、取締役の登記の原因日付は就任の承諾をした日とすべきとする解説も紹介しています(同592頁注52。相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔『論点解説 新・会社法』286頁を引いています)。ただし、いずれも株式会社の取締役の選任についての議論で、社会福祉法人の理事長の選定について述べたものではありません。評議員会が選ぶ理事にはまだ近い議論ですが、理事会が選ぶ理事長に当てはめるには、もう一段の推論が必要です。

これらからすると、理事長についても選定と本人の承諾がそろった時に就任し、その時に登記事項の変更が生じると読むのが自然だと考えられます。もっとも、これは推論です。所轄庁の手引には「理事長の選定後2週間以内」と案内するものもあります(宮崎県『社会福祉法人運営の手引』令和5年6月)。

そこで、段取りは次のように考えておくと安全です。

  • 理事会の席上で承諾し、その旨を議事録に記載すれば、選定と承諾が同じ日になり、この問題は生じません。記載例にも、席上で承諾した場合の注記があります。
  • 承諾が後の日になるときも、承諾を得たうえで選定の日から2週間以内に申請すれば、どちらの読み方でも期限内です。
  • 原因年月日にどの日を書くかは、記載例に注記がありません。選定と承諾の日が離れるときは、管轄の登記所に確認してください。

期間は、初日を算入せず(民法140条本文)、2週間後の応当日の前日に満了します(民法143条2項)。6月20日に変更が生じたなら、期限は7月4日です。

定時評議員会と理事会の日がずれるとき

理事の任期は定時評議員会の終結の時までです(45条)。平成29年通知も、制度移行時の説明として、定時評議員会の終結で旧理事が退任し、その評議員会で選任された後任の理事による理事会で理事長を選定する、という順序を示しています。

そのため、理事会を後日に開くと、評議員会の終結から選定までの間は理事長が欠けた状態になり、前の理事長が権利義務を持つことになります(45条の17第3項が準用する45条の6第1項)。

たとえば、定時評議員会が6月20日、理事会での選定と承諾が6月27日だとします。6月20日から数えれば期限は7月4日、6月27日から数えれば7月11日です。評議員会の終結で任期が切れることを重く見れば6月20日、新しい理事長が就任して初めて登記の内容が変わると見れば6月27日になりますが、どちらから数えるのか、登記原因を「重任」と書けるのか、「退任」と「就任」に分けるのかは、記載例と平成29年通知からは読み取れません。

6月27日から数える方向の材料としては、株式会社の取締役・監査役についての判決があります。任期満了や辞任で法律や定款の員数を欠き、退任した人がなお権利義務を持つ場合は、まだ登記事項の変更が生じないとして、辞任の登記を認めませんでした(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3334頁)。理事長にも権利義務の定めが準用されているので(45条の17第3項)、同じ理屈が及ぶなら6月27日から数えることになります。ただし、これは推論です。この判決は社会福祉法人の理事長について判断したものではなく、理事長に当てはめた資料は確認できませんでした。平成29年通知も、理事長に権利義務の定めが準用されることは述べていますが、退任の登記をいつできるかを直接述べた箇所は見当たりません。

確実なのは同じ日に開くことです。厚生労働省のFAQ問44-2は、平成29年度の理事会についての問ですが、招集手続の省略などで同日に開催できるとし、同日としない場合も速やかに選定することが必要としています。招集の手続を省くには、理事と監事の全員の同意が必要です(45条の14第9項が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律94条2項)。日がずれるときは、あらかじめ管轄の登記所に確認してください。期限だけを見れば、評議員会の日から2週間以内に理事会での選定と承諾を済ませて申請すれば、どちらの読み方でも期限内です(上の例なら7月4日まで)。

別の人に交代する場面でも、日がずれることがあります。理事長が辞任して後任の選定が遅れると、後任が就任するまで前任者に権利義務が残るので、前任者の辞任の登記をいつできるのかが問題になります。上の判決の理屈が及ぶなら、後任の就任まで辞任の登記はできないことになりますが、ここでも理事長について判断したものではないので、断定はできません。記載例は辞任と就任を1通の申請書に並べる形です。辞任と選定の日が離れるときも、管轄の登記所に確認してください。

定時評議員会が6月末までに開かれないときは、さらに注意が必要です。平成29年通知は、制度移行時に在任していた理事について、6月末日までに定時評議員会が招集されず後任が選任されなかった場合でも、任期は「定時評議員会が開催されるべき日又は期間の末日まで」と説明しています(昭和38年5月18日付け民事甲第1356号民事局長回答を参照として引いています)。経過措置の場面の説明ですが、45条の任期も定時評議員会の終結の時までという同じ形なので、同様に考える余地があります。その場合は、評議員会を開いた日より前に任期が切れていることになるので、登記の内容と期限を個別に確認する必要があります。

理事長の変更の添付書面──注記の細部

本文の表を補う形で整理します。

  • 定款が必要になる3つの場合 … 記載例と平成29年通知が挙げるのは、(1)定款に評議員会または理事会の定足数・決議要件の別段の定めがある場合、(2)定款で理事会の議事録に署名または記名押印する者を出席した理事長とする定めがある場合(45条の14第6項)、(3)定款の定めによる決議の省略で理事長を選定した場合(同条9項が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律96条)です。これらの定めを証するための添付で(各種法人等登記規則5条が準用する商業登記規則61条1項)、選任機関を示すためだけの定款は不要とされています。
  • 評議員会議事録はいつのものか … 交代の記載例は、添付する評議員会議事録を「新たに理事長となる者が、従前、理事に選任されたときの評議員会議事録」と説明しています。任期の途中で現職の理事を理事長に選ぶときは、その人が理事に選任された時の議事録が必要になります。理事への就任を承諾したことを証する書面も必要なので、改選時の書類は保管しておきましょう。
  • 理事会議事録の印鑑証明書 … 平成29年通知は、各種法人等登記規則5条が準用する商業登記規則61条6項を根拠に挙げています。証明書がいらなくなるのは、議事録の印鑑が変更前の理事長の提出印と同じ場合です。任期満了で交代し、前の理事長が理事に再任されず新しい理事会に出席しないときは、その印鑑が議事録に押されないと考えられるので、出席した理事・監事の印鑑証明書が必要な形になります(記載例からの推論です)。定款で署名者を出席した理事長とする定めがあれば、対象は理事長と監事の押印です(平成29年通知)。
  • 株式会社との違い … 各種法人等登記規則5条が各種法人の登記に準用する商業登記規則61条は1項、6項、8項です。株式会社の役員で求められる就任承諾書の印鑑証明書(同条4項・5項)や、本人確認のための証明書(同条7項)は含まれておらず、記載例の添付書類にも挙がっていません。2026年12月1日施行の令和8年法務省令第51号の新旧対照表でも、61条の準用はこの3つの項のままです。住所を表示しない措置を申し出るときに必要な書面は、これとは別の定めになります(改正後の5条が準用する商業登記規則31条の3)。
  • 退任を証する書面 … 平成29年通知は「理事長の退任の事由に応じて、評議員会又は理事会の議事録、辞任を証する書面等」が当たるとしています。個々の対応までは書かれていませんが、理事長の解職は理事会(45条の13第2項3号)、役員の解任は評議員会(45条の4第1項)の権限なので、それぞれの議事録が当たると考えられます。
  • 辞任届の印鑑 … 商業登記規則61条8項の準用により、辞任届に押す印鑑は、登記所に提出している印鑑か、市町村に登録している印鑑(印鑑証明書を添付)です。登記所に印鑑を提出している者がいない場合は、辞任する理事長が市町村に登録している印鑑を押し、印鑑証明書を添付します(記載例)。記載例の辞任届の例は「理事及び理事長」を辞任する形で、理事にとどまって理事長だけを辞める例は示されていません。文言は実際の内容に合わせる必要があります。
  • 印鑑届書の印鑑証明書は別の話 … 交代の記載例では、新しい理事長が申請書や委任状に押印するときは印鑑届書で印鑑を提出し、届書には市町村長の作成した3か月以内の印鑑証明書を添付します。議事録のための印鑑証明書とは別の手続です。重任の記載例は提出済みの印鑑を押す形で、印鑑届書の案内はありません。平成29年通知も、制度移行時について、提出済みの印鑑を継続して使う場合は届書を要しないとしています。代理人が申請するときは、申請書への理事長の押印はいりませんが、委任状には理事長が提出した印鑑を押します(記載例)。

資産の総額の申請書──記載例の注記

  • 添付書類 … 資産の総額を証する書面と、代理人が申請する場合の委任状です。評議員会や理事会の議事録は、記載例の添付書類に挙がっていません。
  • 財産目録の証明者 … 記載例の財産目録の例は理事長が証明する形で、「証明者は、監事でも差し支えありません」と注記されています。
  • 原因年月日 … 記載例は「令和○年○月○日変更」とし、「事業年度末日の資産の総額を記載します」と注記しています。組合等登記令3条3項が「毎事業年度末日現在」としているので、日付は年度末の3月31日になると読めます。
  • 貸借対照表を使うとき … 記載例は「資産の総額が判明する貸借対照表」も挙げていますが、どの欄の金額を登記するのかは書いていません。差引正味財産についての注記は、財産目録の例に付されたものです。貸借対照表を使うときは、管轄の登記所に確認してください。財産目録の例も「一例です」とされています。金額の算定は会計の領域なので、税理士にご相談ください。
  • 古い資料の「2か月」 … 期限は以前は末日から2か月で、平成28年政令第349号により3か月に延びました(平成29年通知、厚生労働省のFAQ問47-3)。古い案内の2か月と混同しないようにしてください。

重任と資産の総額が同じ時期に重なるとき

期限はそれぞれ別に進みます。選定と承諾までを同じ日に済ませた場合で比べると、次のとおりです。

定時評議員会・理事会の日 理事長の重任の期限 資産の総額の期限 先に来る期限
6月10日 6月24日 6月30日 理事長の重任
6月16日 6月30日 6月30日 同じ日
6月25日 7月9日 6月30日 資産の総額

法務局の記載例は、医療法人では理事長の重任と資産の総額の変更を一つにした項目(6-13)がありますが、社会福祉法人では別々の項目(6-7、6-9)です。社会福祉法人で1通にまとめて申請できるかは記載例からは分からないので、まとめるときは管轄の登記所に確認し、期限は早く来るほうに合わせてください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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