この記事の要点

  • 私道の登記名義人が亡くなっていても、それだけでは「所有者不明」とは言えない。相続人が分かって連絡がつくなら、同意をお願いする相手はその相続人
  • 調べる順番は、登記事項証明書、現地・近所・連絡のつく共有者への確認、住民票の除票・戸籍の附票・戸籍。他人の戸籍や住民票は、正当な理由などの要件に当たる場合に限って取得できる
  • 調べ尽くしても分からないとき、1筆を共有する私道では所在等不明共有者の裁判(民法251条2項・252条2項1号)が、各自が別の筆を持つ私道では所有者不明土地管理命令(民法264条の2)などが候補になる
  • 部分補修や自宅への給水管の引込みのように、相手の同意がなくても民法上は進められる場面がある。制度を選ぶ前に確かめる
  • 裁判所に出す書類の作成は司法書士、申立ての代理や相手との交渉は弁護士の分野

水道管を引き直すことになり、前の私道の持ち主を確かめようと登記事項証明書を取ったら、名義人の一人は古い住所のまま。近所の人に聞くと、もう亡くなったらしい。誰が相続したのかも分からない。こうなると、工事の同意を誰にお願いすればよいのか、手が止まってしまいます。

最初に結論を書くと、名義人が亡くなっていることと、法律でいう「所有者や所在を知ることができない」こととは別の話です。 相続人が分かって連絡がつくなら、お願いする相手はその相続人で、持ち主が分からないときの制度の出番ではありません。調べ尽くしても持ち主や居場所が分からないときに初めて、制度の話になります。どの制度を使えるかは、私道の持ち方によって分かれます。

この記事で扱うのは、他人の私道持分や私道の筆の持ち主が分からないときの調べ方と、制度の選び方です。管理人の権限など制度そのものの解説は所有者不明土地管理制度とはに、ご自身の私道持分の登記漏れは私道の相続登記を忘れずにに譲ります。

根拠としてたびたび引くのは、法務省が公表している「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」(共有私道の保存・管理等に関する事例研究会・令和4年6月。以下「共有私道ガイドライン」)です。研究会がまとめた指針で、法律そのものではありません。なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説で、個別の私道で裁判所の判断が得られるかどうかの見通しには踏み込みません。

最初に確かめる──その工事に、相手の同意は要るのか

持ち主を探す前に、そもそも同意が必要な工事なのかを確かめます。私道には、私道全体を複数の人で共有する「共同所有型」と、複数の筆に分かれて各自がそれぞれの筆を持つ「相互持合型」があります(見分け方は私道の掘削承諾書とはで説明しています)。持ち主が分からない人がいる場合について、共有私道ガイドラインの事例を並べると次のようになります。

工事の場面 共同所有型 相互持合型
舗装の陥没を塞ぐ部分補修 保存行為として、共有者が単独でできる(民法252条5項。事例1・62頁) 他の筆の所有者の同意がなくても、通行を確保するために補修できると考えられる(事例2・64頁)
自宅のために給水管を通して配水管につなぐ 持分に応じた使用として、他の共有者の同意は要らない(民法249条1項。事例11・103頁) 他に方法がなければ、通知をしたうえで必要な限度で設置できる。所在不明の人への通知は公示による意思表示で行う(民法213条の2・98条。事例12・105〜106頁)
予防のための全面再舗装、砂利道の新規舗装 持分の過半数で決める。連絡のつかない人の持分も全体に含めて数える(事例3・66頁、事例5・71頁) 通行に支障のない他人の筆の再舗装や、他人の筆の新規舗装には、その筆の所有者の同意が要る(事例4・68〜69頁、事例6・74頁)
坂道の全面を階段にするなど、形や働きを大きく変える工事 共有者全員の同意が要る(民法251条1項。事例30・154頁) 他人の筆は、その筆の所有者の承諾なしには工事できない(事例30・155頁。階段の拡幅の例として事例31・157〜158頁)

この表は、事例ごとの前提を置いたガイドラインの考え方を並べたもので、どの区分に当たるかは工事の内容で変わります。たとえば全面再舗装でも、老朽化が進んで早晩陥没が予想される具体的な兆候があれば、共同所有型では保存行為として単独でできると考えられ、相互持合型では他の筆の所有者が工事を受け入れるべき場合がありうるとされています(事例3・66頁、事例4・68〜69頁)。

共有者の間に私道の管理についての取決めがあれば、まずその取決めに従います(共有私道ガイドライン16〜17頁)。また、民法上は同意が要らない場面でも、水道やガスの事業者が申込みの手続としてどの書類を求めるかは別の話です。 必要な書類は、申込先の事業者に確認してください。

相手の同意が必要で、その相手が分からない。そのときに、次の調査に進みます。

持ち主を調べる順番

1. 私道の登記事項証明書を取る

登記事項証明書は、誰でも手数料を納めて請求できます(不動産登記法119条1項)。私道部分の地番について取ると、名義人の氏名と住所、共有なら各自の持分が分かります。

ただし、登記記録からは分からないこともあります。記録の住所は、登記や変更の登記をした時点のものです。生きているかどうかも、原則として記録からは読み取れません。登記官が、名義人が亡くなったことなどを示す符号を表示する仕組みはありますが(不動産登記法76条の4)、「表示することができる」という定めなので、符号がないからといって存命とは言えません。相続人の一人が申し出た「相続人申告登記」の記録があれば手がかりになります(同法76条の3)が、持分の割合までは登記されません(共有私道ガイドライン15頁)。

2. 現地と近所、連絡のつく共有者に確かめる

共有私道ガイドラインは、裁判の要件を満たすには、登記簿や住民票などの公的記録の調査に加えて、事案によっては私道の利用状況の確認や、連絡のつく他の共有者への確認も必要になるとしています(21頁)。近所の人や他の共有者が、相続した人を知っていることもあります。

登記記録の住所へ手紙を出してみることも、手がかりになります。東京地方裁判所の所有者不明土地管理命令の案内は、不明の事実を示す資料の例として、不明者あての手紙で「あて所に尋ね当たらず」の理由で返送されたものの写しを挙げています。戻ってきた封筒は捨てずに取っておいてください。

3. 住民票の除票・戸籍の附票・戸籍をたどる

住所の移り変わりや、亡くなったかどうか、相続人が誰かは、住民票の除票、戸籍の附票、戸籍で確かめることになります。ここで注意が必要なのは、他人の戸籍や住民票は、誰でも自由に取れるものではないという点です。

  • 戸籍謄本・除籍謄本など:戸籍に記載されている本人やその配偶者、直系の親族以外の人が請求できるのは、自分の権利の行使や義務の履行のために確認が必要な場合、国や自治体の機関に提出する必要がある場合、その他利用する正当な理由がある場合に限られます。請求するときは、権利の内容や必要とする理由などを明らかにしなければなりません(戸籍法10条の2第1項・12条の2)
  • 住民票の除票・戸籍の附票など:同じような理由のある人から申出があり、市町村長が相当と認めるときに交付されるしくみで、表示される事項も限られます(住民基本台帳法12条の3第1項・15条の4第3項・20条3項)

私道の工事の同意をもらいたいという事情が、これらの要件に当たると認められるかは、個別の判断になります。請求の前に、どのような理由の説明や資料が必要かを窓口に確認してください。

司法書士などの専門職には、受任している事件や事務の業務を遂行するために必要な場合に請求できるしくみ(職務上請求)があります(戸籍法10条の2第3項。住民票などは住民基本台帳法12条の3第2項・3項など)。ただし、これは受任した仕事に必要な範囲に限られ、対象も戸籍や住民票の類です。固定資産評価証明書などの他の書類まで取れるわけではなく、頼めば誰の書類でも取れるわけではありません。

古い登記で住民票も戸籍も見つからないこともあります。前述の東京地方裁判所の案内は、戸籍や住民票がない場合の資料として、登記記録上の住所についての不在籍証明書と不在住証明書を挙げています。

4. 調べた結果で、次の動きを分ける

調べた結果 次の動き
相続人が分かり、連絡がつく 所有者不明の話ではなく、相続人に同意をお願いする
相続人は分かるが、居場所が分からない その人について「所在を知ることができない」場合として、次の章の制度を検討する
相続人がいるのかどうか分からない 相続財産管理人等(ガイドラインの表現)がいない限り「共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」に当たるとされている(共有私道ガイドライン21頁)。次の章の制度を検討する
連絡先は分かるが、返事がない 「不明」ではない。共有の私道の管理の範囲なら、期間を定めて賛否を明らかにするよう求めたうえで、返答しない人を除いて決める裁判がある(民法252条2項2号)。変更には使えない
連絡がついたが、断られた 過半数で決める工事なら、他の人の賛成で過半数に届くかを確かめる。届かないときや、全員の同意が要る工事、他人の筆の工事では、話し合いや紛争の段階。交渉の代理は弁護士の分野

相続人が数人いるときは、その持分は相続人の共有になり、法定相続分などの割合が各相続人の持分になります(民法898条)。持分の過半数で決める工事なら、この割合で数えます(共有私道ガイドライン25頁)。たとえば、名義人の持分が6分の1で相続人が子2人なら、1人あたり12分の1です。1人の賛成は12分の1の賛成として数えることになります。

「調べ尽くした」ことが前提です。 裁判の要件を満たすには、必要な調査をしても特定できない、または所在を知ることができないことが必要で(共有私道ガイドライン21頁・48頁)、登記簿の住所に連絡がつかないというだけでは足りません。民法の条文に、どこまで調べるかの定めはなく、裁判所が事案に応じて判断することになると考えられます。共有私道ガイドラインは、所有者不明土地管理制度の調査方法の例として、登記名義人が個人なら登記簿、住民票上の住所、戸籍等の調査を挙げ、事案に応じて現地調査が求められるとしています(51頁)。より細かい目安としては、法律案が固まる前の法制審議会の資料が、意見募集に異論もあったとしたうえで、不動産の所有者が個人なら、少なくとも登記簿上と住民票上の住所に住んでいないかを調べ、亡くなっていれば戸籍で相続人を調べて、その相続人の住民票上の住所を調べることが必要になると考えられるとしていました(民法・不動産登記法部会資料30・7頁)。これは審議の途中の考え方で、成立した条文に書かれたものではなく、ここまで調べれば足りると保証するものでもありません。調査の経過は、申立てのときに示せるように記録しておいてください。

どの制度を使えるか

制度 使える私道 申し立てられる人 申立先 何が変わるか
所在等不明共有者がいる場合の変更・管理の裁判(民法251条2項・252条2項1号) 共同所有型 共有者 地方裁判所(非訟事件手続法85条1項) 分からない人を除いて同意や決定ができるようになる。持分は動かない
所有者不明土地管理命令(民法264条の2) 共同所有型(その持分)、相互持合型(その筆) 利害関係人 地方裁判所(非訟事件手続法90条1項) 管理人が選ばれ、管理人から同意を得る
不在者財産管理人(民法25条)・相続財産の清算人(民法952条) どちらも 利害関係人または検察官 家庭裁判所 土地だけでなく、その人の財産全般を管理する人が選ばれ、その人から同意を得る
所在等不明共有者の持分の取得(民法262条の2) 共同所有型 共有者 地方裁判所(非訟事件手続法87条1項) 持分そのものが移る

1筆を共有する私道(共同所有型)──まず計算し、足りなければ裁判

持分の過半数で決める工事なら、最初にすることは計算です。6人が6分の1ずつ持つ私道で1人が分からなくても、残る5人のうち4人が賛成すれば合計6分の4で過半数に届き、裁判は要りません(事例5・71頁)。

3人しか賛成しない場合は6分の3で足りないので、裁判を得て、分からない人を除いた持分の過半数で決めます。この例なら、分からない人を除いた6分の5のうち6分の3なので過半数に届きます。共有者全員の同意が要る工事でも、裁判を得れば、分からない人以外の全員の同意で進められます。

押さえておきたいのは次の点です。

  • 変わるのは決め方まで:裁判の後に、別途、同意や過半数の決定が必要です。工事の概要を特定して申し立てる必要もあります(共有私道ガイドライン21〜22頁)。持分は移らないので、登記の名義も亡くなった方のまま残ります
  • 申し立てられるのは共有者:条文は「共有者の請求」と定めています。その私道に持分を持っていない沿道の方は、この裁判を使えません
  • 使っている共有者への影響:過半数の決定が、共有者間の決定に基づいて私道を使っている共有者に特別の影響を及ぼすときは、その人の承諾が要ります(民法252条3項)

工事の同意や決定だけが目的なら、共同所有型の私道では、管理人を選ばないこの裁判のほうが手続としては軽いと考えられます。管理人の報酬を見込んだ予納や、管理人の同意を得る段階、全員の同意が要る工事で管理人が裁判所の許可を得る段階がないためです(民法264条の3第2項。共有私道ガイドライン49頁)。ただし、これは手続の段階を比べた推論で、費用や期間を実際に比べた資料は確認できていません。

各自が別の筆を持つ私道(相互持合型)──他の筆の持ち主は共有の裁判を使えない

相互持合型は民法上の共有ではないので、上の裁判の対象になりません。他人の筆について同意が必要な工事で、その筆の持ち主が分からないときは、共有私道ガイドラインは、所有者不明土地管理命令の申立てか不在者財産管理人等の選任申立てをして、選ばれた管理人から同意を得る方法を示しています(事例4・69頁、事例6・74頁)。

名義人が亡くなって、その筆が相続人の共有になっている場合は、その筆の中では共有のルールで考えることになります(共有私道ガイドライン25頁、事例6・74頁)。その筆の持分の過半数で足りる工事なら、まず、分かっている相続人の賛成で過半数に届くかを計算します。足りないときの裁判は、条文の文言上「共有者」の請求によるので、他の筆の持ち主が自分で申し立てることはできないと考えられます。その場合に管理命令を使うときの対象は、筆全体ではなく、分からない人の持分です(民法264条の2第1項)。

所有者不明土地管理制度の使いどころ

この制度が候補になるのは、主に次の場面です。

  • 相互持合型で、他人の筆について同意が必要なとき
  • 共同所有型で、申し立てたい人が持分を持っていないなど、共有者向けの裁判を使えないとき。共有私道ガイドラインが一般に利害関係人に当たると考えられるとしているのは、同意が必要な相手が所在等不明のときの、工事を希望する他の所有者や共有者です(48頁)。持分を持たない沿道の方は、この記述に直接には当たりません。同じガイドラインは、利害関係人を対象の土地の管理について利害関係を有する者とし、当たり得る例に「公共事業の実施者など不動産の利用・取得を希望する者」を挙げています(48頁・50頁)が、当たるかどうかは最終的に裁判所が判断します
  • 財産全般を管理する制度までは必要ないとき。不在者財産管理人や相続財産の清算人は財産全般を管理するので、予納金がより高額になるなどの指摘があり、それを受けて土地に絞った制度として設けられました(同47頁)。持ち主を全く特定できない土地では、既存の財産管理制度を使えないとも整理されています(同50頁)。どの制度を使うかは、目的や財産の状況を踏まえて申立人が選ぶことが想定されています(同52頁)

一方で、次の点は織り込んでおく必要があります。

  • 必要性:不明であることに加えて、管理人に管理させる必要があると裁判所に認められなければ、命令は出ません(民法264条の2第1項。共有私道ガイドライン48頁)
  • 予納金:管理費用や管理人の報酬は制度上は所有者の負担ですが(民法264条の7第2項)、申立ての際に裁判所の判断で予納を命じられます(共有私道ガイドライン49頁)
  • 管理人の判断:管理人は所有者のために善良な管理者の注意をもって権限を行使する立場です(民法264条の5第1項)。申し立てた人の希望どおりに同意するとは限りません
  • 裁判所の許可:管理人が単独でできるのは、保存と、性質を変えない範囲の利用・改良までです。私道について全員の同意が必要な工事では、一般に管理人が裁判所の許可を得る必要があります(民法264条の3第2項。共有私道ガイドライン49頁)
  • 権限は対象の持分まで:持分について選ばれた管理人が同意できるのは、その持分についてです(民法264条の3第1項。審議段階の説明として民法・不動産登記法部会資料33・11頁)。そのため、全員の同意が要る工事なら他の共有者全員の同意が、過半数で決める工事なら持分の過半数に届くだけの賛成が、別に要ることになると考えられます(民法251条1項・252条1項からの当てはめ)。また、相続人の持分について選ばれた管理人に、遺産分割をする権限はありません(共有私道ガイドライン51頁)
  • 工事が終わった後:東京地方裁判所の案内は、目的が達せられたときは原則として命令を取り消すとしています。後で別の工事が必要になれば、あらためて手続が要ることがあります

持分を取得する制度は、工事のためには重い

所在等不明共有者の持分を裁判で取得する制度(民法262条の2)もありますが、取得した人は、持分の時価相当額の支払いを請求される立場になります(同条4項)。また、その持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産の分割をすべき場合には、相続開始の時から10年を経過するまでは、この裁判を受けられません(同条3項)。名義人が亡くなって間もない持分には使えない場面があるということです。

時間の見込み

所在等不明共有者の裁判も所有者不明土地管理命令も、裁判所が公告をして、1か月以上の異議の届出期間が過ぎた後でなければ、裁判や命令はされません(非訟事件手続法85条2項・90条2項)。相続財産の清算人を選ぶ場合は、選任後に、6か月以上の期間を定めた公告があります(民法952条2項)。工事の予定がある場合は、調査の時間も含めて、早めに動き始める必要があります。

誰に何を頼めるか

  • 申立書類の作成:裁判所に提出する書類の作成は司法書士の業務です(司法書士法3条1項4号)
  • 申立ての代理:地方裁判所の手続で代理人になれるのは、原則として弁護士です(非訟事件手続法22条1項)
  • 相続人への働きかけや承諾の交渉の代理、承諾料をめぐる争い:弁護士の分野です
  • 私道の筆界や境界の確認:土地家屋調査士の分野です
  • 持分の価格や買取りの相談:宅地建物取引業者にご確認ください
  • 水道やガスの工事で求められる書類:申込先の事業者にご確認ください

まとめ

私道の持ち主が分からないときは、まず、その工事に相手の同意が要るのかを確かめます。要る場合は、登記事項証明書、現地や近所での確認、住民票の除票・戸籍の附票・戸籍の順に調べます。名義人が亡くなっていても、相続人が分かって連絡がつくなら、お願いする相手はその相続人です。

調べ尽くしても分からないときは、共同所有型なら、持分の計算をしたうえで所在等不明共有者の裁判を検討します。相互持合型や、共有者向けの裁判を使えない場合には、所有者不明土地管理命令などが候補になり、予納金の負担を見込む必要があります。どの場合も公告の期間があるので、工事の予定から逆算して動くことが大切です。

どの筆の誰の名義を確かめればよいか、裁判所に出す書類をどう整えるかで迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどのくらいかかりますか。

登記事項証明書の手数料は、書面での請求なら1通600円、オンライン請求なら490円(郵送で受け取るなら520円)で、1通が50枚を超えると加算があります(登記手数料令2条1項・3条1項)。戸籍や住民票の手数料は、請求先の市区町村に確認してください。裁判所の手続には収入印紙と郵便切手が必要で、東京地方裁判所の案内では、所有者不明土地管理命令の収入印紙は対象の1筆につき1,000円です。なお、裁判手続のデジタル化に関する改正(令和5年法律第53号)が施行されると、この種の申立ての手数料の額と納め方、郵便切手の扱いが変わります(民事訴訟費用等に関する法律8条・11条・別表第一)。施行は令和10年6月までの政令で定める日とされているので、申し立てる時点の裁判所の案内を確認してください。所有者不明土地管理命令では、これとは別に予納金が必要で、その額は管理の内容や期間などを踏まえて裁判官が判断するため、この記事では金額を示せません。

Q. 期限はありますか。放置するとどうなりますか。

民法のこれらの制度の条文に、申立ての期限は書かれていません。ただ、放置すると工事の時期に間に合わなくなることがあります。公告の期間だけでも1か月以上かかり、その前に調査の時間が要るからです。また、相続が重なれば、同意をお願いする相手が増えていくことがあります。ご自身の私道持分が亡くなった方の名義のままなら、そちらは相続登記の申請義務の対象で、相続があったことと持分を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2第1項・164条1項)。令和6年4月1日より前に開始した相続も対象で、その場合の3年は、知った日と令和6年4月1日のいずれか遅い日から数えます(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項)。令和6年4月1日より前から知っていた場合の期限は、令和9年3月31日です。

Q. 自分でできますか。どこに相談すればよいですか。

登記事項証明書の取得、近所への確認、相続人に同意をお願いすることは、ご自身でも進められます。申立て自体も本人ができます。ただ、他人の戸籍などの請求には要件があり、裁判所に示す調査の資料をそろえるには手間がかかります。名義の確認や裁判所に出す書類の作成は、お近くの司法書士にご相談ください。申立ての代理や、相手との交渉・争いは弁護士、境界は土地家屋調査士の分野です。


【さらに深掘り】私道の登記記録はどう動くか──管理命令の前提の登記、持分取得、相続人申告の読み方

ご注意 以下は執筆時点(2026年11月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、どの制度を選ぶかを整理しました。ここでは、制度を使った結果として私道の登記記録に何が起き、どの登記が誰の申請で入るのかを見ていきます。根拠の中心は、令和5年3月28日付け法務省民二第533号通達(以下「533号通達」)です。相続人申告登記の記録例は、令和6年3月15日付け法務省民二第535号通達(令和8年2月2日一部改正。以下「535号通達」)の別紙1によります。

1. 制度ごとの登記の動き

制度 制度そのものの登記 持分や名義の動き
所在等不明共有者がいる場合の変更・管理の裁判 手続を定めた非訟事件手続法85条に、登記の嘱託の定めはない 裁判だけでは動かない。賃借権や地役権などを設定して登記するときに、申請人の組み方の取扱いがある(後記4)
所有者不明土地管理命令 裁判所書記官が職権で登記を嘱託する(同法90条6項)。命令を取り消す裁判があれば抹消も嘱託する(同条7項) 命令によって所有権が移るわけではない。ただし、名義人が亡くなっていると前提の登記が入る(後記2)
所在等不明共有者の持分の取得の裁判 手続を定めた同法87条に、登記の嘱託の定めはない 裁判を得た共有者の側で、持分の移転の登記を申請する(後記5)

不在者財産管理人と相続財産の清算人については、533号通達がこの場面の登記を取り上げていないため、ここでは扱いません。

2. 管理命令の登記には、前提の登記が要ることがある

本文では、共有者向けの裁判なら名義は亡くなった方のまま残ると説明しました。管理命令では事情が異なります。名義人が亡くなって相続登記が未了で、その相続人が所有者となった土地や共有持分について管理命令がされたときは、管理命令の登記をする前提として相続登記が必要とされています(533号通達第2の1(1)ウ)。

  • 申請の形:対象の土地や共有持分に係る相続人が申請人となり、管理人がその代理人となって申請します
  • 相続を証する情報:裁判所に提出された戸籍関係書類について、裁判所書記官の認証を受けた謄本を使うことができます
  • 代理人の権限を証する情報:裁判所書記官が作成する管理人の選任と印鑑の証明書、または管理命令の裁判書の謄本です

名義人が亡くなったことは分かったものの、戸籍や除籍の廃棄などで相続人のあることが明らかでない場合は、相続登記ではなく、相続財産法人の名義にする氏名変更の登記が前提になります。申請人は相続財産法人で、管理人がその代理人です。決定書から変更の事実が明らかにならないときは、管理人が作成した報告書(記名押印があり、管理人の印鑑証明書を添付したもの)を、変更を証する情報として扱うとされています(同)。

相続人申告の付記があるだけでは、この前提の相続登記の代わりにはならないと考えられます。法務省は相続人申告登記について、権利関係を公示するものではなく、売却や抵当権の設定をする場合には別途相続登記の申請が必要と案内しています。もっとも、533号通達は相続人申告登記の施行(令和6年4月1日)より前のもので、この組合せには触れていません。535号通達にも管理命令の語は見当たりません。ここは案内と通達を合わせて読んだ推論です。

所有権の登記がない土地や、表題登記がない土地に管理命令がされた場合は、管理命令の登記が所有権の処分の制限の登記に当たるため、登記官が職権で所有権の保存の登記や表題登記をします(不動産登記法76条2項・3項。533号通達第2の1(1)エ)。表題登記がなく所有者を知ることができないときは、嘱託の内容に従って「住所不明 氏名不詳」などと登記するとされています(同)。

管理命令の登記の登録免許税は、処分の制限の登記として、不動産の価額の1000分の4とされています(533号通達第2の1(1)オ。登録免許税法別表第一の一の項(五)・11条1項)。納め方は、申立先の裁判所で確認してください。

3. 登記記録に管理命令があるときの読み方

533号通達別紙の記録例では、相続で共有になった持分のうち1人の持分に管理命令がされると、甲区に次のように記録されます。

順位番号 登記の目的 権利者その他の事項
3 所有権移転 原因 令和何年何月何日相続/共有者 持分3分の1 乙某、3分の1 丙某、3分の1 丁某(各住所つき)
4 丙某持分所有者不明土地管理命令 原因 令和6年4月10日何地方裁判所(支部)決定

ここから読み取れることは次のとおりです。

  • 対象が誰の持分か:登記の目的に名義人の名前が入ります。筆全体が対象なら「所有者不明土地管理命令」です
  • 同意をお願いする相手:対象の土地や持分の管理と処分をする権利は管理人に専属します(民法264条の3第1項)。この記録があれば、その部分について同意をお願いする相手は管理人です。申立てを考える前に、最新の登記事項証明書で確かめておく意味があります
  • 管理人が誰か:記録例に管理人の氏名の欄はありません。記録から分かる手がかりは、決定をした裁判所の名前です
  • 終わったとき:取消しがあると「2番所有者不明土地管理命令抹消 原因 何年何月何日何地方裁判所(支部)取消決定」のように記録されます(別紙1(2))。抹消の対象は管理命令の登記で、前提としてされた相続登記を抹消するという記述は、533号通達にはありません
  • 一部の共有者が判明したとき:対象の持分の範囲や割合を変える命令の変更があると、変更の登記の嘱託がされます。その前提として所有権の更正の登記が必要です(533号通達第2の1(2)ウ)

4. 共有者向けの裁判のあと、権利を登記に残すとき

本文の裁判を得て工事をするだけなら、登記は動きません。一方、地役権や賃借権を設定して登記に残す場合は、申請人の組み方に取扱いがあります。533号通達は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定の登記に、地役権の設定の登記が含まれることを明記しています(第1の2(2))。

場面 申請人 登記原因証明情報 完了の通知
長期の賃借権等(私道のような土地なら5年を超えるもの)で、民法251条2項の裁判を得た場合(第1の2) 所在等不明共有者以外の共有者全員 確定した裁判書の謄本と、同意を得て設定したことを証する情報 所在等不明共有者への通知は要しない
短期の賃借権等(私道のような土地なら5年以内)で、民法252条2項の裁判を得た場合(第1の4) 所在等不明共有者等以外の共有者のうち、持分の過半数を持つ共有者 確定した裁判書の謄本と、過半数の決定で設定したことを証する情報 所在等不明共有者への通知は要しないが、それ以外で申請人にならなかった共有者には通知される

どちらの場面でも、申請人にならない共有者は、登記義務者として氏名や住所を申請情報の内容にする必要があります。短期の場面では、登記官は申請人の持分の合計が過半数であることを登記記録で確認するとされています(第1の4(2))。

私道で注意したいのは、記録と実際のずれです。相続で持分が動いていても登記が入っていなければ、記録からは過半数を確認できないことになると考えられます。これは「登記記録で確認する」という取扱いからの推論で、通達がこの場面を直接書いているわけではありません。また、所在等不明共有者の名義人がすでに亡くなっていて相続登記が未了の場合に、誰を登記義務者として表示するのか、前提の登記が要るのかは、533号通達のこの部分には書かれておらず、確認できませんでした。 申請の前に、管轄の法務局に確認する必要があります。どの範囲の同意で地役権を設定できるかという別の論点は、私道の掘削承諾書とはの深掘りで触れています。

5. 持分取得の裁判のあとの登記と、手続の重さ

登記原因は「年月日民法第262条の2の裁判」で、日付は裁判が確定した日です。持分を取得した共有者が所在等不明共有者の代理人となり、確定した裁判書の謄本が代理人の権限を証する情報と登記原因証明情報を兼ね、登記識別情報の提供は要しません(533号通達第1の7(2))。

私道の古い名義で問題になりやすいのは、前提の登記です。

  • 亡くなったことは分かったが、戸籍や除籍の廃棄などで相続人のあることが明らかでない場合:持分の移転の登記の前提として、相続財産法人の名義にする氏名変更の登記が必要です。持分を取得した共有者が代理人となり、当該持分が相続財産法人に帰属する旨の記載がある確定した裁判書の謄本を使います(同)。裁判書の記載が登記に直結するので、申立ての段階から登記まで見通して整理しておく必要があると考えられます
  • 相続人は分かるが所在が分からない場合:533号通達のこの部分は前提の登記に触れていません。管理命令のように相続登記が必要なのかどうかは確認できなかったので、管轄の法務局への確認が必要です

手続の負担も、本文の裁判や管理命令とは違います。

  • 公告の期間:本文で触れた公告の期間は1か月以上ですが、持分の取得の裁判では、異議の届出などの期間がいずれも3か月以上です(非訟事件手続法87条2項)
  • 登記記録の住所の役割:裁判所は、登記簿上氏名が判明している共有者に公告事項を通知します。この通知は登記簿上の住所に宛てて発すれば足ります(同条3項)
  • 供託:裁判の前に、裁判所が定める額の金銭を供託して届け出るよう命じられます。従わなければ申立ては却下されます(同条5項・8項)
  • 効力の発生:裁判は確定しなければ効力を生じません(同条9項)

6. 相続人申告の表示を、共有の私道でどう読むか

535号通達別紙1の記録例のうち、共有の名義に相続人申告があり、その後に一方の持分の相続登記が入った例(別紙1の3(2))は次のとおりです。

順位番号 登記の目的 権利者その他の事項
2 所有権移転 共有者 持分2分の1 A、2分の1 B(各住所つき)
付記1号 相続人申告 原因 令和何年何月何日申出/相続開始年月日/Aの相続人として申出があった者 住所 C
付記2号 相続人申告 原因 令和何年何月何日申出/相続開始年月日/Bの相続人として申出があった者 住所 D
3 A持分全部移転 原因 昭和何年何月何日相続/共有者 住所 持分2分の1 甲某

読むときの注意点は次のとおりです。

  • 付記が残っていても、その人が持分を持つとは限らない:この例でAの持分を登記上持つのは3番の甲某で、申出をしたCではありません。535号通達の注によれば、この付記は職権では抹消されず、主登記の2番が効力を持ち続けるため、現在事項証明書にも載ります。共有の私道では、付記だけを見てCに同意をお願いすることのないよう、後に続く持分の移転の登記まで確かめます
  • 付記が1人でも、相続人が1人とは限らない:法務省は相続人申告登記について、法定相続人の範囲や法定相続分の確定が不要と案内しています。記録例の付記にも持分の記載はありません。本文の持分の計算には、戸籍などでの確認が別に必要です
  • 放棄をしても、付記が自動で消えるとは定められていない:相続の放棄をした人は抹消の申出をすることができ、申出があれば登記官が職権で抹消できる、という定め方です(不動産登記規則158条の28第1項2号・158条の29第1項)。付記が残っていても、その後に放棄がされていることはありえます
  • 住所は調査の手がかりになる:申出のときには住所を証する情報の提供が求められます(同規則158条の19第2項2号)。付記の住所がいまの住所とは限りませんが、付記に住所がある相続人について「所在を知ることができない」と言うには、少なくともその住所を調べる必要があると考えられます。これは本文で触れた「必要な調査」からの推論で、先例は確認できていません

登記記録で分かるのは、ここまでです。管理命令などの申立書類の作成は司法書士、申立ての代理は弁護士の分野です。他人の戸籍や住民票の取得には本文のとおり要件があり、専門職の職務上請求でも、扱えるのは戸籍や住民票の類に限られます。相続人への働きかけや承諾の交渉の代理は弁護士、筆界や境界は土地家屋調査士、持分の価格や買取りは宅地建物取引業者にご確認ください。


参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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