問題:

債務の不履行とその責任に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負うのであり、期限の到来した後に履行の請求を受けた場合であっても、その期限の到来したことを知るまでは遅滞の責任を負わない。

イ. 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。

ウ. 債権者は、民法415条1項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、契約を解除しなくても、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

エ. 金銭の給付を目的とする債務の不履行による損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しないが、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができる。

オ. 違約金は、賠償額の予定と推定され、賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

答え:

誤っているものは、ア・エの2つである。

解説:

ア 誤り。民法412条2項は、「債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。」と定めている。期限の到来した後に履行の請求を受けたときは、債務者が期限の到来を知らなくても、その請求を受けた時から遅滞の責任を負う。なお、同条1項は、「債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。」と、同条3項は、「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。」と定めている。

イ 正しい。民法413条の2第1項は、「債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。」と定めている。なお、同条2項は、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。」と定めている。

ウ 正しい。民法415条2項は、「前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。」と定め、1号に「債務の履行が不能であるとき。」を、2号に「債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。」を、3号に「債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。」を掲げている。2号は、契約の解除や解除権の発生(3号)とは別に掲げられているから、債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、契約を解除しなくても、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

エ 誤り。民法419条2項は、「前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。」と定め、同条3項は、「第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」と定めている。本肢の前半はこの規定のとおりであるが、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない。なお、同条1項は、「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と定めている。

オ 正しい。民法420条2項は、「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。」と定め、同条3項は、「違約金は、賠償額の予定と推定する。」と定めている。なお、同条1項は、「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。」と定めている。

ポイント:不確定期限のある債務は、期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時から遅滞となる(民法412条2項)。履行遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能となったときは、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(民法413条の2第1項)、受領遅滞中の履行の提供以後の場合は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる(民法413条の2第2項)。債務の履行に代わる損害賠償は、履行不能、履行拒絶の意思の明確な表示、契約の解除又は解除権の発生のいずれかのときに請求することができる(民法415条2項)。金銭債務の不履行では、債権者は損害の証明を要せず、債務者は不可抗力を抗弁とすることができない(民法419条2項・3項)。賠償額の予定は履行の請求や解除権の行使を妨げず、違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条2項・3項)。「不確定期限は請求か知った時の早い方、遅滞中の不能は債務者持ち、履行拒絶なら解除なしで填補賠償、金銭債務は証明不要・不可抗力も不可、違約金は予定と推定」と押さえる。


問題:

表示に関する登記の申請義務等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 土地が滅失したときは、所有権の登記名義人は、その滅失の日から1か月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならないが、所有権の登記がない土地の表題部所有者は、この申請の義務を負わない。

イ. 地目について変更があった後に所有権の登記名義人となった者は、その地目の変更があった日から1か月以内に、当該地目に関する変更の登記を申請しなければならない。

ウ. 区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないが、表題登記がない区分建物を新築した者からその区分建物の所有権を取得した者は、不動産登記法47条1項の規定による表題登記の申請の義務を負わない。

エ. 表示に関する登記は、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければすることができず、登記官が職権ですることはできない。

オ. 共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から1か月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。

答え:

誤っているものは、ア・イ・エの3つである。

解説:

ア 誤り。不動産登記法42条は、「土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。」と定めている。表題部所有者も申請の義務を負う。なお、同法164条1項は、同法42条の規定による申請をすべき義務がある者が「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」と定めている。

イ 誤り。不動産登記法37条2項は、「地目又は地積について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。変更があった後に所有権の登記名義人となった者の申請期間の起算点は、地目の変更があった日ではなく、その者に係る所有権の登記があった日である。なお、同条1項は、「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。

ウ 正しい。不動産登記法47条1項は、「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と定めている。同項が申請の義務を課しているのは、新築した建物の所有権を取得した者と、区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者であり、後者からは「区分建物以外の」として区分建物が除かれているから、表題登記がない区分建物を新築した者からその区分建物の所有権を取得した者は、同項の申請の義務を負う者として掲げられていない。なお、同条2項は、「区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」と定めている。また、同法74条2項前段は、「区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。」と定めており、区分建物については、表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請することができる仕組みをとっている。すなわち、区分建物については、新築した者を表題部所有者とする表題登記がされ、その者から所有権を取得した者は、自ら表題登記を申請することなく所有権の保存の登記を申請するという仕組みがとられており、本肢の取得者を同条1項の申請の義務を負う者に含めない読み方は、この仕組みと整合する。

エ 誤り。不動産登記法16条1項は、「登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。」と定めているが、同法28条は、「表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。」と定めている。同法28条は同法16条1項にいう「法令に別段の定め」に当たるから、表示に関する登記は、申請又は嘱託がなくても、登記官が職権ですることができる。

オ 正しい。不動産登記法58条6項は、「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」と定めている。なお、同条7項は、「前項の規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」と定めている。

ポイント:表示に関する登記は、申請主義の原則(不動産登記法16条1項)の例外として、登記官が職権ですることができる(不動産登記法28条)。土地の滅失の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人が滅失の日から1か月以内に申請しなければならない(不動産登記法42条)。地目・地積の変更の登記は、変更があったときは変更の日から1か月以内に、変更の後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者はその者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から1か月以内に申請しなければならない(不動産登記法37条1項・2項)。建物の表題登記の申請の義務を負うのは、新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者である(不動産登記法47条1項)。共用部分である旨を定めた規約を廃止したときは、所有者が廃止の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならない(不動産登記法58条6項)。これらの申請を正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料である(不動産登記法164条1項)。「表示は職権でもできる、滅失は表題部所有者も義務者、変更後の取得者は自分の登記から1か月、区分建物の転得者は47条1項の義務者に入らない、規約廃止は表題登記」と押さえる。


問題:

株式会社の公告方法及び電子公告に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 公告方法についての定款の定めがない株式会社の公告方法は、官報に掲載する方法となり、その株式会社の登記には、官報に掲載する方法を公告方法とする旨が登記される。

イ. 株式会社が電子公告を公告方法とする旨を定款で定める場合には、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法のいずれかを定款で定めなければならない。

ウ. 公告方法が官報に掲載する方法である株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができ、この場合には、貸借対照表又はその要旨の公告をすることを要しない。

エ. 株式会社が電子公告により、公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告をする場合には、当該期間を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。

オ. 電子公告により公告をしようとする株式会社は、貸借対照表の公告(会社法440条1項の規定による公告)をする場合であっても、公告期間中、調査機関に対し、電子公告調査を行うことを求めなければならない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

ア 正しい。会社法939条1項は、「会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。」と定め、1号に「官報に掲載する方法」を、2号に「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」を、3号に「電子公告」を掲げ、同条4項は、「第一項又は第二項の規定による定めがない会社又は外国会社の公告方法は、第一項第一号の方法とする。」と定めている。また、会社法911条3項は、株式会社の設立の登記において登記すべき事項として、29号に「第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨」を掲げている(同項27号は「第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め」)。

イ 誤り。会社法939条3項は、「会社又は外国会社が第一項第三号に掲げる方法を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。この場合においては、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、同項第一号又は第二号に掲げる方法のいずれかを定めることができる。」と定めている。予備的な公告方法は「定めることができる」とされており、定めなければならないものではない。なお、会社法911条3項28号は、公告方法が電子公告である場合の登記事項として、イに「電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」を、ロに「第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め」を掲げている。

ウ 正しい。会社法440条2項は、「前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。」と定め、同条3項は、「前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。」と定めている。この措置をとった株式会社には同条1項・2項の規定が適用されないから、貸借対照表又はその要旨の公告をすることを要しない。なお、同条4項は、「金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。」と定めており、このような株式会社には、同条1項の公告の義務も、同条2項・3項の規定も適用されない。また、会社法911条3項26号は、「第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」を登記すべき事項として掲げている。

エ 正しい。会社法940条1項は、「株式会社又は持分会社が電子公告によりこの法律の規定による公告をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。」と定め、3号に「公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告」について「当該期間を経過する日」を掲げている。なお、同項は、2号に「第四百四十条第一項の規定による公告」について「同項の定時株主総会の終結の日後五年を経過する日」を、4号に「前三号に掲げる公告以外の公告」について「当該公告の開始後一箇月を経過する日」を掲げている。

オ 誤り。会社法941条は、「この法律又は他の法律の規定による公告(第四百四十条第一項の規定による公告を除く。以下この節において同じ。)を電子公告によりしようとする会社は、公告期間中、当該公告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、法務省令で定めるところにより、法務大臣の登録を受けた者(以下この節において「調査機関」という。)に対し、調査を行うことを求めなければならない。」と定めている。同条の括弧書きにより、会社法440条1項の規定による公告は、調査を求めなければならない公告から除かれている。

ポイント:公告方法は、官報、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙、電子公告のいずれかを定款で定めることができ、定めがなければ官報となる(会社法939条1項・4項)。電子公告を公告方法とするときは、その旨を定めれば足り、予備的な公告方法は定めることが「できる」にとどまる(会社法939条3項)。公告方法が官報又は日刊新聞紙である株式会社は貸借対照表の要旨の公告で足り、さらに貸借対照表の内容である情報を5年間電磁的方法で開示する措置をとれば、公告そのものを要しない(会社法440条2項・3項)。電子公告の公告期間は、決算公告は定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで、異議を述べることができる旨の公告はその期間を経過する日まで、その他の公告は開始後1か月を経過する日までである(会社法940条1項)。電子公告調査は、決算公告については求める必要がない(会社法941条)。公告方法の定め、定めがないときの官報の旨、電子公告の場合の必要事項と予備的な公告方法の定め、440条3項の措置をとるときの必要事項は、いずれも登記事項である(会社法911条3項26号〜29号)。「定めなければ官報、予備的公告方法は任意、官報・新聞なら要旨で足り電磁的開示なら公告不要、決算公告は5年・異議公告は期間満了まで、決算公告は調査不要」と押さえる。


問題:

民事訴訟法上の訴訟上の救助に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 訴訟上の救助の決定は、訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者のほか、その支払により生活に著しい支障を生ずる者に対してもすることができるが、勝訴の見込みがないとはいえないときに限られる。

イ. 訴訟上の救助の決定は、当事者の申立てがなくても、裁判所が職権ですることができる。

ウ. 第一審において訴訟上の救助の決定を受けた者は、控訴審においても、改めて訴訟上の救助の決定を受けることなく、その決定の効力を受けることができる。

エ. 訴訟上の救助の決定を受けた者に支払を猶予した費用は、これを負担することとされた相手方から直接に取り立てることができる。

オ. 訴訟上の救助の決定を受けた者が訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力を有するに至ったときは、訴訟記録の存する裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、決定により、いつでも訴訟上の救助の決定を取り消し、猶予した費用の支払を命ずることができる。

答え:

正しいものは、ア・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民事訴訟法82条1項は、「訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができる。ただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限る。」と定めている。

イ 誤り。肢アの解説で引用した民事訴訟法82条1項のとおり、訴訟上の救助の決定は、「申立てにより」するものとされている。職権による取消しが認められている民事訴訟法84条(肢オ)とは異なる。

ウ 誤り。民事訴訟法82条2項は、「訴訟上の救助の決定は、審級ごとにする。」と定めている。第一審で受けた決定の効力は控訴審には及ばず、控訴審では改めて訴訟上の救助の決定を受ける必要がある。

エ 正しい。民事訴訟法85条は、「訴訟上の救助の決定を受けた者に支払を猶予した費用は、これを負担することとされた相手方から直接に取り立てることができる。この場合において、弁護士又は執行官は、報酬又は手数料及び費用について、訴訟上の救助の決定を受けた者に代わり、第七十一条第一項、第七十二条又は第七十三条第一項の申立て及び強制執行をすることができる。」と定めている。

オ 正しい。民事訴訟法84条は、「訴訟上の救助の決定を受けた者が第八十二条第一項本文に規定する要件を欠くことが判明し、又はこれを欠くに至ったときは、訴訟記録の存する裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、決定により、いつでも訴訟上の救助の決定を取り消し、猶予した費用の支払を命ずることができる。」と定めている。救助の決定を受けた者が費用を支払う資力を有するに至り、同法82条1項本文に規定する要件(費用を支払う資力がないこと又はその支払により生活に著しい支障を生ずること)を欠くに至ったときは、同条により、救助の決定を取り消し、猶予した費用の支払を命ずることができる。なお、同法86条は、「この節に規定する決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と定めている。

ポイント:訴訟上の救助の決定は、費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対し、申立てにより、勝訴の見込みがないとはいえないときに限ってすることができ(民事訴訟法82条1項)、審級ごとにする(民事訴訟法82条2項)。決定は、裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用の支払の猶予、裁判所において付添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払の猶予、訴訟費用の担保の免除の効力を有し(民事訴訟法83条1項)、これを受けた者のためにのみ効力を有し、裁判所は訴訟の承継人に対し、決定で、猶予した費用の支払を命ずる(民事訴訟法83条2項・3項)。要件を欠くことが判明し又は欠くに至ったときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも取り消すことができ(民事訴訟法84条)、猶予した費用は負担することとされた相手方から直接取り立てることができる(民事訴訟法85条)。これらの決定に対しては即時抗告をすることができる(民事訴訟法86条)。「付与は申立てだけ、取消しは職権でも、審級ごと、本人限り、相手方から直接取立て」と押さえる。


問題:

司法書士の義務及び司法書士法の罰則に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 司法書士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならず、これに違反した者は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。

イ. 司法書士法24条の規定(秘密保持の義務)に違反した罪は、告訴がなくても公訴を提起することができる。

ウ. 司法書士が、正当な事由がないのに、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く依頼を拒んだときは、100万円以下の罰金に処せられる。

エ. 司法書士でない者が司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いたときは、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる。

オ. 司法書士は、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会が実施する研修を受けなければならず、これを受けなかったときは、罰金に処せられる。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。司法書士法24条は、「司法書士又は司法書士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」と定め、同法76条1項は、「第二十四条の規定に違反した者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」と定めている。秘密保持の義務は、司法書士でなくなった後も負う。

イ 誤り。司法書士法76条2項は、「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めている。

ウ 正しい。司法書士法21条は、「司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。」と定め、同法75条1項は、「第二十一条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。」と定めている。

エ 誤り。司法書士法73条3項は、「司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」と定め、同法79条は、「次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。」と定め、1号に「第七十三条第三項の規定に違反した者」を掲げている。名称の使用制限に違反した者に対する刑は100万円以下の罰金であり、拘禁刑は定められていない。1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金は、同法78条1項が同法73条1項(司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者による業務の禁止)に違反した者について定める刑である。

オ 誤り。司法書士法25条は、「司法書士は、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」と定めている。同条は研修を受けて資質の向上を図るように「努めなければならない」と定めるものであり、罰則を定める同法第11章(74条から83条まで)の規定にも、同法25条の違反を処罰する規定はない。

ポイント:司法書士又は司法書士であった者は、正当な事由がある場合でなければ業務上知り得た秘密を漏らしてはならず(司法書士法24条)、違反は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、告訴がなければ公訴を提起することができない(司法書士法76条)。正当な事由がないのに依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒んだ者は100万円以下の罰金である(司法書士法21条・75条1項)。司法書士でない者による司法書士又はこれに紛らわしい名称の使用は禁止され(司法書士法73条3項)、違反は100万円以下の罰金である(司法書士法79条1号)のに対し、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者が業務を行うこと(司法書士法73条1項)の違反は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金である(司法書士法78条1項)。研修は受講に努める義務であり(司法書士法25条)、罰則の対象とはされていない。「秘密漏示は6月・50万で親告罪、依頼拒否は罰金100万、名称使用も罰金100万だけ、無資格業務は1年・100万、研修は努力義務」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権総論・債務不履行) 不確定期限と履行遅滞、履行遅滞中の履行不能、履行拒絶と債務の履行に代わる損害賠償、金銭債務の特則、賠償額の予定と違約金 民法412条、413条の2、415条2項、419条、420条
第2問 不動産登記法(表示に関する登記の申請義務) 土地の滅失の登記の義務者、地目変更後の取得者の申請期間、建物の表題登記の義務者、登記官の職権、共用部分の規約廃止と表題登記 不動産登記法16条1項、28条、37条、42条、47条、58条6項・7項、74条2項、164条1項
第3問 会社法・商業登記法(公告方法と電子公告) 公告方法の定めがない会社、予備的な公告方法、決算公告の要旨公告と電磁的開示、電子公告の公告期間、電子公告調査の対象 会社法440条、911条3項26号〜29号、939条、940条1項、941条
第4問 民事訴訟法(訴訟上の救助) 救助の要件と申立て、審級ごとの決定、相手方からの直接取立て、救助の決定の取消し 民事訴訟法82条〜86条
第5問 司法書士法(司法書士の義務と罰則) 秘密保持の義務と親告罪、依頼に応ずる義務の罰則、名称の使用制限の罰則、研修 司法書士法21条、24条、25条、73条、75条1項、76条、78条1項、79条