この記事の要点

  • 相続放棄の「3か月」の期限で求められているのは、家庭裁判所への申述(申述書の提出)です
  • 申述のあと、家庭裁判所から事情を尋ねる書面(照会書)が届くことがあります。返送の期限を定めた条文は見当たらないため、届いた書面と申述先の家庭裁判所の案内で確かめます
  • 照会書が届くかどうか、受理までにかかる日数は、家庭裁判所や事案によって異なります

相続放棄の申述書を出したあと、家庭裁判所から「照会書」や「回答書」と書かれた書面が届くことがあります。「3か月の期限に間に合っているのか」「この書面にも期限があるのか」と不安になる場面です。ここでは、申述から受理までの流れの中で、どこに期限があるのかを整理します。

なお、この記事は執筆時点(2026年11月)の制度に基づく一般的な解説です。

3か月の期限で守るべきなのは「申述」

相続人は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを決めなければなりません(民法915条1項。この期間は、家庭裁判所への請求によって延ばしてもらえることがあります=同項ただし書)。そして、相続放棄は家庭裁判所に「申述」(申し立て)をして行います(民法938条)。申述は、必要な事項を書いた申述書を家庭裁判所に提出して行います(家事事件手続法201条5項)。

裁判所の手続案内も、「申述」は3か月以内にしなければならない、と説明しています。福島家庭裁判所の案内「相続放棄の申述について」では、3か月以内に申述書が提出(郵送の場合は必着)されないと申述が受理されないことになる、と注意を促しています。つまり、期限の管理で一番大切なのは、申述書を期限内に家庭裁判所へ届けることです。

戸籍などの書類がそろわない場合について、裁判所の手続案内は、申述前に手に入らない戸籍等は申述後に追加で提出しても差し支えない、としています。書類を待って申述そのものが遅れないよう、段取りを組むのが基本です(3か月そのものの数え方は相続放棄の基本をご覧ください)。

申述から受理までの流れと期限

申述のあとの流れを、期限とあわせて表にまとめます。

段階 内容 期限 根拠・確認先
① 申述 申述書と戸籍などを家庭裁判所に提出 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 民法915条1項・938条
② 照会書への回答 家庭裁判所から事情を尋ねる書面が届いたら、記入して返送 条文に定めは見当たらない。届いた書面と申述先の家庭裁判所の案内で確認 家庭裁判所の運用
③ 受理 家庭裁判所が受理すると、申述書にその旨が記載され、その時に効力が生じる 期限ではなく、家庭裁判所の審理による 家事事件手続法201条7項
④ 受理の通知 受理されたことが、裁判所書記官から申述人に通知される(受理通知書) 申述人が守る期限はない 家事事件手続規則106条2項

表の③は執筆時点の条文によるものです。家事事件の手続のデジタル化を進める改正(令和5年法律第53号)のうち、まだ施行されていない部分が施行されると、受理の審判は申述書への記載ではなく、電子データ(電磁的記録)を作成して裁判所のファイルに記録する方法で行われ、その記録をした時に効力が生じることになります(改正後の家事事件手続法201条7項。施行日は政令で定める日です)。

② 照会書は「届くことがある」書面

照会書は、申述した人に対して、放棄の意思や事情を確認するために家庭裁判所が送る書面です。福島家庭裁判所の案内「相続放棄の申述について」は、申述書を受け取った家庭裁判所が審理のために事情を尋ねることがあるとして、「照会や呼出しには必ず応じてください」と案内しています。

ただし、照会書は必ず届くものではありません。高知家庭裁判所の案内では、申述書の提出→書面審査→照会書の発送→回答書の記入・返送→受理、という流れが示される一方、照会書を経ずに受理へ進む流れや、確認の電話をする場合があることも示されています。名古屋家庭裁判所(本庁)のように、条件を満たす申述について、その日のうちに受理通知書等を交付する扱いを案内しているところもあります(審査の結果等によってはその日のうちに審判ができないこともある、とされています)。

返送の期限は「書面」と「申述先の案内」で確かめる

相続放棄に関する民法・家事事件手続法・家事事件手続規則の条文には、照会書の送付や、その返送の期限を直接定めたものは見当たりません(2026年11月時点の条文で確認)。家事事件の手続一般について、家庭裁判所が職権で事実の調査をすることや、当事者がその調査に協力するものとされていること(家事事件手続法56条)は定められていますが、照会書という形での尋ね方や、返送までの日数までは条文からは決まりません。照会書の書式や返送までの日数は、家庭裁判所ごとに異なる可能性があります。

照会書が届いたら、次の順で確認すると抜けが出にくくなります。

  1. 書面に返送の期限や返送先が書かれていないか確認する
  2. 書かれていない、またはわからない点があれば、申述先の家庭裁判所に問い合わせる
  3. 返送した日を控えておく

照会書は、申述をした人に宛てて届く書面です。書かれている質問をよく読み、事実に沿って回答してください。

受理されたあとの書面

受理されると、受理通知書が届きます。相続登記などで「受理証明書」が必要になった場合は、別に申請して取る書面です。違いは相続放棄の受理通知書と受理証明書の違いで整理しています。

まとめ

相続放棄の3か月の期限で守るべきなのは、家庭裁判所への申述(申述書の提出)です。申述のあと照会書が届くことがありますが、その返送の期限は条文ではなく、届いた書面と申述先の家庭裁判所の案内で確かめます。照会書が届くかどうかや受理までの日数は家庭裁判所や事案によって異なるため、申述先の案内を早めに確認しておくのが基本です。

3か月の期限が迫っている、書類がそろわないなど、段取りに不安がある場合は、お近くの司法書士にご相談ください(相続人の間などで争いがある場合は弁護士にご相談ください)。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年11月・いずれも一次情報です)。

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