問題:

無権代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合において、相手方は、契約の時において代理権を有しないことを知っていたときであっても、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

イ. 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができるが、契約の時において代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったときは、相手方は、これを取り消すことができない。

ウ. 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、民法113条から117条までの規定が準用される。

エ. 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていた場合であっても、その者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

オ. 無権代理人は、相手方から民法117条1項所定の責任を追及された場合には、その責任を免れる事由として、表見代理が成立することを主張することができる。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

本問は、無権代理の相手方の催告権(民法114条)、相手方の取消権(同法115条)、単独行為の無権代理(同法118条)、無権代理人の責任とその免責事由(同法117条)及び無権代理人の責任と表見代理との関係を問うものであり、誤っているのはイ・エ・オの3つである。

ア 正しい。民法114条は、「前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。」と定めている。同条は、同法115条ただし書のように、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていた場合を除外していないから、代理権がないことを知っていた相手方も催告をすることができる。本肢は、同法114条のとおりである。

イ 誤り。民法115条は、「代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。」と定めている。相手方が取り消すことができなくなるのは、契約の時において代理権を有しないことを知っていたときであり、過失によって知らなかったときは同条ただし書に当たらないから、本肢は誤りである。過失によって知らなかったことが問題となるのは、無権代理人の責任についてであり、同法117条2項2号は、「他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。」と定めている。

ウ 正しい。民法118条は、「単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。」と定めている。「前条」は同法117条であるから、本肢は、同法118条前段のとおりである。

エ 誤り。民法117条1項は、「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」と定め、同条2項は、「前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。」として、その3号に「他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。」を掲げている。他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときは、同条1項の責任を負わないから、本肢は誤りである。

オ 誤り。最判昭和62年7月7日(民集41巻5号1133頁)の裁判要旨の二は、「無権代理人は、民法一一七条一項所定の責任を免れる事由として、表見代理の成立を主張することはできない。」というものである。無権代理人は、表見代理が成立することを主張して同項の責任を免れることはできないから、本肢は誤りである。なお、同判決は、平成29年法律第44号による改正前の民法117条についての判断である。改正後の同条2項が同条1項の責任を適用しない場合として掲げるのは1号から3号までの三つであり、表見代理の成立は掲げられていない。平成29年法律第44号は令和2年4月1日に施行されたが、施行日前に無権代理人が代理人として行為をした場合におけるその無権代理人の責任については、改正後の民法117条(同法118条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例によるとされている(同法附則7条2項)。

ポイント:無権代理の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、本人が期間内に確答をしないときは追認を拒絶したものとみなされる(民法114条)。催告については、取消権(同法115条ただし書)のように相手方が代理権のないことを知っていた場合を除外する定めがない。相手方の取消権は、本人が追認をしない間に限り行使でき、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは行使できないが(同条)、過失によって知らなかったことは除外事由とされていない。無権代理人の責任(同法117条1項)は、相手方が代理権のないことを知っていたとき、過失によって知らなかったとき(無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときを除く)、無権代理人が行為能力の制限を受けていたときには生じない(同条2項)。単独行為については、相手方が同意し、又は代理権を争わなかったときに限り、同法113条から117条までが準用される(同法118条)。無権代理人は、同法117条1項の責任を免れる事由として表見代理の成立を主張することはできない(最判昭62.7.7)。相手方の主観について、催告は「知っていても可」、取消しは「知っていたときだけ不可」、無権代理人の責任は「過失によって知らなかったときも原則不可」と三段階で区別して押さえる。


問題:

抵当権に基づく物上代位に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。

イ. 抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、その賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

ウ. 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。

エ. 敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合には、その後に当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときであっても、賃料債権は、敷金の充当によって消滅することはない。

オ. 債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達との先後によって決すべきである。

答え:

正しいものは、イ・ウの2つである。

解説:

本問は、抵当権に基づく物上代位(民法372条・304条)について、目的債権の譲渡との関係、転貸賃料債権に対する物上代位、抵当不動産の賃借人による相殺、敷金の充当及び一般債権者の差押えとの競合に関する判例を問うものであり、正しいのはイ・ウの2つである。民法372条は、「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」と定め、同法304条1項は、「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」と定めている。

ア 誤り。最判平成10年1月30日(民集52巻1号1頁)の裁判要旨は、「抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。」というものである。目的債権の譲渡について第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、抵当権者は自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるから、本肢は誤りである。

イ 正しい。最決平成12年4月14日(民集54巻4号1552頁)の裁判要旨は、「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。」というものである。本肢は、この裁判要旨のとおりである。

ウ 正しい。最判平成13年3月13日(民集55巻2号363頁)の裁判要旨は、「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。」というものである。本肢は、この裁判要旨のとおりである。

エ 誤り。最判平成14年3月28日(民集56巻3号689頁)の裁判要旨は、「敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合において,当該賃貸借契約が終了し,目的物が明け渡されたときは,賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅する。」というものである。抵当権者が賃料債権を差し押さえた場合であっても、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当によりその限度で消滅するから、本肢は誤りである。

オ 誤り。最判平成10年3月26日(民集52巻2号483頁)の裁判要旨は、「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決すべきである。」というものである。両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記との先後によって決するのであり、抵当権者の申立てによる差押命令の送達との先後によって決するのではないから、本肢は誤りである。

ポイント:抵当権者は、民法372条が準用する同法304条1項により、目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権を行使することができるが、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。判例は、目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後でも、抵当権者は自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるとし(最判平10.1.30)、一般債権者の差押えと競合した場合の優劣は、一般債権者の差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記との先後で決するとする(最判平10.3.26)。転貸賃料債権には、賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き物上代位することができない(最決平12.4.14)。賃料債権の差押え後は、賃借人は抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権とする相殺を抵当権者に対抗することができないが(最判平13.3.13)、賃貸借契約が終了し目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当によりその限度で消滅する(最判平14.3.28)。本問の裁判要旨のうち「抵当権設定登記」が基準として示されている場面として、一般債権者の差押えとの競合(差押命令の送達との先後)と、賃借人による相殺(自働債権の取得が登記の後か)の二つを押さえる。


問題:

遺産共有及び遺産分割の対象に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属するが、この相続財産の共有は、民法249条以下に規定する共有とその性質を異にするものではない。

イ. 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、特別受益及び寄与分を考慮して算定した具体的相続分をもって各相続人の共有持分とする。

ウ. 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が、当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判である。

エ. 相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。

オ. 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。

答え:

正しいものは、ア・エ・オの3つである。

解説:

本問は、相続財産の共有(民法898条)の性質と共有持分、共同相続人の一部から遺産である不動産の共有持分権を譲り受けた第三者がとるべき裁判手続、遺産である金銭の扱い及び投資信託受益権・個人向け国債が当然に分割されるかどうかに関する判例を問うものであり、正しいのはア・エ・オの3つである。

ア 正しい。民法898条1項は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」と定めている。最判昭和30年5月31日(民集9巻6号793頁)の裁判要旨の一は、「相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する『共有』とその性質を異にするものではない。」というものである。本肢は、同項及びこの裁判要旨のとおりである。

イ 誤り。民法898条2項は、「相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。」と定めている。同法900条から902条までは、法定相続分(同法900条)、代襲相続人の相続分(同法901条)及び遺言による相続分の指定(同法902条)の規定であり、特別受益者の相続分(同法903条)や寄与分(同法904条の2)の規定は含まれていない。各相続人の共有持分は、これらを考慮した具体的相続分ではないから、本肢は誤りである。

ウ 誤り。最判昭和50年11月7日(民集29巻10号1525頁)の裁判要旨は、「共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。」というものである。第三者がとるべき裁判手続は共有物分割訴訟であり、遺産分割審判ではないから、本肢は誤りである。

エ 正しい。最判平成4年4月10日(集民164号285頁)の裁判要旨は、「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。」というものである。本肢は、この裁判要旨のとおりである。

オ 正しい。最判平成26年2月25日(民集68巻2号173頁)の裁判要旨は、「1 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。2 共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。」というものである。本肢は、この裁判要旨のとおりである。

ポイント:相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属し(民法898条1項)、その共有は同法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではない(最判昭30.5.31)。相続財産に共有に関する規定を適用するときの各相続人の共有持分は、同法900条から902条までにより算定した相続分(法定相続分・代襲相続人の相続分・指定相続分)であり(同法898条2項)、特別受益(同法903条)や寄与分(同法904条の2)を考慮した具体的相続分ではない。共同相続人の一部から遺産である特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が共有関係を解消するための裁判手続は、遺産分割審判ではなく共有物分割訴訟である(最判昭50.11.7)。相続開始時に存した金銭を保管している他の相続人に対し、遺産の分割までの間は自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできず(最判平4.4.10)、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権と個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない(最判平26.2.25)。共有持分は「900条〜902条の相続分」、共同相続人の一部から特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者がとるべき手続は「共有物分割訴訟」と、条文と判例の言葉で整理する。


問題:

地目又は地積に関する変更の登記及び土地の表題部の更正の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記令の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 土地の所在する市、区、郡、町、村及び字に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

イ. 地目に関する変更の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人の申請によってしなければならず、登記官が職権ですることはできない。

ウ. 地積に関する変更の登記を申請するときは地積測量図を提供しなければならないが、地積に関する更正の登記を申請するときは、地積測量図を提供することを要しない。

エ. 地目に関する変更の登記を申請するときは、変更後の地目を申請情報の内容としなければならないが、不動産登記令別表の当該登記の項の添付情報欄には、添付情報として提供すべき情報は掲げられていない。

オ. 地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1月以内に、当該地積に関する変更の登記を申請しなければならず、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられる。

答え:

誤っているものは、イ・ウの2つである。

解説:

本問は、土地の表題部の更正の登記の申請人(不動産登記法38条・34条1項)、職権による表示に関する登記(同法28条)、地積に関する変更の登記又は更正の登記の添付情報(不動産登記令別表6の項)、地目に関する変更の登記の申請情報と添付情報(同表5の項)及び地目又は地積の変更の登記の申請義務と過料(不動産登記法37条1項、164条1項)を問うものであり、誤っているのはイ・ウの2つである。

ア 正しい。不動産登記法38条は、「第二十七条第一号、第二号若しくは第四号(同号にあっては、法務省令で定めるものに限る。)又は第三十四条第一項第一号、第三号若しくは第四号に掲げる登記事項に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。」と定めている。そして、同法34条1項は、土地の表示に関する登記の登記事項として、1号で「土地の所在する市、区、郡、町、村及び字」、2号で「地番」、3号で「地目」、4号で「地積」を掲げている。土地の所在する市、区、郡、町、村及び字は同項1号の登記事項であり、同法38条に掲げられているから、本肢は正しい。なお、同条は、同法34条1項各号のうち2号の地番を掲げていない。

イ 誤り。不動産登記法28条は、「表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。」と定めている。地目は土地の表示に関する登記の登記事項であり(同法34条1項3号)、地目に関する変更の登記も表示に関する登記であるから、登記官は、職権でこれをすることができる。表題部所有者又は所有権の登記名義人に申請義務が課されていること(同法37条1項)は、登記官が職権で登記をすることを妨げるものではないから、本肢は誤りである。なお、同法29条1項は、「登記官は、表示に関する登記について第十八条の規定により申請があった場合及び前条の規定により職権で登記しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該不動産の表示に関する事項を調査することができる。」と定めている。

ウ 誤り。不動産登記令別表6の項は、登記欄に「地積に関する変更の登記又は更正の登記(十一の項の登記を除く。)」を掲げ、申請情報欄に「変更後又は更正後の地積」を、添付情報欄に「地積測量図」を掲げている。地積測量図は、地積に関する変更の登記と更正の登記のいずれを申請する場合にも提供しなければならないから、本肢は誤りである。なお、同表11の項は、不動産登記法43条6項の規定により河川管理者が嘱託する地積に関する変更の登記である。

エ 正しい。不動産登記令別表5の項は、登記欄に「地目に関する変更の登記又は更正の登記」を掲げ、申請情報欄に「変更後又は更正後の地目」を掲げているが、添付情報欄には何も掲げていない。本肢は、同項のとおりである。地積に関する変更の登記又は更正の登記について地積測量図を掲げる同表6の項と対比して押さえたい。

オ 正しい。不動産登記法37条1項は、「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。そして、同法164条1項は、「第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。

ポイント:土地の所在する市、区、郡、町、村及び字、地目並びに地積に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができず、この規定は土地の登記事項のうち地番(不動産登記法34条1項2号)を掲げていない(同法38条・34条1項)。表示に関する登記は登記官が職権ですることができ(同法28条)、地目に関する変更の登記もその例外ではない。地積に関する変更の登記と更正の登記は、いずれも地積測量図を添付情報とし(不動産登記令別表6の項)、地目に関する変更の登記又は更正の登記は、同表の添付情報欄に掲げる情報がない(同表5の項)。地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は変更の日から1月以内に変更の登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料に処せられる(不動産登記法37条1項、164条1項)。「地積測量図は変更・更正のどちらにも要る」「地目の項は添付情報欄に何も掲げていない」を、令別表の5の項と6の項を並べて覚える。


問題:

建物の表題部の更正の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記令の規定に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 共用部分である旨の登記がある建物の構造に関する更正の登記は、当該建物の所有者以外の者は、申請することができず、当該建物の所有者がこの申請をするときは、当該建物の所有者を証する情報を提供しなければならない。

イ. 附属建物の床面積に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

ウ. 建物の床面積に関する更正の登記を申請するときは、更正によって床面積が増加するか減少するかにかかわらず、更正後の建物図面及び各階平面図のほか、表題部所有者又は所有権の登記名義人が所有権を有することを証する情報を提供しなければならない。

エ. 建物の所在する土地の地番に関する更正の登記を申請するときは、更正後の建物図面及び各階平面図を提供しなければならない。

オ. 敷地権の存在を原因とする建物の表題部の更正の登記を申請するときは、敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目及び地積、敷地権の種類及び割合並びに敷地権の登記原因及びその日付を申請情報の内容としなければならない。

答え:

正しいものは、ア・イ・オの3つである。

解説:

本問は、建物の表題部の更正の登記の申請人(不動産登記法53条1項・44条1項)、同法53条1項の規定による建物の表題部の更正の登記の添付情報(不動産登記令別表14の項)及び敷地権の存在を原因とする建物の表題部の更正の登記の申請情報(同表15の項)を問うものであり、正しいのはア・イ・オの3つである。

ア 正しい。不動産登記法53条1項は、「第二十七条第一号、第二号若しくは第四号(同号にあっては、法務省令で定めるものに限る。)又は第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)以外の者は、申請することができない。」と定めている。建物の構造は同法44条1項3号の登記事項であるから、共用部分である旨の登記がある建物の構造に関する更正の登記は、所有者以外の者は申請することができない。そして、不動産登記令別表14の項は、登記欄に「法第五十一条第一項から第四項までの規定による建物の表題部の変更の登記又は法第五十三条第一項の規定による建物の表題部の更正の登記(十五の項の登記を除く。)」を掲げ、添付情報欄のニに「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について申請をするときは、当該建物の所有者を証する情報」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。

イ 正しい。不動産登記法44条1項は、建物の表示に関する登記の登記事項として、5号で「附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積」を掲げている。同法53条1項は、同法44条1項各号のうち2号(家屋番号)及び6号(建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨)を除く登記事項に関する更正の登記について申請人を限定しているから、附属建物の床面積に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができず、本肢は正しい。

ウ 誤り。不動産登記令別表14の項は、添付情報欄のロに「床面積を変更し、又は更正するときは、次に掲げる事項」として、「(1) 変更後又は更正後の建物図面及び各階平面図」及び「(2) 床面積が増加するときは、床面積が増加した部分について表題部所有者又は所有権の登記名義人が所有権を有することを証する情報」を掲げている。所有権を有することを証する情報の提供を要するのは、床面積が増加するときに、その増加した部分について提供するものであるから、床面積が減少する場合も含めてこれを要するとする本肢は誤りである。

エ 誤り。不動産登記令別表14の項は、添付情報欄のイに「建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番を変更し、又は更正するときは、変更後又は更正後の建物図面」を掲げている。建物の所在する土地の地番に関する更正の登記の添付情報として同欄に掲げられている図面は更正後の建物図面であり、各階平面図は掲げられていないから、本肢は誤りである。各階平面図を要するのは、同欄のロ(床面積の変更又は更正)及びハ(附属建物の新築)の場合である。

オ 正しい。不動産登記令別表15の項は、登記欄に「敷地権の発生若しくは消滅を原因とする建物の表題部の変更の登記又は敷地権の存在若しくは不存在を原因とする建物の表題部の更正の登記」を掲げ、申請情報欄に「イ 敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目及び地積」、「ロ 敷地権の種類及び割合」及び「ハ 敷地権の登記原因及びその日付」を掲げている。本肢は、同項のとおりである。なお、同表14の項の登記欄は、括弧書で15の項の登記を除いている。

ポイント:建物の表題部の更正の登記は、不動産登記法44条1項各号のうち家屋番号(2号)と共用部分である旨(6号)を除く登記事項について、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨又は団地共用部分である旨の登記がある建物では所有者)以外の者は申請することができず、附属建物の種類、構造及び床面積(同項5号)も対象となる(不動産登記法53条1項)。同条1項の更正の登記の添付情報は、所在する土地の地番を更正するときは更正後の建物図面、床面積を更正するときは更正後の建物図面及び各階平面図と、床面積が増加するときに限り増加部分の所有権を証する情報、共用部分である旨の登記等がある建物では所有者を証する情報である(不動産登記令別表14の項)。敷地権の存在又は不存在を原因とする更正の登記は同表15の項により、敷地権の目的となる土地の表示、敷地権の種類及び割合並びに登記原因及びその日付を申請情報の内容とする。「地番の更正は建物図面だけ」「所有権を証する情報は増加するときだけ」と、添付情報欄のイ・ロを区別する。


問題:

筆界調査委員による事実の調査等に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。なお、「筆界調査委員等」とは、筆界調査委員又は同法134条4項の規定により筆界調査委員による事実の調査を補助する法務局又は地方法務局の職員をいう。

ア. 対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を行うべき筆界調査委員として指定を受けた者が数人あるときは、共同してその職務を行うが、法務局又は地方法務局の長の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。

イ. 筆界調査委員は、事実の調査に当たっては、筆界特定が対象土地の所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならない。

ウ. 法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員等を他人の土地に立ち入らせようとするときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。

エ. 筆界調査委員等の他人の土地への立入りによって損失を受けた者があるときは、筆界特定の申請人は、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

オ. 法務局又は地方法務局の長は、筆界特定のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができる。

答え:

誤っているものは、ア・エの2つである。

解説:

本問は、筆界調査委員が数人ある場合の職務の執行(不動産登記法134条3項)、事実の調査に当たっての留意事項(同法135条2項)、立入調査の事前の通知と損失の補償(同法137条2項・7項)及び関係行政機関等に対する協力依頼(同法138条)を問うものであり、誤っているのはア・エの2つである。

ア 誤り。不動産登記法134条1項は、「法務局又は地方法務局の長は、前条第一項本文の規定による公告及び通知がされたときは、対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を行うべき筆界調査委員を指定しなければならない。」と定め、同条3項は、「第一項の規定による指定を受けた筆界調査委員が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、筆界特定登記官の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。」と定めている。筆界調査委員を指定するのは法務局又は地方法務局の長であるが、単独で職務を行い、又は職務を分掌するための許可をするのは筆界特定登記官であるから、本肢は誤りである。

イ 正しい。不動産登記法135条1項は、「筆界調査委員は、前条第一項の規定による指定を受けたときは、対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査をすること、筆界特定の申請人若しくは関係人又はその他の者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査をすることができる。」と定め、同条2項は、「筆界調査委員は、前項の事実の調査に当たっては、筆界特定が対象土地の所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

ウ 正しい。不動産登記法137条1項は、「法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、筆界調査委員又は第百三十四条第四項の職員(以下この条において「筆界調査委員等」という。)に、他人の土地に立ち入らせることができる。」と定め、同条2項は、「法務局又は地方法務局の長は、前項の規定により筆界調査委員等を他人の土地に立ち入らせようとするときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。なお、同条3項は、「第一項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合には、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。」と定めている。

エ 誤り。不動産登記法137条7項は、「国は、第一項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。」と定めている。損失を補償するのは国であり、筆界特定の申請人ではないから、本肢は誤りである。なお、同条5項は、「土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。」と定めている。

オ 正しい。不動産登記法138条は、「法務局又は地方法務局の長は、筆界特定のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができる。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。

ポイント:筆界調査委員を指定するのは法務局又は地方法務局の長であり、指定を受けた筆界調査委員が数人あるときは共同して職務を行うが、筆界特定登記官の許可を得て単独で職務を行い、又は職務を分掌することができる(不動産登記法134条1項・3項)。筆界調査委員は、測量、実地調査、事実の聴取、資料の提出の求めなどの事実の調査をすることができ、筆界特定が所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならない(同法135条)。他人の土地への立入りは法務局又は地方法務局の長が筆界調査委員等にさせるもので、あらかじめ日時及び場所を占有者に通知し、損失を受けた者には国が通常生ずべき損失を補償する(同法137条1項・2項・7項)。関係行政機関の長等に対する協力の求めも法務局又は地方法務局の長が行う(同法138条)。「指定・立入り・協力依頼は局長、分掌の許可は筆界特定登記官、補償は国」と、主体ごとに整理する。


問題:

土地家屋調査士法人の代表、社員の責任及び社員の競業の禁止に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、「調査士法人」とは土地家屋調査士法人を、「特定社員」とは同法3条2項に規定する土地家屋調査士である社員をいう。

ア. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人における民間紛争解決手続代理関係業務については、特定社員のみが各自調査士法人を代表するが、総社員の同意によって、特定社員のうち特に民間紛争解決手続代理関係業務について調査士法人を代表すべきものを定めることができる。

イ. 調査士法人を代表する社員は、調査士法人の業務(民間紛争解決手続代理関係業務を除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し、この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

ウ. 調査士法人を代表する社員は、定款によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

エ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人が民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務を当該調査士法人の財産をもって完済することができないときは、特定社員であるか否かを問わず、各社員が連帯してその弁済の責任を負う。

オ. 調査士法人の社員が自己のためにその調査士法人の業務の範囲に属する業務を行ったときは、当該業務によって当該社員が得た利益の額は、調査士法人に生じた損害の額と推定される。

答え:

正しいものは、イ・ウ・オの3つである。

解説:

本問は、調査士法人の代表(土地家屋調査士法35条の2)、民間紛争解決手続代理関係業務に関する債務についての社員の責任(同法35条の3第1項・4項)及び社員の競業の禁止(同法37条)を問うものであり、正しいのはイ・ウ・オの3つである。

ア 誤り。土地家屋調査士法35条の2第1項は、「調査士法人の社員は、各自調査士法人を代表する。ただし、定款又は総社員の同意によつて、社員のうち特に調査士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。」と定め、同条2項は、「民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人における民間紛争解決手続代理関係業務については、前項本文の規定にかかわらず、特定社員のみが、各自調査士法人を代表する。ただし、当該特定社員の全員の同意によつて、当該特定社員のうち特に民間紛争解決手続代理関係業務について調査士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。」と定めている。民間紛争解決手続代理関係業務について代表すべき特定社員を定めるのは、総社員の同意ではなく当該特定社員の全員の同意によるから、本肢は誤りである。

イ 正しい。土地家屋調査士法35条の2第3項は、「第一項の規定により調査士法人を代表する社員は、調査士法人の業務(前項の民間紛争解決手続代理関係業務を除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」と定め、同条4項は、「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。

ウ 正しい。土地家屋調査士法35条の2第5項は、「第一項の規定により調査士法人を代表する社員は、定款によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

エ 誤り。土地家屋調査士法35条の3第1項は、「調査士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯して、その弁済の責任を負う。」と定め、同条4項は、「民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人が民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなつた債務を当該調査士法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、特定社員(当該調査士法人を脱退した特定社員を含む。以下この条において同じ。)が、連帯して、その弁済の責任を負う。ただし、当該調査士法人を脱退した特定社員については、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、この限りでない。」と定めている。民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務について連帯して弁済の責任を負うのは、同条1項の規定にかかわらず特定社員(脱退した特定社員を含む。)であるから、特定社員であるか否かを問わず各社員が責任を負うとする本肢は誤りである。

オ 正しい。土地家屋調査士法37条1項は、「調査士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその調査士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の調査士法人の社員となつてはならない。」と定め、同条2項は、「調査士法人の社員が前項の規定に違反して自己又は第三者のためにその調査士法人の業務の範囲に属する業務を行つたときは、当該業務によつて当該社員又は第三者が得た利益の額は、調査士法人に生じた損害の額と推定する。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。

ポイント:調査士法人の社員は各自調査士法人を代表し、定款又は総社員の同意で代表社員を定めることができるが、民間紛争解決手続代理関係業務については特定社員のみが各自代表し、代表すべき者は当該特定社員の全員の同意で定める(土地家屋調査士法35条の2第1項・2項)。代表社員は業務(民間紛争解決手続代理関係業務を除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し、その制限は善意の第三者に対抗することができず、特定の行為の代理の委任は定款で禁止されていないときに限られる(同条3項〜5項)。法人の財産で債務を完済できないときは各社員が連帯責任を負うが、民間紛争解決手続代理関係業務に関し依頼者に対して負担した債務については特定社員(脱退した特定社員を含む。)が連帯責任を負う(同法35条の3第1項・4項)。社員が競業禁止に違反して業務を行ったときは、その社員又は第三者が得た利益の額が調査士法人の損害の額と推定される(同法37条2項)。「代表の決め方は総社員の同意か特定社員全員の同意か」「依頼者への債務は特定社員」を区別する。


問題:

不動産登記規則16条に規定する地図等の訂正の申出(以下「地図訂正の申出」という。)に関する次の記述のうち、同条の規定に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 地図に準ずる図面に表示された土地の位置、形状又は地番に誤りがあるときは、当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。

イ. 地図訂正の申出をする場合において、当該土地の登記記録の地積に錯誤があるときであっても、地図訂正の申出と地積に関する更正の登記の申請とは、それぞれ別個にすることができる。

ウ. 所有権の登記名義人の相続人が地図訂正の申出をするときは、申出人が所有権の登記名義人の相続人である旨を地図訂正申出情報の内容とし、相続があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)を提供しなければならない。

エ. 地図訂正の申出に係る土地の所在地が当該申出を受けた登記所の管轄に属しないときは、登記官は、当該申出を管轄登記所に移送しなければならない。

オ. 地図に表示された土地の区画に誤りがあるときは、当該土地について抵当権の設定の登記を受けている抵当権者も、地図訂正の申出をすることができる。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

本問は、地図訂正の申出をすることができる者と対象(不動産登記規則16条1項)、地積に関する更正の登記の申請との関係(同条2項)、一般承継人による申出の地図訂正申出情報と添付情報(同条3項4号・5項3号)及び申出の却下事由(同条13項1号・2号)を問うものであり、正しいのはア・ウの2つである。

ア 正しい。不動産登記規則16条1項は、「地図に表示された土地の区画又は地番に誤りがあるときは、当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人は、その訂正の申出をすることができる。地図に準ずる図面に表示された土地の位置、形状又は地番に誤りがあるときも、同様とする。」と定めている。本肢は、同項後段のとおりである。地図については「区画又は地番」、地図に準ずる図面については「位置、形状又は地番」と、文言が異なる点に注意したい。

イ 誤り。不動産登記規則16条2項は、「前項の申出をする場合において、当該土地の登記記録の地積に錯誤があるときは、同項の申出は、地積に関する更正の登記の申請と併せてしなければならない。」と定めている。当該土地の登記記録の地積に錯誤があるときは、地図訂正の申出は地積に関する更正の登記の申請と併せてしなければならないから、本肢は誤りである。

ウ 正しい。不動産登記規則16条3項は、同条1項の申出は、同条3項各号に掲げる事項を内容とする情報(地図訂正申出情報)を登記所に提供してしなければならないと定め、4号で「申出人が表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人であるときは、その旨」を掲げている。そして、同条5項は、同条1項の申出をする場合には、地図訂正申出情報と併せて同項各号に掲げる情報を提供しなければならないと定め、3号で「表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人が申出をするときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長(…)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。

エ 誤り。不動産登記規則16条13項は、「登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、第一項の申出を却下しなければならない。」と定め、1号で「申出に係る土地の所在地が当該申出を受けた登記所の管轄に属しないとき。」を掲げている。この場合には、登記官は、理由を付した決定で申出を却下しなければならないのであって、管轄登記所に移送するものとはされていないから、本肢は誤りである。

オ 誤り。不動産登記規則16条1項前段は、地図に表示された土地の区画又は地番に誤りがあるときに訂正の申出をすることができる者を、「当該土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人」と定めている。抵当権者はこれらの者に当たらないから、本肢は誤りである。なお、同条13項は、却下事由として、2号で「申出の権限を有しない者の申出によるとき。」を掲げている。

ポイント:地図訂正の申出は、地図では土地の区画又は地番に、地図に準ずる図面では土地の位置、形状又は地番に誤りがあるときに、表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人がすることができ、抵当権者などそれ以外の者の申出は却下される(不動産登記規則16条1項、13項2号)。登記記録の地積に錯誤があるときは、地積に関する更正の登記の申請と併せてしなければならない(同条2項)。一般承継人が申出をするときは、その旨を地図訂正申出情報の内容とし、一般承継を証する公務員が職務上作成した情報等を提供する(同条3項4号・5項3号)。申出に係る土地の所在地が申出を受けた登記所の管轄に属しないときは、移送ではなく却下となる(同条13項1号)。「地積の錯誤は更正登記と併せて」「管轄違いは却下」を条文の項・号で押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(総則・無権代理) 相手方の催告権・取消権、無権代理人の責任 民法113条〜118条、最判昭62.7.7
第2問 民法(物権・抵当権に基づく物上代位) 物上代位の対象と差押えの意義、第三債務者・第三者との優劣 民法372条・304条1項、最判平10.1.30、最決平12.4.14、最判平13.3.13、最判平14.3.28、最判平10.3.26
第3問 民法(相続・遺産共有) 遺産共有の性質、共有持分の算定、遺産分割の対象 民法898条、最判昭30.5.31、最判昭50.11.7、最判平4.4.10、最判平26.2.25
第4問 不動産登記法・不動産登記令(地目・地積の変更及び更正の登記) 土地の表題部の更正の登記の申請人(地番は掲げられていないこと)、職権による地目に関する変更の登記、地積に関する変更・更正の登記と地積測量図、地目に関する変更の登記の申請情報と添付情報、地目又は地積の変更の登記の申請義務と過料 不動産登記法28条、34条1項、37条1項、38条、164条1項、不動産登記令別表5の項・6の項
第5問 不動産登記法・不動産登記令(建物の表題部の更正の登記) 共用部分である旨の登記がある建物の更正の登記の申請人と所有者を証する情報、附属建物の床面積の更正の登記の申請人、床面積の更正と所有権を証する情報(増加するときに限る)、所在する土地の地番の更正と建物図面、敷地権の存在を原因とする更正の登記の申請情報 不動産登記法44条1項、53条1項、不動産登記令別表14の項・15の項
第6問 不動産登記法(筆界特定・筆界調査委員による事実の調査) 筆界調査委員が数人ある場合の職務の執行と筆界特定登記官の許可、所有権の境界の特定を目的としないことへの留意、立入調査の事前の通知、立入りによる損失の補償(国)、関係行政機関等に対する協力依頼 不動産登記法134条1項・3項、135条、137条1項・2項・7項、138条
第7問 土地家屋調査士法(土地家屋調査士法人) 民間紛争解決手続代理関係業務についての代表(特定社員全員の同意)、代表社員の権限と制限の対抗、特定の行為の代理の委任、民間紛争解決手続代理関係業務に関する債務についての特定社員の責任、競業の禁止と損害額の推定 土地家屋調査士法35条の2、35条の3第1項・4項、37条
第8問 不動産登記規則(地図関連制度・地図等の訂正の申出) 地図に準ずる図面の訂正の申出の対象、地積の錯誤と地積に関する更正の登記の申請の併合、一般承継人による申出の申出情報と添付情報、管轄違いの却下、申出権限のない者の申出 不動産登記規則16条1項・2項・3項4号・5項3号・13項1号・2号