問題:
期間の計算に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。なお、ア〜ウの各事例において、法令、裁判上の命令又は法律行為に期間の計算方法についての特別の定め又は別段の定めはなく、期間の末日は日曜日その他の休日に当たらないものとする。
ア. 令和8年6月15日午後3時に、同日から1か月以内に代金を支払う旨の合意をした場合には、その期間は、令和8年7月16日の終了をもって満了する。
イ. 令和8年3月25日に、同年4月1日から1年間建物を賃貸する旨の契約を締結した場合には、その期間は、令和9年3月31日の終了をもって満了する。
ウ. 令和8年3月30日午前10時に、同日から1か月の期間を定めた場合には、その期間は、令和8年4月30日の終了をもって満了する。
エ. 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習があるか否かにかかわらず、期間は、その翌日に満了する。
オ. 判例によれば、平成29年法律第44号による改正前の民法724条所定の3年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った日を初日として算入する。
答え:
正しいものは、イ・ウの2つである。
解説:
本問は、期間の計算の通則(民法138条)、初日不算入の原則とその例外(同法140条)、期間の満了(同法141条)、末日が休日に当たる場合(同法142条)、暦による期間の計算(同法143条)と、不法行為による損害賠償請求権の時効期間の計算に関する判例を問うものであり、正しいのはイ・ウの2つである。
ア 誤り。民法140条は、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と定めている。本肢の期間は午後3時から始まるから、初日である6月15日は算入せず、6月16日が起算日となる。そして、同法143条1項は、「週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。」と定め、同条2項本文は、「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。」と定めている。最後の月である7月において起算日(16日)に応当する日は7月16日であり、その前日の7月15日が期間の末日となる。同法141条は、「前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。」と定めているから、本肢の期間は7月15日の終了をもって満了する。7月16日の終了をもって満了するとする本肢は誤りである。
イ 正しい。本肢の期間は、契約締結の日(3月25日)ではなく、4月1日の午前零時から始まるから、民法140条ただし書により、初日である4月1日を算入する。年によって期間を定めた場合で、年の初め(1月1日)から起算しないときは、最後の年においてその起算日に応当する日の前日に満了する(同法143条2項本文)から、令和9年4月1日の前日である令和9年3月31日が期間の末日となり、その終了をもって満了する(同法141条)。本肢は正しい。
ウ 正しい。本肢の期間は午前10時から始まるから、初日である3月30日は算入せず(民法140条本文)、3月31日が起算日となる。最後の月である4月には、起算日(31日)に応当する日がない。民法143条2項ただし書は、「月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」と定めているから、4月の末日である4月30日が期間の末日となり、その終了をもって満了する(同法141条)。本肢は正しい。
エ 誤り。民法142条は、「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。」と定めている。期間が翌日に満了するのは、その日に取引をしない慣習がある場合に限られるから、慣習の有無にかかわらず翌日に満了するとする本肢は誤りである。なお、同法138条は、「期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。」と定め、同法139条は、「時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。」と定めている。
オ 誤り。最判昭和57年10月19日(民集36巻10号2163頁)の裁判要旨は、「民法七二四条所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。」というものであり、参照法条として民法138条・140条・724条が掲げられている。損害及び加害者を知った時が午前零時である場合を除き、初日は算入されないから、知った日を初日として算入するとする本肢は誤りである。なお、この判決は平成29年法律第44号による改正前の民法724条に関するものであるが、現行の同条1号も、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」を時効によって消滅する場合として掲げている。
ポイント:日・週・月・年で定めた期間は初日不算入が原則で(民法140条本文)、午前零時から始まるときは初日を算入する(同条ただし書)。週・月・年の期間は暦に従い、起算日に応当する日の前日に満了し、最後の月に応当する日がなければその月の末日に満了する(同法143条)。末日が休日でも、翌日に延びるのはその日に取引をしない慣習がある場合に限られる(同法142条)。具体的な日付の問題は、起算日→応当日→その前日(末日)→末日の終了、の順に手を動かして確かめる。
問題:
質権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによってその効力を生じ、質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
イ. 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができないが、質物の占有を奪われたときは、質権に基づく返還請求によって、その質物を回復することができる。
ウ. 債権を目的とする質権の質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができ、債権の目的物が金銭であるときは、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
エ. 不動産質権の存続期間は、10年を超えることができず、設定行為でこれより長い期間を定めたときであってもその期間は10年とされ、不動産質権の設定は、更新することができない。
オ. 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができ、この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、質権の設定と代理占有の禁止(民法344条・345条)、転質(同法348条)、動産質の対抗要件と占有の回復(同法352条・353条)、不動産質権の存続期間(同法360条)及び債権質の取立て(同法366条)を問うものであり、正しいのはア・ウ・オの3つである。
ア 正しい。民法344条は、「質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。」と定め、同法345条は、「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 誤り。民法352条は、「動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。」と定めており、本肢の前半はこの規定のとおりである。しかし、同法353条は、「動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。」と定めている。質物の占有を奪われた動産質権者が質物を回復する方法は占有回収の訴えに限られるから、質権に基づく返還請求によって回復することができるとする本肢は誤りである。
ウ 正しい。民法366条1項は、「質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。」と定め、同条2項は、「債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同条3項は、同条2項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができ、この場合において、質権はその供託金について存在すると定めている。また、同法364条は、債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、同法467条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができないと定めている。
エ 誤り。民法360条1項は、「不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。」と定めており、本肢の前半はこの規定のとおりである。しかし、同条2項は、「不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。」と定めている。不動産質権の設定は更新することができるから、更新することができないとする本肢は誤りである。なお、不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従いその使用及び収益をすることができ(同法356条)、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負い(同法357条)、その債権の利息を請求することができない(同法358条)が、同法359条は、これらの規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行の開始があったときは、適用しないと定めている。
オ 正しい。民法348条は、「質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。
ポイント:質権は目的物の引渡しが効力発生要件で(民法344条)、質権設定者による代理占有は禁止される(同法345条)。動産質は占有の継続が対抗要件で、占有を奪われたときの回復手段は占有回収の訴えに限られる(同法352条・353条)。不動産質権の存続期間は10年が上限で、更新はできるが更新の時から10年を超えられない(同法360条)。債権質は直接取立てができ、金銭債権なら自己の債権額に対応する部分に限られる(同法366条)。転質は質権者の責任で行い、不可抗力による損失も負う(同法348条)。
問題:
限定承認に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 相続人は、限定承認をしようとするときは、民法915条1項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
イ. 相続人が限定承認をしたときは、その相続人が被相続人に対して有していた債権は、混同によって消滅する。
ウ. 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び2箇月を下らない一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を官報に掲載して公告しなければならないが、相続人が数人ある場合に家庭裁判所が相続人の中から選任した相続財産の清算人がこの公告をするときは、その選任があった後10日以内にしなければならない。
エ. 限定承認者は、民法927条1項の期間が満了した後は、相続財産をもって、まず受遺者に弁済をし、その残余をもって、その期間内に申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。
オ. 不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされていれば、限定承認者は、相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができる。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、限定承認の方式(民法924条)、限定承認をしたときの権利義務(同法925条)、相続債権者及び受遺者に対する公告(同法927条)、弁済の順序(同法929条・931条)、相続人が数人ある場合の相続財産の清算人(同法936条)と、死因贈与を受けた限定承認者に関する判例を問うものであり、誤っているのはイ・エ・オの3つである。
ア 正しい。民法924条は、「相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。なお、同法922条は、「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」と定めている。
イ 誤り。民法925条は、「相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。」と定めている。限定承認をした相続人が被相続人に対して有していた債権は、消滅しなかったものとみなされるから、混同によって消滅するとする本肢は誤りである。
ウ 正しい。民法927条1項は、「限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。」と定め、同条4項は、「第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。」と定めている。また、同法936条1項は、「相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。」と定め、同条3項は、「第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の清算人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法927条2項は、公告には相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならないとしたうえで、ただし書で、「限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。」と定めている。
エ 誤り。民法929条本文は、「第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。」と定め、同法931条は、「限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。」と定めている。受遺者への弁済は相続債権者への弁済の後であるから、まず受遺者に弁済をし、その残余をもって相続債権者に弁済をしなければならないとする本肢は、順序が逆であり誤りである。なお、同法929条ただし書は、「優先権を有する債権者の権利を害することはできない。」と定めている。
オ 誤り。最判平成10年2月13日(民集52巻1号38頁)の裁判要旨は、「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができない。」というものであり、参照法条として民法1条2項・177条・554条・922条・931条が掲げられている。所有権移転登記が差押登記よりも先にされていれば対抗することができるとする本肢は、この裁判要旨に反し誤りである。
ポイント:限定承認は熟慮期間内に財産目録を添えて家庭裁判所に申述し(民法924条)、相続人が被相続人に対して有した権利義務は消滅しなかったものとみなされる(同法925条)。公告は限定承認後5日以内・申出期間は2箇月以上・官報掲載で(同法927条1項・4項)、相続人が数人あるときは家庭裁判所が相続人の中から選任する相続財産の清算人が、選任後10日以内に公告する(同法936条)。弁済は相続債権者が先、受遺者が後(同法929条・931条)。不動産の死因贈与を受けた限定承認者は、所有権移転登記が差押登記より先でも、信義則上、所有権取得を相続債権者に対抗できない(最判平成10年2月13日)。
問題:
分筆の登記及び合筆の登記をする場合における登記記録の記録方法に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 登記官は、甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をするときは、乙土地について新たな登記記録を作成し、当該登記記録の表題部に何番の土地から分筆した旨を記録しなければならない。
イ. 登記官は、甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をするときは、分筆後の甲土地に新たな地番を付さなければならず、分筆後の甲土地について従前の地番と同一の地番を付すことはできない。
ウ. 登記官は、甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をするときは、甲土地及び乙土地の登記記録をいずれも閉鎖し、合筆後の土地について新たな登記記録を作成しなければならない。
エ. 甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をする場合において、合筆前の甲土地及び乙土地が所有権の登記がある土地であるときは、登記官は、乙土地の登記記録の甲区に、合併による所有権の登記をする旨、所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該所有権の登記名義人ごとの持分並びに合筆の登記に係る申請の受付の年月日及び受付番号等を記録しなければならない。
オ. 甲土地の一部を分筆して、これを乙土地に合筆する場合において、分筆の登記及び合筆の登記をするときは、登記官は、乙土地の登記記録の表題部に、合筆後の土地の表題部の登記事項、何番の土地の一部を合併した旨等を記録し、甲土地の登記記録の表題部に、残余部分の土地の表題部の登記事項、何番の土地に一部を合併した旨等を記録するものとされ、この場合には、分筆の登記における表題部の記録方法を定めた不動産登記規則101条1項及び2項の規定は、適用されない。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
本問は、分筆の登記における表題部の記録方法(不動産登記規則101条)、合筆の登記における表題部及び権利部の記録方法(同規則106条・107条)並びに分合筆の登記(同規則108条)を問うものであり、正しいのはア・エ・オの3つである。
ア 正しい。不動産登記規則101条1項は、「登記官は、甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をするときは、乙土地について新たな登記記録を作成し、当該登記記録の表題部に何番の土地から分筆した旨を記録しなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
イ 誤り。不動産登記規則101条2項は、「登記官は、前項の場合には、甲土地に新たな地番を付し、甲土地の登記記録に、残余部分の土地の表題部の登記事項、何番の土地を分筆した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。」と定めているが、同条3項は、「前項の規定にかかわらず、登記官は、分筆後の甲土地について従前の地番と同一の地番を付すことができる。この場合には、甲土地の登記記録の表題部の従前の地番を抹消する記号を記録することを要しない。」と定めている。分筆後の甲土地について従前の地番と同一の地番を付すこともできるから、本肢は誤りである。
ウ 誤り。不動産登記規則106条1項は、「登記官は、甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をするときは、乙土地の登記記録の表題部に、合筆後の土地の表題部の登記事項、何番の土地を合筆した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。」と定め、同条2項は、「登記官は、前項の場合には、甲土地の登記記録の表題部に何番の土地に合筆した旨及び従前の土地の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、当該登記記録を閉鎖しなければならない。」と定めている。合筆後の土地の表題部の登記事項は乙土地の登記記録に記録され、閉鎖されるのは甲土地の登記記録であるから、甲土地及び乙土地の登記記録をいずれも閉鎖して新たな登記記録を作成するとする本肢は誤りである。
エ 正しい。不動産登記規則107条1項は、「登記官は、前条第一項の場合において、合筆前の甲土地及び乙土地が所有権の登記がある土地であるときは、乙土地の登記記録の甲区に次に掲げる事項を記録しなければならない。」と定め、1号で「合併による所有権の登記をする旨」、2号で「所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該所有権の登記名義人ごとの持分」、4号で「合筆の登記に係る申請の受付の年月日及び受付番号」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同項は、3号で法人識別事項等の登記があるときの当該法人識別事項等を、5号で法97条1項各号に掲げる登記事項が同一の信託の登記があるときの当該信託の登記を掲げている。
オ 正しい。不動産登記規則108条1項は、「登記官は、甲土地の一部を分筆して、これを乙土地に合筆する場合において、分筆の登記及び合筆の登記をするときは、乙土地の登記記録の表題部に、合筆後の土地の表題部の登記事項、何番の土地の一部を合併した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。この場合には、第百六条の規定は、適用しない。」と定め、同条2項は、「登記官は、前項に規定する登記をするときは、甲土地の登記記録の表題部に、残余部分の土地の表題部の登記事項、何番の土地に一部を合併した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。この場合には、第百一条第一項及び第二項の規定は、適用しない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:分筆の登記では、分筆した乙土地について新たな登記記録を作成し(不動産登記規則101条1項)、分筆後の甲土地には新たな地番を付すのが原則であるが、従前の地番と同一の地番を付すこともできる(同条2項・3項)。合筆の登記では、合筆後の土地の表題部の登記事項を乙土地の登記記録に記録し、甲土地の登記記録を閉鎖する(同規則106条)。分合筆の登記では、同規則106条と同規則101条1項・2項が適用されず、「一部を合併した旨」で記録する(同規則108条)。どの登記記録に何を記録し、どれを閉鎖するかを条文の文言で押さえる。
問題:
区分建物である建物の登記記録及び敷地権である旨の登記の記録方法に関する次の記述のうち、不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 区分建物である建物の登記記録の表題部には、建物の表題部の登記事項のほか、当該建物が属する一棟の建物に属する他の建物の家屋番号を記録するものとされ、登記官は、区分建物である建物の家屋番号に関する変更の登記をしたときは、当該建物が属する一棟の建物に属する他の建物の登記記録に記録されていた当該建物の家屋番号を抹消する記号を記録し、変更後の家屋番号を記録しなければならない。
イ. 登記官は、区分建物である建物の登記記録を閉鎖する場合には、その閉鎖後においても当該建物が属する一棟の建物に他の建物(附属建物として登記されているものを除く。)が存することとなるときであっても、閉鎖する登記記録に記録された一棟の建物の構造及び床面積を抹消する記号を記録しなければならない。
ウ. 敷地権である旨の登記は、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区にするが、その敷地権が一棟の建物に属する一部の建物についての敷地権であるときであっても、当該一部の建物の家屋番号を記録することを要しない。
エ. 敷地権の目的である土地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、敷地権である旨の登記をする登記官は、遅滞なく、当該他の登記所に記録すべき事項を通知しなければならず、通知を受けた登記所の登記官は、遅滞なく、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に、通知を受けた事項を記録しなければならない。
オ. 表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合において、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記をするときは、登記官は、従前の登記記録を閉鎖することなく、その表題部に変更後の登記事項を記録しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、区分建物の家屋番号の記録(不動産登記規則116条)、区分建物の登記記録の閉鎖(同規則117条)、敷地権である旨の登記(同規則119条)及び建物が区分建物となった場合の登記(同規則140条)を問うものであり、誤っているのはイ・ウ・オの3つである。
ア 正しい。不動産登記規則116条1項は、「区分建物である建物の登記記録の表題部には、建物の表題部の登記事項のほか、当該建物が属する一棟の建物に属する他の建物の家屋番号を記録するものとする。」と定め、同条2項は、「登記官は、区分建物である建物の家屋番号に関する変更の登記又は更正の登記をしたときは、当該建物が属する一棟の建物に属する他の建物の登記記録に記録されていた当該建物の家屋番号を抹消する記号を記録し、変更後又は更正後の家屋番号を記録しなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 誤り。不動産登記規則8条は、登記記録を閉鎖するときは、閉鎖の事由、閉鎖の年月日及び閉鎖する登記記録の不動産の表示(法27条1号に掲げる登記事項を除く。)を抹消する記号を記録するほか、登記官の識別番号を記録しなければならないと定めている。しかし、同規則117条1項は、「登記官は、区分建物である建物の登記記録を閉鎖する場合において、当該登記記録の閉鎖後においても当該建物(以下この条において「閉鎖建物」という。)が属する一棟の建物に他の建物(附属建物として登記されているものを除く。)が存することとなるときは、第八条の規定にかかわらず、閉鎖建物の登記記録に記録された次に掲げる事項を抹消する記号を記録することを要しない。」と定め、2号で「一棟の建物の構造及び床面積」を掲げている。一棟の建物に他の建物が存することとなるときは、一棟の建物の構造及び床面積を抹消する記号を記録することを要しないから、本肢は誤りである。なお、同条3項は、同条1項に規定する場合以外の場合において区分建物である建物の登記記録を閉鎖するときは、閉鎖建物の登記記録及び他の建物の登記記録(閉鎖されたものも含む。)の同項各号に掲げる事項を抹消する記号を記録しなければならないと定めている。
ウ 誤り。不動産登記規則119条1項は、「登記官は、法第四十六条の敷地権である旨の登記をするときは、次に掲げる事項を敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に記録しなければならない。」と定め、1号で「敷地権である旨」、2号で一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番、3号で一棟の建物の構造及び床面積又は一棟の建物の名称、4号で「当該敷地権が一棟の建物に属する一部の建物についての敷地権であるときは、当該一部の建物の家屋番号」、5号で「登記の年月日」を掲げている。敷地権である旨の登記を権利部の相当区にするとする点は正しいが、一部の建物についての敷地権であるときは当該一部の建物の家屋番号を記録しなければならないから、本肢は誤りである。
エ 正しい。不動産登記規則119条2項は、「登記官は、敷地権の目的である土地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、遅滞なく、当該他の登記所に前項の規定により記録すべき事項を通知しなければならない。」と定め、同条3項は、「前項の規定による通知を受けた登記所の登記官は、遅滞なく、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に、通知を受けた事項を記録しなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 誤り。不動産登記法52条1項は、「表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合における当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請は、当該新築に係る区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。」と定めている。そして、不動産登記規則140条1項は、「登記官は、法第五十二条第一項及び第三項に規定する表題部の登記事項に関する変更の登記をするときは、当該変更の登記に係る区分建物である建物について新たに登記記録を作成し、当該登記記録の表題部に本項の規定により登記を移記した旨を記録しなければならない。」と定め、同条2項は、新たに作成した登記記録の権利部の相当区に変更前の建物の登記記録から権利に関する登記を移記すべきことを、同条3項は、「登記官は、第一項の場合には、変更前の建物の登記記録の表題部に同項の規定により登記を移記した旨及び従前の建物の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、当該登記記録を閉鎖しなければならない。」と定めている。新たに登記記録を作成して登記を移記し、変更前の建物の登記記録を閉鎖するのであるから、従前の登記記録を閉鎖することなくその表題部に変更後の登記事項を記録するとする本肢は誤りである。
ポイント:区分建物の登記記録には一棟の建物に属する他の建物の家屋番号が記録され(不動産登記規則116条1項)、区分建物の登記記録を閉鎖しても一棟の建物に他の建物が残るときは、一棟の建物の所在・構造及び床面積・名称・他の建物の家屋番号を抹消する記号を記録することを要しない(同規則117条1項)。敷地権である旨の登記は土地の権利部の相当区にし、一部の建物についての敷地権であればその家屋番号も記録する(同規則119条1項4号)。非区分建物が区分建物となったときは、新たな登記記録への移記と従前の登記記録の閉鎖による(同規則140条)。
問題:
表題登記がない不動産又は所有権の登記がない不動産についてする所有権の保存の登記等に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 登記官は、所有権を有することが確定判決によって確認された者の申請に基づいて表題登記がない不動産について所有権の保存の登記をするときは、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものを登記しなければならない。
イ. 収用によって所有権を取得した者の申請に基づいて表題登記がない土地について所有権の保存の登記をするときは、登記官は、当該土地の表題部に、地目及び地積等のほか、表題部所有者に関する登記事項も記録しなければならない。
ウ. 所有権の保存の登記においては登記原因及びその日付を登記することを要しないから、敷地権付き区分建物について表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請する場合であっても、登記原因及びその日付は登記されない。
エ. 登記官は、所有権の登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、所有権の保存の登記をしなければならず、その不動産が表題登記がない不動産であるときは、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものも登記しなければならない。
オ. 表題登記がある不動産(所有権の登記がある不動産を除く。)について所有権の登記をしたときであっても、登記官は、表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録することを要しない。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
本問は、所有権の保存の登記の申請人(不動産登記法74条)、表題登記がない不動産についてする所有権の保存の登記(同法75条、不動産登記規則157条)、所有権の保存の登記の登記事項及び処分の制限の登記(同法76条)並びに表題部所有者の氏名等の抹消(同規則158条)を問うものであり、正しいのはア・エの2つである。
ア 正しい。不動産登記法74条1項は、所有権の保存の登記を申請することができる者として、1号で「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」、2号で「所有権を有することが確定判決によって確認された者」、3号で「収用(…)によって所有権を取得した者」を掲げている。同法75条は、「登記官は、前条第一項第二号又は第三号に掲げる者の申請に基づいて表題登記がない不動産について所有権の保存の登記をするときは、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものを登記しなければならない。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
イ 誤り。不動産登記規則157条1項は、「法第七十五条(法第七十六条第三項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の法務省令で定めるものは、表示に関する登記事項のうち次に掲げる事項以外の事項とする。」と定め、1号で「表題部所有者に関する登記事項」、2号で「登記原因及びその日付」、3号で「敷地権の登記原因及びその日付」を掲げている。表題部所有者に関する登記事項は、同法75条により登記される不動産の表示から除かれているから、本肢は誤りである。なお、同条2項は、「法第七十五条の規定により登記をするときは、表題部に所有権の登記をするために登記をする旨を記録するものとする。」と定めている。
ウ 誤り。不動産登記法76条1項は、「所有権の保存の登記においては、第五十九条第三号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない。」と定めている。同法74条2項は、「区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」と定めている。敷地権付き区分建物について表題部所有者から所有権を取得した者が同項の規定により所有権の保存の登記を申請する場合は、同法76条1項ただし書により同項本文の適用はなく、同法59条3号により登記原因及びその日付が登記されることになるから、本肢は誤りである。
エ 正しい。不動産登記法76条2項は、「登記官は、所有権の登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、所有権の保存の登記をしなければならない。」と定め、同条3項は、「前条の規定は、表題登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をする場合について準用する。」と定めている。表題登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をする場合には、同法75条の準用により、当該不動産に関する不動産の表示のうち法務省令で定めるものを登記することになる。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、不動産登記規則157条3項は、所有権の登記がない不動産について嘱託による所有権の処分の制限の登記をするときは、登記記録の甲区に、所有者の氏名又は名称、住所等とともに、処分の制限の登記の嘱託によって所有権の登記をする旨を記録しなければならないと定めている。
オ 誤り。不動産登記規則158条は、「登記官は、表題登記がある不動産(所有権の登記がある不動産を除く。)について所有権の登記をしたときは、表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録しなければならない。」と定めている。表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録しなければならないから、これを要しないとする本肢は誤りである。
ポイント:表題登記がない不動産について所有権の保存の登記を申請することができるのは、確定判決によって所有権を確認された者と収用によって所有権を取得した者であり、その場合には登記官が不動産の表示を登記するが、表題部所有者に関する登記事項と登記原因及びその日付は除かれる(不動産登記法75条、不動産登記規則157条1項)。処分の制限の登記の嘱託があると職権で所有権の保存の登記がされ、表題登記がない不動産なら同法75条が準用される(同法76条2項・3項)。所有権の保存の登記に登記原因及びその日付を登記しない原則には、敷地権付き区分建物についての同法74条2項による登記という例外がある(同法76条1項ただし書)。
問題:
登記識別情報の提供及び事前通知等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 所有権の登記名義人をいずれもAとする甲建物及び乙建物について、甲建物を乙建物に合併する建物の合併の登記をAが自ら申請する場合(申請情報を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について公証人の認証はされていないものとする。)において、Aが登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由があるときは、登記官は、Aに対し、当該申請があった旨等を通知しなければならず、Aが国内に住所を有するときは、当該通知を発送した日から2週間以内にAから申請の内容が真実である旨の申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。
イ. 登記官が不動産登記法23条1項の規定による通知(事前通知)を自然人である登記義務者に対してするときは、書留郵便により書面を送付する方法によるものとされている。
ウ. 書面申請(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出した場合を除く。)がされた場合において、事前通知を受けた登記義務者が申請の内容が真実である旨の申出をするときは、通知に係る書面に申請の内容が真実である旨を記載し、これに記名し、申請書又は委任状に押印したものと同一の印を用いて当該書面に押印した上、登記所に提出する方法によらなければならない。
エ. 登記の申請の代理を業とすることができる代理人(資格者代理人)が本人確認情報を提供する場合において、資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は申請人と面識がないときは、申請人から運転免許証、個人番号カード、旅券等のうちいずれか二以上の提示を受けて確認しなければならない。
オ. 書面申請をした申請人が登記識別情報の通知を受けるべき場合において、その者が登記完了の時から3月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しないときは、登記識別情報の通知を要しない場合に当たり、登記官は、当該書面を廃棄することができる。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
本問は、登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記(不動産登記法22条、不動産登記令8条)、事前通知(同法23条1項、不動産登記規則70条)、資格者代理人による本人確認情報(同法23条4項1号、同規則72条)及び登記識別情報の通知を要しない場合(同規則64条)を問うものであり、誤っているのはイ・エの2つである。
ア 正しい。不動産登記法22条は、「登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。」と定め、不動産登記令8条1項は、同法22条の政令で定める登記として、3号で「所有権の登記がある建物の合併の登記」を掲げている。不動産登記法23条1項は、「登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。」と定め、不動産登記規則70条8項は、「法第二十三条第一項の法務省令で定める期間は、通知を発送した日から二週間とする。ただし、法第二十二条に規定する登記義務者が外国に住所を有する場合には、四週間とする。」と定めている。なお、不動産登記法23条4項は、申請が資格者代理人によってされ、登記官が本人確認情報の提供を受けてその内容を相当と認めるとき(1号)や、申請情報を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について公証人から必要な認証がされ、登記官がその内容を相当と認めるとき(2号)は、同条1項の規定を適用しないと定めているが、本肢はAが自ら申請し、公証人の認証もされていない場合であるから、これらに当たらない。本肢は、同法22条・23条1項、不動産登記令8条1項3号及び不動産登記規則70条8項の規定のとおりである。
イ 誤り。不動産登記規則70条1項は、「法第二十三条第一項の通知は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法により書面を送付してするものとする。」と定め、1号で、登記義務者が自然人である場合又は登記義務者である法人の代表者の住所に宛てて書面を送付するときは、「日本郵便株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名宛人本人に限り交付し、若しくは配達する本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法」によるものとしている。書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるのは、登記義務者が法人である場合(同項1号に掲げる場合を除く。)である(同項2号)。自然人である登記義務者に対する事前通知は本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法によるから、本肢は誤りである。なお、登記義務者が外国に住所を有する場合については、同項3号が別に定めている。
ウ 正しい。不動産登記規則70条5項は、法23条1項に規定する申出は、申請の区分に応じ、定める方法によりしなければならないとし、同項2号は、書面申請について、「法第二十二条に規定する登記義務者が、第一項の書面に通知に係る申請の内容が真実である旨を記載し、これに記名し、申請書又は委任状に押印したものと同一の印を用いて当該書面に押印した上、登記所に提出する方法(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出した場合にあっては、法第二十二条に規定する登記義務者が、申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行い、これを記録した磁気ディスクを第一項の書面と併せて登記所に提出する方法)」を掲げている。本肢は、同号のとおりである。
エ 誤り。不動産登記法23条4項1号は、事前通知を要しない場合として、「当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。」を掲げている。不動産登記規則72条1項3号は、資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は当該申請人と面識がないときは、本人確認情報において、申請人から提示を受けた同条2項各号に掲げる書類の内容及び申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由を明らかにしなければならないと定め、同条2項1号は、運転免許証、個人番号カード、旅券等、在留カード、特別永住者証明書又は運転経歴証明書について、「のうちいずれか一以上の提示を求める方法」を掲げている。運転免許証等についてはいずれか一以上の提示で足りるから、二以上の提示を受けなければならないとする本肢は誤りである。なお、いずれか二以上の提示を求めるとされているのは、同項2号に掲げる資格確認書(書面によって作成されたものに限る。)、介護保険の被保険者証等の書類である。
オ 正しい。不動産登記法21条ただし書は、登記識別情報の通知について、「当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。」と定めている。不動産登記規則64条1項3号は、その場合として、登記識別情報の通知を受けるべき者(同規則63条1項2号に定める方法、すなわち書面申請における登記識別情報を記載した書面を交付する方法によって通知を受けるべきものに限る。)が、「登記完了の時から三月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合」を掲げ、同規則64条3項は、登記官は、同条1項3号に規定する場合には同号に規定する登記識別情報を記載した書面を廃棄することができると定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:所有権の登記がある土地の合筆、建物の合体による登記等、建物の合併の登記は、登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記であり(不動産登記令8条1項1号〜3号)、提供できないときは事前通知の対象になる(不動産登記法23条1項)。事前通知は自然人には本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法で、申出期間は発送の日から2週間(外国に住所があれば4週間)である(不動産登記規則70条1項・8項)。資格者代理人の本人確認は、運転免許証等なら一以上、資格確認書等なら二以上の提示による(同規則72条2項)。方法・期間・枚数を条文の文言で区別する。
問題:
土地家屋調査士会(以下「調査士会」という。)及び日本土地家屋調査士会連合会(以下「調査士会連合会」という。)に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 調査士会連合会の会則のうち、調査士の登録に関する規定を変更するときは、調査士会連合会に関する情報の公開に関する規定を変更するときと同様に、法務大臣の認可を受けることを要しない。
イ. 調査士会の会則には、入会金その他の入会についての特別の負担に関するものを含め、入会及び退会に関する規定を記載しなければならず、この規定に係る会則の変更をするには、法務大臣の認可を受けなければならない。
ウ. 調査士会の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとされ、調査士会は、その代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
エ. 調査士会は、政令で定めるところにより、登記をしなければならないが、登記をしなければならない事項は、登記の前であっても、これをもって第三者に対抗することができる。
オ. 調査士会連合会が政令に違反して登記をすることを怠ったときは、調査士会連合会の代表者は、30万円以下の過料に処せられる。
答え:
正しいものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、調査士会及び調査士会連合会の組織に関する規定のうち、会則の記載事項と法務大臣の認可(土地家屋調査士法48条・49条・58条・59条)、法人としての調査士会(同法47条)、調査士会の登記(同法50条)、調査士会連合会への準用(同法61条)及び登記懈怠の過料(同法76条)を問うものであり、正しいのはイ・ウ・オの3つである。
ア 誤り。土地家屋調査士法58条は、調査士会連合会の会則に記載しなければならない事項として、1号で「第四十八条第一号、第七号、第十号及び第十一号に掲げる事項」、2号で「第四十八条第二号及び第三号に掲げる事項」、3号で「調査士の登録に関する規定」、4号で「調査士会連合会に関する情報の公開に関する規定」、5号で「その他調査士会連合会の目的を達成するために必要な規定」を掲げている。そして、同法59条は、「調査士会連合会の会則を定め、又はこれを変更するには、法務大臣の認可を受けなければならない。ただし、前条第一号及び第四号に掲げる事項に係る会則の変更については、この限りでない。」と定めている。調査士会連合会に関する情報の公開に関する規定(58条4号)の変更は認可を要しないが、調査士の登録に関する規定(同条3号)の変更は同法59条ただし書に当たらず、法務大臣の認可を受けなければならないから、本肢は誤りである。
イ 正しい。土地家屋調査士法48条は、調査士会の会則に記載しなければならない事項として、6号で「入会及び退会に関する規定(入会金その他の入会についての特別の負担に関するものを含む。)」を掲げている。同法49条1項は、「調査士会の会則を定め、又はこれを変更するには、法務大臣の認可を受けなければならない。ただし、前条第一号及び第七号から第十一号までに掲げる事項に係る会則の変更については、この限りでない。」と定めている。同法48条6号に掲げる事項は、同法49条1項ただし書に掲げられていないから、その変更には法務大臣の認可を受けなければならない。本肢は正しい。なお、同条2項は、この場合において、法務大臣は、調査士会連合会の意見を聴いて、認可し、又は認可しない旨の処分をしなければならないと定めている。
ウ 正しい。土地家屋調査士法47条3項は、「調査士会は、法人とする。」と定め、同条4項は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四条及び第七十八条の規定は、調査士会について準用する。」と定めている。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条は、「一般社団法人及び一般財団法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。」と定め、同法78条は、「一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定めている。これらの規定の準用により、本肢は正しい。なお、土地家屋調査士法51条2項は、「会長は、調査士会を代表し、その会務を総理する。」と定めている。
エ 誤り。土地家屋調査士法50条1項は、「調査士会は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。」と定めている。登記の前には第三者に対抗することができないから、本肢は誤りである。
オ 正しい。土地家屋調査士法61条は、「第四十七条第三項及び第四項、第五十条並びに第五十一条の規定は、調査士会連合会に準用する。」と定めている。そして、同法76条は、「調査士会又は調査士会連合会が第五十条第一項(第六十一条において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に違反して登記をすることを怠つたときは、その調査士会又は調査士会連合会の代表者は、三十万円以下の過料に処する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:法務大臣の認可を要しない会則の変更は、調査士会では48条1号(名称及び事務所の所在地)と7号〜11号(研修、紛議の調停、情報の公開、資産及び会計、会費)に限られ(土地家屋調査士法49条1項ただし書)、調査士会連合会では58条1号・4号に限られる(同法59条ただし書)。入会及び退会に関する規定や調査士の登録に関する規定の変更には認可が要る。調査士会は法人で、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条・78条が準用され(土地家屋調査士法47条4項)、登記事項は登記の後でなければ第三者に対抗できず(同法50条2項)、登記を怠ると代表者が30万円以下の過料に処せられる(同法76条)。法人であること・登記・役員に関する規定は、同法61条により調査士会連合会にも準用される。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・期間の計算) | 初日不算入の原則と午前零時から始まる場合の例外、暦による計算と起算日に応当する日の前日の満了、応当する日がない場合の月末の満了、末日が休日に当たる場合の取扱い、不法行為による損害賠償請求権の3年の時効期間の計算(判例) | 民法138条〜143条、724条 |
| 第2問 | 民法(物権・質権) | 質権の効力発生と代理占有の禁止、動産質の対抗要件と占有の回復、債権質の直接取立て、不動産質権の存続期間と更新、転質 | 民法344条、345条、348条、352条、353条、356条〜360条、364条、366条 |
| 第3問 | 民法(相続・限定承認) | 限定承認の方式、被相続人に対する権利義務の不消滅、公告の期間と相続財産の清算人による公告、相続債権者と受遺者の弁済の順序、死因贈与を受けた限定承認者と相続債権者(判例) | 民法922条、924条〜927条、929条、931条、936条 |
| 第4問 | 不動産登記規則(分筆・合筆の登記の記録方法) | 分筆の登記における新たな登記記録の作成と分筆後の甲土地の地番、合筆の登記における登記記録の記録と閉鎖、合併による所有権の登記、分合筆の登記の特則 | 不動産登記規則101条、106条、107条1項、108条 |
| 第5問 | 不動産登記規則(区分建物の登記記録) | 一棟の建物に属する他の建物の家屋番号の記録、区分建物の登記記録の閉鎖と抹消記号を要しない事項、敷地権である旨の登記の記録事項と他の登記所への通知、区分建物となった場合の登記記録の移記と閉鎖 | 不動産登記法52条1項、不動産登記規則8条、116条、117条、119条、140条 |
| 第6問 | 不動産登記法・同規則(表題登記がない不動産の所有権の保存の登記) | 確定判決・収用による所有権の保存の登記と登記される不動産の表示、所有権の保存の登記の登記原因及びその日付と敷地権付き区分建物の例外、処分の制限の登記の嘱託による職権の所有権の保存の登記、表題部所有者に関する登記事項の抹消 | 不動産登記法74条、75条、76条、不動産登記規則157条、158条 |
| 第7問 | 不動産登記法・同令・同規則(登記識別情報と事前通知) | 建物の合併の登記と登記識別情報の提供、事前通知の方法と申出期間、書面申請における申出の方法、資格者代理人による本人確認情報、登記識別情報の通知を要しない場合 | 不動産登記法21条、22条、23条1項・4項、不動産登記令8条1項3号、不動産登記規則63条1項、64条、70条、72条 |
| 第8問 | 土地家屋調査士法(調査士会・調査士会連合会) | 会則の記載事項と法務大臣の認可を要しない会則の変更、調査士会の住所と代表者の行為についての損害賠償責任、調査士会の登記と対抗力、登記を怠った場合の過料 | 土地家屋調査士法47条、48条、49条、50条、51条、58条、59条、61条、76条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条、78条 |