問題:
法人及び権利能力のない社団に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負うのであって、法令の規定によって法人の権利能力が制限されることはない。
イ. 外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立が認許されないが、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。また、認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有するが、外国人が享有することのできない権利については、この限りでない。
ウ. 権利能力のない社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要し、この社団がその名においてその代表者により取得した資産は、構成員に総有的に帰属する。
エ. 権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務については、社団の総有財産だけでなく、構成員各自も、取引の相手方に対し、個人として責任を負う。
オ. 権利能力のない社団の資産である不動産については、社団を権利者とする登記をすることができ、また、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることもできる。
答え:
誤っているものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
本問は、法人の能力(民法34条)、外国法人(同法35条)と、権利能力のない社団に関する判例の理解を問うものであり、誤っているのはア・エ・オの3つである。
ア 誤り。民法34条は、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定めている。法人が権利を有し義務を負うのは、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内においてであり、かつ、「法令の規定に従い」とされているから、法令の規定による制限を受けないとする本肢は誤りである。なお、同法33条1項は、「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」と定めている。
イ 正しい。民法35条1項は、「外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。」と定め、同条2項は、「前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。」と定めている。本肢は、これらの規定に沿った記述であり、同条2項ただし書のうち「法律又は条約中に特別の規定がある権利」には触れていないが、その例外を否定する記述ではない。なお、同法37条1項は、「外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。」と定めている。
ウ 正しい。最判昭和39年10月15日(民集18巻8号1671頁)の裁判要旨は、「法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。」(要旨一)、「法人に非ざる社団がその名においてその代表者により取得した資産は、構成員に総有的に帰属するものと解すべきである。」(要旨二)というものである。本肢は、この裁判要旨に沿っている。なお、民訴法29条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。」と定めており、最判平成14年6月7日(民集56巻5号899頁)は、判示の事情の下で、預託金会員制のゴルフクラブが同条にいう「法人でない社団」に当たるとした。
エ 誤り。最判昭和48年10月9日(民集27巻9号1129頁)の裁判要旨は、「権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない。」というものである。本肢は、構成員各自も取引の相手方に対し個人として責任を負うとしている点で、この判例の趣旨に反し、誤りである。
オ 誤り。最判昭和47年6月2日(民集26巻5号957頁)の裁判要旨は、「権利能力なき社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである。」(要旨一)というものである。本肢は、社団を権利者とする登記や肩書付きの代表者個人名義の登記ができるとしている点で、この判例の趣旨に反し、誤りである。なお、最判平成26年2月27日(民集68巻2号192頁)の裁判要旨は、「権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。」というものである。
ポイント:権利能力のない社団は、成立要件と資産の総有(昭和39年)、債務は総有財産のみが責任財産(昭和48年)、登記は社団名義や肩書付きの代表者名義ではできない(昭和47年)の3つの判例をセットで押さえ、法人は「法令の規定に従い」目的の範囲内で権利義務を有する(民法34条)と整理する。
問題:
留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 留置権者は、債権の一部の弁済を受けたときは、その割合に応じて、留置物の一部についてのみ、その権利を行使することができる。
イ. 甲所有の物を買い受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合において、丙が甲に対してその物の引渡しを請求したときは、甲は、乙に対する未払代金債権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
ウ. 不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の所有権に基づく明渡請求に対し、売主に対する売買契約不履行に基づく損害賠償債権を被担保債権として、留置権を主張することができる。
エ. 建物の売買契約によりその引渡しを受けた買主が、売買契約の合意解除後に、権原のないことを知りながら売主所有の建物を不法に占有している間に、その建物につき必要費又は有益費を支出した場合であっても、買主は、民法295条2項の類推適用により、その費用の償還請求権に基づく留置権を主張することができない。
オ. 留置権者が債務者の承諾を得ないで留置物を第三者に賃貸したときは、留置権は当然に消滅する。
答え:
正しいものは、イ・エの2つである。
解説:
本問は、留置権の不可分性(民法296条)、留置権の成立をめぐる判例、留置権者の義務違反の効果(同法298条)を問うものであり、正しいのはイ・エの2つである。
ア 誤り。民法296条は、「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。」と定めている(留置権の不可分性)。したがって、債権の一部の弁済を受けたときに、その割合に応じて留置物の一部についてのみ権利を行使することができるとする本肢は誤りである。なお、同法295条1項は、「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。」と定めている。
イ 正しい。最判昭和47年11月16日(民集26巻9号1619頁)の裁判要旨は、「甲所有の物を買受けた乙が、売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には、甲は、丙からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。」(要旨一)というものである。本肢は、この裁判要旨に沿っている。なお、同判決の要旨二は、「物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合において、その物に関して生じた債務の支払義務を負う者が、原告ではなく第三者であるときは、被告に対し、その第三者から右債務の支払を受けるのと引換えに物の引渡をすることを命ずるべきである。」としている。
ウ 誤り。最判昭和43年11月21日(民集22巻12号2765頁)の裁判要旨は、「不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。」というものである。本肢は、留置権を主張することができるとしている点で、この判例の趣旨に反し、誤りである。なお、最判昭和34年9月3日(民集13巻11号1357頁)の裁判要旨は、「不動産を売渡担保に供した者は、担保権者が約に反して担保不動産を他に譲渡したことにより担保権者に対して取得した担保物返還義務不履行による損害賠償債権をもつて、右譲受人からの転々譲渡により右不動産の所有権を取得した者の明渡請求に対し、留置権を主張することは許されない。」というものである。
エ 正しい。民法295条2項は、「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。」と定めている。最判昭和41年3月3日(民集20巻3号386頁)の裁判要旨は、「建物の売買契約によりその引渡を受けた買主が、右売買契約の合意解除後売主所有の右建物を権原のないことを知りながら不法に占有中、右建物につき必要費、有益費を支出したとしても、買主は、民法第二九五条第二項の類推適用により、当該費用の償還請求権に基づく右建物の留置権を主張できない。」というものである。本肢は、この裁判要旨に沿っている。なお、最判昭和46年7月16日(民集25巻5号749頁)も、建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら建物を不法に占有する間に有益費を支出した場合について、民法295条2項の類推適用により、その費用の償還請求権に基づいて建物に留置権を行使することはできないとしている。
オ 誤り。民法298条は、1項で「留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。」、2項で「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。」と定め、3項で「留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。」と定めている。承諾を得ないで留置物を賃貸した場合に、同条3項が定めているのは債務者の消滅請求であって、条文上、違反によって留置権が当然に消滅するとはされていないから、当然に消滅するとする本肢は誤りである。なお、同法302条は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。」と定めている。
ポイント:留置権は、被担保債権の全部の弁済まで留置物の全部に及ぶ(民法296条)。判例上、不動産の二重売買の第一の買主は、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもって第二の買主の明渡請求に対し留置権を主張することは許されず(昭和43年)、建物の買主が売買契約の合意解除後に権原のないことを知りながら建物を不法に占有する間に支出した費用の償還請求権については、民法295条2項の類推適用により留置権を主張できない(昭和41年)。また、留置権者が義務に違反しても、留置権は当然には消滅せず、債務者が消滅を請求することができる(同法298条3項)と整理する。
問題:
特別の寄与に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 被相続人の子の配偶者は、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたときは、特別寄与者として、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
イ. 特別寄与者が家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるのは、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から1年以内、かつ、相続開始の時から10年以内に限られる。
ウ. 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
エ. 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額を相続人の人数で等分した額を負担する。
オ. 寄与の方法として、寄与分に関する規定は、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付を掲げているが、特別寄与料に関する規定は、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことを要件としている。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、特別寄与者・特別寄与料に関する民法1050条の規定と、寄与分(同法904条の2)との文言の違いを問うものであり、正しいのはア・ウ・オの3つである。
ア 正しい。民法1050条1項は、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」と定めている。被相続人の子の配偶者は、被相続人の一親等の姻族であり、同法725条3号の「三親等内の姻族」として親族に当たる。また、相続人は、同法887条1項(子)、889条1項(直系尊属・兄弟姉妹)、890条(配偶者)などで定められており、被相続人の子の配偶者は、これらに掲げられていない。したがって、本肢の者は、同法1050条1項の括弧書で除かれている者に当たらず、同項の要件を満たす限り、特別寄与者として特別寄与料の支払を請求することができる。
イ 誤り。民法1050条2項は、「前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。」と定めている。請求期間は、相続の開始及び相続人を知った時から6箇月、相続開始の時から1年であり、本肢の「1年以内」「10年以内」は条文と異なるから、誤りである。
ウ 正しい。民法1050条4項は、「特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。なお、寄与分についても、同法904条の2第3項は、「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。」と定めている。
エ 誤り。民法1050条5項は、「相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。」と定めている。各相続人の負担額は、特別寄与料の額に、同法900条から902条までの規定(法定相続分、代襲相続人の相続分及び遺言による相続分の指定)により算定した各相続人の相続分を乗じた額であり、相続人の人数で等分した額ではないから、本肢は誤りである。
オ 正しい。民法904条の2第1項は、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、…」と定めており、寄与の方法として、事業に関する労務の提供又は財産上の給付を掲げている。これに対し、同法1050条1項は、前記のとおり、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族」と定め、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことを要件としている。本肢は、両規定の文言の違いを述べたものであり、正しい。なお、寄与分の規定の対象は「共同相続人中に」特別の寄与をした者がある場合であり、特別寄与料の規定の対象は、相続人等を除いた被相続人の親族である。
ポイント:特別寄与料(民法1050条)は、相続人等を除く親族が、無償の療養看護等の労務の提供により、相続人に金銭を請求する制度であり、請求期間は「6箇月・1年」、上限は「遺贈を控除した残額」、負担は「相続分に応じた額」と、条文の数字と文言で整理する。
問題:
相隣関係に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担するが、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
イ. 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地がある場合において、各所有者が他の所有者と共同の費用でその境界に囲障を設けるときに、当事者間に協議が調わないときの囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2メートルのものでなければならない。この場合において、相隣者の一人は、これより良好な材料を用い、又は高さを増して囲障を設けることができるが、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
ウ. 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定され、この推定は、一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁についても及ぶ。
エ. 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならず、これに違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、建築に着手した時から1年を経過した後であっても、その建物が完成するまでの間は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。
オ. 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができ、この場合において、他人の工作物を使用する者は、その工作物を設けた者と等しい割合で、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
ア・イは民法の条文どおりで正しく、ウ・エ・オが誤りである。
ア 正しい。民法224条は、「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。」と定めている。本肢は、同条本文の等しい割合による負担と、同条ただし書の測量の費用の分担をそのまま述べており、正しい。なお、同法223条は、「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」と定めている。
イ 正しい。民法225条1項は、「二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。」と定め、同条2項は、「当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。」と定めている。また、同法227条は、「相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法228条は、「前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。」と定めている。
ウ 誤り。民法229条は、「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。」と定めている。しかし、同法230条1項は、「一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。」と定めている。したがって、一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁には、同法229条の共有の推定は及ばないから、本肢は誤りである。なお、同法230条2項は、高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても前項と同様とするとしたうえで、「ただし、防火障壁については、この限りでない。」と定めている。
エ 誤り。民法234条1項は、「建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。」と定めている。したがって、建築に着手した時から1年を経過した後は、その建物が完成する前であっても、隣地の所有者は損害賠償の請求のみをすることができ、建築を中止させ、又は変更させることはできないから、本肢は誤りである。なお、同法236条は、「前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。」と定めている。
オ 誤り。民法221条1項は、「土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。」と定め、同条2項は、「前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。」と定めている。したがって、費用の分担は、工作物を設けた者と等しい割合ではなく、利益を受ける割合に応じてするものであり、本肢は誤りである。境界標や囲障の設置及び保存の費用が等しい割合で負担される(同法224条本文・226条)のとは、費用分担の基準が異なる。
ポイント:相隣関係の費用分担は、境界標・囲障の設置及び保存の費用が等しい割合(民法224条本文・226条)、測量の費用は土地の広狭、通水用工作物の使用は利益を受ける割合と、基準が異なる箇所を条文の文言のまま対にして覚え、共有の推定は一棟の建物の一部を構成する障壁を除くこと、建築の中止・変更を求められるのは着手から1年以内かつ完成前に限られることも、数字と例外をセットで押さえる。
問題:
登記所、登記官、登記の申請の調査及び登記記録に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 法務大臣は、一の登記所の管轄に属する事務を他の登記所に委任することができ、また、登記所においてその事務を停止しなければならない事由が生じたときは、期間を定めて、その停止を命ずることができる。
イ. 登記所における事務を取り扱う登記官は、登記所に勤務する法務事務官のうちから、法務大臣が指定する者である。
ウ. 登記官の配偶者であった者が登記の申請人であるときは、当該登記官は、当該登記をすることができず、登記官の四親等内の親族が申請人を代表して申請するときも、同様である。
エ. 登記官は、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、申請人に対して出頭を求めるなどの調査をすることなく、直ちに当該申請を却下しなければならない。
オ. 法務大臣は、登記記録の全部又は一部が滅失したときは、登記官に対し、一定の期間を定めて、当該登記記録の回復に必要な処分を命ずることができ、登記官は、登記記録が滅失したときは、速やかに、その状況を調査し、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に報告しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
ア・ウ・オが正しく、イ・エが誤りである。
ア 正しい。不動産登記法7条は、「法務大臣は、一の登記所の管轄に属する事務を他の登記所に委任することができる。」と定め、同法8条は、「法務大臣は、登記所においてその事務を停止しなければならない事由が生じたときは、期間を定めて、その停止を命ずることができる。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりであり、正しい。
イ 誤り。不動産登記法9条は、「登記所における事務は、登記官(登記所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が取り扱う。」と定めている。登記官を指定するのは、法務大臣ではなく、法務局又は地方法務局の長であるから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。不動産登記法10条は、「登記官又はその配偶者若しくは四親等内の親族(配偶者又は四親等内の親族であった者を含む。以下この条において同じ。)が登記の申請人であるときは、当該登記官は、当該登記をすることができない。登記官又はその配偶者若しくは四親等内の親族が申請人を代表して申請するときも、同様とする。」と定めている。括弧書により、配偶者であった者も含まれるから、登記官の配偶者であった者が申請人であるときは、当該登記官は当該登記をすることができない。また、後段により、登記官の四親等内の親族が申請人を代表して申請するときも同様である。本肢は正しい。
エ 誤り。不動産登記法24条1項は、「登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、次条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。」と定めている。このように、同項は、同法25条の規定により却下すべき場合を除いて、申請の権限の有無を調査することを登記官に義務付けている。したがって、調査をすることなく直ちに申請を却下しなければならないとする本肢は誤りである。なお、同条2項は、申請人又はその代表者若しくは代理人が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同条1項の調査を嘱託することができると定め、不動産登記規則59条1項は、「登記官は、法第二十四条第一項の規定により申請人の申請の権限の有無を調査したときは、その調査の結果を記録した調書を作成しなければならない。」と定めている。
オ 正しい。不動産登記法13条は、「法務大臣は、登記記録の全部又は一部が滅失したときは、登記官に対し、一定の期間を定めて、当該登記記録の回復に必要な処分を命ずることができる。」と定めている。また、不動産登記規則30条1項は、「登記官は、登記記録又は地図等が滅失したときは、速やかに、その状況を調査し、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に報告しなければならない。」と定めており、報告の相手方は、法務大臣ではなく、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長である。本肢は正しい。なお、同条2項は、報告を受けた法務局又は地方法務局の長は、相当の調査をし、法務大臣に対し、意見を述べなければならないと定めている。
ポイント:登記所・登記官の規定は、誰が何をするのかという主語の取り違えが誤りの典型であり、委任・停止・回復の命令は法務大臣、登記官の指定は法務局又は地方法務局の長、滅失の報告先は登記官を監督する法務局又は地方法務局の長と、主語ごとに整理して覚える。
問題:
土地家屋調査士の事務所及び業務に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 調査士は、法務省令の定める基準に従って事務所を設けなければならず、二以上の事務所を設けることができない。
イ. 調査士は、補助者を置いたときは、遅滞なく、その旨を所属の調査士会に届け出なければならないが、補助者を置かなくなったときは、その旨を届け出ることを要しない。
ウ. 調査士会に入会していない調査士は、事務所に調査士の事務所である旨の表示又はこれに類する表示をしてはならず、また、調査士は、業務の停止の処分を受けたときは、その停止の期間中、これらの表示をしてはならない。
エ. 調査士は、依頼者に交付し、又は官庁に提出すべき書類(民間紛争解決手続代理関係業務に関するものを除く。)を作成したときは、その書類の末尾又は欄外に記名すれば足り、職印を押すことを要しない。
オ. 土地家屋調査士名簿は日本土地家屋調査士会連合会に備えられ、その登録は同連合会が行い、登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会を経由して、同連合会に登録申請書を提出しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
ア・ウ・オは条文どおりで正しく、イ・エが誤りである。
ア 正しい。土地家屋調査士法20条は、「調査士は、法務省令の定める基準に従い、事務所を設けなければならない。」と定め、土地家屋調査士法施行規則18条は、「調査士は、二以上の事務所を設けることができない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりであり、正しい。
イ 誤り。土地家屋調査士法施行規則23条2項は、「調査士は、補助者を置いたときは、遅滞なく、その旨を所属の調査士会に届け出なければならない。補助者を置かなくなつたときも、同様とする。」と定めている。補助者を置かなくなったときも届出が必要であるから、届出を要しないとする本肢は誤りである。なお、同条3項は、調査士会は、この届出があったときは、その旨をその調査士会の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に通知しなければならないと定めている。
ウ 正しい。土地家屋調査士法施行規則19条2項は、「調査士会に入会していない調査士は、前項の表示又はこれに類する表示をしてはならない。」と定め、同条3項は、「調査士は、業務の停止の処分を受けたときは、その停止の期間中第一項の表示又はこれに類する表示をしてはならない。」と定めている。ここにいう「前項の表示」とは、同条1項が定める、調査士会に入会したときに事務所にしなければならない調査士の事務所である旨の表示をいう。本肢は、これらの規定のとおりである。
エ 誤り。土地家屋調査士法施行規則26条1項は、「調査士は、依頼者に交付し、又は官庁に提出すべき書類(民間紛争解決手続代理関係業務に関するものを除く。)を作成したときは、その書類の末尾又は欄外に記名し、職印を押さなければならない。」と定めている。記名のほか職印を押すことが必要であるから、記名すれば足り職印を押すことを要しないとする本肢は誤りである。なお、同条2項は、調査士は、依頼者又は官庁に提供する電磁的記録を作成したときは、当該電磁的記録に、職名及び氏名を記録し、かつ、同項が定める電子署名を行わなければならないと定めている。
オ 正しい。土地家屋調査士法8条1項は、調査士となる資格を有する者が調査士となるには、日本土地家屋調査士会連合会に備える土地家屋調査士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する土地家屋調査士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならないと定め、同条2項は、「土地家屋調査士名簿の登録は、調査士会連合会が行う。」と定めている。また、同法9条1項は、「前条第一項の登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会を経由して、調査士会連合会に登録申請書を提出しなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:調査士の義務に関する施行規則は、事務所は一つに限ること、補助者は置いたときも置かなくなったときも届出が要ること、書類の作成には記名のほか職印が要ること、調査士会に入会していないときや業務停止の期間中は事務所の表示ができないことを、場面ごとに、してよいこと、してはならないこと、届け出ることに分けて覚える。
問題:
国土調査法に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 地籍調査の結果に基づいて地図及び簿冊を作成した者は、遅滞なく、その旨を公告し、当該地籍調査が行われた市町村の事務所において、その公告の日から20日間、当該地図及び簿冊を一般の閲覧に供しなければならず、閲覧に供された地図及び簿冊に測量若しくは調査上の誤り又は政令で定める限度以上の誤差があると認める者は、その閲覧の期間内に、その旨を申し出ることができる。
イ. 市町村が、都道府県知事の指定を受けて行った地籍調査の成果について、その認証を請求する相手方は、国土交通大臣である。
ウ. 国土調査以外の測量及び調査を行った者が、その結果作成された地図及び簿冊について国土調査の成果としての認証を申請した場合において、国土交通大臣又は事業所管大臣は、これらの地図及び簿冊が認証を受けた国土調査の成果と同等以上の精度又は正確さを有すると認めたときは、これらを認証された国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定することができる。
エ. 登記所は、地籍調査の成果の写しの送付を受けたときは、これに基づいて、土地の表示に関する登記及び所有権の登記名義人の氏名若しくは名称若しくは住所についての変更の登記若しくは更正の登記をしなければならず、その地籍調査が、土地の所有者の同意を得て、分割又は合併があつたものとして調査を行うものであったときは、その成果の写しに基づいて分筆又は合筆の登記をしなければならない。
オ. 街区境界調査成果が認証され、その写しが登記所に送付されたときは、登記所は、政令で定めるところにより、これに基づいて、表題部所有者又は所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記をしなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウ・エ・オの4つである。
解説:
ア・ウ・エ・オが正しく、イが誤りである。
ア 正しい。国土調査法17条1項は、国土調査を行った者は、同法2条2項若しくは5項に規定する調査及び測量又は同条3項若しくは4項に規定する調査の結果に基づいて地図及び簿冊を作成した場合においては、遅滞なく、その旨を公告し、当該国土調査を行った者の事務所(地籍調査にあっては、当該地籍調査が行われた市町村の事務所)において、その公告の日から20日間、当該地図及び簿冊を一般の閲覧に供しなければならないと定めている。同条2項は、閲覧に供された地図及び簿冊に測量若しくは調査上の誤り又は政令で定める限度以上の誤差があると認める者は、同項の期間内に、当該国土調査を行った者に対してその旨を申し出ることができると定めている。なお、同法2条5項は、地籍調査を、毎筆の土地について、その所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することと定義している。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 誤り。国土調査法19条1項は、国土調査を行った者が成果の認証を請求する相手方について、「国の機関及び第五条第四項の規定による指定を受け又は第六条の三第二項の規定により定められた事業計画に基づいて国土調査を行う都道府県にあつては国土交通大臣に、第八条第一項の勧告に基づいて国土調査を行う者にあつては事業所管大臣に、その他の者にあつては都道府県知事に」と定めている。市町村が同法6条3項の規定による都道府県知事の指定を受けて行う地籍調査は、国の機関が行うものではなく、同法5条4項の規定による指定を受け又は6条の3第2項の規定により定められた事業計画に基づいて国土調査を行う都道府県によるものでもない。また、同法8条1項の勧告に基づく国土調査については、同条2項が、同法5条を、「都道府県」を「土地改良事業その他の政令で定める事業を行う者」と、「国土交通大臣」を「事業所管大臣」と読み替えて準用しており、都道府県知事が同法6条3項により指定する調査とは手続が異なる。したがって、市町村が同法6条3項の指定を受けて行う地籍調査は、同法19条1項の「その他の者」に当たり、認証を請求する相手方は、国土交通大臣ではなく都道府県知事であるから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。国土調査法19条5項は、「国土調査以外の測量及び調査を行つた者が当該測量及び調査の結果作成された地図及び簿冊について政令で定める手続により国土調査の成果としての認証を申請した場合においては、国土交通大臣又は事業所管大臣は、これらの地図及び簿冊が第二項の規定により認証を受けた国土調査の成果と同等以上の精度又は正確さを有すると認めたときは、これらを同項の規定によつて認証された国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定することができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりであり、正しい。なお、同条7項は、事業所管大臣は、同条5項の規定による指定をする場合においては、あらかじめ、国土交通大臣の承認を得なければならないと定めている。
エ 正しい。国土調査法20条1項は、国土交通大臣、事業所管大臣又は都道府県知事は、国土調査の成果を認証した場合又は同法19条5項の規定により指定をした場合においては、地籍調査にあっては当該調査に係る土地の登記の事務をつかさどる登記所に、当該国土調査の成果の写しを送付しなければならないと定めている。同法20条2項は、登記所は、政令で定めるところにより、送付された国土調査の成果の写しに基づいて、「土地の表示に関する登記及び所有権の登記名義人の氏名若しくは名称若しくは住所についての変更の登記若しくは更正の登記」をしなければならないと定め、同条3項は、「前項の場合において、地籍調査が第三十二条の規定により行われたときは、登記所は、その国土調査の成果の写しに基づいて分筆又は合筆の登記をしなければならない。」と定めている。同法32条は、地方公共団体又は土地改良区等は、土地の分割又は合併があつたものとして調査を行う必要がある場合において、「当該土地の所有者がこれに同意するときは、分割又は合併があつたものとして調査を行うことができる。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 正しい。国土調査法21条の2第1項は、地籍調査を行う地方公共団体又は土地改良区等は、一の街区内にその全部又は一部が所在する土地について、その所有者及び地番の調査並びに当該土地と街区外土地との境界に関する測量のみを先行して行い、その結果に基づいて地図及び簿冊を作成することができると定めている。同条7項は、国土交通大臣又は都道府県知事は、街区境界調査成果を認証した場合においては、当該街区境界調査成果に係る土地の登記の事務をつかさどる登記所に、その写しを送付しなければならないと定め、同条8項は、「登記所は、政令で定めるところにより、前項の規定により送付された街区境界調査成果の写しに基づいて、表題部所有者(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者をいう。)又は所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記をしなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
ポイント:国土調査の成果は、閲覧(20日間)、認証、登記所への写しの送付、登記の順に流れ、認証の請求先は実施主体に応じて国土交通大臣・事業所管大臣・都道府県知事に分かれ、登記所がする登記の内容も地籍調査の成果(土地の表示に関する登記等)と街区境界調査成果(氏名・名称・住所の変更又は更正の登記)とで異なる、という対応関係で覚える。
問題:
登記の申請における申請情報及び添付情報の提供方法に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に電子署名を行わなければならず、添付情報は、原則として、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。
イ. 電子情報処理組織を使用する方法により表示に関する登記を申請する場合において、当該申請の添付情報(申請人又はその代表者若しくは代理人が作成したもの並びに土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図を除く。)が書面に記載されているときは、当該書面に記載された情報を電磁的記録に記録したものを添付情報とすることができ、この場合において、当該電磁的記録は、これを作成した者による電子署名が行われているものでなければならない。
ウ. 電子情報処理組織を使用する方法により表示に関する登記を申請する場合において、地積測量図が書面で作成されているときは、当該書面に記載された情報を電磁的記録に記録したものを添付情報とすることができ、この場合において、当該電磁的記録は、これを作成した者による電子署名が行われているものでなければならない。
エ. 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、申請情報と併せて送信しなければならない電子証明書は、申請情報に電子署名を行ったときに限られ、添付情報に作成者による電子署名が行われているときは、当該電子署名に係る電子証明書を送信することを要しない。
オ. 書面を提出する方法により登記を申請する場合において、添付情報を記録した磁気ディスクを提出するときは、当該添付情報について、作成者による電子署名が行われていることを要しない。
答え:
正しいものは、ア・イの2つである。
解説:
ア・イが正しく、ウ・エ・オが誤りである。
ア 正しい。不動産登記令12条1項は、「電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に電子署名(…)を行わなければならない。」と定め、同条2項は、「電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。」と定めている。本肢は、令12条1項及び2項が定める原則のとおりであり、正しい。なお、同令10条は、電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、法務省令で定めるところにより、申請情報と併せて添付情報を送信しなければならないと定めている。また、令12条2項に対しては、表示に関する登記の添付情報について「前条第二項の規定にかかわらず」とする同令13条1項の特則(肢イ参照)があり、同令附則5条1項も、電子情報処理組織を使用する方法により登記の申請をする場合において、添付情報(登記識別情報を除く。)が書面に記載されているときは、同令10条及び12条2項の規定にかかわらず、当分の間、当該書面を登記所に提出する方法により添付情報を提供することができると定めている。本肢は、これらの特則ではなく、令12条2項が定める原則を述べたものである。
イ 正しい。不動産登記令13条1項は、「前条第二項の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により表示に関する登記を申請する場合において、当該申請の添付情報(申請人又はその代表者若しくは代理人が作成したもの並びに土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図を除く。)が書面に記載されているときは、当該書面に記載された情報を電磁的記録に記録したものを添付情報とすることができる。この場合において、当該電磁的記録は、当該電磁的記録を作成した者による電子署名が行われているものでなければならない。」と定めている。本肢は、同項のとおりであり、正しい。なお、同条2項は、この場合に、当該申請人は、登記官が定めた相当の期間内に、登記官に当該書面を提示しなければならないと定めている。
ウ 誤り。不動産登記令13条1項の特則の対象から、括弧書により、「申請人又はその代表者若しくは代理人が作成したもの並びに土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図」は除かれている。したがって、地積測量図が書面で作成されているときであっても、その書面に記載された情報を電磁的記録に記録したものを、同項により添付情報とすることはできないから、本肢は誤りである。
エ 誤り。不動産登記令14条は、「電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、電子署名が行われている情報を送信するときは、電子証明書(…)であって法務省令で定めるものを併せて送信しなければならない。」と定めている。同条が定めるのは、「電子署名が行われている情報」を送信するときであり、申請情報に限られない。したがって、添付情報に作成者による電子署名が行われているときも、その電子署名に係る電子証明書を併せて送信しなければならないから、本肢は誤りである。なお、同条の電子証明書は、不動産登記規則43条が定める。
オ 誤り。不動産登記令15条は、書面を提出する方法により登記を申請するときは、申請情報を記載した書面に添付情報を記載した書面(添付情報のうち電磁的記録で作成されているものにあっては、法務省令で定めるところにより当該添付情報を記録した磁気ディスクを含む。)を添付して提出しなければならないと定め、同条後段は、「この場合において、第十二条第二項及び前条の規定は、添付情報を記録した磁気ディスクを提出する場合について準用する。」と定めている。したがって、添付情報を記録した磁気ディスクを提出する場合にも、令12条2項が準用され、その添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならないから、本肢は誤りである。
ポイント:電子署名は、原則として申請情報と添付情報の双方に必要で、書面を電磁的記録に変換して提供できる特則(令13条)は、申請人側が作成したものと土地所在図・地積測量図などの図面を対象から除いており、電子署名が行われている情報を送信するときは、申請情報に限らず電子証明書を併せて送信し(令14条)、書面申請で添付情報を記録した磁気ディスクを提出するときも、令12条2項及び14条が準用される(令15条後段)、という流れで整理する。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・法人) | 法人の能力・外国法人・権利能力のない社団 | 民法33条1項、34条、35条1項・2項、37条1項、民事訴訟法29条 |
| 第2問 | 民法(物権・留置権) | 留置権(不可分性・成立要件・留置権者の義務) | 民法295条、296条、298条、302条 |
| 第3問 | 民法(相続・特別の寄与) | 特別の寄与(特別寄与者・請求期間・上限・負担額・寄与分との文言比較) | 民法1050条、904条の2、725条、887条1項、889条1項、890条、900条〜902条 |
| 第4問 | 民法(相隣関係) | 境界標の費用と測量費の分担、囲障の設置と材料・高さ、境界線上の工作物の共有の推定、境界線付近の建築の制限、通水用工作物の使用と費用分担 | 民法221条、223条〜230条、234条、236条 |
| 第5問 | 不動産登記法(登記所・登記官・登記記録) | 事務の委任と停止、登記官の指定、登記官の除斥、登記官による本人確認と調書、登記記録の滅失と回復 | 不動産登記法7条〜10条、13条、24条、不動産登記規則30条、59条 |
| 第6問 | 土地家屋調査士法・同施行規則(事務所・業務) | 一事務所の原則、補助者の届出、事務所の表示の禁止、書類作成時の記名と職印、名簿の登録と申請の経由 | 土地家屋調査士法8条、9条、20条、同施行規則18条、19条、23条、26条 |
| 第7問 | 国土調査法(地籍調査・成果の取扱い) | 地図及び簿冊の閲覧と誤りの申出、認証の請求先、国土調査以外の測量成果の指定、成果の写しの登記所への送付と登記、街区境界調査成果 | 国土調査法17条、19条、20条、21条の2、32条 |
| 第8問 | 不動産登記令(電子申請の添付情報) | 電子署名、表示に関する登記の添付情報の特則と除外される図面、電子証明書の送信、書面申請での磁気ディスクの提出 | 不動産登記令10条、12条〜15条、同令附則5条1項、不動産登記規則43条 |