問題:

制限行為能力者に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならないが、本人以外の者の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をするには、本人の同意を要しない。

イ. 被保佐人が、他の制限行為能力者の法定代理人として、当該他の制限行為能力者が所有する不動産を売却した場合において、その売却について保佐人の同意又はこれに代わる許可を得ていなかったときは、その売買契約は、行為能力の制限によって取り消すことができ、当該他の制限行為能力者も、これを取り消すことができる。

ウ. 制限行為能力者の相手方が、被保佐人に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をした場合において、被保佐人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。

エ. 制限行為能力者が制限行為能力者であることを黙秘していた場合であっても、それが制限行為能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められるときは、詐術に当たる。

オ. 被保佐人は、保佐人の同意を得て追認をするときであっても、取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ、取り消すことができる行為を追認することができない。

答え:

誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

ア 誤り。民法15条2項は、「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。」と定め、同法17条2項も、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判(同条1項)について、「本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。」と定めている。補助開始の審判は、17条1項の審判又は876条の9第1項の審判(補助人に代理権を付与する旨の審判)とともにしなければならない(15条3項)が、補助開始の審判についての本人の同意とは別に、17条1項の審判それ自体についても、本人以外の者の請求によるときは本人の同意が必要とされている。なお、17条1項の審判により補助人の同意を得なければならないものとすることができる行為は、13条1項に規定する行為の一部に限られる(17条1項ただし書)。これに対し、後見開始の審判(7条)及び保佐開始の審判(11条)の規定には、本人以外の者の請求による場合に本人の同意を要する旨の定めは置かれていない。他方、保佐人に代理権を付与する旨の審判については、本人以外の者の請求によってするには、本人の同意がなければならない(876条の4第2項)。審判の種類ごとに、本人の同意を要するかどうかを条文で確認しておきたい。

イ 正しい。民法13条1項10号は、被保佐人が保佐人の同意を得なければならない行為として、「前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。」を掲げている。不動産の売却は同項3号の「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」に当たるから、被保佐人が他の制限行為能力者の法定代理人としてこれをするには保佐人の同意を得なければならず、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる(同条4項)。代理人としてした行為について、同法102条本文は、「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。」と定めるが、同条ただし書は、「制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。」としている。さらに、同法120条1項は、行為能力の制限によって取り消すことができる行為の取消権者として、「制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)」を掲げているから、代理された当該他の制限行為能力者も取り消すことができる。13条1項10号、102条ただし書及び120条1項の括弧書は、いずれも令和2年4月1日に施行された改正によって置かれた規定である。

ウ 誤り。民法20条4項は、「制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と定めている。擬制されるのは追認ではなく取消しである。これに対し、制限行為能力者が行為能力者となった後にその者に対して催告をした場合(同条1項)や、制限行為能力者が行為能力者とならない間にその法定代理人、保佐人又は補助人に対してその権限内の行為について催告をした場合(同条2項)に、これらの者が期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。また、特別の方式を要する行為については、同条1項・2項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされる(同条3項)。催告の相手方と行為の種類によって、追認の擬制と取消しの擬制とが分かれる点を整理しておきたい。

エ 正しい。最判昭和44年2月13日(民集23巻2号291頁)は、「無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない」と判示している。同判決は、詐術を用いたときとは、相手方に対し積極的術策を用いた場合に限るものではなく、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘起し、又は誤信を強めた場合をも包含するとしたうえで、上記のとおり述べている。同判決は、準禁治産者が自己が準禁治産者であることを黙秘して土地を売買した事案について、判決当時の民法20条にいう「詐術」の意義を示したものであり、当該事案では黙秘の事実は詐術に当たらないとされた。現行法では、民法21条が「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と定めている。

オ 誤り。民法124条1項は、「取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。」と定めるが、同条2項は、前項の追認を取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない場合として、「法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。」(1号)と、「制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。」(2号)を掲げている。被保佐人が保佐人の同意を得て追認をするときは2号に当たるから、取消しの原因となっていた状況が消滅した後であることを要しない。2号の括弧書により成年被後見人が除かれている点もあわせて押さえたい。

なお、成年後見制度については、後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化することなどを内容とする民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が令和8年6月24日に公布されており、その施行後は、本問で扱った13条、15条及び17条を含む13条から19条までが削除されるほか、7条、20条、124条、876条の4、876条の9等も改められる。もっとも、この部分の施行日は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされている。令和8年度の試験の解答に当たり適用すべき法令等は、令和8年4月1日現在において施行されているもの(同日が施行日とされているものを含む。)とされているから、本問は、本解説のとおり現行の規定によって判断することになる。


問題:

物権的請求権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。

ア. 他人の土地上の建物の所有権を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した者は、その建物を第三者に譲渡したとしても、引き続きその登記名義を保有する限り、土地の所有者に対し、譲渡による建物の所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。

イ. 建物の所有権を有しない者であっても、建物の所有者との合意により、その建物につき自己のための所有権の保存の登記をしていたときは、建物の敷地の所有者の所有権に基づく請求に対し、建物収去の義務を負う。

ウ. 不動産の所有権を取得した者は、その旨の登記をしていなければ、何らの権原なくその不動産を占有する者に対し、所有権の取得を対抗することができず、所有権に基づいてその明渡しを請求することはできない。

エ. 抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者に対しては、その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときであっても、抵当権者は、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができない。

オ. 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。

答え:

正しいものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 正しい。最判平成6年2月8日(民集48巻2号373頁)は、「他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である」と判示している。同判決は、土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去・土地明渡しを請求するには、現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者を相手方とすべきであるとしつつ、土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う場面の両者の関係を、「あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係」と捉え、建物所有者は、自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し、これを保有する以上、土地所有者との関係においては建物所有権の喪失を主張できないとしている。

イ 誤り。最判昭和47年12月7日(民集26巻10号1829頁)は、「建物の所有権を有しない者は、たとえ、所有者との合意により、建物につき自己のための所有権保存登記をしていたとしても、建物を収去する権能を有しないから、建物の敷地所有者の所有権に基づく請求に対し、建物収去義務を負うものではないと解すべきである」と判示している。アの最判平成6年2月8日も、この判決を参照して、建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく、単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合は、土地所有者に対し、建物収去・土地明渡しの義務を負わないとしている。また、同判決は、最判昭和35年6月17日(民集14巻8号1396頁)を参照して、未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には、その後、その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても、譲渡人は、建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるとしている。アとの分かれ目は、登記名義人が建物の所有権を取得したことがあり、かつ、自らの意思に基づいてその登記を経由したかどうかにある。

ウ 誤り。最判昭和25年12月19日(民集4巻12号660頁)は、何らの権原なく家屋を占有する者に対する明渡請求の事案において、不法占有者は民法177条にいう「第三者」に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得る旨を判示している。同条は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と定めているが、不法占有者はここにいう「第三者」に当たらない。したがって、不動産の所有権を取得した者は、その旨の登記をしていなくても、不法占有者に対し、所有権に基づいて明渡しを請求することができる。

エ 誤り。最判平成17年3月10日(民集59巻2号356頁)の裁判要旨は、「抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる。」としている。同判決は、その理由として、抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないことを挙げている。これに先立つ最大判平成11年11月24日(民集53巻8号1899頁)は、第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する、その状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができるとするとともに、このような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者がその状態の排除を求めることも許されるとしていた。最判平成17年3月10日は、所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有する場合についてこの大法廷判決を引用したうえで、抵当権設定登記後に所有者から占有権原の設定を受けて占有する者についても、上記の要件の下で、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができるとしている。

オ 正しい。同判決(最判平成17年3月10日)の裁判要旨は、「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。」としている。他方で、同判決は、原審が認容した抵当権侵害による不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求について、「抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない」として、原審の判断を是認しなかった。直接自己への明渡しを求めることができる場合があることと、賃料額相当の損害の発生が否定されることとを区別して押さえたい。


問題:

遺産分割に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。

ア. 共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。

イ. 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に民法900条及び901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額については、その額がいくらであっても、その全額について、単独でその権利を行使することができる。

ウ. 相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、遺産分割が相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずることから、遺産分割によって当該不動産を取得した相続人がその全部を取得する。

エ. 共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対してその協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は、民法541条によってその遺産分割協議を解除することができない。

オ. 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を全員の合意により解除した上で、改めて遺産分割協議を成立させることができる。

答え:

誤っているものは、イ・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。最大決平成28年12月19日(民集70巻8号2121頁)の裁判要旨は、「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。」としている。同決定は、これと異なる見解に立つ最判平成16年4月20日(裁判集民事214号13頁)その他の最高裁判所の判例を変更したものである。

イ 誤り。民法909条の2前段は、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に900条及び901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額について、単独でその権利を行使することができると定めるが、その額には、「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。」との限度が付されている。これを受けて、民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成30年法務省令第29号)は、「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。」と定めている。したがって、単独で権利を行使することができる額は、預貯金債権の債務者ごとに150万円が上限となる。また、同条後段は、「この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」と定めている。909条の2は、平成30年法律第72号による改正(令和元年7月1日施行)で設けられた規定である。

ウ 誤り。最判平成17年9月8日(民集59巻7号1931頁)の裁判要旨は、「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。」としている。同判決は、遺産は相続開始から遺産分割までの間は共同相続人の共有に属するから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる賃料債権は遺産とは別個の財産であるとし、「遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが」、各共同相続人が確定的に取得した賃料債権の帰属は後にされた遺産分割の影響を受けないと判示している。民法909条本文は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と定めるが、この遡及効を理由に、不動産を取得した相続人が遺産分割までの賃料債権の全部を取得するとする本肢は、この判例と異なる。

エ 正しい。最判平成元年2月9日(民集43巻2号1頁)は、「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である」と判示している。その理由として、同判決は、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は協議において債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人との間の債権債務関係が残るだけと解すべきであること、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることを挙げている。

オ 正しい。最判平成2年9月27日(民集44巻6号995頁)は、「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではなく」と判示しており、同判決の裁判要旨も、「共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。」としている。エのとおり、相続人の一人の債務不履行を理由として民法541条により遺産分割協議を解除することはできないが、共同相続人全員の合意による解除と改めての分割協議は妨げられない、という対比で押さえたい。


問題:

不動産登記規則に定める法定相続情報一覧図(法定相続情報を記載した書面をいう。以下同じ。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出(以下「保管等の申出」という。)並びに登記の申請における法定相続情報の利用に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 被相続人Aの相続人であるBが保管等の申出をしないまま死亡し、CがBの地位を相続により承継した場合には、Cは、Aの相続に係る法定相続情報一覧図について保管等の申出をすることができる。

イ. 相続人が複数ある場合には、保管等の申出は、申出人の住所地を管轄する登記所の登記官のほか、申出人でない他の相続人の住所地を管轄する登記所の登記官に対してもすることができる。

ウ. 申出人から委任を受けた土地家屋調査士は、申出人の親族でない場合であっても、代理人として保管等の申出をすることができる。

エ. 法定相続情報一覧図の写しの再交付の申出は、当初の保管等の申出をした者が、当該保管等の申出に係る登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。

オ. 表題部所有者の相続人が表示に関する登記を申請する場合において、その相続に関して法定相続情報番号を提供したときは、登記官が法定相続情報を確認することができるかどうかにかかわらず、その提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。

答え:

誤っているものは、イ・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記規則247条1項は、表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、「その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者」が保管等の申出をすることができると定めている。いわゆる数次相続の場面では、一次相続の相続人の地位を相続により承継した者も申出人となることができ、この場合には、申出人が相続人の地位を相続により承継した者であることを証する書面を申出書に添付しなければならない(同条3項5号)。なお、同条1項は被相続人を「表題部所有者、登記名義人又はその他の者」としており、被相続人が不動産の表題部所有者又は所有権の登記名義人であることは、申出の要件とされていない。

イ 誤り。同条1項は、保管等の申出をすることができる登記所を、「被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官」と定めている。申出人の住所地を管轄する登記所は含まれているが、申出人でない他の相続人の住所地を管轄する登記所は、ここに掲げられていない。

ウ 正しい。同条2項2号は、申出書に記載する代理人について、「代理人(申出人の法定代理人又はその委任による代理人にあってはその親族若しくは戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十条の二第三項に掲げる者に限る。以下本条において同じ。)」と定めている。戸籍法10条の2第3項は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士等とともに土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。)を掲げているから、土地家屋調査士は、申出人の親族でなくても、委任による代理人として保管等の申出をすることができる。代理人によって申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面を添付しなければならない(不動産登記規則247条3項7号)。

エ 誤り。同条7項は、「前各項の規定(第三項第一号から第五号まで及び第四項を除く。)は、第一項の申出をした者がその申出に係る登記所の登記官に対し法定相続情報一覧図の写しの再交付の申出をする場合について準用する。」と定めている。再交付の申出は、当初の保管等の申出をした者が、その申出に係る登記所の登記官に対してするものとされており、他の登記所の登記官に対して再交付の申出をすることができる旨の規定はない。また、同項は、法定相続情報一覧図や戸籍の謄本等(同条3項1号から5号までの書面)及び相続人の住所を証する書面(同条4項)に関する規定を、準用の対象から除いている。

オ 誤り。同規則37条の3第1項本文は、表題部所有者又は登記名義人の相続人が登記の申請をする場合において、その相続に関して法定相続情報一覧図の写し又は法定相続情報番号(「十一桁の番号であって、当該法定相続情報一覧図を識別するために登記官が付したもの」)を提供したときは、その提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができると定めている。同項本文は申請する登記の種類を限っていないから、表題部所有者の相続人が不動産登記法30条により表示に関する登記を申請する場合に提供すべき、相続その他の一般承継があったことを証する情報(不動産登記令7条1項4号)についても、この規定が働く。しかし、同規則37条の3第1項ただし書は、法定相続情報番号を提供する場合については、登記官が法定相続情報を確認することができるときに限るとしている。なお、同条2項は、相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図の写し等の提供をもって登記名義人となる者の住所を証する情報の提供に代えることができる場合を、表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記の申請をする場合又は登記名義人の相続人が相続による権利の移転の登記の申請をする場合と定めている。


問題:

土地の分筆の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、「準則」とは不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)をいう。

ア. 甲土地について地積に関する更正の登記と分筆の登記とを申請する場合には、これらの登記を一の申請情報によって申請することができる。

イ. 抵当権の設定の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、当該抵当権について共同担保目録が作成されておらず、不動産登記法40条の規定による権利が消滅した旨の登記もしないときは、登記官は、乙土地の登記記録に当該抵当権の設定の登記を転写するが、共同担保目録を作成することはない。

ウ. 分筆の登記を申請する場合において、分筆前の地積と分筆後の地積の差が、分筆前の地積を基準にして地積測量図の誤差の限度内であるときは、準則上、地積に関する更正の登記の申請を要しない。

エ. 承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、地役権設定の範囲が分筆後の甲土地の一部のみとなり、乙土地には地役権が存しないこととなるときであっても、登記官は、乙土地の登記記録に当該地役権の登記を転写しなければならない。

オ. 承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、地役権設定の範囲が分筆後の甲土地又は乙土地の一部となるときは、登記官は、その土地の登記記録の当該地役権に関する登記に地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録し、要役地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、遅滞なく、当該他の登記所に承役地の分筆の登記をした旨を通知しなければならない。

答え:

誤っているものは、イ・エの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記令4条は、申請情報は登記の目的及び登記原因に応じ一の不動産ごとに作成して提供しなければならないとしつつ、ただし書で、法務省令で定めるときはこの限りでないとしている。これを受けた不動産登記規則35条7号は、「同一の不動産について申請する二以上の登記が、不動産の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記及び土地の分筆の登記若しくは合筆の登記又は建物の分割の登記、建物の区分の登記若しくは建物の合併の登記であるとき。」を掲げている。同一の甲土地についての地積に関する更正の登記と分筆の登記は、これに当たる。なお、同条1号は、土地の一部を分筆してこれを他の土地に合筆しようとする場合の分筆の登記及び合筆の登記(いわゆる分合筆)も、一の申請情報によって申請することができる場合として掲げている。

イ 誤り。同規則102条1項前段は、甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をするときは、乙土地の登記記録の権利部の相当区に、甲土地の登記記録から権利に関する登記を転写し、かつ、分筆の登記に係る申請の受付の年月日及び受付番号を記録しなければならないと定めている。そして、同項後段は、担保権について、「担保権については既にその権利についての共同担保目録が作成されているときを除き共同担保目録を作成し、転写した権利の登記の末尾にその共同担保目録の記号及び目録番号を記録しなければならない。」と定めている。分筆後は、1個の抵当権が分筆後の甲土地と乙土地の双方を目的とすることになり、共同担保目録が作成される。分筆後の甲土地の登記記録の当該抵当権の登記にも、その共同担保目録の記号及び目録番号が記録される(同条3項)。

ウ 正しい。準則72条1項は、「分筆の登記を申請する場合において、分筆前の地積と分筆後の地積の差が、分筆前の地積を基準にして規則第77条第5項の規定による地積測量図の誤差の限度内であるときは、地積に関する更正の登記の申請を要しない。」と定めている。不動産登記規則77条5項は、地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度を定めた同規則10条4項の規定を、地積測量図について準用している。地積に関する更正の登記を要する場合には、アのとおり、分筆の登記と一の申請情報によって申請することができる。なお、準則72条2項は、分筆前の土地が広大な土地であって、分筆後の土地の一方がわずかであるなど特別の事情があるときに限り、分筆後の土地のうち1筆の土地について同規則77条1項5号から8号までに掲げる事項(同項5号の地積を除く。)を記録することを便宜省略して差し支えないとしており、省略の対象から地積そのものは除かれている。

エ 誤り。同規則102条1項前段は、乙土地の登記記録に転写する権利に関する登記について、「(地役権の登記にあっては、乙土地に地役権が存続することとなる場合に限る。)」としている。承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、乙土地に地役権が存しないこととなるときは、同規則104条4項が準用する同条2項により、分筆後の甲土地の登記記録の当該地役権に関する登記についてする付記登記によってその旨が記録され、乙土地の登記記録への転写は要しない。この場合の分筆の登記の申請では、地役権設定の範囲を申請情報の内容とし、当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報(又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報)及び地役権図面を提供する(不動産登記令別表8の項申請情報欄ロ・添付情報欄ロ)。

オ 正しい。不動産登記規則103条1項は、承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、地役権設定の範囲が分筆後の甲土地又は乙土地の一部となるときは、分筆後の甲土地又は乙土地の登記記録の当該地役権に関する登記に当該地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならないと定めている。同条2項は、この場合に要役地の登記記録の同規則159条1項各号に掲げる事項に関する変更の登記をしなければならないとし、同条3項は、要役地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、遅滞なく、当該他の登記所に承役地の分筆の登記をした旨を通知しなければならないと定めている。通知を受けた登記所の登記官は、遅滞なく、同条2項に規定する登記をしなければならない(同条4項)。


問題:

附属建物に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、「準則」とは不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)をいう。

ア. 表題登記がある建物の附属建物を新築した場合には、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その新築の日から1月以内に、建物の表題部の変更の登記を申請しなければならず、登記官は、この登記をするときは、建物の登記記録の表題部に附属建物の符号、種類、構造及び床面積を記録する。

イ. 同一の地番区域内にある5番の土地の上に主である建物が存し、これに隣接する6番の土地の上に、主である建物よりも床面積の大きい附属建物が存する場合(5番及び6番の土地の上には他に建物は存しないものとする。)には、当該建物の家屋番号は、床面積の多い部分の存する6番の地番と同一の番号をもって定める。

ウ. 主である建物とその附属建物とが工事により合体して構造上1個の建物となった場合には、建物の表題部の登記事項に関する変更の登記によることはできず、合体後の建物についての建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消を申請しなければならない。

エ. 甲建物について所有権の保存の登記がされた後に、附属建物の新築による甲建物の表題部の変更の登記がされ、その後、当該附属建物を甲建物の登記記録から分割して乙建物とする建物の分割の登記をする場合には、登記官は、乙建物の登記記録の甲区に、甲建物の登記記録から当該所有権の保存の登記を転写する。

オ. 甲建物の附属建物を甲建物の登記記録から分割して、これを乙建物の附属建物としようとする場合には、建物の分割の登記及び建物の合併の登記を一の申請情報によって申請することができる。

答え:

正しいものは、ア・オの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法44条1項5号は、附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番並びに種類、構造及び床面積を建物の表示に関する登記の登記事項としており、同法51条1項は、同法44条1項各号(2号及び6号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該変更があった日から1月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならないと定めている。附属建物の新築はこの変更の登記によって登記され、不動産登記規則121条は、「登記官は、附属建物の新築による建物の表題部の登記事項に関する変更の登記をするときは、建物の登記記録の表題部に、附属建物の符号、種類、構造及び床面積を記録しなければならない。」と定めている(附属建物に符号を付すことについて、同規則112条2項)。この申請では、変更後の建物図面及び各階平面図並びに附属建物について表題部所有者又は所有権の登記名義人が所有権を有することを証する情報を提供する(不動産登記令別表14の項添付情報欄ハ)。

イ 誤り。準則79条(3)は、「2筆以上の土地にまたがって1個の建物が存する場合には、主たる建物(附属建物の存する場合)又は床面積の多い部分(附属建物の存しない場合)の存する敷地の地番と同一の番号をもって、主たる建物が2筆以上の土地にまたがる場合には、床面積の多い部分の存する敷地の地番と同一の番号をもって定める。」と定めている。附属建物がある場合に基準となるのは主たる建物の存する敷地の地番であり、附属建物の床面積が主たる建物より大きくても、附属建物の存する土地の地番を用いるのではない。記述の場合、家屋番号は5番の地番と同一の番号をもって定める。家屋番号は、地番区域ごとに建物の敷地の地番と同一の番号をもって定めるのが原則であり(不動産登記規則112条1項本文)、準則79条はその具体的な定め方を示している。

ウ 誤り。準則95条は、「主たる建物と附属建物の合体による建物の表題部の登記事項に関する変更の登記」をする場合の記録方法として、主たる建物の床面積の変更については、原因及びその日付欄に床面積欄の番号を冠記して附属建物合体(又は増築及び附属建物合体)の旨を記録し、附属建物の表題部の抹消については、「令和何年何月何日主たる建物に合体」と記録しなければならないと定めている。主たる建物と附属建物とは、登記記録上、もともと「表題登記がある建物と一体のものとして一個の建物として登記されるもの」(不動産登記法2条23号)である。準則95条は記録の方法を定めた規定であるが、両者が合体した場合に建物の表題部の登記事項に関する変更の登記をすることを前提としている。したがって、変更の登記によることはできず、二以上の建物が合体して一個の建物となった場合の合体による登記等(同法49条1項)を申請しなければならないとする記述は誤りである。

エ 誤り。不動産登記規則128条1項は、甲建物からその附属建物を分割して乙建物とする建物の分割の登記をする場合について、分筆の登記における権利部の記録方法を定めた同規則102条等を準用し、権利に関する登記を乙建物の登記記録に転写することとしている。もっとも、同規則128条2項は、分割前の建物について現に効力を有する所有権の登記がされた後当該分割に係る附属建物の新築による当該分割前の建物の表題部の登記事項に関する変更の登記がされていたときは、「前項において準用する第百二条の規定により当該所有権の登記を転写することに代えて、乙建物の登記記録の甲区に次に掲げる事項を記録しなければならない。」とし、その事項として、「分割による所有権の登記をする旨」(1号)、所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が2人以上であるときは当該所有権の登記名義人ごとの持分(2号)、登記の年月日(4号)等を掲げている。記述の場合には、所有権の保存の登記は転写されず、分割による所有権の登記をする旨等が記録される。

オ 正しい。不動産登記令4条ただし書を受けて、不動産登記規則35条2号は、「甲建物の登記記録から甲建物の附属建物を分割して、これを乙建物の附属建物としようとする場合において、建物の分割の登記及び建物の合併の登記の申請をするとき。」を、一の申請情報によって申請することができる場合として掲げている。この場合の登記の記録方法は同規則135条に定められており、乙建物の登記記録の表題部に附属合併後の建物の表題部の登記事項及び家屋番号何番の建物から合併した旨を記録するものとされ、乙建物についての新たな登記記録の作成等を定める同規則127条1項及び2項は適用しないとされている(同規則135条2項後段)。なお、附属合併は、合併しようとする建物が主たる建物と附属建物の関係にないときは、することができない(準則86条(1))。


問題:

建物図面及び各階平面図に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、「準則」とは不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)をいう。

ア. 一棟の建物の3階及び4階に存する区分建物の建物図面には、当該区分建物の地上の最低階である3階の位置及び形状を明確にするほか、点線をもってその区分建物が属する一棟の建物の1階の形状も明確にし、その存する階層を「建物の存する部分3階、4階」のように記録する。

イ. 地下のみの建物の建物図面には、地下1階の形状を点線をもって表示する。

ウ. 書面により各階平面図を作成する場合において、その用紙に余白があるときは、便宜、その余白を用いて建物図面を作成することができ、この場合には、図面の標記に「建物図面」と追記する。

エ. 床面積が増加したことによる建物の表題部の変更の登記を申請する場合には、変更後の建物図面及び各階平面図のほか、床面積が増加した部分について表題部所有者又は所有権の登記名義人が所有権を有することを証する情報を提供しなければならない。

オ. 床面積の変更による建物の表題部の変更の登記がされ、変更後の建物図面及び各階平面図が提供されたときは、変更前の建物図面及び各階平面図は閉鎖されるが、閉鎖された建物図面及び各階平面図の保存期間は、閉鎖されていないものと同じく永久である。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記規則82条1項は、「建物図面は、建物の敷地並びにその一階(区分建物にあっては、その地上の最低階)の位置及び形状を明確にするものでなければならない。」と定めている。3階及び4階に存する区分建物であれば、地上の最低階である3階の位置及び形状を明確にすることになる。また、準則52条2項は、「建物が区分建物である場合には、次の例示のように点線をもってその建物が属する一棟の建物の1階の形状も明確にするものとする。」とし、その建物が1階以外の部分に存するときは、その存する階層を、例えば「建物の存する部分3階」、「建物の存する部分4階、5階」のように記録するものとしている。さらに、同条3項は、区分建物の存する階層(その区分建物が2階以上である場合にはその1階)の形状が一棟の建物の1階の形状と異なるときは、1点鎖線をもってその階層の形状も明確にするものとしている。

イ 誤り。準則52条1項は、「建物が地下のみの建物である場合における建物図面には、規則第82条第1項の規定にかかわらず、地下1階の形状を朱書するものとする。」と定めている。地下1階の形状は、点線ではなく朱書により表示する。なお、準則上、点線は、区分建物の建物図面において一棟の建物の1階の形状を明確にする場合(アの解説参照)や、各階平面図において1階以外の階層を表示するときに1階の位置を表示する場合(準則53条1項)に用いるものとされている。

ウ 正しい。準則51条3項は、不動産登記規則74条3項に規定する用紙により地積測量図を作成する場合において、当該用紙に余白があるときは、便宜、その余白を用いて土地所在図を作成することができ、この場合には図面の標記に「土地所在図」と追記するものとしている。そして、準則54条2項は、「第51条第3項の規定は、各階平面図を作成する場合について準用する。この場合において、「土地所在図」とあるのは、「建物図面」と読み替えるものとする。」と定めている。したがって、書面による各階平面図の用紙に余白があるときは、その余白を用いて建物図面を作成することができ、その場合には図面の標記に「建物図面」と追記する。なお、書面である建物図面及び各階平面図は、日本産業規格B列4番の丈夫な用紙を用いて作成しなければならない(同規則74条3項)。

エ 正しい。不動産登記令別表14の項は、法51条1項から4項までの規定による建物の表題部の変更の登記等の添付情報として、添付情報欄ロで、床面積を変更し、又は更正するときは、「変更後又は更正後の建物図面及び各階平面図」と、「床面積が増加するときは、床面積が増加した部分について表題部所有者又は所有権の登記名義人が所有権を有することを証する情報」とを掲げている。これに対し、同欄イは、建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番を変更し、又は更正するときについて、変更後又は更正後の建物図面を掲げるにとどまる。

オ 誤り。不動産登記規則85条2項1号は、表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記をした場合(変更後又は更正後の土地所在図、地積測量図、建物図面又は各階平面図がある場合に限る。)には、変更前又は更正前の図面を閉鎖しなければならないと定めている。そして、同規則28条13号は、土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図(申請書類つづり込み帳につづり込まれた一定のものを除く。)の保存期間を、「永久(閉鎖したものにあっては、閉鎖した日から三十年間)」と定めている。閉鎖された建物図面及び各階平面図の保存期間は、閉鎖した日から30年間である。なお、地図及び地図に準ずる図面は、閉鎖したものを含めて保存期間が永久とされている(同条2号)。


問題:

土地家屋調査士(以下「調査士」という。)、土地家屋調査士法人(以下「調査士法人」という。)又は公共嘱託登記土地家屋調査士協会(以下「協会」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 調査士法人は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の過半数の同意によって、定款の変更をすることができる。

イ. 調査士法人が、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域外に従たる事務所を設けたときは、主たる事務所の所在地においてその旨の登記をした時に、当該従たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員となる。

ウ. 協会は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、主たる事務所の所在地の調査士会及び日本土地家屋調査士会連合会に届け出なければならない。

エ. 調査士は、依頼者から報酬を受けたときは、領収証正副2通を作成し、正本は、これに記名し、職印を押して依頼者に交付し、副本は、作成の日から7年間保存しなければならない。

オ. 調査士は、筆界特定の手続についての代理の依頼を拒んだ場合において、依頼者の請求があるときは、その理由書を交付しなければならない。

答え:

正しいものは、イの1つである。

解説:

ア 誤り。土地家屋調査士法34条1項は、「調査士法人は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によつて、定款の変更をすることができる。」と定めている。過半数ではなく、総社員の同意である。また、同条2項は、定款を変更したときは、変更の日から2週間以内に、変更に係る事項を主たる事務所の所在地の調査士会及び調査士会連合会(日本土地家屋調査士会連合会。同法8条1項)に届け出なければならないと定めている。

イ 正しい。同法53条4項は、調査士法人は、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域外に事務所を設け、又は移転したときは、事務所の新所在地(従たる事務所を設け、又は移転したときにあっては、主たる事務所の所在地)においてその旨の登記をした時に、当該事務所(従たる事務所を設け、又は移転したときにあっては、当該従たる事務所)の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員となると定めている。調査士法人は、成立の時に主たる事務所の所在地の調査士会の会員となり(同条1項)、従たる事務所の設置等によって複数の調査士会の会員となることがある。この点で、二以上の事務所を設けることができない調査士個人(土地家屋調査士法施行規則18条)とは異なる。なお、調査士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員である社員を常駐させなければならない(同法36条)。

ウ 誤り。同法63条の2は、協会は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長及びその管轄区域内に設立された調査士会に届け出なければならないと定めている。届出先は法務局又は地方法務局の長と調査士会であり、調査士会連合会ではない。調査士法人の成立の届出先が主たる事務所の所在地の調査士会及び調査士会連合会とされている(同法33条)のと対比して押さえたい。なお、協会の業務は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長の監督に属する(同法64条の2第1項)。

エ 誤り。土地家屋調査士法施行規則27条1項は、「調査士は、依頼者から報酬を受けたときは、領収証正副二通を作成し、正本は、これに記名し、職印を押して依頼者に交付し、副本は、作成の日から三年間保存しなければならない。」と定めている。副本の保存期間は3年間である。7年間は事件簿の保存期間であり(同規則28条2項「事件簿は、その閉鎖後七年間保存しなければならない。」)、起算点も「作成の日」と「閉鎖後」とで異なる。

オ 誤り。土地家屋調査士法22条は、調査士は、正当な事由がある場合でなければ依頼を拒んではならないとしつつ、同法3条1項4号(筆界特定の手続についての代理)及び6号(4号に関する部分に限る。)に規定する業務並びに民間紛争解決手続代理関係業務に関する依頼を、その対象から除いている。また、同法施行規則25条1項は、依頼を拒んだ場合において依頼者の請求があるときに理由書を交付すべき依頼から、これらの業務に関するものを除いており、同条2項は、これらの業務についての事件の依頼を承諾しないときは、「速やかに、その旨を依頼者に通知しなければならない。」と定めている。筆界特定の手続についての代理の依頼を承諾しない場合に求められるのは、理由書の交付ではなく、速やかな通知である。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(総則・制限行為能力者) 補助開始の審判・補助人の同意を要する旨の審判と本人の同意、被保佐人が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為の取消しと取消権者、被保佐人に対する催告と取消しの擬制、黙秘と詐術、保佐人の同意を得てする追認 民法13条1項3号・10号・4項、15条2項・3項、17条1項・2項、20条1項〜4項、21条、102条、120条1項、124条1項・2項、876条の4第2項、最判昭44.2.13
第2問 民法(物権・物権的請求権) 建物収去・土地明渡請求の相手方(登記名義を保有する建物譲渡人/所有権を有しない登記名義人/未登記のまま譲渡した者)、不法占有者と登記、抵当権に基づく妨害排除請求(占有権原の設定を受けた占有者・直接自己への明渡し・賃料額相当の損害の否定) 民法177条、最判平6.2.8、最判昭47.12.7、最判昭35.6.17、最判昭25.12.19、最判平17.3.10、最大判平11.11.24
第3問 民法(相続・遺産分割) 預貯金債権と遺産分割の対象(判例変更)、遺産分割前の預貯金債権の単独行使とその上限額・一部分割の擬制、遺産分割前に生じた賃料債権の帰属と遡及効、遺産分割協議の債務不履行解除の可否と合意解除・再分割 民法909条、909条の2、541条、平成30年法務省令第29号、最大決平28.12.19、最判平17.9.8、最判平元.2.9、最判平2.9.27
第4問 不動産登記規則(法定相続情報) 法定相続情報一覧図の保管等の申出人(相続人の地位を相続により承継した者)、申出先の登記所の範囲、委任による代理人の範囲(土地家屋調査士)、写しの再交付の申出先、法定相続情報番号の提供による相続証明情報の代替とその限界 不動産登記規則247条1項〜3項・7項、37条の3第1項・2項、不動産登記令7条1項4号、戸籍法10条の2第3項
第5問 不動産登記法(表示に関する登記・土地) 地積に関する更正の登記と分筆の登記の一の申請情報による申請、分筆後の土地への抵当権の転写と共同担保目録の作成、地積測量図の誤差の限度内における地積更正の要否、承役地の地役権が分筆後の土地に存しない場合の処理、地役権設定の範囲・地役権図面番号の記録と要役地の登記所への通知 不動産登記令4条・別表8の項、不動産登記規則35条1号・7号、102条1項・3項、103条1項〜4項、104条2項・4項、準則72条1項・2項
第6問 不動産登記法(表示に関する登記・建物) 附属建物の新築による表題部の変更の登記と記録事項、附属建物がある建物の家屋番号、主たる建物と附属建物の合体の処理、附属建物の分割における所有権の登記の記録方法、分割と附属合併の一の申請情報による申請 不動産登記法2条23号、44条1項5号、49条1項、51条1項、不動産登記令4条・別表14の項、不動産登記規則35条2号、112条、121条、128条1項・2項、135条、準則79条(3)、86条(1)、95条
第7問 図面(建物図面・各階平面図) 区分建物の建物図面(地上の最低階・一棟の建物の1階の点線表示・存する階層の記録)、地下のみの建物の建物図面(朱書)、各階平面図の用紙の余白を用いた建物図面の作成、床面積の変更の登記の添付情報、変更前の図面の閉鎖と保存期間 不動産登記規則28条2号・13号、74条3項、82条1項、85条2項1号、不動産登記令別表14の項、準則51条3項、52条1項〜3項、53条1項、54条2項
第8問 土地家屋調査士法 調査士法人の定款の変更(総社員の同意)、従たる事務所の設置と調査士会への所属、協会の成立の届出先、領収証の副本の保存期間(事件簿との対比)、筆界特定の手続の代理の依頼を承諾しない場合の通知 土地家屋調査士法8条1項、22条、33条、34条、36条、53条1項・4項、63条の2、64条の2第1項、土地家屋調査士法施行規則18条、25条、27条1項、28条2項