この記事の要点

  • 法務省の統計(2026年8月31日現在・速報値)では、申請件数5,997件に対し、国に帰属した件数は3,119件。却下は85件、不承認は100件、取下げは1,139件です
  • 却下の理由で最も多いのは「添付書類の提出がなかった」(37件)。土地そのものに関する理由では、境界が明らかでない土地(23件)、現に通路として使われている土地(22件)が続きます
  • 不承認の理由で最も多いのは、管理や処分の妨げになる樹木・工作物・車両などが地上にある土地(46件)。次いで、国による追加の整備が必要な森林(37件)です
  • 取下げのうち586件は、自治体や国の機関による活用、隣接地の所有者からの引き受けの申出など「有効活用の見込みが生じた」もの。405件は「却下・不承認であることが判明した」ものです
  • 申請できるのは所有者本人か法定代理人だけで、専門家に申請を代理してもらうことはできません。申請書類の作成を仕事として代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られます

相続した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」は、2023年(令和5年)4月27日に始まりました。根拠となる法律は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「国庫帰属法」)です。対象になる人や費用、手続きの流れといった制度の基本は、相続で「いらない土地」が出てきたら──国に引き取ってもらう制度の基本で解説しています。この記事では、法務省が公表している統計をもとに、実際にどんな土地が国に帰属し、どんな理由で却下・不承認・取下げになっているのかを見ていきます。

先に結論です。2026年(令和8年)8月31日現在、国に帰属した件数は3,119件で、内訳では宅地と農用地が上位を占めています。一方、却下・不承認となった事例の理由として挙がっているのは、添付書類の不足、境界が明らかでないこと、通路として使われていること、地上の樹木や工作物、追加の整備が必要な森林などです。このうち、書類がそろっているか、境界がはっきりしているか、通路として使われていないか、地上に手入れの必要な樹木や工作物がないかといった点は、申請の前に書類や現地である程度確かめておくことができます。

ただし、個々の土地が引き取られるかどうかは、法務局による書面の審査や実地調査を経て、土地ごとに判断されます。統計は制度全体の傾向を示すもので、特定の土地が承認されるかどうかを示すものではありません。

数字で見る運用状況(2026年8月31日現在)

法務省は「相続土地国庫帰属制度の統計」というページで、制度の運用状況を公表しています(ページの日付は2026年9月16日)。数値はいずれも速報値とされ、ページは順次更新されます。最新の数字は同ページで確認してください。

区分 件数 意味
申請 5,997件 承認申請がされた件数
帰属 3,119件 承認を受けて負担金を納め、国の土地になった件数
却下 85件 申請できない土地だった、書類がそろっていないなど、法律の定める却下の理由に当たるとされた件数
不承認 100件 審査の結果、法律の定める承認できない土地の要件に当たるとされた件数
取下げ 1,139件 申請した人が自ら申請を取りやめた件数

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(件数は2026年8月31日現在の速報値。「意味」の欄はこの記事での説明です)

「帰属」とは、土地の所有権が国に移ることです。承認を受けた人が負担金を納めた時点で、土地の所有権は国に移ります(国庫帰属法11条1項)。

注意しておきたいのは、この統計には審査中の件数が示されていないことです。また、内訳の区分も、申請件数は登記の「地目」別、帰属件数は「種目」別と異なります。そのため、この記事では「承認率」のような割合は計算せず、公表されている件数と理由をそのまま紹介します。

件数を見比べると、却下(85件)や不承認(100件)よりも、取下げ(1,139件)のほうがずっと多くなっています。取下げの理由は、後の章で見ていきます。

どんな土地が国に帰属しているか

申請件数と帰属件数の内訳は、次のとおりです(いずれも2026年8月31日現在)。

申請件数(地目別)

地目 件数
田・畑 2,335件
宅地 2,091件
山林 902件
その他 669件

帰属件数(種目別)

種目 件数
宅地 1,164件
農用地 989件
森林 203件
その他 763件

国に帰属した件数で最も多いのは宅地(1,164件)で、農用地(989件)が続きます。法務省の「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」(2025年9月1日現在。以下「法務省Q&A」)も、農地や森林について承認申請ができると説明しています。農地については、農業委員会が農地の権利の調整を行っているため、事前に農業委員会に相談することもできるとされています。

森林として帰属したのは203件です。後で見るとおり、不承認の理由では「国による追加の整備が必要な森林」が37件と、2番目に多くなっています。山林を相続したときの届出や管理の負担については、山林を相続したら──90日以内の森林法の届出、管理の負担、そして手放すという選択肢で整理しています。

却下と不承認は、どこが違うのか

統計に出てくる「却下」と「不承認」は、法律上の段階が違います。

却下は、法律の定める申請の前提となる条件が満たされていない場合の扱いです。国庫帰属法4条1項は、次の場合には法務大臣は申請を却下しなければならない、と定めています。

  • 申請する権限のない人による申請であるとき(1号)
  • 申請できない土地についての申請であるとき、または申請書・添付書類・手数料についての定めに違反しているとき(2号。2条3項・3条)
  • 申請した人が、正当な理由がないのに、職員による事実の調査(国庫帰属法6条)に応じないとき(3号)

このうち「申請できない土地」として、国庫帰属法2条3項は次の5つを挙げています。

  1. 建物がある土地
  2. 抵当権などの担保権や、地役権など土地を使うための権利が設定されている土地
  3. 通路など、ほかの人が使うことが予定されている土地(国庫帰属法の施行令〈以下「施行令」〉2条で、現に通路として使われている土地、墓地内の土地、境内地、現に水道用地・用悪水路〈用水や排水のための水路〉・ため池として使われている土地が定められています)
  4. 土壌汚染対策法の特定有害物質によって、基準を超えて汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地など、所有権があるかどうか・誰のものか・どこまでかについて争いがある土地

不承認は、却下の理由には当たらないものの、審査の結果、国が引き取れない土地と判断された場合です。国庫帰属法5条1項は、申請された土地が次のいずれにも当たらないと認めるときは、法務大臣は承認をしなければならない、と定めています。

  1. 一定の崖(勾配30度以上かつ高さ5メートル以上。施行令4条1項)があり、通常の管理に過分の費用や労力がかかる土地
  2. 通常の管理や処分の妨げになる工作物・車両・樹木などが地上にある土地
  3. 取り除かなければ通常の管理や処分ができない物が地下にある土地
  4. 隣の土地の所有者などとの争訟(裁判などで争うこと)によらなければ、通常の管理や処分ができない土地(通行が妨げられている土地、使用が妨害されている土地。施行令4条2項)
  5. そのほか、通常の管理や処分に過分の費用や労力がかかる土地(災害の危険がある土地、鳥獣や病害虫による被害が生じるおそれがある土地、追加の整備が必要な森林、国が管理費用以外の金銭の負担を負うことになる土地など。施行令4条3項)

承認は、土地の一筆ごとに行われます(国庫帰属法5条2項)。

まとめると、却下は「申請の前提となる条件を欠いていた」(申請する権限がない、申請できない土地だった、書類などが整っていない、調査に応じないなど)、不承認は「その条件は満たしているが、国が管理や処分をするには負担が重い土地だった」という違いです。これは法律上の要件の段階の違いで、手続きの時間の順番ではありません。却下の理由に当たることが審査の途中でわかることもあります。たとえば、隣の土地の所有者が境界について異議を述べた場合(後で説明します)や、実地調査への同行を正当な理由なく拒んだ場合も、却下の対象とされています(法務省Q&A)。却下の理由にも不承認の理由にも当たらないと認められた土地が承認され、負担金を納めることで国に帰属します。

却下の理由──件数で見ると最多は「添付書類の提出がなかった」

統計に挙がっている却下の理由は、次のとおりです(2026年8月31日現在)。1件の申請で複数の理由が認められる場合があるため、件数の合計は却下件数(85件)と一致しません。

却下の理由 根拠 件数
添付書類の提出がなかった 国庫帰属法4条1項2号(3条1項・施行規則3条が定める添付書類) 37件
境界が明らかでない土地 国庫帰属法2条3項5号 23件
現に通路として使われている土地 施行令2条1号 22件
申請する権限のない人による申請 国庫帰属法4条1項1号 10件
建物がある土地 国庫帰属法2条3項1号 4件
現に水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地 施行令2条4号 1件

以下、法務省Q&Aの説明を交えて、それぞれの中身を見ていきます。

書類がそろっていない(37件)

却下の理由で最も多いのは、土地の条件ではなく書類の問題です。承認申請書に付ける書類は、国庫帰属法の施行規則(以下「施行規則」)3条で決められています。主なものは次のとおりです。

  • 相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)で土地を取得した人であることを証する書面(登記記録から明らかな場合は不要)
  • 土地の位置と範囲を明らかにする図面
  • 土地の形状を明らかにする写真
  • 隣の土地との境界点を明らかにする写真
  • 国に帰属したときに、国への所有権移転の登記を官庁が嘱託する(役所が登記所に登記を求める)ことを承諾したことを証する書面

図面や写真は、現地を確認しなければ作れません。法務省Q&Aは、現地の状況を確認できず、境界点や土地の形状を明らかにする写真といった必須の添付書類を作れない場合は、承認申請をすることはできない、としています。作った書類は、法務局の相談で、可能な範囲で記載内容や添付書類を確認してもらうこともできます。

相続登記がまだ済んでいなくても申請はできますが、その場合は、所有者であることを証する書面(戸籍事項証明書など)を付ける必要があります(法務省Q&A)。

境界が明らかでない(23件)

法務省Q&Aによると、境界が明らかかどうかは、主に次の2点で判断されます。

  1. 申請した人が認識している隣の土地との境界を、現地で確認できること
  2. その境界について、隣の土地の所有者の認識と違いがなく、争いがないこと

1は、申請書に付けた図面・写真と、現地に示された境界点を照らし合わせて確認します。2は、法務局から隣の土地の所有者に境界の認識を問い合わせて確認するとされています。

境界点を示すものが何もない場合は、紅白ポールやプレートなどの目印を立てる必要があります。この目印は、写真を撮るときだけの一時的なものでは足りず、審査のときや帰属のときにも見分けられるものである必要があります。一方、既存の境界標やブロック塀、道路などで境界点が明らかな場合は、新たに目印を置く必要はないとされています。

登記所に地図がない土地や筆界未定の土地(登記上の境界が定まっていない土地)であっても、それだけで直ちに却下になるわけではなく、個々の事案ごとに判断されます。また、隣の所有者と境界を確認した書面や測量の成果は、必須の添付書類ではありません。ただし、持っていれば写しを出すことで審査が円滑に進む可能性がある、とされています。

隣の土地の所有者が境界について異議を述べた場合は却下の対象になりますが、申請した人が隣の所有者と調整し、争いがなくなった場合には、承認されることも考えられるとされています。

筆界(登記上の土地の境)の調査や測量は土地家屋調査士の分野で、法務局の筆界特定の手続(筆界の現地での位置を特定する手続)の代理も土地家屋調査士の業務です(土地家屋調査士法3条1項4号)。隣の所有者との間で境界をめぐる争いになっていて、交渉や裁判で解決を図る場合は、主に弁護士が扱う分野です。

通路・水路として使われている(22件・1件)

施行令は、「現に」通路として使われている土地や、「現に」水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地を、申請できない土地としています(施行令2条1号・4号)。法務省Q&Aでは、いまは通路や水路として使われていない土地であれば、申請することができるとされています。

申請する権限がない(10件)

統計には、どのような事情で申請の権限がないとされたのかの内訳は示されていません。法務省Q&Aでは例として、申請したあとに取下げをしないまま土地を売却した場合、申請する権限がなくなるため却下される、と説明されています。

建物がある(4件)

登記されていない建物でも、現に建っていれば申請はできません。建物がある場合はすべて却下となり、原則として建物を取り壊してから申請することになります(法務省Q&A)。ただし、物置小屋のようなものは建物に当たらない場合があり、その場合は、地上の工作物として管理に過分の費用や労力がかかるかどうかで判断されます。実家を手放す場面での建物の問題は、実家じまいの進め方──売る・貸す・住む・手放すの4択と登記でも取り上げています。

不承認の理由──件数で見ると最多は地上の樹木や工作物など

統計に挙がっている不承認の理由は、次のとおりです(2026年8月31日現在)。こちらも1件で複数の理由が認められる場合があるため、合計は不承認件数(100件)と一致しません。

不承認の理由 根拠 件数
管理や処分の妨げになる工作物・車両・樹木などが地上にある 国庫帰属法5条1項2号 46件
国による追加の整備が必要な森林 施行令4条3項3号 37件
国に帰属した後、通常の管理費用以外の金銭の負担を国が法令に基づき負う土地 施行令4条3項4号 12件
災害の危険があり、被害を防ぐための措置が必要な土地 施行令4条3項1号 11件
所有権に基づく使用・収益が現に妨害されている土地 施行令4条2項2号 8件
一定の崖があり、通常の管理に過分の費用・労力がかかる土地 国庫帰属法5条1項1号 7件
民法上の通行の権利が現に妨げられている土地 施行令4条2項1号 4件
取り除かなければ管理・処分ができない物が地下にある土地 国庫帰属法5条1項3号 3件

法務省Q&Aが挙げている例から、中身を見ておきます。

  • 地上の樹木や工作物など(46件):果樹園の樹木、民家や道路・線路などの近くにあって倒木や枝の落下を防ぐために定期的な伐採が必要な樹木、周りの土地に侵入するおそれがあるなどで定期的な伐採が必要な竹、補修が必要な治山事業の工作物、建物に当たらない廃屋、放置車両などが挙げられています。切り株や電柱は一般には当たらないとされていますが、土地の状況を確認しないと確実な判断は難しい、とも書かれています
  • 追加の整備が必要な森林(37件):人工林は適切な間伐などが行われているか、天然林は市町村の森林整備計画で定める「標準伐期齢」(立木を伐採する標準的な林齢)に達しているかを確認するとされています
  • 国が金銭の負担を負う土地(12件):例として、土地改良法36条1項にもとづいて賦課される金銭(土地改良事業で整備される水利施設などの建設費用や、維持管理の経費)が挙げられています。金額にかかわらず、賦課金が発生している土地は引き取れないとされています
  • 災害の危険がある土地(11件):土砂の崩壊を防ぐ保護工事が必要な土地、人の落下を防ぐために大きな陥没を埋め立てる必要がある土地、大量の水が漏れ出していて排水ポンプが必要な土地などが例示されています
  • そのほか:第三者に不法に占有されている土地や、隣の土地から継続的に水が流れ込んでいる土地(使用・収益の妨害)、勾配30度以上・高さ5メートル以上で崩落の危険性があると考えられる崖のある土地、ほかの人の土地を通らないと出入りできない土地(袋地)で、その通行が妨げられている土地、地下に産業廃棄物や屋根瓦などの建築資材(いわゆるガラ)、古い建物の基礎、浄化槽、井戸などがある土地が挙げられています。なお、崖があるというだけで引き取れないわけではなく、袋地も引き取ってもらうこと自体は可能とされています

また法務省Q&Aは、申請したあとに却下や不承認の理由に当たる事情がわかった場合、それを取り除く対応をすることはできるものの、相当の期間までに土地の状況が改善しなければ引き取れない、としています。

取下げの理由──却下・不承認の判明と、有効活用の見込み

取下げは1,139件で、統計には理由の内訳も示されています(2026年8月31日現在)。

取下げの理由 件数
有効活用の見込みが生じた 586件
却下・不承認であることが判明した 405件
その他 148件

「有効活用の見込みが生じた」例として、統計のページには次の3つが挙がっています。

  • 自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した
  • 隣接地の所有者から土地の引き受けの申出があった
  • 農業委員会の調整などにより、農地として活用される見込みとなった

法務省Q&Aでは、申請後、本人の同意がある場合には、法務局から地方公共団体などに寄附を受ける可能性を確認する、とされています。国に引き取ってもらうつもりで申請した土地に、結果として別の引き受け手や使い道が見つかる、という道筋もあるということです。

一方、「却下・不承認であることが判明した」は405件です。数字の上では、申請のあとで却下や不承認に当たることがわかって取り下げられた件数が、正式に却下(85件)・不承認(100件)とされた件数を上回っています。

取下げでも、却下・不承認でも、納めた審査手数料は返ってきません。また、土地は引き続き申請した人のものなので、相続登記がまだであれば、その申請も必要です(法務省Q&A)。

申請の前に確かめておきたいこと

統計と法務省Q&Aから、申請の前に確かめておきたい点をまとめます。

  1. 取得のいきさつ:相続か、相続人に対する遺贈で取得した土地か(国庫帰属法1条・2条1項)。相続人ではない人が遺贈で取得した土地は対象外です(法務省Q&A)。共有の土地は、共有者全員で申請しなければなりません(国庫帰属法2条2項)
  2. 建物:登記の有無にかかわらず、建物が建っていないか
  3. 担保権などの登記:抵当権の登記が残っていないか。借入れを返し終えていても、抵当権の登記がある限り申請はできず、抹消の登記を済ませてから申請することになります(法務省Q&A)
  4. 境界:境界点を現地で示せるか。隣の土地の所有者と、境界の認識が一致しているか
  5. 通路・水路:ほかの人が現に通路や水路として使っていないか
  6. 地上・地下の物:手入れが必要な樹木や竹、廃屋、放置車両、地中のガラや古い基礎、浄化槽、井戸などがないか
  7. 金銭の負担:土地改良法にもとづく賦課金など、土地にかかる金銭の負担が発生していないか
  8. 書類:施行規則3条の添付書類(図面・写真など)をそろえられるか

申請の前には、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)で相談ができます。予約制で、窓口での対面・電話・ウェブのいずれかの方法で受け付けています(法務省Q&A)。ただし、相談で伝えられるのは、その時点で提供された書面から判断できる範囲の見解です。実地調査などを経た審査の結果とは異なる可能性がある、とされています。

申請は本人、書類作成の代行は3つの資格者──手続きの役割分担

この制度では、誰が何をできるかが決まっています(法務省「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」、法務省Q&A)。

  • 申請:所有者本人か、親権者・成年後見人などの法定代理人に限られます。弁護士・司法書士・行政書士を含め、ほかの人が申請を代理することはできません。承認・不承認などの通知も本人に対して行われます
  • 申請書類の作成:本人が作るのが原則で、家族が手伝うこともできます。仕事として作成を代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られます
  • 書類の補正(直し):原則として本人がします。ただし、弁護士・司法書士・行政書士が作成を代行した書類は、その資格者が本人の意思を確認したうえで修正できます
  • 実地調査への同行:法務局から同行を求められた場合、本人が指定した家族・親族や資格者などに代わってもらうこともできます。正当な理由なく同行を拒むと、申請は却下されます
  • 境界:筆界の調査や測量、筆界特定の手続の代理は土地家屋調査士、境界をめぐる争いを交渉や裁判で解決するのは主に弁護士の分野です

却下・不承認になったら

  • 再申請:一度却下・不承認になった土地でも、その具体的な理由を解消すれば、再び申請できます(法務省Q&A)
  • 審査請求:却下・不承認の判断や負担金の算定に不服がある場合は、審査請求(行政の判断の見直しを求める手続き)ができます。期限は処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内で(行政不服審査法18条1項本文)、請求先は法務省民事局とされています(法務省Q&A)

まとめ

法務省の統計(2026年8月31日現在・速報値)では、国に帰属した件数は3,119件で、宅地と農用地が上位を占めています。却下の理由では添付書類の不足・境界・通路が、不承認の理由では地上の樹木や工作物・追加の整備が必要な森林が上位に並び、取下げでは、「有効活用の見込みが生じた」もの(586件)に次いで、「却下・不承認であることが判明した」ものが405件ありました。

統計と法律の仕組みから見えてくる「引き取られる土地」は、何か特別な条件を備えた土地というより、法律が定める却下の理由にも不承認の理由にも当たらないと認められた土地です。統計で上位に並ぶ却下・不承認の理由のうち、書類の不足、境界、通路、地上の樹木や工作物などは、申請の前に書類や現地である程度確かめておくことができます。ただし、最終的には法務局の審査で土地ごとに判断されるため、特定の土地が承認されるかどうかを前もって言い切ることはできません。

申請を考えるときは、相続登記や抵当権の抹消など、登記の手続きが残っていないかも含めて、土地の状況を整理しておくことが出発点になります。どこから手をつければよいか迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどれくらいかかりますか? 申請のときに審査手数料として土地1筆あたり14,000円を納め(施行令3条)、まとめて申請しても軽減はなく、取下げ・却下・不承認でも返還されません(法務省Q&A)。承認されたら負担金を納めます。20万円が基本ですが、市街化区域内などの宅地、一定の区域内の農地、森林は面積に応じて算定されます(施行令5条1項)。負担金の額の通知を受けた日から30日以内に納めないと承認は効力を失い(国庫帰属法10条3項)、建物の取り壊しなど申請の準備にかかる費用も別に必要になる場合があります。

Q. 申請に期限はありますか。放置するとどうなりますか? 申請できる人と土地を定めた国庫帰属法2条をはじめ、同法には相続から何年以内という申請の期限は置かれておらず、2023年4月27日以前に相続した土地も対象です(法務省Q&A)。

ただし相続登記は別の義務で、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(同法164条1項)。この義務は2024年4月1日より前に開始した相続にも及び、その場合の3年は「知った日」と2024年4月1日のいずれか遅い日から数えます(民法等の一部を改正する法律〈令和3年法律第24号〉附則5条6項)。2024年4月1日より前に相続したことを知っていた土地で相続登記がされていないものは、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記をする必要があります(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。放置して相続が重なると共有者が増え、共有の土地は共有者全員でなければ申請できないため(国庫帰属法2条2項)、申請そのものが難しくなります。

Q. 自分でできますか。どこに相談すればいいですか? 申請は所有者本人(または親権者・成年後見人などの法定代理人)がするもので、弁護士・司法書士・行政書士を含め、ほかの人に申請を代理してもらうことはできません。書類はご自身で作れ、家族が手伝うこともできますが、仕事として作成を代行できるのは弁護士・司法書士・行政書士に限られます(法務省Q&A)。申請前の相談は土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局で予約制で受け付けており、境界の調査や測量、筆界特定の手続の代理は土地家屋調査士、境界の争いを交渉や裁判で解決するのは主に弁護士の分野です。相続登記や抵当権の抹消が残っていないかの確認も含め、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】承認申請と登記記録──名義・共有・地目と地積・権利の登記

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

承認申請の書面調査では、承認申請書の記載や添付書類が、申請土地の登記記録と照合されます。ここでは、法務局の事務の取扱いを定めた「相続土地国庫帰属制度事務処理要領」(令和5年2月8日付け法務省民二第70号民事局長通達の別添。法務省ホームページに掲載。以下「事務処理要領」)と法務省Q&Aから、登記記録にかかわる取扱いを整理します。

相続登記をしていない土地──添付する書面は相続登記と同じ水準

相続登記がまだでも承認申請ができることは、本文で触れたとおりです。このとき添付する「相続等により取得した者であることを証する書面」(施行規則3条1号)について、事務処理要領は、不動産登記の手続で相続等による所有権の移転の登記の登記原因を証する情報と同程度のものに限るとしています(第3節第2)。求められるのは、相続その他の一般承継があったことを証する、市町村長・登記官その他の公務員が職務上作成した書面(これがない場合は、これに代わるべき書面)と同程度のものです(第4節第1の1。不動産登記令7条1項5号イと同程度)。

例として挙げられているのは、次のような書面です(第4節第1の1)。

  • 承認申請者が登記名義人の相続人であることを示す戸籍事項証明書
  • 法定相続情報一覧図の写し
  • 遺産分割協議書(押印と、その印影に係る印鑑証明書の添付があるもの)
  • 登記名義人から承認申請者に土地を遺贈する旨が書かれた遺言書
  • 相続人である承認申請者の住所・氏名を示す住民票の写しや戸籍の附票の写し

相続登記の準備で集める書類と、求められる水準は変わらないということです。戸籍の原本の還付を受けたいときは、いわゆる相続関係説明図を提出すれば、戸籍・除籍の謄本や全部事項証明書に限り、その説明図を還付のための謄本として扱うことができるとされています(第6節)。

登記名義人が承認申請者本人であっても、書面が必要になる場合があります。登記原因が「遺贈」で、相続人に対する遺贈かどうかが登記記録からは判断できない場合と、所有権の保存の登記しかされていない場合です(第4節第1の1)。また、承認申請書に書いた住所・氏名が登記記録上の住所・氏名と一致しないときは、同一人であることを証する書面(戸籍事項証明書、住民票の写し、戸籍の附票の写しなど)が必要です。この書面も、登記名義人の住所・氏名の変更の登記で求められる情報(不動産登記令別表23の項)と同程度のものであることを要するとされています(第4節第1の1)。

名義人とのあいだに売買などが挟まっている土地

表題部所有者や所有権の登記名義人から承認申請者までのあいだに、売買など相続等以外の原因による所有権の移転がある場合、事務処理要領は、その移転の登記がされない限り、「申請の権限を有しない者の申請」(国庫帰属法4条1項1号)に当たるとして却下するとしています。承認申請者が所有者であると確実に判断できないから、というのがその理由です(第3節第2)。法務省Q&Aも、売買で所有権を取得した人から相続した土地で、売買による所有権の移転の登記も相続登記もされていない場合は、承認申請はできないとしています。

登記名義が古いままの土地では、名義人から現在までの経過に、相続や相続人への遺贈以外の移転が挟まっていないかを、登記記録と手元の資料で最初に確かめることになります。

共有地──相続等による取得は1人、所有者であることは全員について確認

共有地は、共有者全員が共同して申請します(国庫帰属法2条2項前段)。同項後段により、持分の全部を売買など相続等以外の原因で取得した共有者も、相続等で持分を取得した共有者と共同して申請することができます。事務処理要領は、相続等で取得していることは共有者のうち1人について確認すれば足りる一方、申請土地の所有者であることは全ての共有者について確認するとし、共有者全員の押印と印鑑証明書が必要としています(第3節第3)。法務省Q&Aでは、持分を何回かに分けて取得し、そのうち1つでも相続を原因とするものがあれば、この制度を利用できるとされています。また、負担金は国に対して分割して納めることができず、共有者のうち1人がとりまとめるなどして一括で納付する必要があります(法務省Q&A)。

連絡が取れない共有者がいる場合について、法務省Q&Aは次の方法を挙げ、詳細は弁護士等の専門家に相談するよう案内しています。いずれも裁判所の手続きを経るものです。

  • 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡の制度(民法262条の2・262条の3)で持分を集約するか、持分の移転権限を与えてもらったうえで申請する。ただし、所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産の分割をすべき場合は、相続開始の時から10年を経過していなければ、裁判所はこれらの裁判をすることができません(民法262条の2第3項・262条の3第2項)
  • 相続開始から10年を経過していない場合は、その持分について所有者不明土地管理人(民法264条の2)を選任してもらい、管理人が裁判所の許可を得て他の相続人と共に申請するか、他の相続人に持分を譲渡したうえで、その相続人が申請する

申請は所有者本人か法定代理人に限られます(本文参照)。この点について事務処理要領は、相続等で土地を取得した人が所在不明となり、不在者財産管理人や所有者不明土地管理人などが選任されたときは、裁判所の許可を得て、その管理人が申請土地の所有者の法定代理人として承認申請をすることができるとしています(第3節第2の2)。

地目・地積が現況と違う土地

承認申請書には、申請土地の所在・地番・地目・地積を書きます(国庫帰属法3条1項2号)。書面調査ではこれを登記記録と照合し、実地調査で現況を確かめます。事務処理要領は、登記記録上の地目と現況の利用用途が異なっていても、それを理由に承認申請を却下することはできないとしています(第10節第3②)。

負担金の区分は、登記記録上の地目ではなく、土地の現況や利用の状況と、所在する区域によって定められています。負担金を面積に応じて算定する区分は、施行令5条1項で、「宅地(その現況及び従前の使用状況に照らして直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地)」のうち市街化区域内などにあるもの、「主に農地として利用されている土地」のうち農用地区域内などにあるもの、「主に森林として利用されている土地」とされています。申請土地の主な種目(宅地・農用地・森林・それ以外)は、法務局長等が書面調査・実地調査の結果にもとづいて判断し、主に農用地・森林として利用されている土地でないことが明らかな場合を除き、財務大臣・農林水産大臣の意見を聴いたうえで最終判断します(国庫帰属法8条、事務処理要領第14節第1)。

地積の扱いは異なり、負担金の算定に用いる面積は登記記録上の地積です(事務処理要領第14節第2、法務省Q&A)。現況の面積が登記記録上の地積と違うとして現況面積での算定を求める場合は、原則として、地積更正または地積変更の登記を先にする扱いです(事務処理要領は「承認申請前に」、法務省Q&Aは「承認の前に」と表現しています)。実地調査では測量は行わず、登記記録上の地積と著しい相違がないかを確かめるとされています(事務処理要領第10節第3②)。地積更正などの表示に関する登記の申請手続の代理と、そのために必要な調査・測量は、土地家屋調査士の業務です(土地家屋調査士法3条1項1号・2号)。

国に帰属する範囲は一筆単位です。法務省Q&Aは、国が管理するのは申請者が示した土地の範囲だが、国庫に帰属する土地の範囲は、帰属した地番で特定される一筆の土地の範囲になる、としています。一筆の一角に墓地があり、墓地の部分を除いて国に帰属させたい場合は、分筆の登記をしたうえで、墓地の部分を除いた土地について申請することが考えられる、とされています(法務省Q&A)。

権利の登記・建物の登記が残っている土地

事務処理要領は、担保権・使用収益権の確認について、次のように定めています(第10節第3⑥)。

  • 登記記録で確認するもの:抵当権などの担保権と、地上権・地役権・賃借権などの使用及び収益を目的とする権利の登記。登記記録上これらがなければ、権利設定の有無を積極的に調べる必要はないとされます。ただし、農地については関係機関から提供を受けた資料も確認し、また、調査の過程で権利の存在を疑う事情が見つかれば、承認申請者から事情を聴き、必要に応じて資料の提出を求めるとされています
  • 登記記録からはわからないもの:入会権、森林経営管理法の経営管理権、森林組合などとの森林経営委託契約などは、関係機関の資料と承認申請者の申告で確認し、設定が判明すれば、使用収益権が設定されている土地に当たると判断されます
  • 担保権がある土地などとして扱われる登記:買戻特約の登記、処分制限の登記、譲渡担保権の設定の登記があると、国が所有権を失い、または自由な使用・収益を害されるおそれが高いことから、担保権が設定されている土地や、所有権に基づく使用・収益が現に妨害されている土地に当たると判断されます

地役権について、法務省Q&Aは、土地の上空や地中に電線を通すための地役権が設定されている土地(承役地)の申請は却下される一方、申請土地が要役地(他人の土地から便益を受ける土地)である場合は申請できる、としています。

抵当権の登記は、借入れを返し終えていても、登記が残っている限り申請できません(本文参照)。抹消の登記の手続きは、次のとおりです。

  • 原則:登記権利者(所有者)と登記義務者(抵当権者など)の共同申請です(不動産登記法60条)
  • 登記義務者の所在が知れない場合:公示催告の申立てをし、除権決定があれば、登記権利者が単独で抹消を申請できます(同法70条1項・3項)。登記された存続期間が満了した地上権・賃借権などの登記や、買戻しの期間が満了した買戻しの特約の登記は、法務省令で定める方法で調査してもなお所在が判明しないときに、所在が知れないものとみなされます(同条2項)
  • 先取特権・質権・抵当権の特例:登記義務者の所在が知れない場合に、被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したとき、または弁済期から20年を経過した後に被担保債権・利息・債務不履行による損害の全額に相当する金銭を供託したときは、単独で抹消を申請できます(同条4項)
  • 解散した法人の担保権:法務省令で定める方法で調査してもなお清算人の所在が判明しない場合で、被担保債権の弁済期から30年、かつ法人の解散の日から30年を経過したときは、単独で抹消を申請できます(同法70条の2)
  • 買戻しの特約の登記:契約の日から10年を経過したときは、登記権利者が単独で抹消を申請できます(同法69条の2)

建物については、取り壊した後も建物の登記記録が残っていれば、事務処理要領は、承認申請者に建物の滅失の登記の申請などを促すとしています(第10節第3⑤)。建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければなりません(不動産登記法57条)。表題部所有者や所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合に、その人に相続があったときは、相続人などの一般承継人がその登記を申請することができます(同法30条)。建物の滅失の登記も表示に関する登記で、申請手続の代理は土地家屋調査士の業務です。

【さらに深掘り】国への所有権移転の登記──承諾書・代位による登記・申請中の承継

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

承諾書は、国が登記権利者となる嘱託登記の添付情報

承認申請書には、国に帰属したときに、国が登記権利者となる所有権の移転の登記を官庁が嘱託することを承諾したことを証する書面を添付します。承認申請者などが記名し、承認申請書に押印したものと同一の印で押印したものなどに限られます(施行規則3条7号)。

事務処理要領は、この書面が、国または地方公共団体が登記権利者となる権利に関する登記を官庁・公署が嘱託する場合の添付情報である「登記義務者の承諾を証する当該登記義務者が作成した情報」(不動産登記令別表73の項添付情報欄ロ)となり得るものでなければならないとし、国庫帰属後に土地を管理する国の機関が所有権の移転の登記を嘱託することを承諾する旨の記載が必要だとしています(第4節第1の7)。印鑑証明書とこの承諾書は、原本の還付を受けることができません(事務処理要領第6節、法務省Q&A)。

登記は国の機関が嘱託し、申請者への完了の通知はない

負担金が納付されて国に帰属すると、法務局から土地を管理する国の機関に帰属の通知がされ、承認申請書類や審査で集めた資料、負担金の納付に関する書類などの写しが送られます(事務処理要領第15節)。国に帰属した土地は、農用地・森林であれば農林水産大臣(地方農政局・森林管理局)、それ以外であれば財務大臣(財務局)が管理します(法務省Q&A)。所有権の移転の登記は国の機関が行い、承認申請者が登記を申請する必要はありません(法務省Q&A)。

登記原因は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第11条第1項の規定に基づく令和〇年〇月〇日所有権の国庫帰属」、原因日付は負担金が納付された日です(事務処理要領第15節第3、法務省Q&A)。登記の完了証は嘱託者にだけ交付され、承認申請者には通知されません。国への移転を証する書面が必要なときは、登記事項証明書を取得することになります(法務省Q&A)。

固定資産税について、法務省Q&Aは、1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が納税義務者となることから、12月に承認された場合、国への所有権の移転の登記が翌年1月になることがあり、その場合は、負担金を納付していても翌年の固定資産税は承認申請者が支払うことになる、と注意を促しています。

名義が整っていない土地──国が代位して登記を嘱託する(財務局が管理する土地)

財務局が管理する土地について、財務省の通達(令和5年4月20日財理第1193号「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する事務の取扱いについて」。令和8年6月24日財理第2053号による改正後のもの。以下「財務省通達」)は、財務局長等が所有権の移転の登記を嘱託する際、次の登記がされていないときは、その登記を国が代位して嘱託し、所有権の移転の登記の嘱託と併せて行うとしています(第4の2)。

  • 承認申請者の住所または氏名の変更の登記
  • 相続登記
  • 所有権の保存の登記

代位の原因は、国庫帰属による所有権移転登記請求権とされています。財務省通達の嘱託書の様式では、代位による相続登記について、法務局長から土地を管理する国の機関への帰属の通知書(相続関係説明図を別紙とするもの)を相続を証する情報とし、相続人の住所を証する書面(住民票の写し等)は、法務局から送付された資料(法務局長等が原本と相違ない旨を記載した謄本)を使うとされています。承認申請の書類の写しが、帰属後の登記の嘱託にも使われることになります。

嘱託書の様式には、登録免許税を課さない根拠として、国への所有権の移転の登記について登録免許税法4条1項(国が自己のために受ける登記等)、代位による登記について同法5条1号(国がこれら以外の者に代位してする登記等)が記載されています。

ただし、財務省通達は財務局が管理する土地についてのもので、農林水産省が管理する農用地・森林の扱いを定めたものではありません。また、これは国に帰属した場合の取扱いです。取下げ・却下・不承認となれば土地は承認申請者のもとに残り、相続登記も自ら申請する必要があります(本文参照)。

申請中に承認申請者が亡くなったとき

負担金が納付されるまでのあいだに承認申請者から土地の所有権の全部または一部を取得した人(承認申請をすることができる人に限ります)は、取得の日から60日以内に限り、管轄の法務局長に申し出て、承認申請者の地位を承継することができます(施行規則12条1項)。申出書には、新たに承認申請をすることができる人であることを証する書面や、国への所有権の移転の登記の嘱託についての承諾書などを添付します(同条3項による3条の準用)。法務省Q&Aによると、相続人の1人が遺産分割で取得する場合も、60日は承認申請者が死亡した日から数えます。

売買などで取得した人(特定承継者)について、事務処理要領は、承継の申出ができるのは所有権の登記名義人として登記された人で、かつ国庫帰属法2条2項後段により承認申請ができる場合(ほかの共有者に相続等で持分を取得した人がいる場合)に限られるとしています(第7節)。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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