判断能力が回復したら成年後見は終わる?──後見開始の審判の取消しのしくみ

この記事の要点 後見・保佐・補助は、開始の原因(判断能力の低下)がなくなったときは、請求を受けた家庭裁判所が開始の審判を取り消します(民法10条・14条1項・18条1項) 判断能力が回復したかどうかを判断するのは家庭裁判所です。後見と保佐の取消しでは、原則として医師の意見を聴くことが法律で定められています(家事事件手続法119条2項・133条) 取消しの審判は、成年後見人の辞任・解任や任意後見契約の解除とは別の手続です。取消しの後は、裁判所書記官の嘱託によって後見の登記に終了が記録されます 「いったん成年後見が始まったら、一生続くのでしょうか」と疑問に思う方もいるでしょう。結論からお伝えすると、本人の判断能力が回復して開始の原因がなくなれば、家庭裁判所の「後見開始の審判の取消し」によって成年後見を終わらせる仕組みが法律に用意されています。ただし、回復したかどうかを決めるのは家庭裁判所であり、家族や成年後見人の判断だけで終わらせることはできません。 ...

2026年10月7日 · ひぐらしさとし

裁判所から『特別送達』が届いたら|本物かどうかの確かめ方と、受け取らなくても手続きが進む仕組み

この記事の要点 特別送達は、訴状や支払督促などの裁判所の書類を法律に定められた方法で届け、届けた事実を証明する郵便の特殊な取扱いです(郵便法44条・49条) 本物かどうか不安なときは、書面に書かれた電話番号がにせものでないかを電話帳などで確かめたうえで、裁判所に直接問い合わせるよう、裁判所自身が案内しています 受け取りを拒んだり、不在で受け取れなかったりしても、差置送達や書留郵便等に付する送達によって送達があったものとして扱われることがあります。届いたら、まず期日と期限を確かめることが大切です これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。届いた書類の請求に応じるべきかどうか、どう反論すべきかといった個別の判断はここでは扱いません。 ...

2026年10月7日 · ひぐらしさとし

「親等」の数え方──「四親等内の親族」「直系尊属」はどこまで? 直系・傍系・尊属・卑属を読み分ける【民法725条〜727条】

この記事の要点 親等は「親族間の世代数」で数える(民法726条1項)。親と子のあいだが一親等で、親子関係を1つたどるごとに1ずつ増える 兄弟姉妹やおじ・おば、いとこのような「傍系」は、共通の祖先までいったんさかのぼり、そこから下る世代数を合計して数える(同条2項)。兄弟姉妹は二親等、おじ・おば・甥・姪は三親等、いとこは四親等 民法が親族と呼ぶのは「六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族」(725条)。養子は縁組の日から養親とその血族のあいだで血族と同じ親族関係になる(727条) 法律の条文には、「四親等内の親族」「直系尊属」「三親等内の傍系血族」といった言葉がたびたび出てきます。結論から言うと、親等とは親族のあいだの世代の数のことで、直系・傍系はタテ・ヨコの区別です。「直系尊属」は父母・祖父母など自分より上の世代の直系の親族、「直系卑属」は子・孫など下の世代の直系の親族を指します。これらの言葉と親等の数え方を押さえれば、「四親等内」「直系尊属」が誰を指すのかは条文から読み取れます。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

権利証(登記識別情報)はまだ使える?──法務局に「有効証明」を請求して確かめる方法

この記事の要点 登記識別情報(いまの「権利証」にあたる12桁の符号)がまだ使える状態かどうかは、登記名義人やその相続人などが法務局に「有効証明」を請求して確かめることができる(不動産登記令22条) 手数料は1件300円。請求書を書面で出す方法のほか、法務省の「申請用総合ソフト」を使ったオンラインでも請求できる 証明されるのは「その符号がその登記のもので、失効していない」ことだけ。請求した人が本当の所有者であることや、取引の安全まで保証するものではない 「何年も前に届いた登記識別情報通知、今も使えるのだろうか」「家族が保管していた通知書が、この登記のものか自信がない」──不動産を売る、担保に入れるといった次の登記を控えて、手元の符号が本当に使えるのか気になることがあります。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

家族を亡くしたばかりで気持ちが追いつかないときの相続相談──つらさを伝えてよいこと、一度に全部話さなくていいこと

この記事の要点 気持ちの整理がつかないまま相続の相談に行ってもかまいません。つらさや「今日はあまり話せないかもしれない」ことは、最初に伝えてよいことです 一度に全部を話したり決めたりする必要はありません。ただし、相続放棄の3か月のように期限のある手続きがあるかどうかだけは、早めに確かめておきたいところです 家族に代わりに話してもらう方法もありますが、手続きを正式に依頼するときは、原則として相続人本人の意思確認が欠かせません 家族を亡くしてまだ日が浅いうちは、手続きの話を聞くだけで涙が出たり、説明が頭に入ってこなかったりすることがあります。「こんな状態で相談に行ってよいのだろうか」とためらう方もいるかもしれません。結論からいえば、気持ちが追いついていないまま相談に行くことは、少しもおかしなことではありません。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

相続税の未成年者控除・障害者控除とは──相続人が18歳未満や障害のある人のときに、税額から差し引かれる仕組み

この記事の要点 相続人が18歳未満のときは「未成年者控除」、85歳未満の障害者のときは「障害者控除」として、その人の相続税額から一定額が差し引かれる(相続税法19条の3・19条の4) 控除額は、18歳または85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)で決まり、本人の税額から引ききれない分は扶養義務者の税額から差し引ける 以前の相続ですでに控除を受けている人は、今回差し引ける額が制限される 相続税には、財産を受け取った人の年齢や障害の有無に着目して、税額を軽くする仕組みがあります。相続人が未成年の場合の「未成年者控除」と、障害のある場合の「障害者控除」です。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

家族が亡くなったら健康保険の届出は14日以内?──国保・後期高齢者医療・介護保険の手続きと保険証・資格確認書の扱い

この記事の要点 亡くなった方が国民健康保険に入っていた場合、世帯主が14日以内に市区町村へ資格喪失の届出をするのが基本です(国民健康保険法9条、同法施行規則12条・13条)。 後期高齢者医療と介護保険にも省令に「14日以内」の定めがありますが、亡くなった場合の運用は自治体ごとに違い、「死亡届で足りる」とする案内も、被保険者証などの返却を求める案内もあります。 従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終わっており、手元に残っている可能性があるのは資格確認書などです。返却のしかたは自治体の案内に従います。会社の健康保険に入っていた場合は、窓口が市区町村ではありません。 本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。期限や必要書類は、制度や自治体によって異なります。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

胎児は相続人になれる?──生まれる前の相続権と、手続で気をつけること

この記事の要点 胎児は、相続については「すでに生まれたもの」とみなされます(民法886条1項)。被相続人が亡くなった時にまだ生まれていない子も、相続の場面では子として扱われます ただし、胎児が死体で生まれたときは、このみなしは適用されません(同条2項)。生きて生まれるか、死体で生まれるかで、相続人の顔ぶれが変わります 胎児のうちは出生の届出がなく、戸籍にもまだ子の記載がないのが通常です。相続人を確認するときは、戸籍だけでは見えない子がいないかにも注意が必要です 執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案の相続人や相続分の判断は、ここでは行いません。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

補助開始の審判とは?──本人の同意が必要な理由と、同意権・代理権を選んで付ける仕組み

この記事の要点 補助は、判断能力が「不十分」な方のための類型で、本人以外の人が申し立てるときは本人の同意が必要です(民法15条2項) 補助開始の審判だけでは補助人に権限は生まれず、「同意権を付ける審判」か「代理権を付ける審判」の少なくとも一方を一緒にしなければなりません(民法15条3項) 同意権を付けられるのは、民法13条1項に挙げられた行為の一部に限られます(民法17条1項ただし書) 結論からお伝えします。補助は、本人に判断能力がある程度残っていることを前提に、本人が納得した範囲で、必要な支援だけを選んで付ける仕組みです。後見・保佐・補助の3類型の全体像は法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で整理していますので、この記事では補助に絞って見ていきます。 ...

2026年10月3日 · ひぐらしさとし

公示送達とは|相手の居場所が分からないときに裁判を進める仕組みと要件・効力発生までの期間

この記事の要点 公示送達は、相手の住所・居所その他送達をすべき場所が分からないときなどに、申立てにより裁判所書記官が行う特別な送達の方法です(民事訴訟法110条1項) 令和8年5月21日以降に提起された訴えなどでは、裁判所の掲示場(または裁判所内の端末の画面)に加えて、インターネットで誰でも見られる状態に置く方法で行われ、原則としてその措置を始めた日から2週間を経過すると効力が生じます(同111条・112条) 申立てには住民票や現地の状況などの所在調査の結果を示すのが一般的です。また、少額訴訟では通常の手続きに移り、支払督促ではそもそも使えないという制約もあります これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でどの手続きを選ぶべきかの判断はここでは扱いません。 ...

2026年10月3日 · ひぐらしさとし