保佐人の同意が必要な行為とは?──民法13条が定める10種類をやさしく解説

この記事の要点 保佐開始の審判を受けた本人(被保佐人)は、日常の買い物などは自分でできますが、借金や不動産の売買など重要な行為をするときは保佐人の同意が必要です 同意が必要な行為は民法13条1項に10種類が列挙されており、家庭裁判所の審判でこれ以外の行為にも範囲を広げることができます 保佐人が正当な理由なく同意しないときは、家庭裁判所に「同意に代わる許可」を求める仕組みがあります 結論からお伝えします。保佐制度は、判断能力が「著しく不十分」な方(本人=被保佐人)について、日常生活に関する行為は本人の自由に任せつつ、財産や生活に重大な影響を与える一部の行為だけを保佐人のチェック(同意)にかける仕組みです。法定後見の3類型(後見・保佐・補助)の違いは法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で解説していますが、この記事では保佐に絞って、具体的にどの行為に同意が必要になるのかを見ていきます。なお、保佐人には、この記事で扱う同意権とは別に、家庭裁判所の審判によって特定の法律行為について本人に代わって行う代理権が与えられることもあります(民法876条の4第1項)。同意権と代理権は別の仕組みであり、本記事で取り上げるのは同意権に限られます。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし

裁判の途中で示談がまとまったら|訴訟上の和解(裁判上の和解)の効力の基礎

この記事の要点 訴訟が続いている途中でも、裁判所は当事者に和解を試みることができ、双方が合意すれば「訴訟上の和解」(裁判上の和解)が成立する 成立した和解は裁判所書記官が作成する電子調書に記録され、その記録は確定判決と同一の効力を持ち、相手が守らなければ強制執行に進める根拠(債務名義)になる 訴えを起こす前に合意内容を固めておく「即決和解」とは、成立する場面(訴訟の途中か、訴え提起前か)が異なる別の制度 訴訟を起こしても、判決まで争い抜く事件ばかりではありません。審理が進む途中で当事者双方の言い分が歩み寄り、話し合いで決着がつくことも少なくありません。このように、訴訟が裁判所に係属している間に当事者双方の合意によって手続きを終わらせる仕組みが「訴訟上の和解」(裁判上の和解)です。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし

「〜の規定にかかわらず」と「〜を妨げない」の違い──条文が「別ルール」と「両立」を示す言い回し【相続の条文で解説】

この記事の要点 「〜の規定にかかわらず」は、別の条文が定めた原則を脇に置いて、この条文の決め方に切り替える言い回しです。ただし書が同じ項の中で例外を作るのに対し、こちらは別の規定を名指しして、その原則を上書きします 同じ「かかわらず」でも、「〜かどうかにかかわらず」は上書きではなく「どちらであっても区別しない」という意味で、読み方が変わります 「〜を妨げない」は、この条文の定めがあっても、別の権利や手続きはそのまま使える、という両立の確認です。「〜できる」と新しく権利を与える文とは役割が違います 条文の一つの項の中にある「本文」と「ただし書」の関係は、「ただし書」「本文」「前段・後段」「柱書」とはで整理しました。今回は、別の規定を名指しして原則と例外の関係を示す言い回しを取り上げます。相続と登記の条文を例に、実際の文言で見ていきます(執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です)。 ...

2026年9月12日 · ひぐらしさとし

登記の『更正』と『変更』はどう違う?──窓口で見分けるときの実務の目安

この記事の要点 「更正登記」と「変更登記」はどちらも登記の内容を直す手続きだが、直す理由がまったく違う。登記した時点ですでに誤りや抜けがあった場合が更正登記、登記した後に事実が変わった場合が変更登記 登記名義人の氏名・住所についての更正登記・変更登記は、どちらも登記名義人本人が単独で申請できる 権利の内容にかかわる更正登記・変更登記は、利害関係を持つ第三者の承諾が取れるかどうかで、登記のされ方(付記登記か主登記か)が変わる 登記の内容を直す手続きというと、「更正登記」と「変更登記」のどちらの言葉を使えばよいのか迷う方は少なくありません。結論から言うと、この二つは法律上、直す理由によってはっきり区別されています。不動産登記法2条は、変更の登記を「登記事項に変更があった場合に当該登記事項を変更する登記」(15号)、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」(16号)と定義しています。 ...

2026年9月12日 · ひぐらしさとし

相続の相談後に「やることリスト」を作る──聞いた話を行動に変える4つの区分と書き方

この記事の要点 初回相談で聞いた話は、帰宅後その日のうちに「①期限があること ②自分で集める書類 ③家族と決めること ④次に相談する日までに確認すること」の4区分でメモに書き分けると、行動に変わります 各項目に「誰が」「いつまでに」を添え、分からないことは空欄にせず「分からない」と書き残します このリストを2回目の相談に持っていくと、前回の説明をなぞり直す時間が減り、話が早く進みます 相続の初回相談を終えて帰宅すると、「いろいろ聞いたけれど、結局まず何をすればいいのか」がぼんやりしている、ということがよくあります。相談で聞いた内容は、そのままでは「情報」であって「行動」ではありません。この記事では、聞いた話を帰宅後に行動の形へ整理する、ごく一般的なメモの作り方を紹介します。同席しなかった家族への伝え方は聞いた話を同席しなかった家族にどう伝える?で扱っていますので、この記事は「自分たちが次に動くためのリスト」に絞ります。 ...

2026年9月11日 · ひぐらしさとし

相続でもらった財産に所得税はかからない?──非課税の理由(所得税法9条)と、それでも所得税が関係する3つの場面

この記事の要点 相続や遺贈で財産を取得しても、その取得自体に所得税はかからない(所得税法9条1項17号)。代わりに相続税の枠組みで扱われる ただし「亡くなった方のその年の所得」「相続した財産を売ったとき」「相続した後に生まれる収入」の3つの場面では、所得税が関係する 具体的な税額や申告の要否は税理士へ、相続した不動産の名義変更(相続登記)はお近くの司法書士へ 結論から言うと、相続や遺贈(遺言で財産をもらうこと)で財産を取得したこと自体に、所得税はかかりません。所得税法9条1項17号は、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」を非課税所得(所得税を課さない所得)として定めています。もらった財産が現金でも不動産でも株式でも、この点は同じです。 ...

2026年9月11日 · ひぐらしさとし

遺贈の「放棄」に期限はある?──特定遺贈と包括遺贈で異なるルール

この記事の要点 特定の財産を譲る「特定遺贈」の放棄には、原則として期限がない(民法986条)。ただし利害関係人から相当の期間を定めた催告を受けた場合は、期間内に答えないと承認したものとみなされる(民法987条) 遺産の全部または割合で譲られる「包括遺贈」の受遺者は「相続人と同一の権利義務」を持つとされ(民法990条)、放棄には相続放棄と同じ3か月の熟慮期間・家庭裁判所への申述が必要になる 「遺贈だから期限なし」と思い込むと、包括遺贈のケースで3か月を過ぎてしまい、放棄したくてもできなくなる落とし穴がある 「遺言で財産を譲ると書かれていたが、事情があって受け取りたくない」というケースがあります。相続放棄には「3か月以内」という期限があることはよく知られていますが、遺贈の放棄にはどのようなルールがあるのでしょうか。実は、遺贈の種類によって扱いがまったく異なります。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし

代襲相続の原因、戸籍でどこまでわかる?──死亡・廃除は載るが、放棄・欠格は載らない

この記事の要点 代襲相続が起こる原因は「死亡・相続欠格・廃除」の3つで、相続放棄は原因に含まれない 死亡と廃除は戸籍の身分事項欄に記載されるため戸籍で確認できるが、相続欠格と相続放棄は戸籍に記載が残らない 「戸籍を見ても代襲相続が起きているかどうか判断できない」ケースがあり、その場合は証明書や家庭裁判所への照会など戸籍以外の資料で確認する必要がある 戸籍を読み進めていると、「この人は代襲相続の対象になっているのだろうか」と立ち止まる場面があります。結論から言うと、戸籍だけを見れば代襲相続の有無がすべてわかる、というわけではありません。代襲相続の原因のうち、戸籍に記載が残るものと、まったく記載が残らないものがあるためです。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし

成年後見の「意思決定支援」とは?本人の意思を尊重する後見事務の考え方

この記事の要点 意思決定支援(いしけっていしえん)とは、後見人が本人に代わって一方的に決めるのではなく、本人が自分の意思で決められるよう支えるという考え方 2020年に最高裁判所・厚生労働省等でつくる意思決定支援ワーキング・グループが「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を公表し、後見事務の実務上の指針とされている 財産管理や身上保護の場面でも、まず本人の意向を丁寧に聴くことが後見事務の出発点になる 「後見人がついたら、もう自分の希望は聞いてもらえないのでは」——成年後見の利用を検討する中で、こうした不安の声を耳にすることがあります。しかし、後見人の役割は本人に代わって一方的に物事を決めることではなく、できる限り本人の意思を確認し、それを尊重しながら支援することが基本とされています。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし

訴訟で勝つ前に相手の財産を凍結する|仮差押え(民事保全)の手続きと担保の仕組み

この記事の要点 仮差押えは、訴訟や支払督促の決着がつく前に、相手の財産を勝手に処分できない状態にしておく民事保全法上の手続き 申立てには「被保全権利」と「保全の必要性」の疎明に加えて、原則として担保(保証金)の提供が必要になる 仮差押えだけでは債権は確定しないため、別途、本案となる訴訟や支払督促を起こす必要がある 貸したお金を返してもらうために訴訟や支払督促の手続きを起こしても、判決が確定するまでには一定の時間がかかります。その間に相手が不動産を売ってしまったり、預金口座からお金を引き出してしまったりすると、せっかく勝訴しても現実には回収できない、ということが起こり得ます。こうした事態を防ぐために使われるのが「仮差押え」(かりさしおさえ)という手続きです。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし